《HAL's Hearing Report》


No.0109 - 2002/9/20

川崎市在住 M・Y様より

KRELL FPB600c⇒FPB700cxアップグレード・レポート

私の部屋に600cが来て1年が過ぎようとしたころ”バージョンアップ”の
案内が川又店長から発信された。

実際このアンプを購入した時点で市況では既にちょいと古い顔に成りつつ
あったのも事実であり、私も音さえ聴かなければまず買わなかったと思う。

丁度その少し前にN801が我が家にやってきたばかりで、既存の国産パワー
と格闘して終に敗北感を味わっていた時、店長に相談し「○○さんには
これしかないのでは」とアドヴァイスされ実機をモニターさせて頂いた。
(HALのモニターレポートNo,0064に記載)
http://www.dynamicaudio.co.jp/audio/5555/7f/fan/hf_moni0064.html


それまで、JBLをこよなく愛してきた自分の変化にも驚いていたが、導入
後暫くして少しずつ不満が出て来た。

よく聴き込んでいくとN801と600cとの組合せは一言で云って「中低域が
薄い感じ」なのである。最初は陶酔した「美音」だったが、どうも音が
ストレートにこっちへ飛んでこない。

良く云えば奥ゆかしい音とでも云おうか。比較の対象はそれ以前に組合せ
ていた国産機器とのものだが、もちろん私の現有する機器や部屋の特性な
ど原因は他にいくつも考えられる。

しかしどうやってもその印象は拭いきれなかった。

そりゃJBL4344系とN801とじゃ違って当然なのだけれども、馴染む(慣れる!?)
まで相当時間がかかった。というより自分を変えた。

私は基本的にN801のウーファーがとても好きだ。世間では音が重いとか、
動かないとか云われているが、私はあのウーファーにパワーが入りピストン
モーションされる時のなんともいえない底知れぬ音にノックアウトされっぱ
なしだ。その低音に数百万投資したといっても過言ではない。

反面JBLに比べボトム付近のエネルギーが増大したせいで少し上の中低域の
聴こえ方が何を聴いても以前のJBLとは全く異質で、女性ボーカルなどは
別人と感じられ、どちらが本物かわからなくなってしまったのである。

丁度ラウドネスを効かせたような音で、下手をするといわゆる「ドンシャリ」
の音に成ってしまう。そう思ったら格闘するしかない。

様々なチューニング材とケーブル類をいじりながら1年があっという間に
過ぎた。その効果もあってか、最近はさほど気に成らなくなってはいた。
しかしもっと迫って欲しい、上品過ぎる。友人も心配した。

その自分に似合わない上品な音の佇まいに奇しくも「これは自分がオトナ
に成ったのだ」と思い込むしかなかった。今更逆戻りできない。

それは総合的にはJBL以上に自分の欲求を満たしてくれているからである。

そしてタイムリーに冒頭のお知らせがきたのである。
私は躊躇せず、すぐに店長に打診し予約をする。

そして暫くして、アクシスのスタッフが手際良く回収に来て下さり、
約一週間後手術を受け退院してきたその600cの顔は、今流行のプチ整形
された600cもとい700cxと成って私の前に現れたのである。

センターのシルバーが以前より輝きを増し強くなって帰ってきた感じがした。
私はクレル一連のパワーアンプの顔は昔ウルトラマンのゼットンとか、
セブンのキングジョーを彷彿し余り好きな顔ではないのだが、なんとなく
小奇麗に成ったその顔を見て「おーよしよし」などという親心みたいな
気持ちに成ったのは、やはり「期待感」に満ちていたからであろう。

さて音出しである・・・

私の現有機器は以下の通りである。
CDP SONY   SCD-1改(某ショップオリジナル)
PRE LAXMAN C-9II
SP  B&W    N801+スーパーツィ−ター(色々)
ケーブル類  ハーモニクスGPシリーズ他自作品すべてバランス接続
電源はワッタゲイトとFIM及びPADの壁コン組合せいろいろ、専用電源設備

試聴ソフト
a 溝口肇「Angel」 ビクターVICL-60722
b ハービーハンコック「DIS IS DA DRUM」 ポリグラムPHCR-1280
c ダイアンリーブス「The Grand Encounter」ブルーノート「CDP7243 8
38268 2 7」
d res.ins+outs ビクターVICL-69064

まず電源を入れ30分位そのまま、その後バーンインCDを24時間垂れ流し
(結構シンドイ)
あれ?ブルーのLEDがキモチ明るくなった気がする。気のせいかな。。

aの1の出だしから今までとはまずボリューム感が違う、慌ててC-9IIの
目盛を3ステップほど下げる。「うわ、なんだこの中域の張出し感は!」

そう今まで薄いと感じていた帯域のチョイ上の部分がまるで違う。

先程3ステップ下げたままだと他の帯域が小さく感じられるほどだ。
あの黄色いユニットは今までそれ程存在感を誇示していなかったのもの
だが今は違う。耳にかかる音圧が別物に変身したのである。

さてそれは良い方向なのかそれともその逆なのか?それはもう少し待つ
ことにする。
一通り流して聴いた感想は「なかなか良い」まず、音に実在感(散々
使われている表現だが)が生まれ芯が出てきた、奥行きも出て来た。

