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No.099 「商品化決定!PADノーチラス用スピーカーケーブル」
既報のとおりノーチラスの潜在能力を極限まで引き出すPAD特注の専用スピーカーケーブルを特注商品として発売することが決定した。この専用ケーブルのインストールに関してはブリーフニュースで写真を交え解説しているが、この加工処理に関しては正規輸入元のサービスに依頼するので別途の見積りとなる。以下は代表的なモデルの価格を速報として公開する。

V-QUADWIRE Revision B Signature for Nautilus
MeterCOLOSSUS PROTEUS DOMINUS RLS
1.5\605,000.  \1,100,000. \3,500,000.  \5,750,000.
2.0\677,000.  \1,280,000. \3,980,000.  \6,575,000.
2.5\749,000.  \1,460,000. \4,460,000.  \7,400,000.
3.0\821,000.  \1,640,000. \4,940,000.  \8,225,000.
0.5m追加\72,000.  \180,000. \480,000.  \825,000.

次に、ブリーフニュースのNo.077で述べているように同社のフラッグシップモデルであるRLSの光源ボックスに関して、それに使用するACケーブルによって音質が変化するという新事実をジム・オッド氏が理解されたことにともない、電源ケーブルのセットにに新しい組み合わせが発生した。以下は新価格体系のRLS光源ボックスのニュースである。

RLS optical source variation
MODELRLS/3  RLS/5 RLS/9
With AC PROTEUS\650,000. \1,380,000. \2,180,000.
With AC DOMINUS\850,000. \1,580,000. \2,380,000.
With AC RLS\1,150,000. \1,850,000. \2,680,000.
(Including Photo Coupler : ただし光源ボックスの本体電源用として)

そして、PAD未公開の新製品サンプルが私のもとに到着した。それは、ACリードワイヤーのY字型アダプターである。ご存じのようにACを分割供給するエクステンションボックス(現在は販売終了)は二本のACケーブルで8系統のレセプタクルを使用するもので、1本のACケーブルが4個のレセプタクルを担当する。よほど大電力を使用するならば当初の設計通り2本のACケーブルを使うことをお勧めするが、フロントエンドや比較的小規模な消費電力のパワーアンプであれば1本のACケーブルを二股に分けて8系統のレセプタクルを使用したいと私が希望したのが実現されたもの。まだ価格は決定していないが、合理的にエクステンションボックスを使いこなすにはちょうど都合のよいものである。ただし、私のフロアーはすべてドミナスなので、このY字型アダプターもドミナスである。ACドミナスの両端にあるリードワイヤーと同じものにIECCコネクターのオスが一つ、そこから同じリードワイヤーが2本延びてIECCコネクターのメスが先端についており、それをエクステンションボックスの2個のインレットにつなぐというシンプルなものである。現在私のフロアーのノーチラスシステムでテスト中であるが、これは音質が良くなるということを期待するものではなく、劣化がないことを確認するためのもの。テスト結果と価格が決まり次第に公開の予定。

AC DOMINUS “Y" ADAPTOR \160,000.に価格決定。(注文生産)

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No.098 「気絶するほど悩ましい!スーパーノーチラスで聴く“Fourplay”」
2月10日午後、日本マランツの担当者にエスコートされてB&Wのアジア地区担当のセールス・マーケティング・マネージャーのジェイムズ・タン氏とインターナショナル・マーケティング・マネージャーのライオネル・ナンニー氏らが訪れた。何と言っても当ビルの外壁にはノーチラス宣言の垂れ幕が大きく掲げられており、B&W社の誰もが見てもうれしくなるはずで当然輸入元としても現地メーカーの首脳人が来日するたびにエスコートしてくるのである。そこでオリジナルノーチラスにPADのRLSケーブルをインストールした演奏を披露する。大きく何度もうなずきながら「ベリー・グッド!」「グレート!」を連発し、セールスホルダーが演奏する彼らの研究所でも聴けないノーチラスの再生音に驚き、そして喜びの声を上げる。その彼らが「わが社のラボでは全員がミスター・カワマタの名前を知っています。」と、私も照れ臭くなるようなエピソードを披露してくれた。 そのB&Wは2000年という記念すべき今年に何かを画策しているという。その情報も最速で知らせてくれるということなのでご期待頂きたい。

さて、私はこの1週間というもの帰宅前にPADシステムエンハンサーをかけリピートしていくというバーンインを繰り返してきた。ドミナスやRLSはバーンインタイム150時間と以前からPADは述べており、以前の経験からもノーチラスシステムにインストールしたケーブルをなるべく早くバーンインさせたいと思っていたのである。毎日出社するたびに朝一番で一晩のエンハンス効果を楽しみにノーチラスを鳴らしているが、今日で150時間を満たす頃合いとなってきた。カスタムメイドのノーチラス専用ケーブルをつなげたこの1週間で、私はノーチラスのリプレースメントを微妙に再調整している。左右ノーチラスのクロスセッティングによるアランメントは変りないが、左右の間隔を13センチほど広げている。ヴォーカルの密度感が向上しエコー感が大分豊かになったので、センター定位のフォーカスイメージを維持することが容易になり、その分左右への展開を意識しての微調整である。以前からここで聴き慣れている方であれば、もしかしたら気が付くかもしれない。

エソテリックP−0、マークレビンソンNo.30.6L、ジェフロウランドのコヒレンス2、パワーアンプも同社のモデル12が4セット、この強力なエレクトロニクスでノーチラスを鳴らしはじめて半年が経ったが、この日の朝に鳴りはじめたノーチラスは別物であった。まず、いつものヨーヨー・マであるが、この曲では記憶のファイルにある過去の分析をすべてデリートしてしまいたいほどの情報量の拡大が私を襲った。その情報量という解釈は主に演奏している空間で存在していたはずのエコー感の再現性として認識される。続く、大貫妙子の四季も同様に余韻が空間に溶け込んでいくグラデーションの諧調表現は快感として気持ちをゆさぶる。

プロ野球のファンにもアンチ巨人派があるように、これまでにもアンチPADと思われる人々のコメントが噂として私の耳にも入ってくることがあった。「PADは音を作っているケーブルだ。」というのが彼らの代表的なプロパガンダと言えるかもしれない。しかし、ここで私は首をかしげてしまう。「ケーブルが音を作るっていったいどういうこと?」だって、ケーブルの内部にリヴァーブマシンやディレイユニットが入っているわけでもなく、ましてイコライザーが仕込まれたケーブルなんて聴いたこともない。PADを使うとノイズフロアーが低下するので、私が述べているようなエコー感と余韻成分が聞こえてくるようになる。それを他のケーブルと比較すると空間表現が拡大して情報量が増えることを、他社のケーブルの音質を基準として「空間表現が拡がりエコーが増えるPADはおかしい」と思われているようなのである。愚かなことなのでPADのケーブルを分解して調べようとも思わないが、ドミナスの中に超小型のエコーマシンが入っていたなどということはありえないのである。「違うんです。これらの空間表現とエコー感や臨場感はディスクの中に封じ込められていた、言い替えれば皆さんがお金を払って買われたソフトに最初から入っていたものが自然に表出したものに過ぎないんです。」これは常々接客のときに私が解説している単純な論法である。その証拠にP−0からD/Aコンバーターへつながるデジタルリンクをドミナスから他社製のケーブルに換えると、フッとウソのように空間が小さくなってしまう。「ほらね、おおもとのトランスポートの出力ケーブル1本だけでもこうなるんですよ。」と驚きの表情を浮かべるお客様に笑顔で解説する。そして「それじゃ、デジタルリンクはドミナスにしてP−0のACケーブルをドミナスから付属の黒いものに取り替えましょう。」と言って同じ曲をリピートする。デジタル信号を送り出すだけで音楽信号が通るはずもないトランスポートの電源ケーブルの差し替えで起こった変化に、思わず口があいたままのお客様にはもう何も問いかける必要はない。今まで見えなかったものが見えてくると、どう反応するかは人それぞれであるが、私がPADを導入してからというもの「見えない方がよかった。」という方は皆無である。ユーザーが英断を下して購入されたコンポーネントと、蓄積されると大きな金額になるソフトに対して、まだまだこんな情報が入っているという事実を見逃して音楽を聴き続ける時間は、決して私たちには買い戻しが出来ないということである。

それからもう一つ、アンチPAD派で多いと思われる意見は「低音がやわらかくなった。」というものである。スタジオ録音のポピュラー音楽などで、エレキベースやドラムなどのリズム楽器の質感がゆるくなってしまうというのである。実は私もピアノなどの表現で同様な質感の変化を経験したことがあったのだが、しばらく聴いていると間違いであったことに気が付いた。「ピアノの切れ味が悪くなったのでは?」と思う曲があって、ピアノが伴奏するヴォーカルアルバムで他社のケーブルとしつこいくらいに比較試聴したのである。そして、他社のケーブルではヴォーカルの質感に微量に砂をまいて空気との摩擦感を増量したような、あるいはピアノのアタックは確かに刺激成分とも受け取れるメリハリの強化を感じたのだが、その反面エコーが伸びないことに気が付いたのである。どっちが正しいのか?ベースやドラムなどのパルシブな楽音が切れ味よく立ち上がったと認識できるのは、音が発せられてから空間に残すエネルギーの残照がなくなってしまったときと一致するのである。つまり、低音楽器のエコー成分を無視して、次に空気中に微細な砂をまいたような質感でザラッとしたアクセントを付加してやると、ちょうど楽音が引き締まったように聴こえるのである。ところが、低音楽器にもちゃんと余韻があるということ、そして何よりもヴォーカルや弦楽器の滑らかさが伝わってきて空気に吸い込まれるように溶け込んでいくエコー感が表現され、楽音の輪郭が整いフォーカスイメージが向上するほどリズム楽器の力みがとれて他の楽器と空気中で調和し始めるのである。従って、私はこう考えた。もともとディスクに入っている低音楽器やピアノなどの表現は出るべきエコー感もいっしょに再現されるものが本当ではないか。エコー成分を四捨五入してしまうケーブルでは一見して輝きはますのだが、私の耳で感じるまぶしさは刺激成分なのではないかと。言い替えればエコー成分をもダイエットの対象としてしまった他社のケーブルは、音響空間の浸透圧に差が出来ずに余韻を空気中に浸透させ拡散させていくことが出来ないのである。しかし、PADはエコー感と余韻は小数点第七位の7Nグレードの細やかさと純粋さで空間に滞空させ、正視できる程度の適切な照明を楽音に与えることで解像度の向上を認識させるのである。低音楽器やリズム楽器の本来の姿は余韻というコスチュームをまとっているのが本来の録音であり、それを裸にしてしまうケーブルが一例として見受けられるということなのである。簡単な結論だが、もともと録音されている低音楽器の質感に柔軟性があったということであり、他社のケーブルではそれが引き出されていなかったということである。

そして、これまでに何度も経験してきたエコー感と余韻感による情報量の拡大にともなって、もう一つ興味深い試聴を行なうことにした。使用したソフトはフォープレイの「ベスト・オブ・フォープレイ」(WPCR1214)である。この5トラック目の「チャント」のイントロで展開するハーヴィー・メイソンの強烈なフロアータムの音にドキッとする。この切れ味とインパクトのものすごさ、キリキリとテンションを引き上げたドラムの音は一体なんなんだと驚く。たった20秒間このフロアータムを聴いてから、直ちにノーチラスのケーブルをオリジナルのものに換える。「ちょっと待ってよ、何でこんなに違うの!」と呆れてしまう。オリジナルケーブルに戻すとインパクトの瞬間が間延びしたように変質してしまう。同じフロアータムの音を再生するのに要するエネルギーが時間軸を長く使ったように分散してしまうのである。半紙に書道の大家が見事な一筆を献上したとしよう。オリジナルケーブルでは墨を水で薄めてしまったような出来栄えなのである。見事な筆遣いも輪郭がにじんでしまい、力を込めたはずの筆の返しも頼りなく見えてしまう。もう一度PADにケーブルを換えて、まったく同じボリュームでリピートする。「やはり、そうだ。同じエネルギーをノーチラスに送っているはずなのに何でこんなに違うんだろう。」とRLSケーブルの威力に舌を巻くのみである。これでもかと摩り込んだ墨で描かれたタッチは同じ半紙の上で明確な自己表現を行なうようである。筆が通った後に残るのは目に焼きつくほどの鮮明さでくっきりと描かれる漆黒と純白の二つの世界のみである。ヒットされたタムの胴が震えているのが見て取れるようなリアルさが弾け、フロアータムのヘッドがビィーンと空気を振るわせる波動が体に伝わってくるようである。ドラムという極めて短時間に音を発する楽音に対してPADがもたらしたのは時間軸を圧縮したようなエネルギーの瞬発力の蘇生であり、次の瞬間にはミリセコンドの単位で打撃音の推移に解像度を高めるという情報量の増大であり、結果的にはテンションと緊張感を高めフロアータムの低域をキリキリとこれでもかというまで引き締めてしまったのである。「PADを使うと低域が引き締まる。これだ、これが本来のレコーディングなんだ。」と私は狂喜してしまった。今まで聴いてきたつもりのソフトをすべて聴き直さなければならない。この低域は空気との摩擦感を応用してドラムの音色にキラキラ光る微粒子のパウダーを加えたものではない。正確な余韻の尾を引きながら消滅していく打撃音こそ、この録音の神髄なのである。

次に同アルバムの3トラック目「ハイアー・グラウンド」をかける。イントロからネーサン・イーストのエレキベースがソリッドな響きを聴かせ、テイク6の絶妙のコーラスが展開していく。そこにハーヴィー・メイソンのドラムがベースと明確な分離を見せながらリズムを刻んでいくのだが、トライアングルと間違うような透き通った音色のシンバルワークが継続されている。「待てよ、このシンバルの高域はこんなに鮮やかだったかな。」と、またしても二つの演奏の間違い探しを始めてしまった。写真1.で表している特殊なコネクターはスクリューリングでがっちりとロック出来るのはいいのだが、ロックするまでの回転数は手首のスナップに数十回の反復運動を強要する。多いときには1日に20回以上ケーブルの比較をするので右手首はたまったものではない。今回も問題提起をした自分の耳にぶつぶつと手首は不平を言いながらオリジナルケーブルに差し替えた。「どうして?どうしてこんなに違ってしまうの?」と、シンバルの音色の変化に、そして先週までノーチラスに寄せていた信頼感の崩壊に戸惑うのみである。4ウェイのノーチラスでは3・5キロHz以上をトゥイーターが一手に引き受けている最も担当エリアの広いユニットである。そのトゥイーターに送りこむパワーアンプまでの過程は一切同じだというのに、スピーカーケーブルだけの違いでこれほどの変化をしてしまってよいものだろうか。オリジナルケーブルで聴くシンバルを一般家庭の天井にある照明器具だけで撮影したビデオ画面という例えをすると、RLSケーブルのそれはプロ用のハロゲンランプでサッとライトアップされた画面に変ぼうするような色彩の鮮やかさなのである。スティックがインパクトした瞬間のシンバルが像をだぶらせるように振動する様子が観察され、エコーを引きながら静まっていくうちに次のヒットで蘇るという連続がポーンと空間に浮かぶのである。オリジナルケーブルを2・5メートルカットし、3メートルのRLSケーブルが接続された。まだトゥイーターに結線されているもともとのケーブルが約2メートルは残っているはずなのに、PADを追加しただけでこれほどの明瞭度が出現しようとは誰が予測しただろうか。先のブリーフニュースNo.093で3チャンネルBNCドミナスを紹介しているが、このケーブルは製品としての価格は50センチでありながら実際にはリードワイヤーが同じ長さで引き出されており1メートル程度の有効長となっている。液体入りチューブが50センチならば、リードワイヤーをもっと短くしてシールド効果を高めた方がよいのではないか。もしくは液体入りチューブをケーブル全体に対してもっと長くしたほうがよいのではないか。などと考えてしまうのだが、PADのジム・オッド氏は計算とテストの上で最良の液体入りチューブの長さを決定しているという。だから全長の半分50センチでもドミナス仕様のチューブをまとっただけなのに、先に述べているような多大なシールド効果が実現されたということか。とすれば、オリジナルケーブルを残しながらもRLSケーブルがノーチラスにもたらした潜在能力の表面化も大いに納得できるものであろう。PADの場合液体入りチューブの長さは設計者にゆだねたとして、その全長における液体入りチューブの比率が素人の見た目では短いように思われても、あたかも人体において肺や腎臓という器官が循環する血液をわずかな通過距離で浄化することに酷似しているようだ。電源、デジタル、インターコネクト、そしてスピーカーケーブルと総てプラス・マイナス方向へと循環する信号経路のほんの一部分を取り囲むリキッド・ジャケットが想像を絶する貢献をシステム全体にもたらした。さらにRLSに光のジャケットをまとわせたら、どんなに素晴らしい世界が開けてくることだろう。

過去に投資された趣味の道具に対して、まだまだ潜在能力がこんなにもあったのかと教えてくれるケーブルはもはやただのケーブルではない、と私は思う。スピーカーやエレクトロニクス同様に立派なコンポーネントであると。そして、すべてをドミナスにシフトしていく過程で、ここで起こってきた数々のドラマを完結させる存在がノーチラス用RLSケーブルであった。皆様の所有されるコンポーネントに“スーパー”という形容詞を付けたいのであれば、ぜひPADをお勧めする。そしてここでは、私のレベルで認定したスーパーノーチラスの誕生をお知らせしたい。

最後に、このフォープレイのライナーノーツに面白いエピソードが書かれていた。“Fourplay”というグループ名は4人でプレイすることから名付けられたのだが、実は“Fourplay”=“前戯"という意味もあるという。リーダーのボブ・ジェームズがもらした言葉である。ことの目的を愛情表現や本能的な快楽の追求と解釈の幅を広げれば、オーディオにおけるケーブルの選択も、“フォープレイ”ではなかろうか。

とにかく、PAD・RLSケーブルをまとったノーチラスは気絶するほど悩ましい・・・。

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No.097 「ついに覚醒した新世代ノーチラス」
写真1 写真2 写真3 写真4

