《HAL's Hearing Report》


No.0046 - 2001/11/5

千葉県市川市在住  T.I. 様より


ほぼ2日に一度のペースで送られてくるCircle Review。
その中の2回に1回、いや最近はほぼ毎回“SHEER”の文字を目に することができるのではないでしょうか。

しかも、毎回と言って良いくらい“SHEER”の効果のほどが、熱い 言葉で書かれている。「うーん、商売上手だ」。
“会員の感想を載せる…”
買う側にジャッジをさせて意見を述べさせるのですから、買って いない人へのアピール度も抜群でしょう。

改めて川又さんのメール配信活用アイデアに関心させられてしま いますよね。
もちろん私も、会員の方々の言葉に乗せられてしまったひとりです。
始まりはこう。
なんでこうまで川又さんは“SHEER”をハルズサークル会員に 奨めるのだろうか?

“効果がある”ことを、身を持って体感しているからなのは、 言われなくたって判っている。でも、CDをクリーニングする だけで、感動するほど音が変わるモノだろうか? 
半信半疑になるのが当たり前だと思う。

確かに、汚れているCDよりはきれいなCDの方が音はいい。 物理的にもきれいなCDの方が、読みとりエラーは少ないで あろうことが想像できるので、音が変わるのも納得できます。

しかしながら、会員のみなさんの感想を読んでいると「この人、 ホントに音楽もオーディオも好きなんだなぁ」と思わされて しまうくらい熱心な人が「いい」とか「感動した」とか言うん だから「ちょっとホントにそこまで変わるの?」でありますよ。

いやーしまった。こんなことを考えだしたら最後。
HALで買える(いや、買いやすい、という表現の方が正しい だろうか)商品の中では、一番安い買い物になりそうなんだから 「まぁ、買ってみようか」という結論が出てくるのは、G4の 800MHzクラスの処理速度とたいして変わらないのではない でしょうか。

 あぁ、また買ってしまった…。

“買い物は買うまでが楽しい”とはよく言ったものです。
迷って買った物は、効果がなかったときのことを考えがちになって、 買った直後は軽い後悔を覚えてしまいます。“SHEER”が3800円に コットンワイパーが1000円。
ダイナ5555へ直接買いに行ったので、消費税を入れても 5000円でいくらかお釣りはきました。

でも“隣の石○ソフト館へ行けば、JAZZの安いCDだったら 2枚買えるな”と、金銭的なことが頭の中をよぎります。

感動できるCDを2枚買うか? 

“SHEER”を買うか? 

いかんいかん。また変なことを考え出してしまった…。

新しいCDを買うより、“SHEER”を使うことでなにか発見が できればいいのではないか。 そうだプラス指向で行こう。もう古いけど、私は動物占いで は気分屋のペガサスじゃないか…。

というわけで、帰ってからはクルマの中で聴いていたCDを ホームに持ち込み、普通に聴いた後“SHEER”でクリーニング してからもう一度聴きます。

「うん、確かに違う」でも「!」が付くほどまでは効果を感じ られない。ダメだ。ウチのシステムには、皆さんが言うほど 効果はないのだろうか?

“SHEER”でクリーニングした後は、体感できるレベルではある ものの、ベースやバスドラムの演奏者に力が入ったように聞こえ てくる。弦楽器は聞こえ方が変わったような感じがするし、シン バルなどの高域も鮮やかに聞こえるような気がする。

ただ会員のみなさんがいうように「!」が付くほど感動はしない んですよね。

あぁ、いかん。これでは約5000円の元は取れていない。
確かに変化は感じるけど「感動」まではいかない。
どうしたものだろうか。
やはり、感想を書くような人たちとは、オーディオ機器のグレード も違えば、根本的な耳の構造が違うのだろうか? 
まぁ、いいや。
しばらくクリーニングしてないCDをリピートさせて元の音を覚えよう。

CDは「ミッシェル・サルダビートリオ」の「ナイト・キャップ」 (SSCD-8004)70年の録音で、気持ちの良いシンバルが聴ける1枚。 40分くらいでリピートするので3時間ほどかけっぱなしにします。

5回か6回はリピートしたころでしょうか。“SHEER”で記録面、 レーベル面、側面と、先程よりやや力を入れ気味にして磨く。 そして再生…。

「うぉー! なんじゃこりゃ〜!」

再生ボタンを押した瞬間から、空間が静かで広いことに気が付く。 そしてベースの音。粒立ちというか、アタックの力強さと繊細さが ケタ違いだ。弦楽器の微妙に弦が震える音がこれでもか!という くらいあふれ出てくる感じ。

「ベンベン、ポーン」だったベースが「ギュベン、ゴリン」と アタック音が引き締まって出てくる。クリーニングする前ですら 気持ちよかったシンバルは、銀の砂の嵐を体で受けているかの ごとく、輝かしくてザラザラした感触。

「コレですよ、コレ。あぁ、このベースとシンバルを聴いている だけで幸せ。これだけで5000円の元はとれたなぁ」と思っていたら 「あれ、ミッシェル・サルダビーのピアノってこんなに澄んで たっけ?」とピアノの音までもが違う。

弾き方もクリーニング前より力強いし、ベースやシンバルの 押し出しに負けない深い響きがでてきたようですね。 一言ことでいうなら“すべての音がシャープ”であるということ。 月並みな言葉ではあるけど、磨き込まれた音とか、霧が晴れた ような音。川又さんの言葉を借りれば“すべての音が引き締まる ことで、エコー感もより鮮明になる”ということでしょうかね。

聴けば聴くほどクリーニング前と後では次元が違う音になっている ことがよくわかるんですよ!!!

