《ESOTERIC 論文コンクール応募作品 Vol.5》


No.0122 - 2002/1/30

仙台市青葉区在住  T・S 様より

「P-0sへの長い道程(みち)」続編として

私はオーディオ歴2年である。

当時、地元のオーディオショップで聞いたB&W Nautilus802をMarkLevinson
No383Lでドライブしていた音が忘れられず、思い切って同じものを購入した
のが始まりなのであるが、その時チョイスしたのが日本製のSACDプレーヤー
であった。

CDプレーヤーについては知識がほとんどなく(というよりもオーディオに
関して全てだったが)、当時話題のSACDが聞けるという点と、予算上の都合
から選んだものだった。

導入してからは「いい音だなぁ」と満足していたものであったが、H.A.Lの
Nautilusを始め、宮城県のH.A.L'sサークルの方々のシステムを視聴させて
いただいたりして自分の耳がレベルアップ(?)していくにつれ、自分のコン
ポーネントでは満足行かなくなっていった。

特に、P0-sの音を聞いてから、明らかに音の濁り、定位の甘さが気になる
ようになった。P0-sの場合、「そこ」にいるのだ。しかも立体的に。実は
「そこ」にスピーカーがあるんじゃないかと言うくらい、ピタッと定位が
はっきりし、しかも立体であった。

その原因を追及していくと、やはりSACDプレーヤーにあるのではないかと
思い始めてきた。自分の所持しているスピーカーやアンプの価格帯と比べ
ても明確であるし、入り口の重要性というものは非常に重要な割合を占め
る訳である。なにより理解したのがP70&D70を実際試聴してみてだった。

P70&D70で今までよく聴いていた曲をかけると、今まで聞こえなかった音
が聞こえてきて、ヴォーカルの口がはっきりした。

ちなみに、私の所持しているアンプと同じメーカーだからこっちはどうか、
とNo390SLを聴いてみたが、P70&D70にはかなわなかった。

この時は地元のオーディオショップで聴いたもので、中間にはセレクター
があり、ケーブルも付属品のようなものであった。

しかし、セレクターや付属ケーブルでもこんなに音に差があるのだ、入り
口の重要性が垣間見えた瞬間だった。

これはもう買うしかないと思った。寝ても覚めてもP70&D70の事ばかり考
えるようになってしまった。雑誌等でP70&D70の記事があると、むさぼる
ように読んだ。仕事中にもP70&D70で頭がいっぱいであった。実は夢にも
2度ほど出てきた(笑)

ある日、もう一度聴きに行こうと思い地元のショップに出向いたら、
「現物があるので今日であればお持ち帰り可能です」という言葉を聞いて
しまった。数分後には書類にサインしている自分がいた、川又さん、
ゴメンナサイ、A.O.Pでエントリーできればと思っていたのですが、待ち
切れませんでした(^^;

同時に、ESOTERICから出ているBNCケーブル、デジタルXLRケーブルを2本
購入した。丁度家に知人を呼ぶ予定でありセッティングを手伝ってもらう。

「所詮はCDトランスポートとDACだろう」とSACDプレーヤー並の重さを想
像し、軽い気持ちで2箱同時に持ち上げようとしたが・・・、アレ?

持ち上がらない。
なんでこれは・・・。ちょうど、川又さんが初めてCOHERENCEを持ち上げ
たときもこんな気持ちだったのではないだろうかと思った。
とにかく重い、いったい何が詰まっているんだろうか。

しょうがないので知人と1箱ずつ運び、セッティングにかかる。
とにかく今までCDプレーヤしか知らない私である。デジタルXLRケーブル?
BNCケーブル?ワードシンク?と言う感じであった。

これはいったいマニュアルなのか、というようなマニュアルをよく読み、
慎重に接続していく。


ESOTERIC P70 <(TEAC EXLR-100-0.7MXLR)(TEAC EBNC-100-0.7M)>D70

 <(NIRVANA S-L Series XLR))> MarkLevinson No383L <(S/A LAB HIGH-

END HOSE3.5Biwire)>Nautilus802 COPPERHEAD、TAOC SCB-CS60D、特注

セラミック製スタンド(Nautilus800シリーズのボールベアリングにハマ

るへこみが付いたセラミック製スタンド)zoethecus z./3R、ACは全て

付属品、ACOUSTIC DISCS


とりあえずセッティングを終了させ、音がちゃんと出るかどうかチェック
する気持ちで手元にあったFRENCH MUSIC FOR HARP AND STRINGSをかけて
みる。VRDSのクランパーがディスクを圧着させた「カチャ」というような
音の後にグッとトルクのかかる音、「ピーッ」というレーザー光線のよう
な音がして音が出る。