2000年2月4日午後1時、B&Wの輸入元である日本マランツのサービスマン2名が予定通り到着された。私が依頼したオリジナルノーチラスのスピーカーケーブルを改造するためである。このためにあらかじめシーエスフィールドより取り寄せていたのがPADこだわりのハンダである。15種類の合金による配合のハンダは1ロール200グラムで4万5千円、秋葉原のパーツ屋で売られている百円単位のものと比べてもそのグレードが思い知れる。もう顔なじみとなった日本マランツのサービスマンに依頼したのはノーチラス本体から引き出されているスピーカーケーブルをカットし、切断した両端にマルチコネクターをPAD指定のハンダで取り付けてもらうということである。そのコネクターを手にしているのが写真1である。ご覧のように接点数はプラグ1個あたり8箇所なので合計32箇所、エポキシを最後に注入して強度を高め収縮チューブで仕上げを行い完成したのは夕方5時過ぎ。実質の作業時間は3時間以上という大手術が行われた。完成したのが写真2である。ノーチラスの御影石ベースの後部から引き出されているブルーのケーブルが50センチ程度でカットされ前述のような処理を施された。切り離された他方にも同様なプラグが取り付けられているのでオリジナルケーブルにも復帰ができるということで、その間に横たわっているのがPADのRLS(レディエント・ライト・ソース・システム)仕様ノーチラス専用ケーブルである。オリジナルケーブルは、この太さの中に8本の銅素材シルバーコーティング・ケーブルを円周上に配置させているのだが、RLSと比較するといかにも貧弱に見えてしまう。PADはバイワイヤー/トライワイヤー、そしてこのクワドワイヤーにしても純粋にケーブル本数を追加していく。他社の場合には4芯6芯と1本のケーブルに入っていても、それを半分以上に分けてバイワイヤー以上に対応させるため、スピーカー1ウェイあたりに使用するケーブル断面積は実質的に数分の一と小さくなりケーブルも細くなってしまう。しかし、PADは違う。単純に倍々に本数を増やしていくのである。そこには何の妥協もなくシングルワイヤーと同じクォリティーでマルチ化していくのである。従ってプラス側4本とマイナス側4本を各々独立したチューブに格納するため、写真のようにメッシュで覆われた本体は二軸構造となっている。そのケーブルの反対側でパワーアンプに接続する一端が写真3である。赤黒と四本ずつリードワイヤーが見えるが、赤の方は影になってしまっているが注意深く見ると黒いリードワイヤーが五本あり、一番手前のものが丸く表面の違うものであることがわかる。これがRLSの要となる光りファイバーであり、写真4がその先端のコネクターである。ご苦労をおかけしてしまったサービスマンにせめてもの恩返しと労をねぎらう意味で、仕上がった新世代ノーチラスで世界初の再生音を聴いてもらうことにした。この段階で一聴してわかったことは低域のエネルギーが厚く増強されたこと、楽音の肉厚感が好ましく向上したことであった。「やはり違いますね。」と苦労の甲斐を再生音に感じ取ってくれたようであるが、私から見ればまだまだである。いつものようにPADのシステムエンハンサーをリピートして翌日の変化を楽しみに帰宅の途についた。
近年これほど出社するのが楽しみな朝はなかった。リピートを解除して最後までエンハンスを終え、早速いつものヨーヨー・マをかけた。最初の一音が出た瞬間に、私の聴覚から送られた信号を早速分析するというプロフェッショナルに徹しようと思ったのだが、驚きと興奮が先行してしまって思うようにいかない。とにかくヨーヨー・マのバックを勤めるアムステルダム・バロック・オーケストラの演奏が、前日までと格段に違う広がりと奥行き感を提示し圧倒的な空間の大きさを感じさせるのである。そして、ヨーヨー・マ自身のチェロの音色が昨日までの彼と根本的に変質してしまったのである。変質というと悪い方への変化と思えてしまうが、まったくその逆である。フォーカスのしぼり込みはこれまでのチューニングで完璧を自負していたのだが、まだまだその先があった。 なぜかと言えば、彼の呼吸や状態の動きにともなってエコー感の表現が変化していく様子が克明にビジュアル化されるように認識できるのである。弓をあててアルコを繰り返す楽音の中心、いわば音像の核としてフォーカスイメージを収束する投影面積が見事に圧縮され、しかもアルコの切り返しに伴って弦がテンションを変化させる描写まで見えてしまうのである。チェロの楽音が空間に溶け込んでいく過程があまりにも自然なので、音階の高低をスリリングに繰り返しても何のストレスも感じずスムーズに滑らかなチェロがとても暖かく聴こえてくる。そして、バックのオーボエやヴァイオリンの楽音が、ピンとフォーカスと定位感を見せつけながら中空に浮遊するような存在感で余韻に包まれている。演奏している空間に引き込まれてしまいそうな臨場感は、明らかに、明らかに昨日までのノーチラスと違っているのである。そして、確認のためにオリジナルケーブルに戻したのだが、その瞬間に落胆と驚喜の感情が交叉してしまった。これは参った。一体私は昨日までノーチラスの何を聴いてきたのだろうか。
あまりの変化に戸惑いながら大貫妙子を四季をかけた。アコースティックギターとウッドベースのイントロが始まった瞬間、そして彼女のヴォーカルが始まった瞬間に、これまで数百回以上聴いてきた演奏の分析が根底から覆される。とにかく何らかの一音がノーチラスから放射された瞬間に描かれる空間の大きさと情報量が桁違いなのである。2チャンネル再生において感じられる空間表現はダイナミックレンジの底部、つまりエコーが消えていく最終段階で余韻の微弱成分がどれほど鮮明であるかにかかっている。RLSによってノーチラスが得たものは究極的にはそれかもしれない。これは言葉を言い替えればノイズフロアーの圧倒的な低下と抑制ということである。これまで散々ドミナスを使用し、デジタルリンク、インターコネクト、スピーカーケーブルと各領域でその効果を体験してきたのだが、ノーチラスとパワーアンプ間のケーブルに、これほどの可能性が隠されていたとは想像することもできなかった。写真2.でわかるようにオリジナルケーブルは尻尾のように50センチほど残している。PAD社長ジム・オッド氏はノーチラス内部まで自社のケーブルを徹底して使いたがったのだが、構造上の宿命から断念せざるを得ないと私は説明した。考えてみれば、世の中のすべてのスピーカーは入力端子からユニットまで数メートル(JBL4343の内部配線は総延長で17メートル程度あったと記憶しているが)の長さがあるわけで、どんなに素晴らしいスピーカーケーブルを使っても内部配線は必要不可欠のものであろう。それを思えば今回のノーチラスで最長のトゥイーター用内部配線でも約2メートル程度ということになり、他のスピーカーと比較しても内部配線を若干残すことによるマイナス面はないと判断された。何よりも起こった変化がその事実を雄弁に物語っており、この場で切り替え実験をすればノーチラスのオーナーでなくともその違いの大きさに驚かれるはずである。
もっと聴いていたいのだが、今回の改造を期待されていたノーチラスのオーナーが次々に来店された。アッという間に5人のオーナーがオリジナルケーブルとの比較を経験し、全員が驚嘆され採用の具体性に検討を開始された。現在所有しているノーチラスがこれほどパフォーマンスを向上させてしまうのだから、指をくわえて黙ってはいられないという心境であろうか。しかし、光りを入力しなくてもこれほど激変したのだが、RLSの本領である光ファイバーに光源を接続したら一体どうなるのだろう。恐らく世界中で最も多くの時間オリジナルノーチラスを聴き、世界最高の販売実績とユーザー個々のケースで世界最多のセッティングを経験してきた私でさえも想像できなかったノーチラスの新種の登場である。かなり確率の高い私の推測によると、この鸚鵡貝の新種は間違いなく21世紀においても長期間の寿命を持っているものと思われる。本当の意味で一生ものと言えるスピーカーをぜひ聴かれてはいかがでしょうか。
近い将来RLS用光源ボックスを入手する予定なので、さらにノーチラスの新種が複雑な細胞分裂をおこし進化する可能性がある。続報にご期待あれ。
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No.096 「真空管アンプのイメージを変えたナグラ&ウィルソン・システム6」
 1月31日の夕刻、大場商事株式会社の担当者が当HPイベントインフォメーションで予告していたナグラのプリ・パワーアンプとシステム6を搬入に来られた。このシステム6は昨年の7月にいち早く試聴しているのだが、当時の印象はブリーフニュースのNo.068で述べているとおりである。それからしばらくして輸入元の営業姿勢に敬意を表するようなエピソードがあったのでご紹介しておきたい。  音質に関して納得しなかった私に対して「川又さんにウィルソンの新作が気に入ってもらえないというのはまずい。もう一度持ちこんで川又さんに聴いてもらおう。」という議論が大場商事の社内で持ち上がり、後日担当者自身がセッティングをやり直して再度の試聴を求められたのである。第一印象から比べれば状態は良くなり、システム6のセッティングの変化による微妙なコントロールを改めて学習させて頂いた。自分たちが取り扱う商品に対する熱意とスピーカーの作者に対する敬意が感じられ、数ある取り引き先の中でも情熱的な営業姿勢を持っている輸入商社であると改めて関心した。しかし、それでもまだ私は手元にシステム6を常に置いておきたいという気持ちには至らなかったのである。
 そして、イベントインフォメーションのショートストーリーで述べている経緯からナグラとシステム6のジョイントプロモーションを行なうことになったのだが、どうも私の胸中ではまだシステム6の演奏で感動したことがなかったという先入観のようなものがまとわりついていた。汗を流しながらの力仕事を終えて前回システム6を置いたポイントにセッティングしナグラのプリ・パワーともに配線を終えた。「まあ、これまでにも数回聴いてきたシステム6だから軽い気持ちで聴こう。」と席について、いつものヨーヨー・マで第一声を鳴らし始めた。「あれ、ちょっと待って。これまでに聴いたシステム6と違うよ!」と私は思わず一声発した。サウンドステージが展開すべき空間に漂っていた霧が、スーッと晴れ渡りそうな兆候が見えて視界が時折良くなってくるのだがまだ今一つ物足りない。出力50WというナグラVPAのパワーを考えると、これまでのように音量を上げるとディストーションカーブが急上昇してくるのが再生音から感じられてしまう。ひずみ率の悪化が認識されないように気をつけてボリューム設定に注意をしながら曲を替えていく。今までの経験から当フロアーでの標準的なスピーカーポジションが決まっており、私の耳から約3.5メートルの距離にスピーカー前面が位置するようにしていた。これまでのシステム6はすべてこのポジションで聴いてきたのである。どうしたものか、おいしいところがそこにあるという可能性をこんなにつ強く感じながら今一歩でそれを引き出すことができないなんてと考えながら「そうだ、スピーカーのセッティングを思い切ってこうしてみるか?」と思い立って席をたつ。
 「パワーが小さいんだから無理をさせずリニアリティーのいいところでナグラを鳴らしてみよう。」と単純な発想からシステム6を自分に近づけることにした。後ほど計ってみると耳から2.9メートルと60センチ接近させて同じ曲をかけた。するとどうだろうか。「いや見事!」と思わず声に出してしまうほどフォーカスイメージが鮮明になり遠近感が倍増してスーッと奥行きが見えてくる。音像の輪郭が写実性を増したものだからエコーがきれいに発散されていく。このフロアーで試したことのない最もスピーカーと接近したセッティングなのだが、単純なことが私の認識をすべて替えてしまった。 「システム6いいですね。ナグラこれもいいですね。」と狂喜して聴き始めてしまったのである。その後にパワーアンプのACケーブルとインターコネクトをドミナスに変えたが、ドミナスのもたらす純化作用が鮮明に表れ言うことなしである。この日は最後に聴いたのはダイアナ・クラールの「When I look in your eys」であったが、彼女のピアノの切れ味とヴォーカルのエコー感が短時間にして数々の分析をする格好の題材となったようだ。管球式アンプのイメージはゆったりしたテンションと大きめの音像でフォーカスイメージよりもボリューム感を感じさせるもの、あるいは楽音のエッジがラウンドしたような質感の表現から温度感があるという表現のように、最先端のソリッドステートアンプであるジェフロウランドのそれと対照的に語られてきたのではなかったか。 しかし、今目の前で展開する解像度とフォーカス感の極みにあるような切れ味の良さ、ヴォーカルや弦楽器が人肌程度にぬくもりを得たという質感を両立させる再生音があっただろうか。サウンドステージとフォーカス表現、スピード感とノイズフロアーの低減など、少なくとも私がハイエンドオーディオに求めてきたものは真空管アンプでは難しいという過去の経験を見事にくつがえすアンプが登場したのである。恐れ入った!
ナグラのパワーアンプVPA本体の横幅は何と11センチ、高さは40センチ、奥行きはたったの30センチである。プリアンプのPL−Pは横幅28センチ、高さ7.5センチ、奥行きは23センチ。これほどのスペースセービングを可能としたアメリカのコンポーネントは少ないだろう。人間が手で触れて扱うことを前提としたデザインと仕上げの美しさ、さすがにスイスメイドのクラフトマンシップがコンパクトでありながらも高級感を高めている。オーディオに経験の浅い人たちは巨大な音量や体をゆさぶるほどの低音に驚き感動するかもしれない。しかし、それもキャリアを積んでいくうちに、自分が聴きたいボリューム、威圧感のない必要最小限のボディー、小音量ながらもクイックなレスポンスで演奏に熱気を感じさせるサウンド、こんな価値判断に変化されていく方も多いはずである。ナグラ・アンド・ウィルソン、大人同士が互いに認めあった円熟したペアリングが皆様のオーディオの世界を一変させることを請け合います。
私は困ってしまった。ここ最近になって、私の手元に置いておきたいものが急に増えてしまった。場所に限りはあり手狭になってきたフロアーを見て贅沢な悩みを感じている。でも、それはここに訪れる皆様にとって、よりエキサイティングな体験をして頂けるという交換条件でもあろう。
ここはセレクタボックスに数多くのコンポーネントをつなぎっぱなしにしてポンと音が出るような店ではありません。私のフロアーではファーストフードのように頼んでもすぐに音は出てこないのです。予約して味わうフルコースのように、1セット1システムごとに私がスピーカーの配置を替え、配線もすべて差し替え、理想的にはウォームアップの時間も余裕を見て頂き、数時間の時間をかけてじっくりと味わって頂ける音楽の料理をお出しすることが自分の仕事であると考えております。その腕に自信のサウンドクッキングにまたひとつレパートリーが増えたようです。
どうか、ご来店の際には「ナグラでウィルソンを・・・」とご注文下さい。
 店主より
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No.095 「遂に来た!オリジナル・ノーチラスPADスピーカーケーブル」
1月28日午前のことシーエスフィールドから大きなトランクが送られてきた。「ウワァ、遂に来たか!」と思わず声が出てしまった。No.092でも述べていたノーチラス専用スピーカーケーブルの到着である。重量は20キロはあると思われる重たくごついケースを早速開けてみて驚いた。オプチカルファイバーが付いているということは、何とRLS(レディアント・ソース・システム)仕様ではないか!「これは大変なことになったぞ」と思わず価格表を見てしまった。長さ3メートルのRLSスピーカーケーブルはステレオワイヤーで459万円、それがバイワイヤーで529万円、トライワイヤーで616万円、ノーチラスは4ウェイマルチなのでクワッドワイヤーとなり4本のケーブルがチューブから伸びだしている。しかも、ノーチラスの付属ケーブルから取り次ぐため、クライオジェニクスとマグネストリクションを施した8ピンマルチコネクターで端末加工されているコストを加算するとゆうに700万円は超えてしまうだろう。正式な見積もりを取らないとわからないが、礼も失することであるし聞くのが恐ろしいので価格のことは問い合わせしないことにした。さあ、ここからが問題である。私は小型の端子盤に8個のターミナルを取り付け、ノーチラス付属ケーブルを一方に接続し他方にPADのケーブルを接続すればという安易な考えでいたのだがジム・オッド氏の徹底ぶりには頭の下がる配慮があったのである。8ピンマルチコネクターがオス・メスと2ペア付属されており、ノーチラス付属ケーブルを本体側に近いところでカットし、このコネクターを両端につけろということらしい。そうすることで付属ケーブルをオリジナルの状態でつなぎ直して聴くことも出来るし、今回のRLSケーブルに切り替えることも出来る。しかし、当フロアーの展示品も商品であり、いつかは販売しなければならない。その展示品の付属ケーブルにメスを入れることがためらわれるのである。「でも・・・、でも聴いてみたい!」そして何よりもジム・オッド氏の好意と情熱に答えなければならない。ハンダにもこだわりをもつPADから専用のハンダも取り寄せ、近々のうちに私も初めての体験となるノーチラス専用スピーカーケーブルの大手術を敢行することを決意した。もし、これで成功すれば付属ケーブルという束縛から数多くのノーチラスオーナーを開放することが出来るわけで、まさかRLS仕様までいかなくともドミナスやプロテウスなどでノーチラスのスピーカーケーブルに新たな可能性を開拓することが出来るというものである。

そう言えば、以前随筆の第43話で取り上げたアヴァロンのオザイラス(当時1300万円)はディスコンとなりセンチネルにトップモデルの座を譲り、一時2000万円というプライスで度肝を抜いたプラチナムのエアーパルス3.1も事実上のディスコンとなり、ウィルソンのX−1もシリーズ3へとマイナーチェンジされる。このように大変に高価なアメリカ製のハイエンド・スピーカーは2、3年ごとにモデルチェンジが繰り返されており、それを購入されたユーザーの価値観をどのように釈明したらよいのだろうか。常に研究に努力を惜しまず絶えず新しくベストなものを開発していく、このような姿勢には共感を覚えるものであるが発売段階での完成度はどのように理解したらよいのだろうか。もちろん各社におかれてはバージョンアップを前提としてオーナーへのフォローを考慮しアップグレードの手段を講じているものもあるのだが・・・。
ノーチラスは発売してから5年を経過しているがモデルチェンジはない。そして、これからもマイナーチェンジの計画はない。それは何を意味しているのだろうか。一生モノと決意して購入されたユーザーに時が経過しても不変の魅力と完成度を提供し、間違いなく21世紀まで使い続けるだけの本質的な能力と魅力をノーチラスは有していると言ったらオーバーだろうか。ノーチラスを超えるものが現われない以上はスピーカーに関する追求姿勢を凍結し、その他の分野でアップグレードしていくことがシステム全体のクォリティーアップに結びつくという実感をノーチラスが提供してくれたとしたらどうだろうか。2、3年しか使えないスピーカーに高価なケーブルを使おうとする意欲はわかないかもしれないが、これから10年、20年と使い続けても色あせないスピーカーだったら、スピーカーと同程度の価格でもケーブルを使ってあげたいという愛情も納得のいくものであろう。

