《HAL's Hearing Report》


No.0147 - 2004/1/1

埼玉県川口市在住 N・S(LUX FAN) 様より

                 「人生の目標となるスピーカー!」


「あ〜」好い音聞かせてもらいました。

Trio+6Basshorn(アバンギャルド)やSX-L9(ビクター)試聴のときも、脇に
あってその威容は十分感じてはいたのですが、ついその評判が高いので矢も立
てもいられず川又さんに試聴を申し込みました。

そのスピーカーの名は“JM-lab Grande Utopia Be”です。

JM-lab(略してJM)は私にとってはず〜っと気になるメーカーでした。

JMは1991年に“Utopia”で日本デビューし、いきなり“Stereo Sound誌”
のCOTYを受賞したフランスのメーカーです。

JMを気にし始めたのは、今から10年ほど前同社の第3作目の“Alcor(アルコ
ア)”を偶然某販売店で聞いたときでした。

このメーカーの1つの特徴はピュアチタンに酸化チタンをコーティングしたトゥ
イーターを採用していることでした。某販売店で聞かせていただいた音はこの
トゥイーターの音が前面に出ることなく、逆に中低域を重視したいわゆるピラ
ミッドバランスの音で、音を分解して聞かせるというよりは演奏会上で聞こえ
るような一体化した音の中に浸透力のある色彩豊かな音色を聞かせるもので
あったとよく覚えています。

「ほしいなー」と思うものの、136万円という価格には当時経済事情が許さず、
眺めていました。それから、5年ほどたった1996年から現在と同様な形状を
した“Utopia”シリーズが販売され始め、手ごろな“Mezzo Utopia”を聞く機会
が偶然ありました。

その音は、聞いた環境が悪かったこともあってか、ユニットからバラバラの音が
聞こえ、特に高域は刺激的な金属性の音がしており、低域はというと前面にある
バスレフのポートから噴出すように出ている音に聞こえました。

これを境に常に気になる存在ではありましたが、JMからは興味がなくなってい
きました。ところが、マラソン試聴会でその片鱗を聞き「お! (#^.^#)」と驚き、
“Stereo Sound誌”の表紙を飾り、さらにGRAND PRIXを受賞するにいたって・・・
特にその批評の中でめったに褒めない評論家の菅野さんがこんなことを発言され
ています。

「僕の好む音とは違うけれど(^^ゞ、このスピーカーにはまいらざるを得ません。
ダイレクトラジエーターユニットを使ったシステムの現代のひとつの究極的な
姿かもしれません。」

どうです。すごいでしょ。

それに、これは同誌の最も栄えある賞である“GOLDEN SOUND AWARD”を受賞して
いるのですから。聞いてみましょう!

それもESOTERICの“X−01”(以下、01)のSACDを使ってどこまで再現
できるかを。

お約束の日、川又さんには突然の御不幸がありコメントはいただけませんでしたが、
その代わり約210Kgという巨体を健究所長の上遠野さんが見事ジャストポイン
トにセットしてくださいました(写真1)。腕を上げましたナ。

http://www.dynamicaudio.co.jp/audio/5555/7f/op-pho/jm.jpg

あやつるアンプは川又さん推奨のブルメスターのパワー911 MK3とプリ808 MK5。
「ウ〜ン」組み合わせの意図が分かりますな。

併せて、どうもすれ違いで縁の無かった“X−01”のSACDの音をCDと比較
して、このシステムで聞き比べようという企てです。

それには、SACDのダブルレイヤーのCD層は反射率が低いということで不利に
なりますので、別途通常のCDが用意できるものに限りました。

シベリウス・ウオルトンヴァイオリン協奏曲/諏訪内晶子から「1番」
まず、SACDのCD層と通常のCDとの比較をしてみました。「あら」という
感じで、“01”で演奏する音に差は認められません。

SACDのCD層の方がボリューム1目盛りほど小さい音のようですが、これは
編集にも因るでしょうから本当のところは分かりません。

そして、いよいよCDを聞いてから、SACDを聞いての比較です。
CDの音は比較して、情報量が少なく、演奏している雰囲気がでない。
遠く離れた席で演奏を聞いている感じで、冷静でいられます。

一方、SACDでは前のほうの席で聞いているようです。それに、スピーカーの
存在感がまったく無く中心にピンポイントで出るべき音がそのままハッキリ、くっき
りと余分な音を伴わず定位します。そして、バイオリンの高域の伸び、何の制限も
ありません!

また、これだけ大きなスピーカーなのに音像がコンパクトです。
これは、ツイーター以外は正面を向いていないという形状によるものでしょうか。

形状といえば、両サイドがラウンドしているので、音像がもっと奥に定位するのかと
思いましたが、像はスピーカーの交点からスピーカーの間にというように前に定位し
てきます。

バイオリンの音というと「松ヤニが飛ぶように」と表現されるようにしっとりした、
重厚な音をイメージしますが、JMで聞くバイオリンは軽く、低域も高域も粘らず
重くなることも無く、それでいて耳に心地いいバイオリンの音を聞かせてくれます。
ちょっと、今までに聞いたことが無い、想像できない音です。

Rimsky-Korsakov Sheherazade / Kirov Orchestraから「1番」
演奏開始前の小さな音が聞こえ、聞こうと思えば演奏中の細かい楽器を演奏している
音が聞こえます。例えば、バイオリンが一斉に同じ音を出したとしてもそれぞれの
バイオリン毎の音の差がわかるようです。これはSACDでの感想ですが、一方
CDではこのよう細かい音は省略されて聞こえます。

ア・ニュー・デイ・ハズ・カム/セリーヌ・ディオンから「ア・ニュー・デイ・
ハズ・カム」

CDに比べて、高域の情報量が違う、実在感が違う。弦をはじく音も聞こえる。
ボーカルとバックの演奏が別々に録音されてのがはじめてわかりました。

そのほかにも、様々のSACD、CDを聞きました。そのときの言葉をランダムに
拾ってみると「心が安らぐ」「演奏の距離が近くに感じる」「ピアノがゆったりと
聞こえる」「フルートの振るえが分かる」「抵抗感無く聞きほれる」「ユニットの
一体感がある」「位相が揃っている」「音場感がすばらしい」「スケール感がある
一方、繊細感がある」「立ち上がり立下りが早い」そして、「解像度がきわめて優
れたレンズでピントがビシッと合っている写真を見ているようだ」

そう、このスピーカーも“人生の目標となるスピーカー”の1つです。

帰りがけに、お礼とともに健究所長に
「スタンダードになる音ですから、このシステムの音を一度聞いてみることを勧め
ますよ。」と偉そうなことを言ってしまいました。

川又さんが出てこられてから、メールをしました「いつになるか分かりませんが、
ぜひ手に入れたいスピーカーです。そのときはよろしく」と。

その返信は「気長にお待ちしています」・・・。す、するどい!

このようにして、“X−01”に終わった今年も暮れていくのでした。

皆様よいお年を(*^^)v

・・・(おまけ)隣にあった“TAD―M1”も気になるゾ!(写真2)

http://www.dynamicaudio.co.jp/audio/5555/7f/op-pho/tad.jpg

Lux Fan


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