GUEST & TALK

SYSTEM with GUEST Vol.2<大嶋様>

どんなに優れたオーディオシステムも、使う人がいなければ仏つくって魂入れず、画竜点睛を欠く、誰かに選ばれ、大切に育てられてはじめて完成するものです。そんなわけで、ダイナミックオーディオの佐藤(企画)と柴田(3Fマネージャー)が、実際のユーザーのお宅を訪問して、オーディオや音楽の話を聴いてみようというコーナーです。

柴田:「いててててて」

佐藤:「足?腰?」

柴田:「う〜んこないだ重たいアンプを持ったからね」

佐藤:「ははは、まぁ仕方ないね。オーディオ屋だから。一度大嶋さんに診てもらったら?」

というわけで前回からちょっと間が空いてしまいましたが、お客様訪問記、第2回目はご夫婦で鍼灸院を営んでいらっしゃる大嶋様のところに行って来ました。10年来のお付き合いをいただいている大嶋様の音楽への気持ちは常に高く、ご自身のオーディオシステムへの気配りや音質への追求は音楽への気持ちと同じように今も続いています。システム各製品の変更を何度か繰り返し、設置方法やレイアウトまできめ細かく気を配る姿勢は数年前から再燃したレコード再生へも通じ、システムアップのできるLINNを選択頂きまして電源、アーム、フォノイコライザー、カートリッジと順にアップデートを行っています。ご自身が求める音質への追求には終わりがなく、それは今なお進行中です。

柴田:「いやぁ今回はなんだか仰々しくお邪魔してしまってすみません」

大島さん:「ははは。いえいえ、楽しみにしていましたよ」

佐藤:「装置はお変わりなさそうですね」

大島さん:「そうですね。最近はQuadra Spireのラックを若干低重心にした位でしょうかね。振動対策で。これはすごく安定していますよ!どっしりした音も出るし」

柴田:「それは良かったです。一箇所だけあえて短い板を使っているんですよね」

大嶋さん(奥さん):「おしゃれですよね」

佐藤:「うん。これはかっこいいですね。」

 
【大嶋さんの装置】

Player:Playback Design<MPS-3>

AD Player:LINN<LP12 system>

Phono amp:LINN<URIKA>

Pre amp:PASS<XP-20>

Power amp:Mclntosh<MC501>

Speakers:JBL<4338>

Rack:QUADRASPIRE<QAVX>

柴田:「初めてレコードプレイヤーを納品させていただいた時、大嶋さんがあまりにも綺麗にレコードの無音溝に針を落としたのは、今でも忘れられません」

大嶋さん:「ははは。あれはでも柴田さんが色々教えてくださったから。多少ずれることはありますけどね。何事も訓練ですよ」

佐藤:「いざこれからアナログレコードを始めたいと思っている人でも、色々と”これが難しそうだ”とか”あれが不安だ”とかやっぱり考えちゃうと思うんですけど、そういう方々に”飛び込めばできるぞ”っていうのを分かってほしいですよね」

大嶋さん:「そうそう!アナログはね”積極的な仕事”ですよ。自分が音を出してるっていう感じがね。ひとつの仕事の結果こうして音が出るという。これがいいところで。デジタルも便利ですけどね」

柴田:「そういう意味では大嶋さんのパソコンさばきにも僕たちは驚いていて、どうしてあんなにスムーズにできるんだろうと思っていたんですよ」

大嶋さん:「初めはな〜んにもできませんでしたよ。私はもともと会社勤めをしていたんですけど、30過ぎた頃から緑内障でだんだんと見えなくなって、これじゃ難しいな、ということでそれから点字を勉強したり、音声式のパソコンの勉強したり、そのリハビリの施設で家内と出会ったんです」

大嶋さん(奥さん):「素敵でしょう?」

大嶋さん:「ははは、まぁ色々できなくなっても音楽は聴いてましたけどね」

柴田:「音楽の聴き方は変わりましたか?」

大嶋さん:「そうですねぇ。やっぱり見えなくなるとねぇ。音楽の聴き方が変わってくるっていうのがあるんですよ。ますます好きになっちゃって(笑)とうとう、オーディオルームのなかに治療院があるようなことになっちゃった」