まだこの段階では音は聴いていない。ずっしりと重いケースに入っている私も初めて見た超ハイエンドケーブルの可能性に様々な思いがよぎるのみである。今年もジム・オッド氏は秋に来日する予定であるという。その再会の日に、ジム・オッド氏にはここでの音楽的パフォーマンスで感謝の気持ちを示し、更に地上最高のオーディオ装置による演奏で日本のユーザーの世界的レベルアップを目指していきたいと考えている。

当然、このケーブルでノーチラスが目覚めたときにはお知らせいたします。 どうぞご期待下さい。

このケーブルのインストールが2/4に決定。いよいよ21世紀に向けて新世代ノーチラスが体験可能となります。どうぞご来店下さい。

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No.094 「dcsエルガーにマイナーチェンジのホットニュース!」
現在のエルガー2に更なるアップグレードが施されることになった。エルガー2プラスというネーミングで近々のうちに新製品として発表の予定。価格は未定だが以下の変更点を考えると954mkUに限りなく近づくのだが、実際に比較してみるとどうか? この辺のノウハウについては実物で比較試聴できるように当フロアーでスタンバイいたします。もっかのところ当店のエルガー2をバージョンアップのために輸入元に提出しているので、完成次第に続報をお知らせします。

  • フロントディスプレー部とリアのパネル交換
  • DSD伝送対応のSPDIF/2入力端子増設
  • マスタークロックジェネレーター992とのクロックリンク端子増設
エルガーの初期モデルからプラスへ、エルガー2からプラスへと双方ともに暫定で50万から60万円程度でのバージョンアップを検討中。
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No.093 「更に至高の領域へ!PADドミナスが引き出したdcsシステム900プロ/Ver.1.0の潜在能力」
昨年10月に当フロアーにシステム900プロ/Ver.1.0が導入されたというニュースはNo.80で述べているが、その時に輸入元のタイムロードのスタッフから気になる情報を聞かされていた。「実は1ビットDSD伝送のSPDIF/2のBNC3チャンネルケーブルもドミナスがあるんですよ。今井さんに聞けばわかると思いますが」こんな話を聞かされて黙っていることはできず、当日のうちに今井氏に電話をした。「確かに特注で過去に数本発注したことがあります。でも、今はないんですよ。」と残念な答え。そして後日あるノーチラスのオーナーでdcsを使用されているVIPであるI氏にこのことを話すと「エッ、それ注文します。」といとも簡単にうれしい返事がきた。早速シーエスフィールドに発注して待つこと久しい年末のある日、入荷を知らせる電話が入った。確か年の瀬も押し迫った29日、私は自分で試聴しては申し訳ないとそのままI氏に特注の3チャンネルBNCドミナスをお渡しした。新年が明けて来店された I氏に「例のケーブルはどうでしたか」と尋ねると、親指を立てて「いいですよぉ!」と笑顔のご返事。これには居ても立ってもいられず今井氏に電話すると「実は、そんなこともあろうかと予備も含めて3本注文してあったんですよ。早速1本送りましょう。」と願ってもない返事が胸を熱くする。
到着した3チャンネルBNCドミナスを早速システム900プロ/Ver.1.0にインストールする。何せそれまで使用していた3本のBNCケーブルは国産のカナレのもので、アキバでも数百円程度の品物であった。いつものヨーヨー・マを従来のこのケーブルでDSD変換させて聴き込む。そして、ドミナスのデジタルリンクでP−0からつなぎ、更にD/Dコンバーターの972からD/Aコンバーターの954に接続するデジタルケーブルもドミナスとしてハイサンプリング・ハイビットのマルチビット伝送による演奏を聴きなおす。「待てよ、もしかするとドミナスを使ったマルチビットの方がいいかもしれないなぁ」などどプアなケーブルで聴いたDSDの音質にわずかな疑問のタネが見え隠れしてきた。さて、と3チャンネルBNCドミナスを接続し直して平静を意識して再びヨーヨー・マをかける。「エッ、ホント!」と内心では衝撃を大声で叫んでいた。ヨーヨー・マがしっかりとステージで演奏していることを更に印象付ける舞台床面からのわずかな反射音とその余韻が立ち上り、繰り返すアルコで弦から弓が離れた瞬間にパッと一瞬ヨーヨー・マが消える爽快さ。楽音の鮮度が急上昇したことを示すフォーカスイメージの引き締まった表現に息をのむばかりである。改めて思う、dcsは凄い。そして、その潜在能力をいとも簡単に取り出してしまった3チャンネルBNCドミナスは、私から見ると電源やインターコネクトでの変化よりも大胆に相違点を描写するのである。ちなみに、この3チャンネルBNCドミナス(50cm)は定価48万円である。dcsの各システムではデュアルAES/EBUで2本のバランスデジタルケーブルを使用して192キロHzの信号を伝送する。そして1ビット2.8メガHzのDSD伝送についても前述のような威力を発揮した。ケーブルを通過する信号の周波数と情報量が高くなればなるほどドミナスの存在感が大きく感じられていくのである。これから次世代のフォーマットが発展すればするほどPADの貢献度がより大きくなることを痛感したエピソードである。
そして、最後に前述のノーチラス専用スピーカーケーブルがインストールされた時にも、このシステム900プロ/Ver.1.0に3チャンネルBNCドミナスが加わったシステムで聴くことができるのである。「ああ、何と私は幸せなことか。」でも、それを独り占めするつもりは毛の先ほどもありません。オーディオ界の「世界遺産」は毎日無料で公開しています。ぜひ東京にお越しください。
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No.092 「PADからノーチラス専用カスタムメイド・スピーカーケーブルが遂に発送された!」
1月23日シーエスフィールド今井氏より電話が入る。ブリーフニュースのNo.79で述べているPAD社長ジム・オッド氏に私がリコメンドしていたオリジナル・ノーチラス専用のカスタムメイド・スピーカーケーブルを先週のフライトで発送したという。現状のシステムはトランスポートはP−0、D/AコンバーターはマークレビンソンのNo.30.6Lとdcsシステム900プロ/Ver.1.0、プリはジェフロウランドのコヒレンス2、パワーアンプはジェフロウランドのモデル12を4セットというラインアップである。ケーブルはAC/デジタル/インターコネクトすべてPADドミナス、システムラックはすべてゾウセカスという陣容で期待のプレゼントを待ち受けている。全国のノーチラスオーナーの皆さん、いやノーチラスを聴いてみたいとお考えの皆さん、世界中でもここでしか聴けないノーチラスがもうすぐ実現します。どうぞご来店のスケジュールをご検討ください。
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No.091 「私の知識経験と感性、そして信用を賭けて断言する。これまでに日本人が作り上げたなかで最高の、そして世界に通用するアンプの登場。」
2000年1月19日午後、オーディオ業界では知る人ぞ知る存在の中道仁郎氏が訪れた。専門誌では昨年から取り上げられはじめた中道仁郎氏が旗挙げした新進気鋭のオーディオメーカーであるMRC(メカニカルリサーチ・コーポレーション)の処女作であるプリ・パワーアンプNIRO1000のプロモートのため、当社社長に面会の際に私のもとにも立ち寄られたものである。1972年に中道研究所において世界初の3ヘッドカセットデッキModel 1000を開発、79年にはカセットデッキのメカをサーボコントロールしたサイレントメカニズムを開発、82年には自動アジマス調整機構「NAAC」を開発しカセットデッキのハイエンド「DORAGON」を発売した。更にデジタル時代のエソテリックP−0が成し遂げたディスクの偏心制御をLPレコード時代に実現した「アブソリュートセンターサーチ」機構を開発し、当時レコードプレーヤーの最高峰に位置したTX−1000を発売するなど、日本のオーディオテクノロジーの進歩に果敢に挑戦し確たる実績を残されたのが中道仁郎氏である。その仁郎氏が自身の経験と技術力、そして精根を傾けて作り上げたのがNIRO1000シリーズのPOWER ENGINECONTROL ENGIN(この写真のCONTROL ENGINは試作機です。)である。
POWER ENGINEとはモノラルパワーアンプでペア価格は400万円、CONTROL ENGINとはプリアンプで230万円、そして仁郎氏のオーディオとメカニカルな哲学が彼のアイデンティティーとして構造とデザインに反映された作品である。国内の販売店のどこで、この高価でユニークなアンプをプロモートし販売していくか、その路線において当社と私のフロアーH.A.L.に白羽の矢がたったということなのだろうか。私が駆け出しのころに雲の上のような人であった中道仁郎氏を前に早速厚かましいお願いをしてしまった。「すでに来週から他メーカーの製品が入ってくる予定があるので、突然ですが明後日からの三日間でしたら聴くことができますが、ご都合はいかがでしょうか。」「いいですとも、早速持ってきましょう。」とファーストコンタクトは好感触であった。
1月22日午前、予定よりも30分早くMRCの専務である中道理氏とエンジニアである川辺氏が来られた。私は気を利かせたつもりでゾウセカスのパワーアンプベースであるZ.BLOCK2を2台床に並べて準備していたのだが、その存在をご存じないようで不信な面持ちのご両名は「うちの試聴室と同じセッティングで聴いてもらえますか?」とおっしゃる。「私は構いませんよ。」と見守っていると一辺10センチくらいの木材をサイコロ状にしたものを取りだし、POWER ENGINEの下に入れて床から持ち上げたセッティングをされた。CONTROL ENGINはフロントエンドとの接続を考慮して最初からゾウセカスのZ.3/Rシステムに乗せた。ACケーブルは付属品のごく一般的なものであり、D/AコンバーターのマークレビンソンNo.30.6LからのアンバランスインターコネクトはPADドミナス、スピーカーケーブルも同様であるが、プリ・パワー間の長いアンバランスのドミナスはないのでカルダスのHEXリンク・ゴールデン5Cを使用した。 トランスポートはいつものP−0、それからNo.30.6Lまではドミナスデジタルリンクを使用することにした。
さあ、期待のうちに最初の一曲はいつものヨーヨー・マをかける。昨日まではマークレビンソンのリファレンスラインで、それまではワディアのパワーDACでとノーチラス801をここしばらく聴き込んできた私の耳がNIRO1000の第一印象をたちどころに判断していた。「こりゃダメだ。音場感に乏しく拡がりが感じられず遠近感も感じられない。その原因も想像がつく。個々の楽音に鮮明さがないので、にじんでいるようなストレスを感じさせる音色が分離感を阻害し、それが空間表現に必要な解像度を損なう要因になっているに違いない。」と頭の中では瞬間的な分析を徐々に文章化していく評価作業が職業的習慣として進行していった。これ以上この状態で聴き続けても意味がないと判断した私は「セッティングを変えさせてもらいますね。」とお断りして、その前に現状の音を聴いておいてもらいたかったので中道氏と川辺氏のおふたりにセンターポジションを譲って同じ曲をリピートした。「さあ、いいですか。今の音を覚えておいてくださいね。」と言ってから用意してあったZ.BLOCK2にPOWER ENGINEを乗せ変えた。まず私よりも先にMRCのお二人にパワーアンプの置き台だけの変化という単純な違いを聴いていただくことにした。かたわらで聴いていた私でも音場感がパッと広がって楽音のスムーズさが格段に向上したことが直ちに感じられる。「いやぁ、参ったな。こんなに違うなんて思ってもいませんでした。」とお二人は同じ感想を述べられた。
同社のパンフレットの冒頭には「メカトロニクス・エンジニアが設計した世界初のアンプ」とうたわれており、高周波成分の干渉や様々な外乱要因に対してアンプ(エレクトロニクス)は汚染されていると表現されている。「それでもアンプは動かない」とお考えですかと続き、MRCはメカトロニクスの視点からアンプのふるまいを解析したという。それは同社の設計方針でもあり、彼らの理想とするアンプのあり方を次の六つの指針として述べている。
  1. 信号回路を最小の部品点数で構成。>賛成です。
  2. 信号系への内乱、外乱要因を排除>賛成です。
  3. 信号系、サーボ系、電源回路の配線を交差させない。>賛成です。
  4. 高周波ノイズを内部に入れない。>賛成です。
  5. 外部振動を中に入れない。>賛成です。
  6. 配線材の位置を固定し、固体音を出さない。>賛成です。
すべて賛成なのだが、数々のハイエンドアンプを聴き、その設計者たちと話しをして使いこなしてきた経験からすると、結果的にはエレクトロニクスの面では海外の多くのメーカーも主旨として同様なことを発言していた。しかし、この中で他のメーカーには発想することさえできなかった中道仁郎氏のメカトロニクス・エンジニアとして面目躍如たるアイデアは何であるか、私はNIRO1000の構造そのものにあると分析している。この構造あってこそ六つの指針が実現されたものであり、さすがに海外のアンプ設計者にも想像すらできなかったことであろう。いや、逆に長年オーディオ業界の中でマーケティングを意識してきた人たちはデザインや構造などに既成概念をもってしまい、まったく自由な発想の物作りに自ら限界を作ってしまったのではないだろうか。ビジネスとして売れなければ企業の存続もならず、自然とユーザー受けを意識したデザインになってしまうのはやむを得ないことであろうと思われる。しかし、それほどの独自な発想力と努力の甲斐あって完成したNIRO1000であるが、ハイエンドオーディオを長年取り扱ってきた経験とノウハウから今一つ私なりのこだわりがあったのである。過去に他社の例を見ると、メカニカルグランディングを標榜するゴールドムンド、まったくのアルミブロックから削り出したボディーを採用しているジェフロウランドやサザーランド、以前にはワディア9も同様の構造であり近来では私が高く評価しているコニサー3.0も同じ筐体の作り方であった。そして、それらの設計で作られた製品において、ボディーの剛性を追求すればするほど顕著に言えることがある。それはセッティング時のアイソレーションである。それ自体が剛構造であればあるほど、どのような置き方をするかによって、それ自身の音質を大きく変えてしまうのである。もっと簡単に表現すれば、セッティングの環境によって良くも悪くも変化が大きく出てしまうという特徴がある。例えとして前述のコンポーネントたちを木製ラックに入れた場合と金属製のラックに置いた場合、そしてコンクリートの床または畳の上に両者のラックを直接置いた場合などと、コンディションによってそれ自身の本質を見誤るほどの差異を出すのである。反面フローティング構造を持っているものは置き台による差異は小さくなるが、微細な追い込みには限界があり音質の表現には独特のキャラクターを含有してしまう。これはCD/アナログ両プレーヤーなどのメカを内蔵するコンポーネントにも同様なことが言える。座ぶとんを皆様のコンポーネントに敷いてあげれば簡単に実験できることでもある。つまり、コンポーネントそのものはラックや床から見て、機械的連続性を断ち切らないことにはそれ自身の剛性をいくら高めても意味がないというのが私の考えであり、これまでに実験の上でつちかってきたノウハウでもある。MRCの皆さんが自社の試聴室で情熱を込めたモノ作りに努力されたことはわかるのだが、ハイエンドオーディオの料理の仕方が素材の味をこれほどまでに変えてしまうというノウハウについては残念ながら情報不足であったようだ。
さて、次に私はプリアンプであるCONTROL ENGINのACケーブルを付属品からACドミナスに差し替えた。同じ曲をリピートすると川辺氏は「まったく違うソフトのようですね。」と率直な感想を述べられた。そして今度はPOWER ENGINEにもACドミナスを差し替える。すかさず中道専務は「なんかこう、今まで抑制されていたものがパァーッと発散されたような気持ちよさですね。」と述べられる。ここで、MRCの試聴室で使用していたというアンバランスケーブルを持参してきたということを思い出して「それでは御社の試聴室で使われてきたピンケーブルで聴き直してみましょう。」と提案する。私からすれば瞬間的にケーブルの違いを意識したのだが、しばし無言のご両名に対して「それでは、もう一度ドミナスに差し替えてみますよ。」とお断りして再びヨーヨー・マをかける。すると、「いやぁ、参りました。変われば変わるものですね!」パワーアンプのセッティングがあるべき姿を忠実に再現し、ケーブルの選択によって潜在能力が引き出された好例である。でも、私からすれば日常茶飯事の出来事であり、単純にモノ作りの立場にある人々と使いこなしのノウハウを追求する私が感性を異にするゆえんがここにある。この後には恒例のようにノーチラスのオーナーが数人来店され、NIRO1000を試聴して頂いた。当然私による調理が一段落したところであり、音にうるさい耳を持たれるオーナーの皆様にも高い評価を頂いた。従って、私がセンターポジションでじっくりと聴き込む時間も次第になくなり、本格的には明日のお楽しみということでPADシステムエンハンサーをリピートし約15時間のウォームアップをさせてから本格的に聴くことにして帰宅の途についたのである。
翌1月23日、出社してみると私のフロアーには暖房が入っていた。固定バイアスで常時600VAを消費しているPOWER ENGINEはヒートシンクの温度上昇を50度cで保つように設計されている。円筒形のデザインを奇異に思われる方もあろうかと思うが、この円形ヒートシンクの外周を測ってみると何と1.5メートルもある。このヒートシンクをまっすぐに伸ばしたとして、皆さんの部屋に奥行きが1.5メートルもあるパワーアンプが置けますか? これを何とか二つに分離して両脇に取り付け箱型にしたとしても、奥行きではゆうに80センチ程度になるだろう。ちょうどクレルのモノパワーアンプ650MCと同じくらいの奥行きだが、仁郎氏の発案された電源部を抱えてしまったら、とてもあのような細長い形には入りきれないだろう。直径46センチ、高さ53センチというサイズのPOWER ENGINEは果たして大型と言えるだろうか。皆さんの両手を肩の幅で目の前に広げた間隔がちょうど直径46センチくらいだろう。たったこれだけの床面積ですんでしまうということはデザインの合理性に他ならない。それにフルパワーでは60アンペアを軽く超えてしまうクレルの変動バイアス方式に対して、常時約6アンペアで動作してくれるPOWER ENGINEは家庭用としてはかえって使いやすいかも知れない。そんな思いをしながら一晩十分にバーンインを施したNIRO1000システムを前にして、いよいよ本格的に聴こうと腰を落ち着けた。
まず最初は例によってヨーヨー・マをかけた。「何これ、どうしちゃったのかしら!」と思うほど楽音の鮮度が高い。余韻のひとかけらまでしぼりつくすような描写力は海外のアンプでも希有なレベルであり、見晴らしの良さといったらあっけに取られるほどの空気感の清浄能力である。そして何よりもフォーカスイメージが見事なので遠近感が凄い。ちょっと興奮してきた。早速大貫妙子のヴォーカルにソフトを入れ替えて聴きたくなった。ギターとウッドベースのイントロがポーンとノーチラス801から周辺の空間に飛び出してくる。いい、いいぞ、と彼女のヴォーカルが入ってくるのを心待ちにしていると、「これって、本当?」とわが耳を疑うほど口元の輪郭表現にエネルギーが収束しているのが感じられ、しかもエコー感の消失にストップウォッチを使いたくなるほど見事な滞空時間の残響を目前の空間に展開していく。さらに興奮してきた。それでは、とジャニス・イアンのブレーキング・サイレンスをパワーを上げて挑発的にかけてみることにした。ジャニスがオーバーダブで一人三役でトリオのコーラスを構成する導入部でゾクッと息をのむ。オンぎみに録られているジャニスの声がハスキーにさしかかる手前で表現される息づかいの生々しさ、そしてトリオとして左右に展開するコーラスとセンター定位のヴォーカルの分離が素晴らしい。各々にエコーを発するのだが互いのテリトリーを侵すことなく三人のジャニスのエコーが拡散と収束を繰り返す。そして、強烈なリズムセクションが瞬間にして放つパッションでは歪み感をまったくと言っていいほど感じさせない。本当に150Wのパワーなの、と我が耳を疑うドライブ感である。叩き付けるドラムの連続にコントロールを失うことなく、さらに複数のドラムによる連打にドラムひとつひとつの音色の違いを正確に捉え、そしてベースとの分離が見事に音程感を維持して演奏を推し進めていく。
これ以上の文章表現を続けていくと随筆と同じスケールになってしまうのでこの辺にしておくが、過去にビクターの300万円/デンオンの400万円というモノパワーアンプを聴いているが、両者には申し訳ないのだが次元が違うとしか言いようがない。MRCもリファレンススピーカーにはノーチラス801を使用してきたという。ここで行なって即興の実験とデモンストレーションでNIRO1000システムとN801の更なる可能性が確認されたものであり、それを一人でも多くのユーザーに紹介していきたいと私は考えている。 これまでに私が知り得たノーチラス801の最高レベルの音がまたひとつファイルされたのである。
この二日間でオリジナル・ノーチラスのオーナーが五人、その他にも相当耳の達者なお得意様がちょうどNIRO1000システムを聴く幸運に遭遇したが、皆一様に高い評価をされ驚きとともに感想を述べられていった。私の最終評価も同様である。セッティングのノウハウを心得てという条件つきであるが、国産アンプで最高であり世界に通用するアンプの登場であると断言するものである。
このNIRO1000はCONTROL ENGINの最終的な仕上げにもうしばらく時間をかけ、2000年3月くらいから出荷の予定であるという。私が、これほどまでに太鼓判を押すメイド・イン・ジャパンのハイエンド進出を確認したいという方。そして、その発言の責任をとってNIRO1000システムのセッティングを完全なものにしてヒアリングできる場所として、私のフロアーをMRC社が指定されることを望まれる方。MRCに皆様の期待感を伝えてはいかがでしょうか。私も頑張って最高のサウンドクッキングをご披露いたします。>>我慢できない方はご相談ください。個別の試聴を準備させて頂きます。

