《ESOTERIC 論文コンクール応募作品 Vol.7》


No.0123 - 2002/2/2

埼玉県川口市在住 Lux Fan 様より


演題『ESOTERICの仲間たち〜これを読まずしてP0が語れるか〜』

出演者:

ESOTERIC:PO、P-70、D-70、DV-50

その他出演者:

DSD-S10(DENON)、SC-5withBB-5(marantz)、SM-5(marantz)、
DS-1000ZX(DIATONE)、DV-S747A(Pioneer)

友情出演:

ダイナ5555の仲間たち VUK-『P0』(ESOTERIC)、
Timelord chronos (dcs)、992/2(dcs)、purcell 1394(dcs)、Elgar plus
1394(dcs)、
COHERENCE2(JEFF ROWLAND)、Strada  Mono(Audio Physic)、Nautilus(B&W)、
ES103B(murata)、各種DOMINUS達

プログラム
1.出会い
2.音
2.1 P0
2・2 DV-50
2.3 D-70
3.対決(DV-50ほか)
4.黙とう
5.熱き期待

開 幕

さあ、ESOTERIC達が演じます。
『ESOTERICの仲間たち』が始まります。
乞うご期待をお願いいたします。
それでは開幕開幕・・・・・

1.出会い

【きっかけ】
そう、『P0』との出会いはこんなことから始まりました。
とある日、いつものようにネットサーフィンをしているとどからともなく
「こっちを見て!」という声が聞こえます。

後ろを振り返っても、誰もいません。仕方なく、再びパソコンの画面に向き
直ると登録してある大阪のお店のアドレスが光っているではないですか。

早速そのホームページ(以下、HP)を開いてみます。
そこには、な!なんと『P0』の文字と「お値段」「極上品」の文字が輝い
ています。

「まあ、この値段ではすぐに売れるでしょう」とそのときはたいして気にせず。
一週間後、同じHPを見ます。

「まだ、あるではないか!」。翌日、お店に電話します。
「状態はすばらしいですよ。ほとんど新品状態です!化粧箱、付属品もすべて
揃っています。」

さあ、ここから悩みが始まりました。『P0』という名前は聞いていましたが、
今までは、自分には関係ないものとして考えていましたし、SACD等の次期
メディアのすばらしさも知っており、マルチチャンネルも聞いています。

今更、2チャンネルのCDしか再生できないトランスポートを入手する必要が
あるのか。
「調べました!」

Stereo Sound等のオーディオ雑誌、ダイナ5555の川又さんの随筆。
「う〜ん。全てすばらしい評価です。」ただ、2つほど気になることがありま
した。「作動音が大きい」ということ、Stereo Soundの評論家全員がめったに
ないフルマークを付けているのに実際使用している人が少ないこと。

さらに、全員がすばらしいとしているのにどのようにすばらしい音なのか確か
める方法がないこと。

「そうだ、ここは『P0』について日本で最も良く知り、常用している川又
さんに聞くしかないな。」と考え、すぐメールをします。川又さんのところで
買うわけではないので恐縮しながらメールを送ります。

そして、10分後回答到着。「いつも返信が早いな」と思いつつ、その回答
を読みますと「○○とはメカの完成度が根本的に違い勝負になりません。」
との強いお言葉、更に続いて「ここでの実演でお分かりいただけます。
そして、それを体験してP0を購入された方がほとんどです。」

決まりました「買いましょう!!」

しかし、この段階では「気に入らなければ、処分すればいいや。」とか、
気になることも残っており「動作音はどんなものなのだろうか?動作音が
改善されるというアップバージョンはどうしよう?」「まあ、いづれに
しても実際に音を聞いてからだナ」ぐらいにしか考えていませんでした。

【ご対面】
送られてきた箱は、「本体」「電源」の2つ。『P0』のDAコンバータ候補
の「D−70」と合わせて「P−70」も借りていました。

『P0』の配達業者から事前に連絡がはいり、玄関を開けたところ先に
「P−70」「D−70」の箱を軽そうに持ったいつもの配達業者のお兄
さんが立って玄関のベルを押そうとしているところでした。