上下はそれほど変わらないが、ステージ奥(実際はスタジオだが)が深い。
溝口のチェロが生々しい。ピアノや他の楽器との距離感が見えるようだ。
奥は彼らよりさらに奥に深くそこに余韻が生じとても美しい。
左右のセパレーションも良くなった。しかし少々耳に付く感もある。
次へ進む。

aの音の張出し感が凄かったのでボーカル物のcをチョイス。
その中で私の好きな2と5を聴く。「これは最高です!」冒頭で薄いと
感じていた部分が見事に解消されている。ひょっとしてクレルのエンジ
ニアたちもそれがわかっていたのか!?というほど激変している。

何度もくどいが、N801に無くて4344に在るもの、そのジレンマみたいな
思いが消し飛んだ瞬間でもあった。確かに古いJBLのスタジオモニ
ターとは似て非なる音ではあると普通は考えるだろうが私の中では常に
葛藤があったのである。

荒さはないが、ボーカルやホーンの張出しというか噴出し感は今までの
600cが100%だとすると700cxは140%くらいに上がっている。

それは決してイコライザーの様な物で補正した音では無くごく自然な
ものだ。それと定位感が良くなった気がする。私は通常の人より大きな
音で聴いているのだが、今までボリュームを上げていくとある位置で
飽和状態というか、定位がバラバラになる。部屋が12畳程度なので絶対
的なエアボリュームが足らないのは知っているが、ハイパワードライブ派
にはこれもイライラが募るのである。

それがどういう訳か解消されたような気がする。さて次!

低音チェック用にbをまず聴く。このディスクは全曲通して低域が凄い。
でも決してブーミーな音源ではない。

1曲目の「CALL IT 95」の圧縮されたようなシンセベースはやわな
システムではすぐに破綻する。
続いてのタイトル曲「DIS IS DA DRUM」も通して聴いた感想は、
「ちょっと軽くなったかな?」である。
今までは凄みが最優先した感があった。その低域に圧倒され他の音が
聴こえなかった。しかし700cxは他の音も同時に克明に再現にして
しまう余裕があるのである。

そう、まるでマルチアンプで鳴らしているような感じ「あれこんな
音も入っていたんだ?と7年前のディスクを結局通しで聴き直して
しまった」。改めてN801のポテンシャルも確認出来た。

良く聴くとボトムエンドもしっかり音楽を支えている。
音が速くなった!?

続いて5555でもお馴染みのdである。
このディスクの聴き所は、全体を通し様々な音の洪水と、ほとばしる
ようなエコー感、そして深い重低音が私の試聴ポイントだ。
まず1曲目の男性のボイスはN801にとって若干苦手な分野だ(勝手だが
私はそう思っている)結構太い男性の声である。

以前はなんとなく鼻をつまんだ様な印象があり、この声を聴くたびに
セッティングをし直したりしてしまいには「録音のせいだ」ということ
で片付けてしまっていた。

ところが今鳴っている音(声)は鼻が通ってすっきりしている。
そして背景にある細かい音もくっきりと再現されネガティブな印象が
ほぼ無くなった。それにしても同じアンプとは思えない変わり様だ。

2曲目と3曲目は女性のボーカルとボイスに様々な音の洪水がからみその
ワイドレンジな表現が聴きものだが、私の場合2曲目に時たま入る「ブル
ブル」という重低音が快感なので自ずとボリューム位置が上がる。

凄い!やはりパワーは確実に上がっているし余裕があり過ぎる。
N801の重いウーファーを完全に支配下におきながら、その上の帯域に
おいてストレートな音はよりストレートに、さりげない音はよりさり
げなくという具合に的確に鳴らし分けている。

4曲目の様々なパーカッション類も克明で大変みずみずしい。
ボリュームを絞ってみてもて弱音が全く犠牲になっていない、
しかもSNも良くなっているから今まである程度パワーをぶち込まないと
満足出来なかったディスクをひっそりと鳴らしてもじゅうぶんに満足で
きる懐の深さが備わったのは感激した「大変満足です」。

ただ先程も記したが中域のエネルギーが強いのでN801の振り方を
変える必要がありそうだ。

まとめ
1.音楽に重要な帯域である中音域に劇的なパワーレスポンスが得られ、
  向上した。
2.音に奥行きが備わりパワーの大小にかかわらず定位が安定、向上した。

3.微小入力でもSNが良く成ったので以前と比べ確実に品位の高い音が
  得られるようになった。

4.重いウーファーを備えるN801にぴったりのアンプ
  こんなところでしょうか。

最後にこのバージョンアップサービスは確実にグレードが上がることを
お約束します。但し現在の音に100%満足されている方はそのままでも
良いかも知れません。かなり変化しますので。

私は上記冒頭のレポートにもあったように、もう少しストレートな音が
欲しかったので結果大満足という事ですが厳密にいえばセッティングを
やり直す必要性も出てきました。

つまり追い込めばまだまだ良くなりそうな可能性を感じたからです。
そういうリクエストがある方にはもってこいだと思います。
それとメーカーの姿勢には脱帽します。ユーザーを大事にする素晴らし
い配慮だと思います。店長、アクシスの皆さんお世話に成りました!



HAL's Hearing Report