株式会社メカニカルリサーチ
URL.http://www.niro.net  http://www.ena.co.jp/axis/    tel 03-5987-8600

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No.090 「PAD DOMINUS による WADIA POWER-DACとオリジナルノーチラスの共演」
次世代ワディアのフラッグシップモデル/WADIA590の前哨戦! 世界初の試み、パワーDACのD/Aコンバーターのみを使用してオリジナル・ノーチラスを鳴らす! 1月20日までWADIA790のファイナル・プロモーション実施! 試聴評価の詳細は近日掲載予定。どうぞご期待下さい。聴いておかないと損をします。 どうぞご来店を。

昨年PADのジム・オッド氏が来訪された際に、これが最後の曲ですといって演奏したのがジョン・ウィリアムズ&ボストン・ポップス・オーケストラの「SWING!」(SONY RECORDS SRCR9725)であった。その選曲をオッド氏はいたって気に入られ、自社に持ち帰りプロセッシングしたものをプレゼントして下さるという。そのプロセッシングの手法は明確に明かしてはくれないのだが、彼の用いているスーパーコンピューターに市販ソフトのデータを7回読み取らせ、それらのデータのアベレージを計算したうえでCD−Rに焼き付けるというものらしい。私の推測半分のものであり詳細は不明なのだが、オッド氏の手によってプロセッシングされたソフトは同じ音源のはずが何でこんなに良くなってしまうのかと不思議に思えるほど情報量が拡大(復元というべきか)されているのである。そのプロセッシング済み「SWING!」が手元に届いてからはオリジナルは聴かなくなってしまい、また私のテスト盤の定番が1枚増えたのであった。

さて、パワーDACの評価における最終段階として単体のモノラルD/Aコンバーターとしてラインレベル信号を取り出してオリジナルノーチラスで聴いてみようと考えた。 対象比較したのは当フロアーのリファレンスとなっているマークレビンソンのNo.30.6Lであるが、公平を期するために各々のライン出力からプリのコヒレンス2まではPADドミナスのバランスケーブルで統一することにした。そして、P−0のデジタルアウトからdcs972に一旦入力し、96キロ24ビットを生成してワディアとレビンソンの両者に供給するという最上の条件を用意した。パワーDACのDACボードは基本的にはワディア27iXと同等とされているが、ワディア790のクリーンで強力な電源部とL/Rモノラル構成という土台が根底から違うものであり、ワディア590として発売を予定しているものとは限りなくニアイコールであるというものである。 64倍にリサンプリングされたデジタルシグナルはクロックリンクを伴って各々のワディア790にインプットされるが、DACチップの使い方は半端ではない。プラス・マイナスそれぞれ4個ずつのバーブラウンPCM1704が計8個使用されており、デジタル領域からバランス伝送を実現しているのである。その後スウィフトカレント回路をバランス状態で通過しI/V変換され、GICフィルターを通ってパワーDACのスピーカー出力端子を目指すものとラインアウトへと分岐する。そのラインアウト用シグナルはボルテージゲイン・サーキットを通じてバランス伝送のままXLR端子へと導かれ、そこからバランス・ドミナスへとバトッタッチしてアナログアウトを供給するのである。 私はパワーDAC最後の試聴評価には執念を燃やした。PADのシステムエンハンサーを一晩リピートさせ、更に6時間は通常の音楽を再生した後にやっと腰を落ち着けての試聴を開始した。ノーチラスへのシステムにおいてパワーアンプをはじめとして全て48時間以上のウォームアップをした上での試聴であり、真冬だというのにアエコンは絶えず冷房をいれっぱなしという何ともエコロジーに反したコンディションである。比較したマークレビンソンも330万円という高価な製品だけに、各論を述べての緻密に過ぎるコメントは製品のイメージダウンにつながる可能性もあり差し控えることにした。どうぞご理解頂きたい。

さて、前述のプロセッシング済み「SWING!」の1トラック「Don't be that way」をかける。左よりに展開するストリングスと右よりに展開するシンコペーションをきかせたブラスセクション、この対比の中でリズムセクションの奥行き感がどう共存するか。冒頭の数分間で既に多くの相違点が発見された。しかし、この私でも3回4回と繰り返して注意深く観察してからやっとわかる程度の違いである。そして、やっかいなのはワディア790の特徴をここぞと特定すると、その後は何を聴いてもそのキャラクターを 思い知らされるのみなのである。まず解像度が素晴らしい。各パートの楽器群がそこにいるというだけの存在感ではない。客席から見上げるステージにわずかな傾斜があって、ブラスセクションがストリングスのそれを頭一つ高い位置で演奏しているような、あるいはドラムとベースのリズムセクションが放つ低音階の余韻がちゃんと空間の中で制御されている実感がある。つまり、簡単に言うと低音はズッシリと重い質感でありながらエコーの部分でふくらまず、ブラスセクションの本数と位置関係を写真で見るように数えることが出来、そしてストリングスは願ってもないエコー感をちゃんと残しながら遠近感と潤いを感じさせてくれるのである。いい、これはいい。思わずゾクッとする感激を押し殺して大貫妙子に替える。ヴォーカルのフォーカスイメージが「あらあら、どうしちゃったんだろう。」と首をかしげるほどに鮮明になっており、かつ彼女のエコーを左右ではなく上方の奥へと展開させるのである。これもいい。フォーカス感と解像度、そしてエコー感とのセパレーションが三次元的なのである。これって絶対モノラル構成というメリットかしら?D/Aコンバーターのリファレンスに新たに加えるべき価値観を十分に感じ取ってしまった。誤解があってはいけないので明確にコメントしておくが、マークレビンソンにおいて前述の各々の項目がダメと言っているのではない。あくまでも選択肢が増えたということである。それにしても、まずい、またここの展示量が増えてしまいそうだ。

ここで起こったことはPADドミナスと96キロ24ビットへのアップコンバートというdcs972のサポートをフルに受けての現象であり評価である。そして、まだ登場していないワディア590の仮の姿を垣間見たに過ぎないのだが、将来に対するハイサンプリングとハイビットの次世代にワディアが何をもくろんでいるのかがはっきりと認識された。既に設計段階で192キロ24ビットに対応しており、高価なものになるであろうが将来性を保証しているワディア590。そして、それが完成したときにも真価を発揮させるノーチラスシステムとPADドミナスは生き続けることだろう。さあ、2000年1月20日まで、この世界初であり地上最高レベルの演奏を聴いた幸運なユーザーは将来に何を思うのだろうか。夢の続きも実現も、ちゃんと私がお相手させて頂きます。

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No.089 「PAD DOMINUS によって進化した WADIA POWER-DAC」
これまでACドミナスを使用してからのパワーDACの変貌ぶりに驚かされていたのだが、その進化と熟成にはまだまだ続きがあったのである。前回はワディア390と左右のワディア790本体に3本のACドミナスを投入しての変化を述べているのだが、待望していたドミナスのバランス・デジタルリンクがやっと到着した。dcs972から96キロHzにアップコンバートしてWADIA390に入力するとフルデジタルの威力を発揮して素晴らしい演奏を聴かせてくれるのだが、このdcs972からWADIA390の接続に待ちに待ったAES/EBUのドミナスが到着したのである。そして、従来はワディア790本体に使用していたACドミナスはカルダスのパワーケーブルを中継した形であったのだが、これも壁コンセントのCRYO−L2から3メートルのACドミナスとエクステンションボックスを通じて完全にドミナスによる給電状態を完成させたのである。これでパワーDACシステムにおける電源環境とデジタル入力部において総合的にドミナスを使用し、考えうる理想的なアイソレーションが仕上がったわけである。

最近の選曲はまずこれから。御馴染のヨーヨー・マが演奏するホールが一回り大きなものに感じられ、見晴らしがよくバックの伴奏楽器にもピッタリとフォーカスが合う快感が何とも言えない。これには驚いた。正直にいって私は集中力を高める寸前の状態で気軽にスタートボタンを押しただけなのである。音楽がいっぱい吹き込まれた風船の薄い表皮を通して聴いていたのだろうか、オールドミナスでの再生をはじめたまさにその瞬間に風船がパンッ!と割れて閉じ込められていた余韻と空間情報がノーチラス801の周辺にパッと展開したようである。一聴しただけで拡がりが段違いであり、パワーDACが何のために生まれてきたのかを、恐らくワディア社の設計者も想像できなかったレベルで思い知らせてくれるのである。大貫妙子のヴォーカルに曲が変わっても、その魅力はますます冴えるばかりである。静寂さの中に消えていくエコーの何と美しいことか。デジタル・オーディオの神髄は昔からダイナミックレンジの広さにあったわけだが、その深々とした静寂感の深淵さはアナログコンポーネントには真似の出来ない世界である。
昨夜アナログレコードが再び人気を集めているというテレビのレポートが流されていたが、私はアナログへの回帰を否定も肯定もしない。しかし、私がLPを聴いていたころにはデジタル録音と大きく書かれた帯に目を留めて興味津々で聴いていたものである。「ああ、やっぱりデジタル録音はS/Nがいいなあ」などとアナログ時代においてデジタル録音を称賛し、来たるべきデジタルオーディオの登場を夢にみたものである。ところが、CDが普及するにつれてデジタル臭いだとか無味乾燥だとか、せっかくの技術進歩を未熟であると責め立てる人々が表れるではないか。確かにCDに代表されるデジタルオーディオが未熟な時代があったのは認めるのだが、それではアナログオーディオは完成されたと断言できる人がいるのだろうか。統一された工業規格や品質管理の指標がなかったLPは、偏心はあるはソリはあるはセンターホールの大小はあるはと、いい加減なことはなはだしい記録媒体ではなかったろうか。わずか20倍という倍率のルーペがあれば、アナログオーディオの入り口であるピックアップカートリッジのスタイラスを観察することが出来た。しかし、CDのピットは0.5ミクロンという超ミクロの世界であり電子顕微鏡でしか見ることの出来ない領域である。私は思うのだが、これほどのミクロの世界でオーディオ信号を記録再生することが出来るようになったということは、技術的視野が想像を絶するほど拡大したということであり、音質評価のパラメーターの数が飛躍的に拡大したということだと思う。そして、この技術分野と音質評価の指標を拡大することに世界中のエンジニアが情熱を燃やしているのだから、間違いなくオーディオの世界はエンドレスなのである。従って、アナログオーディオが衰退していったというのは技術的向上に限界を感じてしまったという事実の表れでもあり、デジタルオーディオに関しては加速度的な技術革新によって次々に未知の世界が発見され開拓されるというフロンティアであるに違ない。パワーDACの登場と本来の実力を確認しておくことは、オーディオという趣味に更なる目標提示を受け入れる寛容さと勇気のある方に与えられる幸福感の実例でもある。これを聴かずしてオーディオの21世紀はない。

さて、話は変わるがPADドミナスケーブルをレコーディングに使用したCDが2タイトル発売された。東芝EMIよりトルヴェール・カルテットの「デューク・エリントンの時代から」(TOCE−55095/HDCD収録)と、佼成出版社音楽出版室より東京佼成ウィンドオーケストラの「チャリマータ!」(KOCD−3023)である。実は、この2作品を録音編集されたエンジニアのK氏は私の古いお得意様であり、これまでにもK氏のレコーディングには陰ながらお手伝いをさせて頂いた経緯があったのである。 個人的にも熱心なオーディオファイルであり、ドミナスもサンプルを聴いて頂いたところ即決でオーダーを頂き複数本をお求め頂いていた。しかし、さすがにレコーディングの機材すべてにまかなえる本数ではなく、シーエスフィールドの今井氏を通じて援助をお願いしたものであった。従って、この2タイトルのライナーノーツの最終ページにPADドミナスを使用したことと、今井氏と私の名前がSpecial Thanksとして書き込んで下さったのである。私などの立場ではもったいないような話しであるが、社名入りのクレジットであり、これも仕事の一環としてありがたくサンプル盤を頂戴したものである。

このトルヴェール・カルテットは4本のサクソフォンによる演奏であるが、これまでの作品も試聴に使用できるレベルの録音であり演奏も素晴らしいものだ。そして、レコーディングにドミナスが使用されたというのも初耳のエピソードであり、最高レベルの状態にセッティングしたパワーDACで聴けるなど大変な幸運でもある。録音は99年8月に長野県新田郡笠懸町にある笠懸野文化ホールで行われ、ジャケットの写真を見る限りでは内装に木材を多用したいかにも響きのよさそうなホールである。録音された当事者に聴いて頂くと「ホールにいるみたいだね。サクソフォンは音量の大きな楽器なんでピアノの音がマスクされてしまうところを上手に録るのが難しいんですよ。でもピアノのニュアンスがこんなによく聞こえるなんて驚きです。」とプロから上々の評価を頂戴する。私は12トラックめに入っている「Duke's Time」というタイトルの16分におよぶ長生淳氏編曲の演奏がすっかり気に入ってしまい、その演奏中のいたるところで確かにホールエコーが大変美しく収録されている。そして、これまでトルヴェール・カルテットのアルバムは何枚も聴いてきたのだが、不思議とサクソフォンの音色にストレスがまったく感じられず音量も自然と上がってしまうのである。私はK氏に初歩的な質問をした。「このスピーカーとの距離は4、5メートルというところですが、もし同じ距離で彼らのサックスを聴いたときのボリュームはどうですか?」すると「いやいや、これより生の方がもっと大きく聞こえますよ。」とおっしゃる。ダイナミックレンジの大きさは生に勝るものはないのだが、このカルテットの背後に響き渡る音場感はドミナスの存在を明らかに表現しているものである。最近私はすっかりドミナス中毒にかかっているので、ここで演奏しているシステムからドミナスが1本でも欠落、もしくは不足していると耳でわかってしまうほどになってしまった。もし、その私がレコーディングにドミナスを使用しているということを事前に知らされていなかったらどんな反応をしていたのかを思わず自問自答してしまった。とにかく、このCDに収録されている音場感の拡がりと楽音のニュアンスのスムーズさ、そして見事なエコー感は現行フォーマットの極地点を示すものであり、先程述べたデジタルオーディオの完成へといたる大きな進歩として評価出来るものである。