そのあとから、荷台に2つの箱を載せて不思議そうな顔をしているおじさ
んが「先を越されましたナ。」と続いて来ました。

いつものお兄さんの方はなれたもので、「玄関に置いておきますね。」と
言って帰っていきました。

次に、『P0』を持ってきたおじさんの方は「この重い箱の精密機器って
何ですか?」と不思議そうな顔をして質問。

私は簡単に用途と値段のことを説明すると「そうですか?!」とあきれた
顔をして二の句もなく帰って行きました。

おじさんが帰ると、家人が「何何々?」。続いてマンションで飼っている
駄犬が「ワン!ワン!ワン!(何何々?)」と大騒ぎ。

また、箱を開けてみて「ビックリ!」まさに「新品!!」使っていなかっ
たのではと思わせるほどの汚れひとつ、かすり傷ひとつありません。
「これは、音が悪くても飾っておくだけでもいいな!」と思わせるものでした。

【セッティング】
とりあえず、試聴用に置いてみました。『P0』に乗っているブタさんと
セリーヌ・ディオンのマルチSACD(輸入版)はいつもは乗っかっていませ
ん。
にっこり笑って「パチリ」(写真1)

【うるさい】
とりあえず、『P0』と「D−70」をつないで、エンハンサーCDを
セット、Play!・・・。

「う!うるさい!!!」もうこれが第一印象です。想像以上です。
気になっていた作動音がこれほどとは・・・・。CDを取り込むときの
「キーン」という予想していた作動音はともかく、回転の始まるときの
「ウ、ウウ〜ン」という音にはじまり、回転時の「キュル、キュル、キュル」
と絶え間なく続く「音」「音」「音」・・・・。

この瞬間に思いました。「『P0s』にバージョンアップしなければ!」、
「しかし、これだけの音がバージョンアップで消えるのだろうか?」
「そうだ!ダイナ5555に行こう!バージョンアップした『P0s』で
 確かめてみよう!」

【ダイナ5555にて】

ダイナ5555は、初訪問です。『P0s』へのバージョンアップによる
作動音の状態の確認と現在更に行われているDDコンバータ、クロック精
度等の向上を目指し更なるバージョンアップした『VUK−P0』まで
必要なのかを確認するためです。

顔とは違って気さくな川又さん(^^ゞとのあいさつは、そこそこにして
ヒアリングルームに入ります。
「あ!!」
口あんぐり。口がふさがりません。

これほどとは。一台数百万円と想像される夢のような機器がずらりと
余裕さえもって並べられています。

「オリジナルノーチラスの最高の音を聞かせてください。」とお願いして
あったとおり既にきちんとセッティングされています。

出演者は友情出演に書いたとおりですが、接続は下記のとおりです。

Timelord chronos(AC DOMINUS) → dcs 992/2(AC DOMINUS) →
Esoteric P-0s(AC/DC DOMINUS & RK-P0 & MEI Z-BOARD & PAD T.I.P)
→dcs MSC-BNC Digital Cable→dcs purcell 1394(AC DOMINUS)
→dcs MSC-BNC  Digital Cable→dcs Elgar plus 1394(AC DOMINUS)
*この出力を…PAD BALANCE DOMINUS を使用してJEFF ROWLAND
 COHERENCE2(AC/DC DOMINUS & PAD T.I.P)のライン入力し下記につながる。
Nautilus付属Channel Divider(AC DOMINUS & BALANCE DOMINUS 1m×4)
→Audio Physic Strada×4(AC DOMINUS×8 ) →PAD RLS for Nautilus
Quad-Wire 3m→B&W Nautilus→murata ES103B With PAD ALTEUS 3m

私にはこの暗号は解読できませんので説明は省略します。
いづれにしてもすごい布陣です。

早速、最初の目的の作動音について。
川又さんの説明を受けます「これは『VUK−P0』にバージョンアップ
されていますが、『P0s』までのバージョンアップにより、ここまで
静かになります。」

