《HAL's Hearing Report》


No.0065 - 2001/11/25

長野市南県町在住 S・T  様 より


先日は、お忙しい中を長時間にわたりご配意いただき、誠にありがとう ございました。事前にお願いもせずに突然アブァロンのアイドロン/ダイヤ モンドの試聴までもお願いしたにもかかわらず、労を厭わずご尽力いただ きありがとうございました。

「B&Wのsignature800」は、本当にすばらしいスピーカーでした。

自分自身が放つ修飾の全てが贅言でしかないように思われ、実体のない 文字の羅列が虚飾にしかなり得ないことを恥ずかしく思いながら、御礼 の微かな形になればと思い、申し上げることに致しました。

羞恥の愚を犯すことを厭わない言動に僭越ながらお付き合いいただく ことができれば幸いです。

貴兄の随筆の中に記されている「グレー・タイガー・アイのハイグロス 仕上げがこれほどまでも透明感と光沢があり、しかも不必要な光線が 当たらなければ本当に落ち着いた佇まい」は、「上品でしっくりと 周辺の明るさになじむ」を、そのままこの「B&W Signature800」の 作品の存在感として吸収することが自然の感情になっていたことが 不思議な体験でした。

この時、既に作品が語りかけてくる感性の様態に敬意を覚えていた のかもしれません。

持参したCDは、四作品でした。モーツァルト「レクイエム」と、 バッハ「マタイ受難曲」は、ともにヘレベッヘ指揮、バッハ「音楽 の捧げもの」は有田正広さん演奏の作品です。

マイルス・ディビスの「アランフェス協奏曲」は、1961年5月 19日、カーネーギーホールでのライブ演奏の収録です。

これらの作品を「B&W signature800」は、試聴室の空間に抑制され た興奮をもたらしてくれたと思っています。

一つ一つの作品について、印象を詳述する力量を持ち合わせていない ため、的確な表現を探し得ないままの試聴記のようになってしまう ことを深くお詫びするしかありません。

その上で敢えて、菲才な私の表現を御諒恕いただくことが可能で あれば、静謐な澄明感がたいへん印象的でした。

今はただ、このように上品にして音楽の馥郁たる時空をご恵与く ださった貴兄に、敬愛の念とともに深く感謝申し上げる次第です。

本当にすばらしい世界との出会いであったと思っています。 あらためて厚く御礼申し上げます。

あれほど我が儘をお願いしたにも拘わらず、ここまで御配慮いた だき恐縮するばかりです。人間として生きている間に、決して 喪いたくない出会いがあることを官能が示唆してくれているよう に思われます。

日常的な言動にあっては饒舌と思えることが、貴兄が恵与して 下さる空間の中では大仰な虚飾に終始することなく、音楽ととも に実体を伴った存在となってきます。

これからも宜しくお願いします。
                         不一


HAL's Hearing Report