次の東京佼成ウィンドオーケストラは今年9月にパルテノン多摩大ホールで収録された吹奏楽であり、近代のアメリカの作曲者の作品をゲストコンダクター山下一史氏の指揮によって演奏されたものである。メインマイクにはノイマンのM−149、コンソールはステューダー962、A/DコンバーターはJVC 20−bit K−2、PCMレコーダーはSONYのPCM−9000、そしてメインケーブルとしてPADドミナスがテクニカルインフォメーションとして記載されている。Special Thanksとして同様に今井氏と私の名前もクレジットされている。全編にわたりホールのスケール感を意識させるスピード感ある残響の飛散が壮快であり、グランカッサを多用するアメリカ的な曲に興奮してしまうリズミカルな演奏が続く。そして、驚くべきことは強烈な金管楽器群のフォルテが繰り返されても顔をそむけるような刺激臭は皆無であり、ギラギラしたまぶしさに目を細めるような音の逆光成分はまったく感じられないのである。実に気持ち良くノリのいい演奏に時間を忘れ、これもトルヴェール・カルテットと同様にレコーディングにおけるドミナス効果をさりげなく発揮している秀作である。

以上の2タイトルはPADを使用されている方、もしくはPADをこれから検討しようとしている方、そして音楽が好きでたまらないという方に私からお勧めする作品である。願わくば、K氏にもこれからのレコーディングでドミナスをますます採用して頂ければと希望するところでもあり、ケーブルというサブ・コンポーネントに対する価値観がレコーディングサイドでも正当に評価される時代になってくれることを願ってやまない。 とりあえず、皆様には上記2タイトルの作品でドミナスのエッセンスがほんの少しでも伝わるものであれば私もうれしい限りである。

今後DVDオーディオやSACDなど次世代フォーマットによりハイサンプリング/ハイビットの普及が進むであろうが、今回パワーDACという最先端のハイテクを駆使したシステムにおいてもPADドミナスの価値が発揮されたことを大きな収穫として私は認識した。ケーブル内を伝送される信号の情報量が拡大すればするほど、ケーブルの能力が問われるという単純であり明確な事象を確認し、未来のハイエンドオーディオに更に新しい期待を感じるこの頃である。実をいうと、この原稿は99年12月29日に書いたものであるが、思えば今年3月にシーエスフィールドの今井氏と出会ったことがビジネス面においても、また当フロアーのデモ・クォリティーにおいても、そしてレコーディングの現場への採用にしても各方面への大きな飛躍の年であったと考えている。 新年には新たなプロデュースの計画が複数予定されており、決して日本全国のオーディオファイルを飽きさせることのないプログラムに意欲を燃やしている。

 

2000年のいつか、またここH.A.L.でお会いしましょう。 どうぞ、皆様もよい新年をお迎えください。

そして・・・・ a happy new year’2000

T Kawamata

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No.088 「まさにグッドタイミングの新製品dcs Purcell登場!」
最近のブリーフニュースで興奮しながらお伝えしているパワーDACであるが、その使いこなしの中で紹介しているのがdcs972D/Dコンバーターである。この972からSPDIF/2によるDSD方式へのコンバート機能を省略し、同社のエルガーに共通するデザインでコンシュマー向けに開発されたのがPurcellである。従って最大192KS/s、24ビットまでのコンバートを可能にしており、dcsはもちろんのこと各社のD/Aコンバーターにハイビット・ハイサンプリング信号を供給できるものとなる。価格は110万円なのだが、最も注目すべきは日本ではたったの30台限定販売であるという。ただ今現在はあわてて原稿を書いているので詳細まで述べるゆとりがないのが残念だが、この30台限定というのはビッグニュースではなかろうか。簡単な資料のみしかなくカタログは作らないとのこと。ご希望の方へはFAXや郵送などで送りますが、30台の売れ行きはどうなるか見当が付きません。行動は早めの方がいいですよ。メールをお待ちしています。
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No.087 「WADIA POWER−DAC & PAD DOMINUS」
ここにはオリジナルノーチラスのオーナーたちが週末ごとに集まってこられる。オリジナルノーチラスを使用しておられる方々から見るとN801は弟分として認識されており、このフロアーでエレクトロニクスを吟味する際のリファレンスとしては役不足の感がある。しかし、4ウェイマルチのオリジナルノーチラスではパワーDACを試聴することは出来ない。ただ、私も気にしているのだがコントローラーのワディア390にはSTリンクの出力が8系統あるのだ。クロックリンクを用いるためにパワーDAC本体1台につきSTリンク2本を使用するのだが、ワディア390を3台用意したらノーチラスを鳴らすことが出来るだろうか。まず1台のワディア390に対してトランスポートからデジタル信号を供給する。この際、1台のワディア390にはSTリンク以外にバランスデジタル入力を1系統増設しダブルAES/EBUで192キロHzサンプリングを入力可能としておきたい。これを通常の使用状態と同じく左右チャンネル各々2本ずつのSTリンクで2台のワディア390に分岐させるのである。この2台のワディア390それぞれから左右合計8台のパワーDACに信号を供給するのである。そして、肝心なパワーDAC本体個々にはノーチラスの付属チャンネルディバイダーが持っている帯域分割/ミッドハイレンジの遅延回路/ウーファーの低域補償などの機能をデジタル領域でプログラムしてもらう。きっと凄いだろうなァ、とひとり夢物語を思い浮かべてしまった。地球上で最高の、そして生涯最高のシステムを予算を無視して購入したいという人が表れたら、米国のワディア社と英国のB&W社の双方に交渉してドリームシステムをプロデュースしてみたいと思う。どなたか宝くじが当たったらチャレンジしてみませんか。
さて、パワーDACの可能性に身勝手な夢を見ながら日々パワーDACのバーンインが進行していくのが感じられる。12月12日のこと、試聴用サンプルとして貸し出していた20アンペアACドミナス2本が戻ってきた。待ち兼ねていた私は早速ACケーブルをドミナスに取り替える。ワディア390にも15アンペアのACドミナスを使用するので合計3本を必要とする。これらはすでにある程度の通電を行なっていたものを差し替えたので早々に判断できそうだ。まず、決まりになっているヨーヨー・マを最初にかけた。「エッ!」と思わず我が耳を疑う。五日目になってますます円熟味を増したと感じていたパワーDACの表現力に今まで何の不満も持たなかった。いや、疑問を呈するスキを与えるようなレベルの音ではなかった。しかし、この変化はどう例えたらいいのだろうか。ヨーヨー・マのチェロのフォーカスは更に一層コンパクトな収束を見せているのに、彼が体をゆらしながら演奏するチェロのエコーはより広範囲に、そしてスピーカーの奥行き方向へと拡散していくのである。それほど微細なエコーのなごりを耳で感じる残像のごとく聴かせるということは、すなわちノイズフロアーが更に低下しているという証でもある。極めて大きいダイナミックレンジを誇るデジタルオーディオであるが、その底辺となるS/N比を考えれば、もはやシーとかシャーとかいう質感のノイズは論外であり感じることもないだろう。しかし、演奏の周辺に漂う空気の鮮度をイメージさせるような、あるいは演奏の背景にあるキャンバスを白地からガラスの透明感に変化させるような、そんな微妙な音場感の変質はもはやS/N比という尺度では語れないような気がする。やはりノイズフロアーの認識というのは聴感上で行われるべきものであり、測定器につながれるマイクロホンでは分類の出来ない情報評価なのであろう。とにかく静かになると同時に滑らかさを増した弦楽器の音色は格別であり、こんな音は聴いたことがなかったという常套句を再度使うことになってしまった。大貫妙子はどうだろう、とほぼ推測の範疇にありながらも曲を変えてみた。「やっぱりそうだよ。」目の前の丘を登りきると遥かなる眺望が目の前に展開するのを期待しつつ、息を弾ませながら斜面を駈け登ったあとの満足感があった。ヴォーカルの背後にこれだけのエコーをしまい込めるゆとりの空間があったことをパワーDACとドミナスが教えてくれた。一度ドミナスでパワーDACを聴いてしまうと、標準品としていっしょに販売しなければいけないくらいの必要性を感じてしまう。
私はいつもドミナスを試聴されたお客様に申し上げているのだが、ダメなスピーカーを素晴らしい演奏に変身させるケーブルはありません。ダメなアンプをよみがえらせるケーブルもありません。ただただ、潜在能力として本来製品の価格のうちに秘められている魅力をそのまま引き出してくれるケーブルが存在するのみです。パワーDACを開発する過程でワディアのエンジニアたちが聴いてきた音、そのパフォーマンスを上回る演奏がここ東京で聴けるとしたら、それは彼らのプライドを傷つけることになるだろうか。いや、私はそうは思わない。自分たちが誕生させたコンポーネントが、より高い極みに向けて成長していくことを喜んでくれるのではないかと考えている。ドミナスはすべてのコンポーネントに対して大いなる成長を促すサブ・コンポーネントであり、決して主役の座をパワーDACから奪いさることはないだろう。
本場アメリカでも聴くことの出来ないレベルの音がここでは演奏されている。それはコンポーネントを作り出す、すべてのクリェイターたちの感性が望ましい形で発揮され進化する現象と言える。そして、それを聴き評価する日本のオーディオファイルたちによって、そのレベルは更に高いものへと更新されることだろう。その一員に皆様も参加されることをお勧めする。
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No.086 「H.A.L.1担当川又の年末年始スケジュール」
通常は毎週木曜日が定休日ですが、12/23(木)は出勤し翌24日に代休を頂きます。年末は12/30(木)まで出勤し新年4日までお休みを頂きます。木曜日ですが5日より出勤しており以降は通常のサイクルとなります。どうぞよろしくお願いいたします。
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No.085 「次世紀の音を聴いた。凄い!WADIA POWER−DAC!」
12月8日予定通りワディア・パワーDACが搬入された。ゾウセカスのZ.BLOCK2がジャストサイズなので慎重に乗せてみる。アイソディスクと呼ばれるクッション材を数十個下面に貼付てある棚板が、パワーDAC本体の重量114キロを受けて音もなくシュッと沈む。電源に関しては当フロアーの40アンペアのコンセントからカルダスのヘックスリンクパワーケーブルとパワーストリップ・コンセントボックスを使用し、製品に付属するごく普通のベルデン社製の黒い20アンペアACケーブルを使用する。エソテリックP−0からSTリンク光ケーブル1本でまずコントロールユニット・ワディア390に入力し、そこから左右各々のパワーDAC本体にSTリンク2本で接続が完了する。まず最初のスピーカーは聴きなれたノーチラス801、ケーブルはもちろんPADドミナスのバイワイヤーケーブルを使用した。期待に胸膨らませて1曲目はヨーヨー・マのシンプリーバロックをかける。「ウン、私から見ると普通の音だね。もちろん悪くはないけど感動するほどじゃない。ご他聞にもれずバーンインが完了しないとだめでしょう。」搬入してくれたアクシスの木村氏も同社の試聴室でも三日目から良くなったとおっしゃる。明日は私も休みだし、このまま放っておこう。
翌々日の10日、出勤してきてドアをあけると何と適度な暖房が入っているではないか。常時4アンペアを消費し本体上部に格納されたファンでクーリングを行なっているパワーDACは、まるで主の出勤前に部屋を暖めて待ちかねていたように48時間のウォームアップを経て準備万端とそれ自身の体温でアピールしているようである。休み明けということもあって電話とデスクワークが昼過ぎまで続く。一昨日の印象からあまり熱いものを感じなかった私は、再度来るという予定の木村氏が来てからでいいだろうとゆったりと構えていたのである。その日の夕刻アクシスの木村氏が「どうですか?」と再度やってこられた。「いや、申し訳ない、まだじっくりとは聴いていないんですよ。」と仕事の手を休めてセンターポジションにすわり、一昨日と同じヨーヨー・マをかける。
最初の10数秒聴いただけでリモコンのポーズボタンに指が走った。木村氏は何事かと心配そうな表情をしている。「これ、これいいよ。」と一言だけ告げてポーズを解除する。ノーチラス801で聴くヨーヨー・マのチェロでこれほど鮮明なシルエットを感じたことはない。響きを誇張しても違和感を感じにくいチェロという楽器が、これほどジャストフォーカスに凝縮され極小の投影面積で聴いたことがない。しかも、そのエコー感たるや新鮮な果実から絞り出されたフレッシュジュースのごとく口の中いっぱい、この場合は耳と聴覚中枢そしてハートに余韻の果汁が飛び散っていくようである。正直に言います。一昨日とは別人のようなパワーDACの変貌ぶりに戸惑いながら実感する。この私でも、こんな音は聴いたことがない。
大貫妙子の「四季」を立て続けにかける。凄い、このヴォーカルの引き締まり方は過去に記憶がない。ノーチラス801が構成する4メートル先のスクリーン上に、ゴルフボールを投げ付けて出来た穴から彼女の湿った口元がクローズアップされたようなヴォーカルがほとばしり出てくる。イントロのギター、後半から加わってくるストリングス、そして極めつけがカキィーンとエコーを引いて消えていくクラヴィスの余韻の滑らかさである。この私でも、こんなノーチラス801は聴いたことがない。48時間のバーンインがこれほどの変化をもたらすとは、そしてパワーDACの実力とワディアのビジョンがこれほどのものだったとは。次から次へとソフトに手が伸びてしまい仕事にならない。久し振りの興奮状態である。ということは更にバーンインを進めると更に可能性が高くなるのだろうか。PADのシステムエンハンサーをリピートして更に一晩約15時間に及ぶバーンインを続けることにした。
そこで、ふと思った。三日目にして本領を発揮したと信じるパワーDACに対して、インターナショナル・オーディオショーや雑誌各社の取材に関して一体何時間のウォームアップの末に試聴し評価したのかと疑問に思えてくる。かく言う私も11月6日に行なった当社のマラソン試聴会においては十分なウォームアップをせずに演奏していたのであり、このパワーDACの本当の音はまったくと言っていいほど未体験のものであったことを認めざるを得ない。ハイエンドオーディオとはこういうものかもしれないが、このパワーDACに関しては数時間のウォームアップでは価格に相応するクォリティーは全然発揮されないということを本日の段階で明言するものである。
通電開始から四日目、「さあ、鳴らすぞ。」と席についてふと思ったことがある。近来のワディアは96キロHz24ビット対応である。ということは、目の前にセッティングしてあるdcs972MK2が使えるぞ。早速972のパラメーターを操作してアウトプットサンプリング周波数を96キロHzに変更し、AES/EBUでP−0とワディア390の三者間を接続する。これでSTリンク44キロHzとバランスデジタル96キロHzをワディア390の入力で切り替えることによって比較試聴が出来るようになった。最初はSTリンク44キロHzでヨーヨー・マの1トラック目をかける。「ふむふむ、いいねぇ。」と満足気に聴いていたのだが、バランスデジタル96キロHzに切り替えた瞬間に私の評価はアップデートされてしまった。「なんだこれは!」今まで仕事柄ハイサンプリングの音はDVDをはじめとして何度となく体験してきたのだが、これほど情報量の格差を見せつけられたことはない。無職透明、完全無欠と今までワディアが主張してきたSTリンク、いやSTリンクを採用しての44キロHz伝送の解像度はこの程度だっただろうか。いや違う、伝送方式が光ファイバーであろうが電気的ケーブルによるものだろうがサンプリング周波数という高レベルの技術的恩恵がもろに表れているとしか言いようがない。圧倒的に96キロHzが素晴らしい臨場感をもって今までのヨーヨー・マをよみがえらせてしまった。直ぐに大貫妙子をかける。「ちょっと待ってよ。」何ともあからさまな彼女のエステ帰りのような美貌(美声)への変化に戸惑いを覚える。この前まで、いやこれまでに聴いてきた大貫妙子の声には透明なビニールの保護シートがピッタリと貼付られていたのだろう。ここで聴こえてくる彼女のヴォーカルとバックの演奏すべてから、ペリペリと音を立てて保護シートをはがしてしまったような爽快感が感じられるほど、透明度が高く視界が開けた空気感を感じるのである。四日目のヒアリングは驚くことばかりである。
それでは、と最近のテストで定番となっている頂き物のCD−Rを取り出した。PAD社長のジム・オッド氏からプレゼントされたオムニバスCD−Rである。ジャニス・イアンの「ブレーキング・サイレンス」はその中でも一番のお気に入りである。ジャニスのヴォーカルがソロで歌いはじめる。この瞬間に今までと違う空気をパワーDACは室内に発生させた。静かなのである。ノイズフロアーが抜群に低く抑えられている。オーバーダブしたコーラスは、これでもかという程の分離感を見せて展開しギターがポーンと左チャンネルから張り出し、そのスタジオ風エコーが右方向へ余韻を引っ張っていく。リズム楽器が一斉にタイミングを合わせて打ち鳴らされる迫力、しかし混濁や輪郭の破綻は一切なくビシッとブレーキングされたベースとドラムの制動感はノーチラス801を10キロ以上ダイエットさせたと思うほどキッチリとダンプする。あのウーファーがこれほどの再教育を受けようとは想像も出来ないほどにガツン!と止まるのである。「これって、気持ちいいね。」歪み感がまったくと言っていいほど感じられないのでボリュームは無意識のうちにどんどん上がっていく。D級アンプと称しているパワーDACにはアナログ・パワーアンプで言われるような出力表示はされておらず、無理して置き換えれば300W程度と聞かされている。しかし、この完璧な自制を維持しての躍動感は私が従来分析してきたアナログアンプのパワーに対する概念について、完全な記憶喪失状態を作り出してしまったようである。1000W、600W、等々呆れるほどの巨大パワーを発生させるヘビー級アンプと長年つきあってきた私でも、このパワーDACがもたらしてくれた瞬間的なエネルギーの放出というテンションの高まりを感じたことがない。しかも、まったく歪み感やにじみがないので心地良く大音量のライブ演奏が実現してしまったのである。
同じソフトの12トラック目にはロジャー・ウォータースの「トゥー・マッチ・ロープ」という曲が入っているのだが、これがまた興味深い音が盛り沢山に納められている。 なにやらゴールドラッシュと西部劇を思わせる効果音のシチュエーションが展開され、硬い岩にツルはしを打ち込む音が男のあらい息づかいとともにガシッと繰り返される。どうしたらこんなに高速反応する打撃音が出せるのだろうかと、尋常ではない加速感に見事に反応するノーチラス801に関心する。これほどの緊張感を苦痛を伴わず、むしろ快感として叩き付けるパワーDACの瞬発力には呆れるてしまう。これほどノーチラス801の手綱を引き絞ったアンプはなかった。そして、次には鈴を鳴らしながらのひづめを響かせる馬車の通過音が登場する。左前方から右側へと平面的に目の前を横切っていくものとばかり思っていたのだが、位相を完全な形で再現するパワーDACで聴くと移動感がまったく違うのである。左チャンネルのスピーカーの更に外側から遠方の馬車が徐々に接近してくるという遠近法を正確にとらえ、私の頭の上を通過して右後方に馬のいななきを残して去っていくのである。正確に位相のアレンジを再現できるパワーDACは、2チャンネルでも恐ろしいほどのサラウンド効果と三次元定位を実現してしまった。さあ、ロジャー・ウォータースのヴォーカルが入ってきた。ウーファーのレンジまで使ってしまうような渋いヴォーカルは見事に空間に浮かんでいる。反応の遅いアンプではベッタリと張り付いたような平面的な表現になってしまうのだが、高速反応のパワーDACではウーファーにヴォーカルを歌わせてしまうという離れ業を何とも軽くこなしてしまうのである。オリジナル・ノーチラスを彷彿とさせるヴォーカルの空中浮遊というマジックを平然とやってのける。私でも、我が目を疑う光景が眼前で展開する。私は思うのだが、正直に言ってパワーDACをここで分析する前はワディアが長年の労力をかけてパワーDACの開発に取り組んできた真意を理解していなかった。いや、正確に言えば聴くまでは理解しようとする動機さえ持っていなかった。1,190万円という価格を考えると、それだけのコストをかければ世界最高級のプリ/パワーアンプとD/Aコンバーターが買えるだろう。それらと同じレベルの音を聴かせてくれただけでは、情熱的なユーザーにお勧めするだけの私に対する説得力を感じることはなかっただろう。つまり、アナログアンプの単なる置き換えだけでは意味がないということである。しかし、今実物を聴いてわかった。このパワーDACと同じ音はアナログアンプにいくら投資しても出ないものであるということが。ノーチラス801の極限の演奏を体験したいという方は、ぜひパワーDACがあるうちに来店されることをお勧めする。デジタルオーディオは本当の意味でやっと今始まったような気がする。〈つづく〉