「う〜ん。回転時の音がしない!」していたとしていても空調音以下です。
「どうして最初からここまでしてくれなかったの!ESOTERICさん!」
「ESOTERIC10周年記念に間に合わなかった。」
「そう、そう言われると辛い。」(^^ゞ

第2の目的のさらなるバージョンアップの効果について、DDコンバー
ター(以下、DDC)の追加という面から検討してみました。
バージョンアップによってサンプリング周波数が従来のCDの44.1KHz
以外に88.2KHzや176.4KHzでの出力ができるようになります。
また、試聴するために川又さんの説明を聞きます。

「『VUK−P0』の周波数の切り替えスイッチは背面にあってどうの
こうの、そのときのdcsのWord Syncの同期はどうのこうの
・・・」と説明され、リモコンを渡され私が一度操作すると安心された
のか部屋から出て行かれました。残るは、私と数百万円の機器のみ・・・。

気を取り直して、いつものCDを掛けてゆきます。
まずは、従来のCDの出力44.1KHzの音「いいねー!」ボーカルの
ピンポイントの実在感、演奏している位置までわかるヴァイオリン。
フルートの高音のさえ。

「すばらしい!これはこれでいいかナ。多少バージョンが異なるとして
も『P0s』と同等の条件、作動音は静かだし、音は文句ないし」と思わ
せるものでした。

試聴時間の関係で一気に最高の176.4KHzに上げました。
「更に、すばらしい!!!」

この状態からみると先ほどの44.1KHzの音はCD特有の空間情報
がカットされた音、高域の伸びに限界がみえる少し詰まった音、低域の
解像度不足の音に聞こえました。

あっかんだったのはフルオーケストラの音でした。演奏が始まるや否や
「バラッと、演奏している人並んでいるのが見えます」

演奏したのはヴァントの最後の演奏。2001年ハンブルグでの北ドイツ
放送響とのライブレコーディング。演奏が見えるようです。
例えば・・・
ヴァントが言います。「みどり、そうそこ強く!」「ヨーヨーマ、いいよ
いいよ」「こら、川又怖い顔して演奏するんじゃないよ。そうそう笑顔、
笑顔」(^^ゞ。

少しフィクションが入っていますが、本当にそんな感じです。
顔までは見えませんが、左側で演奏しているというのではなく、ピンポイ
ントで演奏している位置がわかります。更に、録音しているマイクの位置
までわかります。天井のマイクあるいは2階席、とにかく高い位置から見
下ろしている感じです。これは、『P0』でCDを掛ければ、壁に反射し
ている空間の音が再生しているという事でしょうか。
CDですよ、これは!

そこで、勝負。空間の音、音場感といえばSACDでしょう。こうなることも
予想して、SACDプレーヤーも用意してもらっています。世界最初のS社の
SACDプレーヤー、これと『VUK−P0』(176.4KHz)の「SA
CD対CD」の勝負です。

再生音は高度ですが1ビットとマルチチャンネルの音の違いといえばわかりや
すいでしょうか。低音の解像度に差があるように思えます。確かに、細かい
空間情報はSACDの方が出ていますが、『VUK−P0』で再生するCDは
低域の1音1音が力強く表現されるため、演奏している楽器の存在感が違いま
す。

私の好みは、『VUK−P0』で再生するCDの方でした。
これ以上何を望むのでしょうか!友情出演の仲間たちの影響ももちろんあるで
しょうが、『VUK−P0』(176.4KHz)を超えるようにしなければ
ならない次期メディアは大変です。

同じ機器でSACDとCDを掛けて、SACDの方が良いから「これからは
SACDだ」という認識は改める必要がありますね。
『VUK−P0』(176.4KHz)を超えてから言ってほしいですね。
それに、手元には膨大なCDというメディアがあるわけですから、これを生か
さない手はないですね。

