《HAL's Hearing Report》


No.0021 - 2001/04/09

神奈川県横浜市在住 H・F様より

 去年の10月、DAC&トランスポート購入の相談を川又さんに持ちかけたところ、川又さんの返事は「トランスポートはぜったいP-0sがおすすめ」とのこと。しかも、「いまは予定数量を製造しきってしまって、いつ生産開始されるかはわからない」などど言うじゃないですか。そう言われると欲しくなるのが人の常、まぁ、聴かせてもらおうと川又さんのところへ久しぶりに伺った話はHal's Hearing Report No.11に書かせていただきました。

 川又さんの部屋でこの音を聴いてびっくりした僕は、購入予約をしてしまったのです。しかし、まあ1〜2年は待つのか、それともだめかもという気持ちでしたが、以外と早く6ヶ月待ちで我が家にP-0sがやってくることになりました。箱を開けP-0sを取り出そうとすると、これが重い!「パワーアンプじゃないんだから」というほどの重量です。さっそくゾウセカスのラックにセッティングし音を出してみます。

1.シモネッティ マドリガル 古澤巌(vl)小林道夫(p)
 バイオリンの小品です。古澤巌のバイオリンはきりっとした佇まいで、高音が気持ちよく伸びます。エッジの彫りが深くバイオリンの音像はぎゅっと凝縮されます。音場はステージの奥行が出てきます。いままではデンオンのCDプレーヤーDCD-S1を使用していましたが、像の周りにあった付帯音やバックグランドのノイズ成分がきれいに取り払われて、CDを聞いているという感じがしないくらい自然です。

2.ベートーベン ピアノ協奏曲第3番 ポリーニ(p)ベーム&ウィーンフィル
 残念なことにリファレンス・モード(サーボ量を最小にした音質重視のセッティング)では音飛びが出てノーマル・モード(安定演奏優先のサーボ自動セッティング)にして聞きました。オーケストラがしなやか、コンサートホールでオーケストラを聴いたことのある人ならわかると思いますが、我が家でチェロ、コントラバスのふぁぁっとした空気感のある低音を聴くことができました。

3.バッハ マタイ受難曲 小澤征爾 サイトウキネンオーケストラ
 第1曲目の合唱で児童合唱団のリアルな声に背筋がゾクッとします。それと東京オペラシンガーズの合唱はソプラノ、アルト、テノール、バスのパートがどこにいるのかわかるようで、しかも部屋を包み込みます、これにはまいりました。ソロ歌手も口元がしまり、上方にくっきりと定位します。

4.綾戸智絵 「life」よりYOZORA NO MUKOU
 もうおんなじことをいいますが、バックグランドノイズや付帯音がなくなり、CDを聴いているというより小さなライブハウスにいるようです。

5.浜崎あゆみ 「Duty」よりDuty
 もうこれ以上、クラシックやジャズでは同じことを言ってしまうので、毛色の違ったところからです。打ち込みのドラムの切れがよく、低音の制動が気持ちいい。アコースティックギターが宙に浮かびます。よくこんなたくさんの音を詰め込んだものだと感心。いったいどれほどの人がこのCDにこんなに凝縮された音が入っていると気が付くのでしょうか?アレンジャーやレコーディングエンジニアの手の内がさらけ出されます。


 まとめると、
  ・ 音像は小さくしまり、とっても繊細
  ・ 音場は見通しが良くなりSN比が上がるよう
  ・ ダイナミックレンジが大きくなり、ピアノとフォルテの差をきっちり出す
という感じで、DACはCDプレーヤーDCD-S1をそのまま使ってるというのに、この変化にはビックリです。

 今まで使ってきたDCD-S1のトランスポートで聴くと、なんか懐かしい音、ちょっと大げさに言えば古いアナログ録音を聴いてるような感じです。しかし、こういう音の作り方は、こじんまりとまとまりがよく「なるほどぉー」とかえって感心してしまいます。こういう自己完結してしまう世界はきっと突き詰めると、LINNのCD12あたりに行き着くんでしょうね。片やP-0sだけでは完結しない世界に足を踏み入れた僕は、怖いようなうれしいような、いやぁーヤバイですねー...


使用機器
DAコンバータ  デンオンDCD-S1
プリアンプ     アキュフェーズC290V
パワーアンプ   マークレビンソンNo.436L
その他         ゾウセカスZblock2、Z4/R

HAL's Hearing Report