GUEST & TALK

GUEST & TALK Vol.5

<オーディオマンにきいてみた 第一回 TANNOY>

オーディオという道具が皆さんの手に届くまで、設計や生産はもちろん、輸入や販売など多くの人々が様々な形で関わっています。そんな人々が実際に日々どんな思いでオーディオと接しているのか、今回はダイナミックオーディオのスタッフがTANNOYの輸入代理店であるエソテリック株式会社の佐伯政哉さんと町田裕之さんのおふたりにロングインタビューをさせていただきました。

ゲスト:エソテリック株式会社 事業企画本部長 町田 裕之さん・国内営業部長 佐伯 政哉さん

聞き手:ダイナミックオーディオ 企画室 佐藤 泰地 ・3F柴田 学也・2F上遠野 健

 

D佐藤「今回はよろしくお願いいたします。ところで町田さんはフーアーユー?」

町田さん「あ、エソテリック事業企画本部長の町田と申します(笑) 企画広報と国内海外の営業を全部みるというような仕事をしております」

D佐藤「うわぁ、ゾッとするほどお忙しそうですね…TANNOYといえば、スプリングフェスティバルではうちはどんなイベントを?」

DYNA Spring Festival 2018

D上遠野「2Fで、タワーレコードとナクソスレコードのイベントで、それぞれ<Westminster Royal GR>を使用した試聴会を行います。エイジングがなかなか進まなくて(汗) 新品だから」

Event 1Event 2

町田さん「笑)TANNOYは時間かかりますよね」

D柴田「このなかで自宅でTANNOYを使っている人っていうのはいるんですか?」

町田さん「私は<Stirling SE> なんですけれども、タンノイ社が以前、限定モデルをやりたいということでですね。いくつか突き板のサンプルを送ってきまして、実際にそれらの中から50セット単位で限定販売したんですけれども、そのなかのチェリーの突き板のものをTANNOY社が送って来て”ちょっと評価してくれ”、と。実際に綺麗だったんですけども色が明るすぎるんで日本の市場にはちょっと合わなかなぁ、という理由で却下されちゃったんですよ…で、”せっかくだから置いといていいから、使ってくれ”ということで…」

ダイナ「要するに貰ったんかい!(笑」

町田さん「ははは。一応、借り物です(笑)。会社にずっと置いてあったんですけど、勿体無いんで持って帰ってずっと家で鳴らしているという」

佐伯さん「私は8inchの<Definition DC8>。これはちゃんと買わさせていただきました(笑) 空箱も取ってあります。ダークウォールナット。実は、<Turnberry>を入れようとしてたんだけど家内に反対されちゃいまして…」

D柴田「典型的な悩みですね(笑)ダイナ3人は家で使ったことは?」

D佐藤「TANNOYは自宅で使ったことはないな〜。<3LZ>とか欲しいなぁと思ったことあるんですけどね」

D柴田「ぼくはALTECの<620A (604-8G)>使ってたことがあって、その頃はおなじく同軸ということで、やっぱりTANNOYを意識してましたね。TANNOYはユニットの種類がたくさんあるというものではないですよね?」

 

町田さん「ユニット自体は、同軸でいうと4〜15inchまであるんですけど基本的なメインのラインはひとつで、それを各モデル、キャビネットでシェアしていくという感じですね」

D柴田「そういう意味で、キャビネット”箱”の存在感のおおきいブランドですよね 。ユニットの磁石も一個なんですよね?」

町田さん「ダブルマグネットのタイプもあるんですけど、Kensington から上のモデルはそうですね、磁石一個です。1947年から続いているコンプレッションツイーターつきのアルニコドライバーはシングルマグネットです」

D柴田「なるほど、そのあたりもALTECとは違いますねぇ、同じ同軸でも」

町田さん「彼らはそれを”ポイントソース”といいますけど、自然界と同じ仕組みで、つまりある音が鳴る時その高域成分も低域成分も一点から出るわけですよ。それをスピーカーのトランスデューサーに取り入れているのが、彼らのこだわりなんですよ」

D佐藤「とはいえ、TANNOYに投入されているテクノロジーは、現代においては、相対的に古い技術になるわけですが、それでも昔ながらの同軸ユニットでスピーカーを作り続けるというのは、何かデザイン戦略以上の信念があるように感じるのですが」

町田さん「確かに自分たちのヘリテイジというものを強く意識しているブランドだと思いますね。それをストイックに守り続けて、同軸型というこだわりを捨てない。しかし技術的にも、ある一点の仮想点から全ての音が出るので、非常に位相特性が良いですし、タイムアラインメントを取るためのディレイ回路としてのコンデンサーとか必要ないので、ネットワークをシンプルにできるんですね。つまり能率が高く、そして耐入力のある設計ができるというメリットがあります」

D上遠野「能率が高いというのが素晴らしいですね。99dBでしょ?<Westminster Royal>は。<Canterbury>でも高いと思ってましたけど、<Westminster Royal>はもう明らかに反応の速さ、一言でいうと自然な音なんですけど、ヴァイオリンにしても声にしてもすごくスっと出てくる生々しさ」