一同:(笑い

大嶋さん:「まぁ治療院のなかにオーディオルームがあるっていうんでも、どっちでもいいんですけどね。たまにお客さんのなかにも音楽の好きな方が来たりすると、だんだん面白くなっちゃって、治療の話より音楽の話になっちゃうこともあって、ついつい時間を忘れて治療時間が長くなってしまうこともよくあるんですよね(笑」

大嶋さん(奥さん):「そうそう(笑)見えなくなると楽しみの選択肢というのが、本当に狭くなってしまうんですね。私も絵を描くのなんかが好きでしたけど、そういうことができなくなるでしょう?でも私たちはたまたま音楽に出会えた。もし見えていたとしたら、音楽もいいけど、あれもいいなこれもいいなで全部中途半端になっちゃうこともあったと思うんですよ。だからその選択の幅がものすごく狭くなったのが、私にとってもは、かえって良かったんですよ」

佐藤:「そうですね。自分が真剣に求めているものが何であるかを、ちゃんと感じている必要がありますよね」

柴田:「うん。今は便利な時代で色々なことができるからこそね」

 
柴田:「毎回思うんですけど、大嶋さんのオーディオはいつも整理整頓されていてものすごく綺麗ですよね!」

大嶋さん:「ふふふ。1m20cmの紐を用意したりね。ボール紙を5cmの大きさに切って部屋の壁から測ったりね。あんまりずれちゃうとカッコ悪いじゃないですか。”見えない”と意外に外観とかどうでもいいやって思っちゃう人もいるんだろうけど。やっぱり綺麗な方がいいから」

大嶋さん(奥さん):「本当にこの人はオーディオマニアには適した性格で(笑)あ、でも私驚いたのはね、そこにレコードジャケットを置いておく金具みたいなものがあるでしょ?」

柴田:「ええ。ラックの真ん中に」

佐藤:「クリス・コナーが歌っているジャケットが飾ってあります…あっ…」

大嶋さん(奥さん):「そう!そうなんです。これにはさすがに私も驚いて”この人こんなことまで!”って感激してなんだか泣きそうになっちゃって。見えないのにこれをやるという」

大嶋さん:「はははは、見えなくてもね、イメージが大事だからイメージが。今日はクリス・コナーを飾ろうかなコルトレーンにしようかなぁとかね。誰に見せるということもないんですけどね。そういうことを考えるのが楽しいんです」

 
佐藤:「素晴らしい。ついつい”見える側の感覚”で当たり前に思ってしまっていました」

柴田:「レコードだからこそ、そういう楽しみがありますよね」

大嶋さん:「そうそう。こうやって持って触ってスリスリしてみたり(笑」

柴田:「匂いを嗅いだりとか(笑」

佐藤:「ジャケットの外袋をペコペコやって匂いを嗅いだりとか(笑)しかし、私にとって単純に驚きなのが、大嶋さんはレコードの位置をそれぞれ全て暗記してらっしゃるんですか?」

大嶋さん:「あ、これはね、一番右上がピアノなんですね、その隣の棚はサックス、その下がトランペットとか、それぞれの棚にアルファベット順に並んでいるんです。CDもそうなんですけど、何かリクエストがあったらだいたいすぐパッと出せますよ」

佐藤:「ひぇ〜。ではちょっと思い出の曲なんてのをかけていただけますか?」

大嶋さん:「あ、いいですよ」

そう言うと大嶋さんはキャロル・キングの<タペストリー>を取り出し、迷うことなくB面の一曲目に針を落としました。

 
後記)大嶋さんのオーディオからは楽しんで使ってくれている人の音が聴こえて来ます。そして、ふと”自分はここまで音楽を楽しめているだろうか”と考えされられます。もしかしたら何かに気を散らして、大事なことを忘れてやしないか、と。日常を楽しむためのアイディアを追求しながら暮らしていきたいですね。大嶋さん、ありがとうございました。また、お邪魔させてください。

担当:佐藤 泰地(企画室) 柴田 学也(5555 3F)
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