【作る】
ダイナ5555の帰りに寄った秋葉原のお店で偶然75Ωの銀線を見つけま
した。最近銀線で狙っていた音が出ていたのがいけなかった。

直感的にこれでWord Syncを繋ぐBNCケーブルを作ればいい音になりそうだな
と思ったが最後、もうそれからが大変。

半田は「銀半田だな」。そうすると、「コテは専用のものでないとうまく溶け
ないと何で読んだことがあるぞ。6,000円か高いな。しょうがないか。」
「BNCプラグはと・・・」
「デジタルケーブルも作れそうだな。RCAプラグもついでにと・・・」
そういえば「コードの抵抗のことが話題になっていたな。BNCプラグにも
50Ωと75Ωがあるとどこかの雑誌に書いてあったな、気つけなけれ
ば・・・」

家にて

早速、まずはRCAのデジタルケーブルを作りましょう。「フラグの方に熱が
逃げて銀半田が溶けにくいな。」でも慣れたもので「ハイ出来上がり」。

次に、BNCケーブルを作ってみよう。「ところで、BNCケーブルなんて
作ったことないな。まあ、RCAプラグと大差ないでしょう」とのもくろみが
はずれ、プラグをばらしてみて「ビックリ!6個ものパーツから成っていま
す。」

「何をどうして、コードと繋ぐんだよ。ネジがひとつもなくて固定はどうするん
だよ。」想像できる範囲で組み立てて半田付けをします。

早速、『P0』とD−70のWord Sync端子に繋いで「『P0』のSyncスイッチ
をロックオン??ロックオン???(インディペンデンスディじゃないぞ)」
同期しません。

プラグを分解して「う〜ん」と唸ること5分。
「あ!」アースが取れていないや。「そうだよな。形から見ればTVのアンテ
ナ線と同じようなものだな」
やり直し、「網を折り返して、もう一度半田付けし直して・・・ほら完成。」
再度、Word Sync端子に繋いで「『P0』のSyncスイッチをロックオン!『カ
チ』
(D−70の同期したときの小さな音です)繋がりました!同期しました!
(^o^)丿」
それにしても、素人にBNCケーブルを作らせるとは。
「『P0』」!今まであなただけですよ。

とりあえず、交換できるものは全て付替えてみるというどうしようもない習性が
私にはあります。
次に餌食になったのは電源ケーブル。「う〜ん。一般的に見れば十分太いし、
これで音決めをしたのがわかるような良い音はしていますが、やはり一度は
交換してみたくなりますね。」

コードはお休み中のQEDのGenesis(外形17mm、銀コーティング
5NOFC導体の同心円状配列、アルミシールド)で作ってみようか(「おい
おい、また作るのかよ。たまにはPADを買うという発想はおきないのかよ。」
という声が秋葉原の方から聞こえてきそうです。)
プラグは?コネクターは?「ア〜」また秋葉原で拾って来なければ・・・
世話が焼けること。

次はデジタルのバランスケーブルか・・・こうして夜はふけてゆきます。

そして気がついたときには、本体のみが交換されないで残っている状態になる
のでしょうか。

1.	音
これからは冒頭の出演者に書かれている「その他の出演者」の他に『D−70』
も絡んできて複雑な話になってきます。

【テストCD】
『P0』のテストをするには役不足なその他の出演者ですが、テストのための
CDは高域から低域まではいったものを使いたいですね。
そこで選んだのが、「せせらぎ(Della NSG-004)」。「??」。
そうでしょう。このCDは音楽ではなく自然の音をそのまま録音したもので、
このCDを広い帯域を再生できるシステムに掛けるとスーパーウーハーもスーパ
ーツイーターもさかんに鳴るほどの超低音から超高音までの情報が入っていま
す。

聞きどころは、小川を流れる水が少し段差のあるところで下の水面に落ちて混ざ
り合う音、近くまたは遠くで鳴く鳥の甲高い音、低域の再生には森の空間情報と
いうように機器の再生する帯域によって森の様子が変化して聞こえてきます。

2.1 P0

【足元】
『P0』をもっている方は少なくとも一度は検討されていらっしゃると思いま
す。
『P0』の本体の構造上敏感な変化があるという足元の受け皿を変えることによ
って起こる音の変化を調べてみました。

それも、身近にある材料で。『P0』に『D−70』を繋いで聞いていきます。
I.ゴム系(IDSコンポジット;J1プロジェクト)
オリジナルの受け皿の足の下に入れてみます。マイルドになるためか、近い音
は聞こえ難くく、全体的に遠ざかったような音になる。