でもですよ…!?
ここで、ハタと考えてしまうんです。
なぜCDをクリーニングするだけで音が良くなるのでしょうか?

音の細道の第44話を読んで理解することが出来れば、CDトラン スポートはものすごい仕事をしているのだ、ということがよく判ります。 簡単に言えば毎分20〜30万個ものピット(凄く小さい凹みですね) を読み込むのがトランスポートの役割。

1時間の録音がされているCDは、実に10億を越えるピットを読む ことになるといいます。無論、CDの汚れや変心具合や反り具合に よっては、読みとりエラーを起こしてしまったピットもあるという 話を聞いたことがあります。

では、読めなかったピットの音はどうなるのでしょうか? 

これはある本で読んだ知識なのですが、DACによって処理は微妙に 違うものの、根本的には前後のピットを比較して補完をすることで 音を生成しているらしいんですね。言ってみれば「たぶんこんな音が 入っているんだろうなぁ」とDACが判断して、本当の音ではない音 を出している、ということです。

では、この部分のピットが読めたらどうなるのでしょうか? 

答えはかんたん。
DACが考え出した曖昧な音ではなく、録音した時と同じ様な生々 しい音が出てくるのです。そのために、ピットの読みとり精度を 極限まで高めたP−0sのようなトランスポートが生まれてくるの でしょう。

また、ピットの読みとり精度を上げる機構で消費される急激な 電流の変動などにも、余裕を持って対応できるドミナスなどの 電源ケーブルが、それらの急な動きに対応して、さらにピット の読みとり精度をあげているのだとも思います。

話が大分それてしまいましたが、“SHEER”はCDについた 汚れを少なくすることで、P−0sや、トランスポートに使う ドミナスACと同じように“ピットの読みとり精度をあげている” のだろうという推測ができるのです。

あぁ、いかん。P−0sやドミナスまで欲しくなってしまった…。

気を取り直して、ここでまたまた疑問がひとつ。

新品のCDでも、“SHEER”でクリーニングすれば音は良く なるのでしょうか? 

もし、“SHEER”が汚れを落として音質を良くする効果があるの だとしたら、新品のCDや、“SHEER”を使わずにきれいにした CDと同じではないでしょうか?

答えは「やっぱり“SHEER”はスゴイね!」でした。

新品のCDでも“SHEER”でクリーニングすれば、先程と同じ様な 効果があるんですね。こうなると推測の域を出ないのですが、CD の表面をレーザーが透過しやすいようにするのか、乱反射を防ぐ ことで、さらに読みとり精度をあげているのだろう、としか考え られません。

10億ものピットを銀河系の星に例え、それらをエンハンスする のもの、という意味で“銀河系エンハンサー”と名付ける理由も 判る気がします。

どなたかがおっしゃっていた“ただのクリーニング液”ではすま されない効果があるということに対して「ウンウン、そうですよ ね」と相づちを打ちたくなる気分でもあります。

まぁ、ここら辺の“SHEER”に関する技術解説は、いつしか川又さん がPADのジムオッド氏から聞き出して、店頭もしくは随筆の一部 で解説してくださることを期待しましょう。

ここまで来ると、最初にかけたCDが、効果のほどをあまり体感 できなかった理由もなんとなくわかってきます。早く効果を知り たいがために、クリーニング自体を雑にしてしまったのが原因で しょう。案の定、もう一度CDを磨き直すと、それまででも濁った とも思えなかった音が、さらに1枚ベールをそぎ落とされたかの ように晴れ渡っていきます。

もちろんこの後、手持ちのCDを次から次へとクリーニングして は聞き直したのはいうまでもないでしょう。手持ちのCDがすべ て新しいCDを買った時かのごとく、新たな発見と感動を教えて くれるのは、こたえられませんからね。

“新しいCDを2枚買うより、“SHEER”を買う!”

手持ちの1000枚近いCDが、新しいCDのように思えてしま う不思議な感覚を覚えてしまうと、この言葉にも「!」が付いて しまいます。

新品2枚を買うか? 
同じ金額で新品に思える1000枚を買うか? 

これもまたP4の1.5Gクラスの処理速度で、誰もが新品に 思える1000枚を選ぶのではないでしょうか?  いやー、ホント、効果とコストパフォーマンスのことを考えると、 英会話のN○VAのCMじゃないけど、買わない理由が見つかり ませんねぇ。


HAL's Hearing Report