 

町田さん「僕も実際に使っていて思うのは、プリアンプのボリューム操作に対する反応がいいんですよね。アンプに高負荷をかけない」

D上遠野「昔のアンプは残留ノイズが多かったので、高能率だとそれが目立ってしまうという欠点があったと思うんですけど、今はアンプがみんなどれもS/N性能が高いですからね。だから高能率のメリットが最大限に発揮できる時代だと思ってます。それと、この箱のサイズが、部屋中の空気を鳴らしてくれる力を持ってますよね」

D佐藤「なるほど〜TANNOYというのは、近代的なスピーカーに比べて決して”ローファイ”なのではなくて、狙っていく自然さ自体に違いがあるような気がしますね」

佐伯さん「79年にステレオサウンド別冊、TANNOYというのは原音(ゲンオン)の再生とかいうものに目的があるのではなくて、コンサートホールの音楽の感動を再現する”イリュージョン オブリアルサウンド”なんだ、とTANNOY社自身がそういう表現をしていましたね」

D佐藤「ふふふふ。まぼろしの方の”幻音(ゲンオン)”というわけですね。さて、TANNOYというスピーカーの構造的な特徴や製品のイメージが確認できたところで、さてそれでどんな音楽を聴く?という話にしていきたいんですけど、町田さんは個人的にどんなものを聴いてらっしゃるんですか?」

町田さん「ぼくは個人的には実はロックとかハードロックとかが好きなんですけど…」

D佐藤「具体的にひとりヒーローを挙げるとしたらいかがですか?」

町田さん「むか〜しから好きなのは………リッチー・ブラックモアですね(笑」

ダイナ「いいですねぇ〜!!(笑」

町田さん「やっぱりTANNOYはリッチー・ブラックモアを聴いてもスゲェいいんですよ。それなりにキャラクターのあるスピーカーですけれども、それをいかに自分なりに料理していくかというところですごくいじり甲斐があって、そこがすごくいいですね」

佐伯さん「私はこの仕事を始めたのが82年で、当時は土日は販売応援でお店に出てたりしてたんですけど、世間ではちょうどマドンナが流行りだした頃で、そこにあった<Stirling> で聴くマドンナが何故か他のスピーカーと随分違って聞こえて、だんだんだんだんこう………パクチィってあるじゃないですか、私あれ苦手だったんですが、何度か食べてくうちに自分から食べたくなってくるんですね。だからパクチィですよTANNOYは(笑」

D佐藤「笑)クセが”ある”スピーカーという認識はありますね」

D柴田「匂いもある」

 

町田さん「ディストーションのかかったギターは結構綺麗に鳴る時もあれば、最悪な時もあるんですが、あ、ぼくは自宅でスーパーツィーターもスーパーウーファーも両方つけてるんですけど…」

D上遠野「町田さん…スーパーマニアじゃないですか(笑」

町田さん「やっぱりオーディオの楽しみっていうのはいかに自分の想いを装置に投影していくかということになると思うんですが、そこで、ある程度個性のある素材同士を組み合わせて、自分らしく鳴らすというのが様式だと思うんですよ。敏感な高能率と狭い部屋でニアフィールドで聴いた時の位相特性の良さというのが、自分にとって捨てがたいポイントで、歪んでこそ美しいような音楽だとアグレッシブに聞こえすぎることがありますが、引きずるような色気のある低域、プログレなんかの翳りのある低域はとても良く再現してくれたりしますね。」

D佐藤「いいなぁ翳りのある低音。ところで、パブリックイメージとしてのTANNOYにどうしてもつきまとうのが、クラシックを聴くための専用のスピーカー、というのがありますけど、どういう経緯でそうなったんでしょうね」

町田さん「まぁクラシックに対する相性の良さというのはあります、というかアコースティック楽器に対する相性がよいですね。53年に発表された <Autograph>のコンセプトが”家庭でコンサートホールの音を再現する”ということで、その頃やはり芸術作品としてはクラシック音楽がポピュラーだったんではないかなと思います」

D佐藤「それが世に出た時代を背負ってるということもあるんでしょうね」

町田さん「あとはステレオサウンドと五味さんの影響が大きいでしょうねぇ。「西方の音(wikipedia より)」ただ、弦楽器を弦楽器っぽく再生できるのはスピーカーの仕組みにも関連してまして、クロスオーバーポイントが1.1khzという中域のどまんなかにあるんですよ。だからホーンの音とコーン紙の音が中域のド真ん中で切れてくるので、それが独特の中域、コンプレッションホーンの鋭い響きが、弦の擦れるサウンドを克明に出してくれるというのがあると思うんですね」

D上遠野「低域に関しては、この箱のサイズというのが、コントバスとかチェロの雰囲気、体で感じる楽器のボディの震えのようなものを非常に塩梅よく表現していると思います」