II.プラスチック系(コーリアン;デュポン)
オリジナルに比べてエッジが少し丸くなる。しかし、実際の音に近い音、小さ
な滝から水しぶきが落ちて水と混ざり合い、また水面に泡が出てはじける音が
聞こえてきます。森の奥行きが深くなり、奥の闇が見えるようです。

III.木(東急ハンズで入手した硬い木)
特にどの音がよく聞こえるというわけではないが、どの帯域を強調したわけ
ではない自然な音。

IV.黄銅(東急ハンズで入手した円柱状のもの)
金属ということでオリジナルの音に近い音。細かい音がよく聞こえます。
水の流れる音より水面で泡がはじける音が前に出てきますが、森の奥行き
感は減少します。

結論を言いましょう。細かい音で音数を多く聞きたいと思えば「オリジナル
の受け皿」。これをオンマイクの状態と称するなら、オフマイクすなわちラ
イブ録音のように細かい音は聞こえ難くなりますが、自然に奥行き感を伴って
聞こえるのが「木」。その中間で遠近感の得られる「コーリアン」という
ところでしょうか。
今回、私は「コーリアン」を選びました。
「おいおい今度は、足元が変わるのか。『P0』にとって私は誰?
状態でしょうか。」

【アップコンバート】
P0のDDCにて44.1から176.4KHzにアップコンバートした
時の変化はP0のままでは比較できませんので、前述のダイナ5555訪
問記で確認してください。

【(トランスポート比較1)】
カッコ付きなわけは、比較しようとした『P−70』がついに動かず、
メーカーに確認したところ死んでいる(故障)と判明。

思わずバラしてやろうかと思いました(-_-メ)。「おいおい、借りものだぞ。」
『P0』の実力のほどは比較のしようがなくなりました。
しかし、「対決」のところで『DV−50』がトランスポート対決に挑みま
すので乞うご期待を

2.2 D−70
ここからは、『D−70』が乱入してきます。
『D−70』の主な機能について『P0』を使って音の変化を見ていきま
しょう。まずは、クロックについて

【クロック】
『D−70』にはクロックモードを切り替えるスイッチがついています。
I.PLL:通常のCDプレーヤーが行っている入力信号からクロックを
 生成する方法。

II.RAM:入力されたクロックをいったんRAMに入力し、『D−70』の
 クロックで読み出すことでジッターレスD/A変換を目指したもの。
 しかし、入力と出力にクロック差があるとRAMにデータが溜まり入力
 信号から出力信号が出るまでに時間差が生じる。

III.Word+RAM:入出力のワード信号の周波数を同期させることに
 より、時差なし、ジッターレスD/A変換を目指したもの。

印象
RAM:Word+RAMポジションに比べ流れて水面に落ちて交じり
合う音が聞こえ難くなる。奥行き感が少し減少する。しかし、この差は
微妙です。
PLL:この差は大きい。RAMポジションに比べ更に背景音が少なく
なるためか音量が小さくなったように聞こえる。

とある雑誌にTimelordの方がクロック精度の重要性について話をしてい
ます。「20ビットの一番下のビットは1ppmになるこれを正確に表現す
るためにはその百倍以上の精度が必要になるが、一般的な水晶発信精度
は100ppm程度の精度である。」さらに、「SACDの基になっている1ビット
はもっと時間精度の影響が大きく1ビットの精度を出せる発信機がないた
め最近では方式は同様だが2ビット、3ビットとマルチチャンネルの方に
回帰してきている。」さらに、ESOTERICの開発Gの斉藤さんが「いくら良
い発信機を持ってきても基板への実装仕方しだいでどうにでもなる。」

これらを要約するとクロックは重要であるが、本来の精度を出すのはなか
なか難しいと言うことでしょうか。

【デジタルフィルター】
『D−70』には3つのフィルターモードがあります。
I.FIR 従来のCDのフィルターモード。シャープオフ。
II.RDOT スローオフのフルエンシーモード。オリジナルはラックスマンか?
III.CUSTOM FIRとRDOTの組み合わせ。44.1KHz入力では3種の組み合わせ。
初期設定のFIR4:RDOT4で試聴