その瞬間、「・・・?」なんだこれは・・・、すでに違う。

音像がしっかりしている・・・。電源を入れたばかりである、バーンイン
すらしていないのにすでに違うのである。

よく私のオーディオシステムを聴いている知人も、その違いが分かった
ようだ。

しかしここで評価をしてしまっては本来のP70&D70の評価をしたことには
ならない。そこで、1週間連続でCDを止めることなくバーンインをする
ことにした。

毎日仕事から帰ってきてまずオーディオを聴くのが日課になってきたが、
いやしかし、ここまで毎日成長するとは思わなかった。一眼レフカメラの
ピントを合わせていくように、各楽器の位置が明確になり、今まで「いか
にもオーディオちっくな音」から、より原音に近くなっていく。

1週間が経ち、まもなく我が家から去ってしまうSACDプレーヤーを、P70
&D70と比較をしてみることにした。

また、SACDプレーヤーとしてだけではなく、D70にデジタルで接続させ、
トランスポートとして使用してみることにする。
CDは上にも出てきたFRENCH MUSIC FOR HARP AND STRINGSにした。

まず、SACDプレーヤーをふつうにプレーヤーとして聴く。
あり?一気に霧がかかってしまった。ハープの弦をはじいた瞬間の鋭い
部分と、その弾いた後の余韻感、そして真ん中もカットされてしまって
いる。まるで、プロのコックがジャガイモの皮を包丁で切った物が良と
して、あまり料理をしない私が切ったときのような、あのいびつさである。

また、特に音と音が重なり合う部分では、それぞれの楽器の音がお互い
の音に相殺されてごちゃ混ぜになってしまっている。絵の具のように本
当に混じってしまい、曖昧になって聞こえてくるようであった。

このCDは、演奏者の鼻息まで聞こえてくるということで知り合いでは話
題になっているのだが、その鼻息も、演奏している鼻息ではなく、実は
寝息なんじゃないかという感じだろうか。

「う~ん、やっぱりそうだったんだな」というのが率直な感想。

オーディオは機器やケーブルのランクを上げてしまうと、ランクが上が
ったという訳ではなく、聴いた瞬間、それが標準となってしまう。

つまり、今まで使っていた装置で聞き直すと、「なんじゃこりゃ!?
今までこんなので満足してたの!?」という感じになってしまうのだ。

いろいろな方に聞いてみると、やっぱり誰もが同意見であるようで、
オーディオへの音質向上の欲は上がないのか、と思った。

次にデジタル出力である。
SACDプレーヤーをD70にRCAで接続する。44.1kHzとなる。
おお!!さっきよりも音がダイエットしたようだ、音と音が混ざり合
わずに鮮明に聞こえてきて、今まで霧に隠れてしまっていた各楽器が
見えてきたのである。ハープの弦を弾く鋭さが気持ちいい。これは
これでれで非常にいいのではないだろうか。

私は今までDACの重要性を全く考えたことはなかった。考えてみると
デジタルからアナログに変換するという大仕事をやっているのだ。
まさかここまで音が変わるとは思ってもいなかった。

最後に、P70&D70を、一気にメーカー推奨モードで聴く。

私は、いい音を聞くと思わずニンマリし、すごくいい音を聞くと声を
出して笑ってしまうのであるが、このときには声を出して笑ってしま
った。とにかくすごい、弦1本1本の解像度がまた高い。

そしてその再現性、フルートの音程を変えるフタ(無知でスミマセ
ン)を開閉させるカチャカチャという音間で聞こえてくる再現性、
真ん中にハープ、斜め横にフルート、その逆側にいるバイオリンと、
手に取るように把握できる立体表現、そしてふんがふんがという鼻
息(笑)全てがすばらしい。

見えない楽器と見えない演奏者の登場である。

雑誌の広告で、CDとSACDのサンプリングポイントをグラフにしたもの
があり、ここまで細かく刻まれているのだから、もう本当に解像度の
高い音なんだろうと思った。ましてやLDとDVDの鮮明さの違いに驚い
たばかりの頃である。

しかし、CDとSACDの差は、それほど感じなかった。

というよりも、全く感じないと言っていいかもしれない状態であった。
これならば別に高い金を出してSACDを買う必要はない、と思った。

明らかにSACDはCDよりも鮮明であると思える。しかし、なぜそう感じ
ないのか。(自分の所有する)アンプやスピーカーがSACDに対応し
きれていないというのも一つの理由であるであろうが、やっぱり大
きな原因はメディアから信号を摘出する能力、その信号をアナログ
に変換する能力が現在出回っているSACDプレーヤーには欠けてい
るのではないかと思う。

今回、P70&D70を購入して思ったことは、やっぱり、上記のことが
身にしみて感じた。


HAL's Hearing Report