D佐藤「いわゆる”プロの現場”のモニターとして使っている人もいると聞きます」

D町田「ええ。マイケルジャクソンのスリラーでお馴染みマスタリングエンジニアのバーニー・グランドマンはTANNOYでモニターしているそうです。そのほかにもピンク・フロイドの狂気を録音した当時のEMIレコーディングスタジオ(現アビーロードスタジオ)の1番スタジオで、モニターとして<Lancaster 15inch>が使われていたり。

D佐藤「おお〜翳りのある低音」

D町田さん「これに限らず、1947年に出た同軸一号機がBBCに採用されたり、51年にデッカの録音スタジオに入ったりと、これをモニターにして録音された作品というのはとても多いと思います。70年代にはアメリカのスタジオモニター市場のシェアの7割を持っていたと聞いています」

D柴田「確かにすごいけど、目的や求められる能力に違いがあるから、プロフェッショナルの現場で認められたものが、家庭においても同様に一番である必要はないですけどね」

佐伯さん「まぁほら、日本人は好きだったでしょう”モニター”という概念が、”プロの現場でお墨付き”っていうやつね」

D佐藤「えっ!そんなコマーシャルの種明かしみたいなことをしちゃっていいんですか?(笑」

D柴田「笑)いやいや!わかって楽しめばいいのです。楽しむための道具ですから。でも実際、プロの現場もコンシューマにおいても満遍なく評価されているスピーカーは多くはないですよね。これはやはり歴史ですよね」

D佐藤「今後の変化においてオーディオ業界に惰性で生き残ることはいよいよ難しくなってくると思います。そのなかで自分たちの築いてきた歴史をしっかり見つめた製品がまさにレガシーシリーズですよね」

 

佐伯さん「ああ〜レガシーシリーズに関してはですね、その元になったABCDシリーズが生まれた70年代の話から始めたいんだけど、その当時TANNOYは創始者のガイ・R・ファウンテンの体調悪化、オートグラフを製作していた職人の引退、工場の火事など、立て続けに不運にみまわれて大ピンチだったんですよ。それで、1974年にハーマンに持ち株を買い取ってもらったそうなんです。そんなかでもなんとかTANNOYらしさを失わない為に生まれたのがHPDユニットなんです。このユニットを使って一から出直そうという意味を込めて1976年に、

A<ARDEN>

B<BERKELEY>

C<CHEVIOT>

D<DEVON>

E<EATON>

というHPDシリーズが作られたわけです」

町田さん「そして現代の話ですが、2015年に経営者が変わりましてですね、コストカットして開発投資を増やすという方針を立てまして、それに基づいて2016年の4月にスコットランド工場を閉鎖するというプレスリリースを出しました。ところが、これが世界中のエンドユーザーの皆さまを中心に大変大きな落胆と批判の声があがりまして、これを重く受け止めた経営者は9月にこの方針を白紙撤回したんです。TANNOY=UK生産というアイデンティティに目覚めたんですね。そして、UKスコットランド工場の継続のためのプロジェクトとして、改めて世界中のユーザーや販売店からもっとも復刻してほしいモデルを募ったところ…」

ダイナ「レガシー!!」

町田さん「工場の移転が撤回されたことによって、モノ作りを続けることができるようになった現在の工場長ジム・スチュアート氏はすごく社歴が長いんですけれども、彼が78年に入社した時に一番憧れていたスピーカーがまさに<CHEVIOT>だったんですって」

D佐藤「へ〜!!」

町田さん「彼以外にも、70人からなる工員たちの中には70年代からスピーカー作りに携わっているスタッフもいるそうで、その人々が40年の時を経て、また”自分たちが憧れたものを、お客さんからのリクエストで作れるんだ”ということは、モチベーションにつながったと言っていましたねぇ。けれども、実際にこの復刻プロジェクトがスタートした時にはかなり戸惑いもあったそうなんですよ、果たして現代のスピーカーのなかで受け入れてもらえるのだろうか、という」

D柴田「レガシーシリーズは僕らの世代にもしっかりフィットしています。特に個人的にはバックロードホーンじゃない、っていうのがユニットのパンチ力を直接感じられていいんですよね」

町田さん「彼らがいうのは、自分たちには先進的な技術もないし、あるのは職人としてのノウハウだけだと。

そういうなかで当時のスピーカーも現代のスピーカーも聴きながら製品を作っていくうちに、確信めいたもの掴んだそうです。スピーカーというのはマシンが作っているものじゃないんだと、自分たちの手で作るものだと。職人としての自分たちを再発見するきっかけにもなったと言っていました。そういう良さってお客さんにも瞬間で通じると思うんですよ。音にもそれが現れていますからね」

D佐藤「まさにこの企画で伺いたかったのは”モノに宿るココロ”というようなことだったので、その第一回にめちゃくちゃふさわしい話に期せずしてなってびっくりしてます(笑」

ダイナ「町田さん佐伯さんありがとうございました!」


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