I.は中域中心のがっちりした音。高域の伸びは制限がある。
III.は高域が伸び、響きが大きくなるし、空間表現が出てくる。
II.はIII.に近い、空間表現がでてくるが、中域中心であり、実在感重視。

しかしこれは、微妙。クロックほどの差は感じられませんでした。
以上、クロックとデジタルフィルターの組み合わせを色々変えると、
しばらく遊べることがお分かりでしょう。

2.3 DV−50
『DV−50』のCDの音は、1音、1音を力強く描く音、空間表現を出す
高域ではなく力強く、はっきりした高域という印象。

【比較:SACD他】
『DV−50』は、CD以外にSACD、DVDオーディオ(以下、DVD−Aと略)が
再生できますので比較してみました。SACDは1枚にCDとSACDの入っている
ソフトを用いました。

SACD:ジャシンタ「枯葉」から枯葉
CDの方が音が省略されているので、はっきり聞こえる。ソースによっては
よい場合もあるかも。CDとSACDの差は少ない。
SACD:長岡京室内アンサンブルからモーツアルト「ディヴェルティメ
ントヘ長調」

SACDの方が背景音含めて、情報量が多いように思えるが差はわずか。
さっきと同じ結果、どうして・・・?
DVD−A:バッハ/渡辺玲子から「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ
第1番ト長調」
背景音の再現性、高域の伸びでDVD−Aの圧勝。

【DAC比較】
『D−70』に協力してもらって、『DV−50』のDACの性能を見て
みましょう。
『DV−50』からプリアンプに直結したものと、『DV−50』からデジタル
アウトで『D−70』に繋いだものとの比較です。
エルフィン/今井美樹から「エルフィン」
『DV−50+D−70』背景の音が引き締まって聞こえる。声、ピアノの
音には差がない。『DV−50』の方が情報量が若干多い。おいおい。
シシリエンヌ/高木綾子から「シシリエンヌ」
『DV−50+D−70』はフルートの音が軽く、伴奏のピアノが奥へ位置
するのがわかる。一方、『DV−50』はフルートとピアノの位置が平面的
で奥行きが少ない。ということは、『DV−50』の最短距離で繋いでいる
優位性、または接続ケーブルの問題?

【おまけ】
『DV−50』の映像関係のチェックですが、興味ない方が多いと思います
ので簡単に映像とそれに伴う音に関してはダイナ5555の6Fで体験さ
せてもらいました。
ソフトは「スパイダーマン」、三管式プロジェクター、150?インチスク
リーン等
ここまでの条件で再生すると、ソフトのアラが見えてくるほど分解して
きます。そして、足元を這いまわる超低音。すごい!・・・おしまい。

3.対決
ここでは、『D-70』を挟んで『P0』と『DV-50』のCDやSACDを
使った真剣勝負が行われます。そこに、『DV-S747A』がオリジナルは
俺だとばかり乱入してきたり、結果は意外な方向へと向かっていきます。

【CD対決】
死んでしまった『P−70』を載せ、『D−70』はいっしょに帰って
いきました。
その後忙しさにまぎれて、しばらく音楽を聴きませんでした。
『D−70』なき後、これに代わるDACは従来CDプレーヤーとして
使っていた『DCD-S10』です。久しぶりで聞くこのコンビの音も低音
の充実した瑞々しくてなかなかいい音だな、さすがDENONの誇る
「Alphaプロセッサー」と思っているところへ。

「勝負!勝負!」と『DV-50』が乱入してきます(写真2)。

「『P0』に勝負を挑むとは、身の程知らずな若造め。返り討ちにして
くれる。」(時代劇になっとるぞ)

さて、まずは軽くCDで勝負してあげましょう。
「Play・・・」「うん?」「エ、えーそんなばかな。『P0』コンビが
負けているよ。」

重厚さは別として、鮮度は『DV−50』が勝っています。そして、実在
感という点から『DV−50』の勝ちです。

「CDで『P0』が勝ってくれなければ、話が前に進まないではないか。」
「うん〜」と考えること5分。
「そうだ!『D−70』を借りに行こう。友達に最近新しいDACを買った
のがいるからとりあえず『D−70』は空いているだろう。」
そして、めでたく「『D−70』借用。」

改めて、「『P0』+『D−70』」vs『DV−50』のCD勝負。
「『P0』+『D−70』」コンビの勝ち。「よし!」「よし!」。
しかし、少し油断するとこれだから、『DV−50』恐るべし!