12/17・18・19の三日間は取材のため一時パワーDACは外出しております。
12/20にカムバックしてきますので、ご来店祭にはご注意下さい。また、今回は書き切れずにいったん締めくくりましたが、今回のレポートにはまだまだ続きがあります。たとえばパワーDACのACケーブル、デジタルケーブルなどをPADドミナスに変更したり、スピーカーにレベルのサロンを使用したり、そしてWADIA790を単体のD/Aコンバーターとしてラインアウトを取り出しオリジナル・ノーチラスを鳴らしたりとか、私の好奇心を大いにかき立てる課題がいっぱいです。今後に期待下さい。
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No.084 「火がついた!という感じのコニサー3.0とノーチラスのペアリング」
数日間の実演しかできなかったもののコニサー3.0とジェフロウランド・モデル12/4ペアで鳴らしたオリジナルノーチラスの素晴らしさに、来店された数多くのノーチラスオーナーがはまってしまった。とにかく個性の選択というレベルを超えてしまったコニサー3.0の支配力に圧倒されるばかりである。現在は450万円という定価だが来年1月からの受注に関しては540万円以上と2割以上の価格改定が行われることが確定している。もともと採算を無視して1ロットを作ったものの、次の生産分からはどうしても価格を改めないとやっていけないとのこと。ちなみにアメリカへ輸出されたコニサー3.0の小売価格は6万ドルになるというのだから現在の450万円がどうしても安く思えてしまう。もっかのところ正確な値上げ額は決定していないが、製造元は売れ行きが低迷することなどまったく気にもしていないようすである。だって月産で1台か1.5台というペースなのだから理解者だけにお求め頂ければというスタンスなのである。12月上旬には再び当フロアーに登場する予定だが、前述のジェフロウランド・モデル12/4ペアにdcsのプロシステム900を組み合わせてオリジナルノーチラスを鳴らしたら一体どんな世界にワープすることやら。もうすぐの辛抱で実現します。
2000年1月1日より新価格540万円に決定しました。
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No.083 「あのWADIA POWER DACを国内初の店頭デモ実施!」
お陰様で当社の第23回マラソン試聴会は11/6と7に無事終了致しました。本当にたくさんのご来場ありがとうございました。さて、その私がデモを担当した6日にステージに上がったのがワディアのパワーDAC(WADIA790)である。私が必要としたデモ時間を終了後、来場者の目の前で搬出され大阪ハイエンドショーの会場へ向けて徹夜の移動が行われた。インターナショナルオーディオショーでの御披露目と雑誌広告によって存在は知られるようになったもののじっくりと聴いたというエンドユーザーはない。それもそのはずで一般の皆様が店頭にて試聴できるということはなかったのである。それを日本国内で最初に実現するのもH.A.L.である。来たる12月8日より平成12年1月20日までの期間、私のフロアーに遂にパワーDACがやって来る。ペアリングを予定しているのはエソテリックP−0、スピーカーはノーチラス801とレベルのサロンを使用するつもりである。正直に申し上げて私もじっくりと聴けるのは初めてのことであり、いよいよ私の耳で分析を行なう予定である。そして、この1190万円のパワーDACも素晴らしいであろうが、セールスベースで本命視しているのがそのDAC部分のみを単品化したD/AコンバーターのWADIA590の登場である。これは順調にいけば本年度末のサンプル入荷を待っている状況であるが、パワーDACよりD/A変換したラインレベル信号も取り出せるため一足早い音質確認もできるはずである。さあ、このチャンスにH.A.L.に足を運んではいかがでしょうか。
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No.082 「ジェフロウランド・モデル12の魅力がノーチラスを変える」
昨日まではジェフロウランドのMC6でノーチラスの下から3ウェイ分、合計6個のユニットを分担させトゥイーターのみに新製品のモデル12を使用していた。このトゥイーター1個でさえもモデル12がもたらした変化は素晴らしいものであったが、昨日更にもう1セットのモデル12をミッドハイレンジにインストールし上から2ウェイをモデル12が担当することになった。いやはや驚きである。静かになって滑らかになり、その上に音場感が更に拡大するという鸚鵡貝の進化がいとも簡単に実現した。実は、私は11月中にはモデル12を4セット揃えノーチラスを鳴らしてみる計画を進めているのである。これまで4年以上に渡りノーチラスに取組み、サウンドパーク・ダイナの総力を上げて『ノーチラス宣言』をプロモートしているが、その私でも体験したことのないノーチラスの更なる魅力を引き出そうと挑戦するものである。このモデル12に前述のコニサー3.0を組み合わせたとしたら一体どんな音がすることやら。こんなことだから私の好奇心は尽きることがなく、そんな童心をハイエンドオーディオに注ぎ込んでいる姿勢を評価して頂き全国からマニアが集まって来るのである。 皆様も聴いてみたいと思いませんか?地球上で一番美しい音楽を!
モデル12は11/13と14の両日デモ・サンプルを借りての4ペアが揃い前述のコニサーとの共演が瞬間的に実現。現状では3ペアまで揃っているので11月中には常設としての演奏が可能となる見通しです。
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No.081 「予想以上の反響にコニサー3.0を再び」
ブリーフニュースのNo.78で述べているノーチラスシステムへのコニサー3.0のインストールは、来訪された複数のノーチラスオーナーに大きな衝撃を与えた。何と言っても今まで体験したことのなかったオリジナルノーチラスに変身してしまうのである。プリアンプがシステム全体に及ぼす影響力というのはシステム全体、特にスピーカーのセンシティヴィティーに負うところが大きい。ノーチラスほどデリケートな反応を示すものであれば、コニサーの素晴らしさが素直に引き出されるのである。これは歴史に残るプリアンプである。果たして何台まで生産してくれることやら。5年10年先まで平然と使い続けられるクォリティーを有していながら、5年先にはもう手に入らない可能性が大きいハンドメイドの絶品。このコニサー3.0を当社のマラソン試聴会で使用し、その後1週間は私の手元にあるように交渉した。11月13日と14日の週末、H.A.L.に来ると異次元のノーチラス体験ができます。ぜひご来店を。
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No.080 「いい仕事してますねェ!ノーチラスで聴く最新dcsシステム」
随筆の第47話で述べているように、私は製品の向こうに人間性が見えないと販売しない。意外なほど古くから活動をはじめていた株式会社タイムロードは設立されてから早10年たつという。私もレコーディング関係の知り合いが多く、A/Dコンバーターにdcsという耳慣れないメーカーのマシンを使いはじめたという噂をよく耳にしていた。そのタイムロード社がコンシュマー事業部を3年前に設立して発売して最初に発表したのがエルガー(Elgar)であった。当然私も試聴はしていたものの、じっくりと腰を据えて販売するという心境に至らなかったのはひとえに流通機構から発生するインポーターとの距離感があったからである。そうした経過の中でSACDを開発したソニーのエンジニアからdcsの開発力を聞かされ、これはタダモノではないなという感触を持ちはじめたときに持ちこまれたのが最新のシステム900プロ/Ver.1.0である。
10月20日、このシステムを構成するD/Aコンバーターdcs954 、D/Dコンバーターのdcs972 、そしてマスタークロックジェネレーターのdcs992の3台が持ちこまれた。タイミングよくPADのドミナスとRLSで再生されているノーチラスシステムにインストールすることができた。めったにない組み合わせの試聴であり、タイムロードからも担当者が同行してきた。まず、標準として使用しているマークレビンソンNO.30.6LをD/Aとしたラインアップでノーチラスを聴く。この段階でもタイムロードの若き担当者にはかなりの好印象を与えたようである。さあ、いよいよD/A変換部をdcsに替えてみることにした。このシステムの最大の特徴は972 を使ってサンプリング周波数をアップコンバートすることが可能となり、更に1ビット・デルタシグマ方式でエンコードするDSD方式へもコンバート可能でありSACDと同質の再生を可能としたことであろう。dcsを使っての最初の試聴はサンプリング周波数を4倍にアップコンバートした176キロHzでの再生音であった。先程のNO.30.6Lで聴いた音はPADのフルドミナスとRLSにバックされているため、通常のNO.30.6Lの音とはわけが違う。この比較では甲乙つけがたいという印象であり、176キロHzというオーバーサンプリングの御利益はさほど感じられない。いやいや、誤解のないように申し上げればdcsがどうこうというわけではなく、私が日頃リファレンスにしているレベルに自信があるということである。それでは、ということで972 の腕の見せどころである1ビットのDSDに変換するようセッティングを変更してみた。「おおっ、こりゃいいや!」と私は胸のうちでうなってしまった。いつものヨーヨー・マのディティールがこれほど鮮明に、しかもバックのABOの弦楽器が見事な色彩感に生まれ変わっているではないか。ちょっと驚きである。ちなみに、これらの過程ではP−0のマスタークロックはdcs992によって外部同期させている。今度は従前のNO.30.6Lを使ってP−0のクロックをそれ自身のものとdcs992によるものとを比較する。「ウン、イイ、明らかに992を使った方が鮮度が高くなる。」ちょっとした驚きに癪に触った私はタイムロードの担当者にブラインドテストをすることにした。システム900プロの3台をDSDにセッティングしたものと、先程までリファレンスとしていたNO.30.6Lとを3種類の再生系で演奏したのである。「どれがdcsの音だかわかりましたか?」と意地悪な質問をすると、自信なさそうに答えるのだがすべて正しい選択をするのである。「若いわりにいい耳をしてるな」と私は思わず関心してしまった。「うん、この人だったら信用できそうだ」と感じた私は「わかりました、dcsをフルセットで置いてみましょう。ところで品物は」と尋ね、無理をお願いするのだから会社に持ち帰って検討して下さい、と厚かましいお願いをしてしまった。すると「実はとなりにいるのが私の上司でして」と拍子抜けするような紹介をされてしまった。いやはや、ただのギャラリーかと思っていたらタイムロードの責任者が一般客のような雰囲気でこれまでのやり取りを見ていたとは。私は恥ずかしくなってしまって慌てて名刺を差し出す。すると「先程の件ですが、商品は何とかしましょう」とありがたい返事が即返ってきた。
こんないきさつで、私のノーチラスシステムにはエルガー2をはじめとするシステム900プロなどのdcsフルラインアップがインストールされることになった。もはやデジタルが偏見をもって風評される時代ではないことをdcsがしっかりと私とノーチラスに教えてくれた。同じ英国生まれのスピーカーと先進のフロントエンドが聴かせてくれる演奏は恐らく皆様の期待を大幅に上回ることでしょう。確実に進化を続けるノーチラスは近未来的なデジタルシステムの素晴らしさを敏感に表現し、さらに一層のクォリティーでdcsを聴かせてくれる。日本中で、いや、ひょっとしたら世界的にも高レベルなdcsのプレゼンテーション・ルームが誕生したのである。ぜひご来店を!
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No.079 「PADがオリジナルノーチラス用カスタムメイド・スピーカーケーブルを開発」
10月19日は私の?回目の誕生日である。先日PADのジム社長と一献を傾けたときに話題になったものを本人が忘れていたにもかかわらず覚えていてくださった。当日の昼過ぎ「川又さんデヴィッドです。今、上野にいてこれから成田へ向かうところです。」と突然の電話があった。私は英会話はからきしのほうなので「サンキュー!」を連発するだけだったが、今回の来日で当フロアーでのノーチラスの演奏とイベントにいたく感動して頂いたようすで「誕生日には間に合いませんでしたが、ジム社長は川又さんへの感謝の気持ちとしてノーチラスの専用スピーカーケーブルを開発し近いうちに送ると言っています。」とデヴィッドさんが通訳をしてくれた。何ともうれしいことであり光栄なことで、私の方こそ頭が下がってしまう思いである。オールドミナスとRLSシステムで演奏するノーチラスを聴き慣れている私に送ってくださるというのだから、私が日頃耳にしているレベルを考えるとドミナスグレードにしてくださるということなのか?頂くものにぜいたくを言ってはバチがあたるというものだが、考えてみただけでもメチャメチャ高価なドミナスグレードで8系統のノーチラス専用スピーカーケーブルが届けられてきたらどうしようか。と今から楽しみでもあり恐縮してしまう。しかし、それが実現すれば世界で唯一、開発メーカーであるB&Wのエンジニアも聴いたことがない鸚鵡貝の演奏が実現することになる。そして、ここに来られる日本のユーザーには世界でたった一つのノーチラスを味わって頂けるというものである。いったいどんなケーブルが来ることやら。もちろん、実物がきましたらこの場で発表いたしますのでどうぞお楽しみに。
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No.078 「続々報!PAD・RLSシステム使用のオリジナルノーチラスにコニサー3.0をインストール」
知る人ぞ知る存在のコニサー・プリアンプ3.0、アセッンブル出来るのはたった一人で月に1台しか生産が出来ないという450万円の大変美しいプリアンプである。それが10月15日に持ちこまれた。前述のRLSシステムで生まれ変わったノーチラスシステムに組み込んで聴いてみたいという誘惑に勝てず、私は早速コヒレンスに替えてコニサー3.0を配線する。さあ、期待の一曲目をかける。「ああ、これじゃだめだ」電源を入れたばかりのコニサーはバーンインがなされていないため私のレベルでは評価に値しなかった。それから一晩PADのシステムエンハンサーをリピートさせた翌日、私は何を差し置いてもという心境でセンターポジションに腰を落とした。
まずは定番のヨーヨー・マをかける。「ああ、これは素晴らしい!」今まで私が知り得る最上のプリアンプは数台あるが、その中でも郡を抜く説得力がある。演奏を凛とした雰囲気に変貌させる支配力は大したもので、個々の楽音の輪郭をとにかく鮮明に描く。輪郭をキュッと引き締めたあとにエコーが拡散する情景は見事なまで徹底しており、今までのプリアンプになかったキャラクターをノーチラスに提供している。まったく昨日の第一印象からは想像も出来ないほどの魅力を発散しているが、もっと時間があれば克明な文章での評価分析もお伝えしたい。しかし、残念ながら希少な製品でありここでの滞在は四日間ということで間に合いそうもないが、これは書きたくなるよりも聴きたくなるアンプだ。結論として私がお勧めできるプリアンプがもう一台増えたということになが、これから偶然に来店され、これを聴かれた方は本当に幸運であるとしか言いようがない。10月16日午後2時の一こまである。
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No.077 「素晴らしい!凄い!続報PADレディアント・ライト・ソース・システム」
既に述べているように10月9日午前のこと、期待のうちにPADのRLS(レディアント・ライト・ソース・システム)をセッティングした。せっかちな私は接続してすぐに最初の一曲をかけたのだが、これはよくなかった。試しに光源ボックスをオン・オフして光出力を切り替えたのだが変化がない。「やはりそうか」とバーンインをしていないドミナスと同様の初期症状にあきらめのため息をついてディスクをリピートさせることにした。
それから6時間位たった夕方、シーエスフィールドの今井社長が来店された。開口一番「どうですか?」と尋ねられ、午前中のことのいきさつを述べる。「そろそろいいかもしれないので、もう一度やってみましょうか」と私は再び光源ボックスをオンにした。と、その瞬間である。薄暗かった部屋でパッとカーテンを引き開けたようにノーチラスの再現する空間が明るさを増し、個々の楽音にスポットライトが当たったように輝きはじめたではないか。「エッ!」と思った私はもう一度光源を切る。瞬間的にノーチラスが暗い部屋に引きこもってしまったようにグラデーションが消滅し、先程の鮮やかな演奏が残像として耳に残るだけになってしまう。驚いた。心底驚いた。
それからの一晩、約14時間ほどPADのシステムエンハンサーをリピートさせ、翌日のジム・オッド氏の来訪を待つ。私も一人でゆっくりと試聴したかったので「ゆっくりきて下さい」と言っていたのだが、熱心なジム・オッド氏は開店と同時に来訪された。私は熟してから食べようと楽しみにしていたメロンを、はるばる米国テキサス州からやってきたジム・オッド氏に差し出した心境でセンターポジションの席をお勧めした。最初に私が定番として演奏しているディスクを数枚かけてオッド氏の反応をみる。何かを感じたのかジム本人が持参したソフトをかけて欲しいとリクエストがあり、感心するほど鮮明な録音の自前のソフトを聴きはじめる。じれったくなった私は「どうですか、このシステムの音は」と感想を尋ねると大きくうなずいて、「私がこれまでに聴いたシステムの中で二番目に素晴らしい」と大変うれしそうな表情が答える。「するとジムさんが聴いた一番のシステムはどこにあるんですか」と私は切り返して質問した。「ワイオミングにある。私が建物の設計から請け負ってトータルコーディネイトしたシステムだよ。外壁のコンクリートは厚みが2メートルもあり、世界最高のオーディオシステムにしてほしいと頼まれたものです。大きさはここの二倍以上あって、その部屋の建築費だけで200万ドルかかったんだ。」と平気な顔で話してくれた。凄い話しだなと感心していると更にソフトを取り出して聴き続ける。そのうちに通訳でありコーディネーターのデヴィッドさんに何やら話しかけている。「川又さん、ジムはさっきの発言を訂正したいそうです。ある曲はここのノーチラスが二番目だと感じたが、違う曲ではあらゆる面でここの音が最高だと言っています。」電源からデジタル、アナログ・インターコメクトまで含めてノーチラスを鳴らすために使用しているのは全てドミナス、その合計はざっと1200万円である。それにざっと計算しても1400万円のRLSが追加されているのだ。作った当人なのだから多分に外交辞令もあるのだろうとオッド氏の目をしっかりとのぞき込むと、私の思惑に無言の否定をするような真剣そのものの眼差しである。私は確信した。ジム・オッドは本気だ!
ノーチラスを生み出したB&W社の誰も聴いたことのないノーチラスの音、本日ただ今この瞬間までジム自身が作り出したドミナスとRLSによるノーチラスのこれほどの演奏、そして随筆でも述べているようにドミナスのみを使用してノーチラスの音に磨きをかけてきた私も、三者それぞれに初めての体験をしたのである。ジムはこれまでに2回どこかでノーチラスを聴いたことがあると言っていたが、ここで聴いたノーチラスのパフォーマンスに冷静な驚きを隠しきれないようである。さて、そうこうしているうちにお客様がおみえになった。私が販売したノーチラスのオーナーとドミナスほかPAD製品をお買上げ頂いた50名の皆様に限定して招待状を送っていたのである。99年10月10日と11日の両日、ジム社長と私のお得意様とで有意義な一時を過ごそうという企画である。遠くからは京都、新潟県長岡市、千葉県は銚子市、などなど全国規模で集まった方々は総勢で25名。ご招待した半数の皆様がご来店になり、都合でどうしても参加できないという沖縄県のユーザーからも今月中には聴きにいくという電話が入るほど大きな反響があった。通信販売などでは決して実現しないドリームシステムの実演と設計者本人とのスキンシップ、これがハイエンドオーディオを扱っている私のやりがいでもある。
さて、試聴会が進行するうちにジム自身も予想しなかったエピソードが起こった。送られてきたRLSシステムの2台ある光源ボックスにはACケーブルが付属してこなかった。そこで私は適当なものを探したのだが、1台がアメリカのAPI社製もう1台はACドミナスとちぐはぐな電源の取り方となってしまった。本来はACプロテウスを付属させているのだが、どうやらうっかりして送らなかったようなのである。そこで私は質問した。「この光源ボックスは光ファイバーにランプの光を送りこむためだけで、オーディオシグナルとは電気的にはいっさいの関連はないですよね。ということは、ACケーブルのグレードを上げても効果はないはずですよね。」とジムに問いかける。答えはYESであった。ACプロテウスを付属させているのはケーブルの柔軟性からハンドリングがしやすいという配慮からで、PADの試聴室でジムが開発している段階では光源ボックスのACケーブルでの違いは感じられなかったと言うのである。何と言っても、あのPADの社長であり設計者本人が自信を持って言うのだから、輸入元シーエスフィールドの今井さんも何の疑問も持っていなかった。このやりとりを招待したお客様の目の前で行なっていたのだが、ジムの言っていることが裏付けられて当然ということで私は意地悪な実験をすることにした。2台の光源ボックス両方に先程のAPI社のACケーブルを使って定番ソフトのヨーヨー・マをかけた。そして次は2台ともACドミナスに変更して同じ曲をかけた瞬間である。思わず私は今井さんの顔を見ると今井さんもほほ笑みを浮かべてうなずいてくるではないか。同席されている10名以上のお客様も表情に変化が表れ、お互いに顔を見合わせている。確かに違っているのである。どちらがいいか。当然ドミナスで電源を取っている方である。ジムはほんの少し眉毛を動かしただけなので私はお客様にお願いしてセンターポジョンに彼を座らせて同じ実験を繰り返した。周囲のお客様もジムの表情が気になるようで、しきりに彼の顔を見ながらジムの口から出る言葉を待った。「ディファレンス!ドミナスを使うとエアーが感じられサウンドステージはこれまでに経験したこともないくらいに見事に広がっている。」と、あっけらかんと認めるのである。私は思わずヤッタ!と言う気持ちになってしまった。ジム・オッド氏をうならせたのだ。
翌日の朝、二日目に来店されるというお客様の一人に私は電話をかけてお願いをした。「確かACプロテウスを使っていましたよね。申しわけないが2本持って来て頂けませんか。面白い実験をしますから。」と、標準仕様で付属させているACプロテウスとドミナスを光源ボックスに使って前日の実験に決着をつけようとしたのである。失礼ながら2・3万円という手頃な価格であるAPI社の電源ケーブルとACプロテウスはさすがにグレードが違うので、ジムが自社の試聴室で判断して決定した付属品としてのプロテウスの採用にはまだ自信があったようである。それならば、このノーチラスシステムで光源ボックスの真実を解き明かそうと10名以上のお客様といっしょに昨日と同じ実験を行なったのである。昨日の問題提起から結論までを私が説明し、最初はAPI社とプロテウスを比較した。ここに通ってこられるお客様の耳は大変優秀である。直ぐにプロテウスの方が勝っているという判断をされ、次はいよいよプロテウスとドミナスの比較である。最初にプロテウスを聴いてから次にドミナスに差し替えた。今井さんも楽しそうな表情で手伝って頂いた。違う筈がないと言っていた光源ボックスに使用する電源ケーブルにドミナスをつないで聴きはじめる。お客様の表情には笑みがこぼれ、うなずいて私を見返してくる。「やっぱりそうだ!」直ちにジムにセンターポジションに移ってもらい再度のヒアリングを体験してもらう。ジムは通訳のデヴィッドさんに長いコメントを述べはじめた。「私はここに来て大変素晴らしい勉強をさせてもらいました。今まで自社試聴室のコンディションとシステムでは発見できなかった音質の相違があることを率直に認めます。実を言うと昨日の段階で既に私は考えを変えていたのです。」と謙虚な物言いで事実を認められたのである。私は思い切って言ってしまった。「素晴らしいケーブルをこれからも開発して欲しい。それにはノーチラスをPADの試聴室に導入し、リファレンスとして将来の開発を行なえばもっと素晴らしいものが出来上がるのではないですか。」すると「ぜひそうしたいと思います。」おお!何と、ここでの体験からPADの社長がオリジナルノーチラスを購入する決断をしてしまった。いやはや、私の活動の一端がハイエンドメーカーのトップに影響力を持ちえたことは何という喜びであることか。そして、オリジナルノーチラスをPADの頭脳とも言えるジム・オッド氏が使いながら研究するうちに、きっともっと素晴らしい製品が開発されることだろう。そして、ここでの出会いから始まった彼らとの親交は、世界的に見て最もホットな情報を獲得できる強靱なパイプとして日本国内のユーザーに貢献できるのではないかと考えたのである。
実はイベントが終わってから彼らとディナーに出かけたのだが、ノーチラスに使うアンプは何がいいのか?と質問されるなど私も大変有意義な時間を持つことが出来た。せっかく日本に送ってきたRLSシステムだが、これから訪問するという各地の販売店や雑誌のインタビューに備えて持っていくのではないかと思ったのだが「NO、ミスターカワマタのところに置いていきます。どうぞ一人でも多くのユーザーに聴かせてください。」というありがたいコメントを頂く。この地球上でも最高レベルと評価されたPAD&ノーチラスシステムは11月3日まで私のフロアーで体験することが出来る。そして、このHPの別項でも紹介しているダイナミックオーディオの「マラソン試聴会」で私が担当する11月6日(土)にはステージに上がることになる。これまでの一番長いブリーフニュースを読まれた方は幸運である。私がセッティングした世界最高のオーディオシステムを体験するチャンスに間に合ったのである。どうぞご来店を!
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No.076 「第23回マラソン試聴会の見どころ聴きどころ」
別項でご紹介しているダイナミックオーディオ恒例のマラソン試聴会が今年も開催される。11月6日(土)7日(日)の二日間、会場は東京は半蔵門にあるTOKYO FMホール。開催時間は6日は午前11時から午後8時、7日は午前11時から午後6時となっているがH.A.L.担当の川又が受け持つのは6日のみとなっており、7日はサウンドハウスのスタッフが担当する予定である。