せせらぎ
『P0』コンビでは流れ落ちる水の音、水しぶきがはねる音に実在感が
あります。

判定:『P0』の勝ち
(「『せせらぎ』はいいから、ほかのソフトはないの」という声が聞こ
えてきそうですね。)

それでは、
アンコール/五島みどりより「チャイコフスキー メロディー」
『DV−50』は高域が出ている。エッジが立つ。はっきり、くっきり
する。背景音が整理されたように聞こえる。

『P0』コンビは低域がでており、実際に近い音の感じ、ピアノの高域
の伸びは少し劣る。

判定:『P0』の勝ち
バッハ/渡辺玲子から「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番ト長調」
高域は『DV−50』の方が出ている。一方、低域の再生は弱い。
判定:引き分け。

シシリエンヌ/高木綾子から「シシリエンヌ」
『P0』の方がフルートの演奏に近い感じがする。伴奏のピアノの音も
同様。『DV−50』の方はピアノが遠くに感じ、フルートの音が軽く感
じる。判定:『P0』の勝ち

CD対決では、『D−70』の助けを借りて『P0』が勝ちとなったわ
けですが、これに納得しない『DV−50』が続けて言います「私のSA
CDと『P0』さんのCDで勝負。」

究極のトランスポートと言われている『P0』としては受けて立たなけ
ればなりません。
「勝負!」

【SACD対決】
長岡京室内アンサンブルからモーツアルト「ディヴェルティメントヘ長調」
『P0』の方が1音1音の情報量は少ないが、ホールトーンはよく聞こえ、
少し離れた位置で実際に聞いているように感じる。判定:『P0』の勝ち

ジャシンタ「枯葉」から枯葉
細かい音は『DV−50』のSACDの方がよく聞こえるが、実際に近い音
という印象では声、ピアノ、ドラム、トランペットとも『P0』。
判定:『P0』の勝ち

セリーヌ・ディオン/ア・ニューデイ・ハズ・カムより「ア・ニューデイ・
ハズ・カム」
『DV−50』のSACDの方がオンマイク状態で細かい音もよく聞こえ、
さらに背景音含めてよく聞こえる。一方、『P0』はオフマイク状態。
判定:『DV−50』の勝ち。

ジャシンタ/ラッシュ・ライフから「スマイル」
広がりは『P0』の方が良い。また実際の音に声、ピアノが近い。
ただし、口の中の発音状態がわかるような情報量を持っているという点
では『DV−50』のSACDの方が良い。
判定:引き分け

結果は、『P0』の2勝1敗1分けで辛くも、『P0』の勝ち。
しかし、再生するソフトや求める音によっては判定が逆転することも
考えられる勝負でした。危ない危ない(^_^;)。

更に、『DV−50』が勝負に挑みます。
では、DVD−Aで勝負をお願いします。

【DVD対決】
『DV−50』のDVD−Aに対するは『P0』+『D−70』コンビでCD再
生。
バッハ/渡辺玲子から無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番ト長調
「うん?」
『DV−50』で再生するDVD−Aの方が圧倒的に情報量は多い。
それに比べて『P0』+『D−70』コンビの演奏するCDはガラスを1枚
隔てて聞いているように、遠くに聞こえる。DVD−AはCDの延長線上の
音であるが、CDの音はオンマイクとオフマイクほどの情報量の差が歴然と
ある。
判定:保留!
(^^ゞ。この1セットしか比較のソフトがないため、機器の差かソフトの
差か判定不能のため保留します。「おいおい」。