さて、私川又がプランニングしている聴かせどころを予告としてほんの一部ご紹介する。
何と言っても得意中の得意B&Wのオリジナルノーチラス、今年はジェフロウランドの新製品モデル12を4セット、リンのクライマックスを4セットと、同じスイッチング電源を採用したモノラルアンプの両雄でノーチラスを駆動する。
ブリーフニュースNo.74でも紹介したノーチラス801のライバル、アメリカの新進ハイエンドスピーカーメーカーであるレベル社が発表したトップモデル「サロン」がN801とがっぷりよつに組んで対決する。
衝撃の新製品ワディアのパワーDAC(WADIA790)をインターナショナルオーディオショーでご覧になった方も多いと思うが、会場での音質はどうであったか。私なりのセッティングとペアリングでパワーDACの神髄を聴かせます。
SACDとDVDオーディオの新製品を一堂に終結。ウィルソンのシステム6やティール、アヴァロンといったハイエンドモデルにスーパートゥイーターを付加してワイドレンジな演奏に挑戦する。こんな贅沢な実験はよそではできません。
私はステージにオールドミナスとレディアント・ライト・ソース・システムを持込み、ケーブルはすべてPADに統一するつもりでいる。金額はざっと3800万円程度になるものと思われるが、これだけのケーブルを日常で使用しているので当然の採用となった。これも見逃せないポイントである。

現在のところ興奮しながらプログラムを制作中であるが、こんな豪華なラインアップが揃うイベントは世界的にも類を見ない企画であろう。当社のSHC会員に登録されている方には招待状が送付されるが、それ以外の方はメールにて至急申し込まれたい。郵便番号、住所、氏名、電話番号を私までお知らせ下さい。
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No.075 「PAD社々長ジム・オッド氏来訪。同社の最高傑作レディアント・ライト・システムが遂にオリジナルノーチラスと共演」
99年10月9日、合計価格が1,800万円に及ぶRLS(レディアント・ライト・システム)が大きな箱で届けられた。約1時間ほどのセッティングでノーチラスシステムに組み込む。ACコンセントからエクステンションBOX、そしてエソテリックP−0、マークレビンソンのNo.30.6L、ジェフロウランドのコヒレンス2の電源。P−0からNo.30.6Lへのデジタルリンク、D/Aコンバーターからコヒレンス2へのインターコネクト、極めつけはプリアンプからチェンネルディバイダーへと結ばれる8メーターものバランス・インターコネクトと合計11本のRLSがドミナスに替わって組み込まれた。
そして、明日10日と11日の二日間はジム・オッド氏ご本人が当フロアーを訪れ、私がセッティングしたPADドミナス&RLSとノーチラスを聴き、同時にご招待したお得意様とコミュニケートする予定である。ちなみに、当フロアーで採用したドミナスシリーズの合計は2,000万円を越える規模となっており、今回のRLS追加によって4,000万円を越えるPADの集大成を披露する機会を得たことになる。国内は元より世界的に見ても希有なデモスペースとなっているが、こんなところが国内にあったことをご存じであろうか。。随筆の執筆を終えてからもドミナスの採用は継続して拡大しており、PADを語った第47話には大変に長い続編がある。その続編は活字ではなく実体験としてみなさまに語りかけるものであり、ハイエンドを追求する私の感性が結実したものとして多くのオーディオファイルを魅了し続けている。
そして、今回のシステムはノーチラスの開発メーカーであるB&Wも聴いたことのない、そしてジム・オッド氏も初めて体験するシステムであり、ノーチラスを多数販売した私でさえも初めての体験が待っているのである。このRLSをいつまでここにセットしておけるかは未定であるが、世界初のスーパーノーチラス体験、いや、スーパーPAD体験を見逃すことはない。この試聴レポートも後日述べることになるであろうが、皆様の生の体験に勝るものはない。この前代未聞のハイエンドの極地を無料で聴かせるところがH.A.L.である。ぜひ足を運ばれることをお勧めする。
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No.074 「ノーチラス801の好敵手登場!その名はサロン(Salon)」
98年12月、サロンは密かに日本に浸入していた。輸入元であるハーマンインターナショナルの社内に秘匿されたサロンを私が初めてひっぱり出したのが99年2月のことであった。マークレビンソンブランドを製造するマドリガルオーディオラボラトリーのコントロール下にあったレベル社は、マドリガル社々長であるマーク・グレイジャー自らが日本国内発表に立ち会うということと、メーカー名の商標登録の問題から門外不出の体制で保管されていたのである。それを無理を言って持ち出させた私は1か月間にわたって当フロアーでサロンを分析評価していたのである。そして、晴れて問題が解消し国内発表にこぎ着けたサロンを99年10月4日にH.A.L.は国内最速で導入することに決定した。仕上げはオリジナルノーチラスと同じミッドナイトブルーであり、国内価格はペア250万円である。次回作の随筆で詳細を述べる予定であるが、このサロンのポテンシャルは大変に高いものがある。オリジナルノーチラスをリファレンスとする私が太鼓判を押す音質は必ず聴く人を魅了する。まずは速報として実物を評価できるセッティングを完了したことと、そのパフォーマンスに大いなる推薦の言葉を添えてサロンの登場をお知らせした。
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No.073 「期待のクレルCASTシステムの真価は?」
前述のとおりクレルのCASTシステムを搭載する350MCそして650MCとKPS−25SCが当フロアーで稼働を開始した。ノーチラス801やシステム6でじっくりとクレルご自慢のCASTシステムを聴き始めたのだが、私には従来のバランス(電圧)伝送と比較するという興味関心があった。それはリモコンのスイッチひとつで簡単に実験できるのだが、実際には電圧伝送対電流伝送(CAST)の比較はケーブルメーカーの代理戦争という図式になったようである。なぜか。カルダスやワイヤーワールドといったメーカーのトップクラスとCASTを比較すると、なるほどCASTはいいぞ、という印象を持つのだが、随筆第47話で散々書き連ねたPADドミナスのバランスケーブルと比較した際の結果は違った。売出し中の新方式に余計な先入観を与えるといけないので明言は避けるが、皆様に興味深い実験をして差し上げられるショップが国内に唯一あるということをお伝えしたかった。この対決は皆様の耳で判定を下されることをお勧め致します。
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No.071 「H.A.L. 7F担当 川又の夏休み」
私こと川又は8月23日から28日に夏休みを頂戴します。それ以外は定休日の毎週木曜日に休んでおりますが、8月はオリジナル・ノーチラスの納品予定が2件あるため外出する日があります。ご来店の際は事前にご確認頂ければ幸いです。どうぞよろしく!
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No.070 「お待たせしました!PADの随筆47話をオンスクリーン」
原稿を打ち直してやっと画面に出るようにしました。現在当フロアーにあるドミナスシリーズを定価で合計すると約1600万円に及びます。このドミナスがもたらした数々のドラマをぜひ楽しみながら読んで頂き、一人でも多くの方が聴きに来て下さることを願っています。それに随筆の執筆中には間に合わなかったエソテリックP−0用のDCケーブルも入り後日談のエピソードも色々と蓄積しています。ケーブルに関してこれほどのこだわりを持ち、事実当フロアーの音質が格段にレベルアップしたわけですが、近日中にラックも随筆やブリーフニュースでも取り上げたゾウセカスにすべて入れ替えることにしました。私が目指しているのは世界レベルで通用するハイエンドオーディオの演奏です。
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No.069 「ジェフロウランドの新作モデル12&10は素晴らしい!」
6月28日ジェフロウランドご本人が来訪され新製品モデル12と10の解説を受けた。レギュレーター電源の採用で小型軽量を実現したモデル12と10は、電源と本体各々が13Kgというスレンダーなボディーでありながらノーチラス801をグイッと引き締めてくれる見事な駆動力が印象に残った。そして、なによりも静かなのである。従来のバッテリー電源による静粛性とノイズフロアーの低減を目指したジェフロウランドの設計思想が見事に進化している。聞く人を思わず引きずり込むほどの魅力を提示しており、早速国内第1号の販売が行われた。このモデル12が鳴らすシステム6やノーチラス801、そしてオリジナル・ノーチラスなどがこれから多くのユーザーをとりこにしていくことだろう。輸入元は同じく大場商事なので「催促コール」は同じ電話へ。補足として同じレギュレーター電源を採用したLINNの新製品クライマックス(KLIMAX)が今手元にある。価格も同レベルのモノパワーとして比較するのも面白い。こうご期待。