【DV−S747A乱入】
ここで、『DV−50』の兄貴分は俺様だと、かつての人気者の『DV−S747
A
(パイオニア)』が乱入してきます。確かに、トランスポート周りや一部回路
部分は同じですが、トランスポートそのものにも改良が施され、さらに電源や
箱体にいたってはESOTERICの独自設計です。価格差は5倍(約10万
円vs50万円)。

CDでだめなら、SACDと次々と繰り出して勝負に挑みます。
『DV−50』と比較した印象は「高域は良く出ているが軽い。低域は勝負に
なりません。情報量は圧倒的な差があり、分解能が違うためかマイルドに聞
こえます。」
判定:『DV−50』の勝ち。

『DV−S747A』は同価格帯、あるいは倍の価格帯のプレーヤーでも
勝てるでしょうが今回は相手が悪かったと言うところでしょうか。
念のため、『DV−S747A』と『DV−50』とを『D−70』と繋いで
トランスポート周りを比較した音は差が少なかったことからもわかります。

気をとり直して、今度は『P0』から勝負です。『D−70』に間に入って
もらってトランスポートでの勝負です。

【トランスポート対決】
双方のデジタルアウトを『D−70』に繋いで、勝負します。
エルフィン/今井美樹から「エルフィン」
『DV−50』の方がピアノの音が軽い。低域は出ていない。
シシリエンヌ/高木綾子から「シシリエンヌ」
『P0』の実在感が際立つ。また、フルート及び伴奏のピアノが実際の
音に近い。

【総括】
『DV−50』恐るべし!
この状態では、いくら『P0』とはいえセッティング、ソフト、音の好みに
より判定は微妙にならざるを得ない。
これは、このサブシステムの限界のところで勝負しているため明確な差がで
なかったものと思われます。持ち出してでも再生大域の広い本システムで比
較すべきだったかと少し後悔しています。
ダイナ5555で聞かせてもらったすばらしい演奏を知っているものからす
ると、一刻も早く『VUK−P0』までバージョンアップして自宅で音の洪
水に浸りたいものである。

4.黙とう
昨年、12月末に皆さんご存知のオーディオ評論家の朝沼さんが亡くなられた。
朝沼さんと言えば、P0を購入しようとするときには必ず読むという「Stereo
 Sound No.125」のP0の製品評価記事で有名な方です。

最近ではStereo Soundの審査委員を辞められ、映像や新たなマルチチャンネ
ルの再生に音の再生という観点から、またこれらの発展のために先進的な提
言をされていた方でそちらの方をやられている方も指標とされていた方が多
くいたのではなかったかと想像しています。私も、その1人でした。

2度ほどお目にかかってお話をさせていただきましたが、普段は積極的に話
し掛けられるという方ではありませんが、いったん専門的な話になると詳し
い話をわかりやすく解説され、またクールに鋭いことを突かれるという印象
がありました。

そこで、『VUK−P0』が完成した今、まだ聞かれていない天国の朝沼さ
んに伺ってみたい。
『VUK−P0』をどう思われますか?
多分、こう答えられるでしょう。
タバコを一服、はにかむようににっこり微笑んで「よくここまでやったね!」
と。

5.熱き期待
ダイナ5555で聞かせていただいた『VUK−P0』の音は完璧です。
ただし、どうしても「2チャンネルのCDの再生としては」という条件がつい
てしまいます。逆にいえば、2チャンネルのCDであれだけの再生ができるの
であれば、上位規格のSACD、更にマルチチャンネルを期待しないわけには
いかないのです。

というのも、CDより上位規格の『DVDビデオ(当然マルチチャンネルで
す)』
であれだけの再生ができるのですから・・・。
それも、『P70』の発展型ではなく、あくまで『VUK−P0』の進化型とし
て、
「ぜひ!m(__)m!m(__)m!」
天国の朝沼さんが続けておっしゃる・・・・・と思います。
「ESOTERICさん!次は、マルチチャンネルだね!」
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長い間のご高覧ありがとうございました。
お気をつけてお帰りくださいませ。


HAL's Hearing Report