JEFF ROWLAND MODEL 12は8月2日より当フロアー(7F)に登場予定!MODEL 10は当店5FのH.A.L.Uに同時期に登場。MODEL 1.1は当店4Fに展示予定。皆様のご来店をお待ちしています。
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No.068 「聴きました!WILSON SYSTEM 6」
7月9日ウィルソンのシステム6が持ちこまれた。ウーファーのPUPPYが高さ5センチ、幅2.5センチ、奥行き6センチ大きくなり低域の再生周波数も21Hzまで拡張され、MAXXで採用された新素材によって構成されている。WATT6は構造やユニットの構成はそのままに底部にネットワークへのアクセスパネルが設けられ、WAMM、X−1、MAXX、などで評価されている位相補正技術が取り入れられている。これはメカニカルな調整手段であり、X−1やMAXXのようにWATT全体を前方に傾斜させることによってリスニングポイントにおいて最良の位相特性を得ようとするものである。4種類の長さのスパイクピンが付属されており、同社が測定した結果をまとめたチャートに従いWATT後部の底にスパイクを取り付けてヒップアップさせるというもの。スピーカーとリスナーの距離が約4メートル以内はもっとも長い5センチ程度のスパイクを取り付けよ、というのがウィルソンの指示であり相当WATTは前傾姿勢となる。この状態で聴いてみると高域にしゃくれあがったようなアクセントが感じられてヒステリックに聴こえてしまいストレスを感じてしまう。以前MAXXの時もウィルソンの指示通りにセッティングすると同様なことがあったので、私は自分の判断で最も短いスパイクに取り替えると高域がスムーズになり、どうしてもウィルソンのチャート通りでは納得が出来ない。以前ここでシステム5を演奏しているときに、立ち上がってWATTの音を聴くと同様な変化で聴きつらくなったことを思い出した。システム5を使用されている方は、弦楽器を聴きながら少しずつ腰を浮かせて耳の位置を高くしていくか、もしくはWATT5の後ろにスペーサーをはさんで5センチほどヒップアップしてやれば私が言わんとしていることが実際に体験して頂けると思うのでお試し頂きたい。見かけ上ではWATT6を前傾姿勢にすると丁度この状態と同じになる。前作に対して最も大きな変化としてセールスポイントにしている位相補正技術の結果が期待通りでなかったのは残念であった。しかし、久々に聴くウィルソンのトーンは大変に魅力的であり、次回ゆっくりと聴く機会があれば評価も変わることだろう。とにかく最近は随筆47話をフォローする比較試聴が多く、新製品のシステム6を分析するゆとりが持てないまま輸入元に返却してしまったのである。最新の随筆で述べている周辺機器と環境でシステム6をゆっくりと試聴してみたいという方は、輸入元大場商事03−3479−5181担当鈴木さんに電話で「川又のところでシステム6を聴かせろ」コールをして下さい。他のシステムを差し置いてもご要望にお応えしますよ。

WILSON SYSTEM 6は8月6日より当フロアーに登場予定!ご来店をお待ちしています。
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No.067 「クレル新製品650MCと話題のCASTを国内初試聴」
クレルの輸入元である株式会社アクシスに6月8日到着したのが新製品のモノパワーアンプ650MC(430万円)である。その翌日にはここH.A.L.に持ちこまれ、フロントエンドを1台でまかなうクレルのKPS−25SC(349万円)とペアにして初めてCASTによる再生音を試聴することとなった。従来のインピーダンス・マッチングの定説を根底からくつがえす電流伝送方式CAST、こればかりは聴いてみないと評価出来ないと私は静観していたのだが、実際の演奏が始まったときにはその説得力の大きさに驚かされてしまった。今まで皆さんが聴いてこられたステレオ装置の音が「にじんでいますよ」と言われても、にわかには信じられないでしょう。しかし、一度CASTで同じ曲を聴いてしまったら、これまでの満足感と安心感は残念ながらその瞬間に音を立てて崩れてしまうことでしょうB今まで聴いてきたのは一体なんだったんだろうか。取敢えず三日間だけしか試聴期間がとれず、しかも一般のユーザーに対してデモを出来るスケジュールが決まっていないこともあり、随筆のテーマとして取り上げるかどうかは決めかねている。しかし、当日私と一緒に試聴されたあるノーチラスのオーナーはかなり強い衝撃を受けられ、ウィルソンのMAXXとペアリングしてのシステムを検討するというではないか。それほどハイエンドユーザーの耳を魅了するCASTシステムの実力とは、そしてそれを実演できる日がいつやって来るのか。待ちきれない方は私と一緒に催促のコールを輸入元にして頂ければ、ひょっとしたら実演のチャンスが早まるかもしれません。全国のクレル・オーナーの皆様、そして従来のアンプでは満足されていないオーディオ・ファイルの皆様、TEL03−5410−0071株式会社アクシスに催促コールをお願いします。忘れずにお願いしたいのは「ダイナミックの川又のところで聴きたい」と一言つけ加えて欲しいのですが。きっとあなたもショックを受けられること請け合いです。

KRELL350MC及び650MCとKPS−25SCによるフルCASTシステムを国内初の実演開始!
7月30日から8月20日まで私のフロアーH.A.L.(7F)に出演決定。ウィルソンのシステム6、ノーチラス801など話題のスピーカーをドライブ。しかも、ジェフロウランドの新作モデル12との比較試聴も可能というのだからH.A.L.は熱い。

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No.066 「随筆総集編在庫切れのお知らせ」
皆様から好評を頂いております随筆を無料送付して参りましたが、遂に在庫がなくなってしまいました。現在執筆中の新作を含めて再度制作する計画ですが、しばらく時間がかかりそうです。また、諸経費がかかり過ぎるという指摘もあり、有料化の可能性もあり、熟慮の上決定したいと思いますのでしばらくお待ちください。現状でのリクエストは予約ということで承りますので、メールは喜んでお受けいたします。川又より
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No.065 「マークレビンソン新製品の価格決定」
随筆の第48話で紹介しているマークレビンソンのリファレンスプリアンプNo.32L専用のフォノモジュールの日本価格が決定した。入力端子をRCAピンまたはXLRバランスを選択した上で定価¥450,000.となる。これは本体購入後に追加しても同時購入しても同じ価格で取り扱うということでパーツ扱いとなり、カタログ記載商品のように単品では値引きの対象とはならないので注意が必要。本体と同時購入の際は価格の相談を受け付ける。詳細は随筆をご一読ください。
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No.064 「ハイエンド・コンポーネントに新たなジャンルを築くパワーDAC登場」
今回のウィンターC.E.S.で私が強く関心を寄せているもうひとつの新製品が Wadia 790 Power DACである。パワーDAC?名前のとおり単純にDACとパワーアンプを合体させただけのものであれば、あのワディアが8年にわたる開発期間をかけて執拗に完成を目指すことの程でもないだろうに、と私は考えてしまった。写真5.はスピーカーにアヴァロンのアイドロンを採用したワディアのブースであり、アイドロンとの比較からもパワーDACの大きさがうかがえるものである。パワーDAC中央の床にはワディア27と外見が同じものが置いてあるが、これはプロト段階のシステムコントローラーであるという。最終的にはデザインや内容も変化するらしいが、トランスポートからこのコントローラーにまずデジタル信号を供給し、コントローラーからパワーDAC本体へはクロックリンクをとりながら2本のSTリンクケーブルで接続することになる。もちろん同社のトランスポートを使用すれば、トランスポートの出力の段階からクロックリンクがとれるので完璧な伝送経路が実現できる。写真6.が側面から見た場合、写真7.はパワーDACのハウジングを取り外して内部を露出させたものである。使用されているDACチップはバーブラウン社製であり32倍オーバーサンプリングで動作するが、これを4パラにして2ブロックの構成とし片チャンネルに8個のDACを使用している。この8個のDACの演算処理ソフトウェアに同社独自のDigiMasterバージョン1.3を使用しているが、大変興味深いのは4個のDACブロックがプラス側、もう4個がマイナス側とデジタル領域でバランス伝送を実現していることなのである。この方式は同社のワディア9で既に採用されており、正直に申し上げて私は新製品であるワディア27Xよりもワディア9の音質の方が素晴らしいと評価しているものである。そして、このようにD/A変換された信号はウルトラアナログ社と共同開発しパテントを申請しているスウィフト・カレント・ゼロ・フィードバック・サーキットを通じてIV(電流電圧)変換される。パワーDACがDAC内臓パワーアンプとして単純に言えない秘密が次にのべるポイントである。このD/A変換されIV変換された信号はMOSFETのアウトプットステージに直結されスピーカーを駆動するのである。つまり、一般的なパワーアンプに必要不可欠な初段アンプ、電圧増幅段が存在せずに極めて短縮されたアナログ変換後の信号が直接スピーカーを駆動するというワディアの理想が実現されたのである。言い替えれば一般的なD/Aコンバーターの出力段からプリとパワーアンプの初段をすべて省略し、DACチップにパワーアンプの出力段を直結するという快挙が実現されたことになる。今まで我々はワディアの音を必ずアナログコンポーネントを使って聴くことしか出来なかった。つまり、純粋にはワディアの音を聴いてきたのではなく、必ず他社製品の音とミックスされてもので同社のサウンドを評価しイメージしてきたのである。しかし、これからは違う。ワディアが考え追求していたものが何なのか。パワーDACの出現によってデジタルオーディオの新しい幕開けを、この目と耳で堪能することが出来るのである。このパワーDACと私が組み合わせるトップレベルのスピーカーの数々で一体どんな音楽を聴かせてくれるのか。前述のSENTINELなどに組み合わせると一体どれほどの感動を提供してくれるのだろうか。日本でのデビューは早くても5月ころらしいが、私は耳からよだれを流してその日を心待ちにしている。もちろん、全国の皆様にもちゃんとおすそわけするので心配いりません。H.A.L.にご期待あれ。
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No.063 「アヴァロンの次世代フラッグシップモデルSENTINEL登場」
99年1月ラスヴェガスで開催されたウィンターC.E.S.において、あのオザイラス を超えるアヴァロンのフラッグシップ「SENTINEL」が発表された。以下はその概報である。まず、写真1.をご覧頂きたい。C.E.S.におけるアヴァロンのブースに展示された左側のSENTINELである。使用されているパワーアンプは、日本にはまだ輸入されていないクラッセの「OMEGA」シリーズのモノパワーアンプである。それを拡大したのが写真2.であり、ボディーの形状をわかりやすく見せているのが写真2.である。さて、1月15日に初めてこれを見た私には単純な疑問がうかんだ。随筆の第43話でも述べているように、アヴァロンの完全主義から設計された巨大なネットワークが見当らないのである。そして、よくよく写真1.2.を見るとアヴァロンのトレードマークにSENTINELと書かれたパネルの後ろに黒いアンプのようなものがある。しかもアヴァロンのマークがフロントパネルに刷り込まれているではないか。もしや、と思い次に入手した写真4.とスペックシートを見て「あぁ、やっぱりそうか!」と納得がいった。13インチ2個のサブウーファーは専用のパワーアンプで直接駆動する構成になっているのである。前作オザイラスの素晴らしさは私が推薦する世界のスピーカーベスト3に入る魅力あるものだが、巨大なネットワークとシステム総重量1トンという規模を受け入れられるユーザーは数少ないだろう。そして、オザイラスのようにサブウーファーのクロスオーバー周波数を150Hzいう低域に設定するためには巨大なコイルが必要になり、それを妥協したものにしたくなかったアヴァロンの選択肢としてパワード・サブウーファーを開発したことは必然の帰結として大いに納得できるものである。従って写真4.に見られるようなピラミッド型の小型ネットワークにウーファー以上の3ウェイを構成させることが可能となり、全高173センチ/幅43センチ/奥行き99センチ/重量136Kgと大変コンパクト?なボディーに生まれ変わることができたのである。付属するサブウーファー用パワーアンプは重量34Kg、ブリッジ構成のフルバランス伝送の増幅段、1600Wのハイパワーと高速応答性を有しているという。このアンプの製造メーカーは不明であるが、ヒートシンクのデザインが某メーカーに似ていないでもない。しかし、このパワード・サブウーファーで低域の再生帯域をオザイラスの20Hzから更に16Hzまで引き下げてしまったのだから、もう「アヴァロンの低域は物足りない」と発言される人はいなくなるだろう。しかも低域の信号が巨大なインダクターを通過する時間も必要なくなり、よりハイスピードな低域の再現性が期待できる。さて、最後に気になる価格であるが、私は当初このSENTINELは同社のアイドロンとオザイラスの中間をつなぐものと計画を聞かされていたのだが、どうやらオザイラスよりも価格は高くなりそうである。現在標準仕上げで1360万円のオザイラスを超える価格とパフォーマンス。また私が認める世界のスピーカーベスト3をアップデートしなければならないようだ。残念ながら日本でのデビューはまだ未定であるが、オザイラスを超える音がよりコンパクトになったのであれば、一世一代のプランを検討される方が日本にも表れるかもしれない。当フロアーを自社ホームページで紹介してくれているフレンドリーなアヴァロンに対して、私は日本におけるSENTINELのデビューをきっちりとした音質で御披露目することを誓うものである。いつの日か、SENTINEL発表会の情報がこのHPに登場することをご期待ください。
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No.062 続報!ジェフロウランド期待の新製品をフォーカスする。
98年11月7・8日の両日、ダイナミックオーディオ主催の『マラソン試聴会』に飛び入りで参考出品された新製品がある。ブリーフニュースNo.46で紹介しているジェフロウランドのパワーアンプ、型式もモデル12Tiとされたモックアップの外形模型がそれである。ここで、その写真をどこの雑誌よりも早く公開することにした。写真1は正面から見た外観であり、写真2はその拡大されたものとリアーパネルのクローズアップである。このアンプのコンセプトはすでにNo.46で紹介しているが、面白いのはモノラルパワーアンプのくせにXLRのバランス入力が二つあることである。右側にも「パラレル・バランス・インプット」と表示された端子が見られ、何に使用するのかと考えてしまった。これはジェフロウランド本人に確認してはいないが、恐らくはこういうことだろうと思う。実は同社のモデル9シリーズにも同様に2系統の入力端子が装備されており、この使い方をジェフロウランド当人に私が質問したことがある。答えは以外に単純なものであった。「複数のパワーアンプを同時駆動するときに使います。つまり、プリアウトをパワーアンプのひとつの系統に入力し、そのパラレル入力からバランスケーブルを使ってもう一台のパワーアンプに並列信号を配り、バイアンプ・ドライブのためのケーブルを最短化するのです。こうすれば、通常プリアウトの長いケーブルをふた組使って2台のパワーアンプに信号供給するところをひと組の長いケーブルで済ませることが出来るし、2台のパワーアンプを最短で接続できます。また、2セットのスピーカーを各々違うパワーアンプで鳴らす時なども、パワーアンプのオン・オフで簡単に切り替えが出来て便利でしょう。」と言っていたのを記憶している。要は「パラレル・バランス・インプット」ではなく、「パラレル・バランス・アウトプット」として使用するのである。ちなみに表示通りに2台のプリアンプを同時入力(接続)すると、反対側のプリアンプの低い出力インピーダンスに干渉されて正常な再生は困難になってしまう。私の過去の記憶と推測によるものだが、大きな間違いはないと思われる。次回ジェフロウランドに会ったときには確認をして発表します。さて、この新製品は現在のところ中身を開発中であり、99年春のデビューとなる予定。当然いの一番でH.A.L.に登場するであろう。乞うご期待である。
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No.061 日本初上陸、zoethecus audioを誰よりも早く聴いた。
98年9月25日、クレルやFMアコースティック、ティール、ワディア、などを輸入するアクシス株式会社の営業部長である木村氏が「実は、こんなものをはじめようと思うんですが。」と、大変仕上がりのよいオーディオシステムラックを重たそうに私のフロアーに持ちこんでこられた。「すばらしい音ですからぜひ聴いてください。」とか「凄いですよ、これは。」とか、大仰なほめ言葉を先に発して持ちこまれる新製品は私はあまり好きではない。好きではないというより、担当者の言葉の分だけ感情的に割り引いてから試聴させて頂くようにしている。むしろ、黙って持って来てもらって私が聴いてから自分の判断で評価したものこそ、どうやら私は販売に力を入れてしまうところがあるようだ。さて、このzoethecus audio(ゾウセカス・オーディオ)とは簡単にいえば高級オーディオラックである。同社の製品を大きく分類するとAMPLIFIER STANDと呼ばれるパワーアンプの置き台と、COMPONENT SUPERSTRACTURESと呼ばれるフロントエンド・コンポーネントのシステムラックの2種類となる。まず、このCOMPONENT SUPERSTRACTURESは、これに使用する特殊な素材で9層構造の棚板で、荷重15kg以下のものを使用する際のZ.Pod(\32,000.)と、それ以上の荷重に対応するz.slab(\45,000.)を選択することが必要になる。そして、棚板が2枚用のフレームであるz.2/R(\128,000.)から6枚用のz.6/R(\380,000.)までを選択して初めてシステムラックとして使用できるようになる。ちなみに棚板が3枚とすればz.3/R(\198,000.)で、これにz.slabを3枚使用すると合計で\333,000.という価格になるわけだ。参考のためにプリントした“写真”は古いもので、現在は棚板のz.slabは単なる一枚板で真中が割れていないタイプへと仕様変更されている。また、これらのインチでのサイズと日本価格を示したものを“別表”として読み込んであるのでクリックして頂きたい。さて、肝心な音なのだが、この比較試聴は大変力仕事となってしまった。ジェフロウランドのパワーアンプをAMPLIFIER STANDである“別表”のz.block 2にあげた場合と直置きの場合を何度も比較試聴したのである。当フロアーはゴム層のあるフロアーカーペットが敷き詰められているが、この上に直置きした場合には各楽器が穏やかな表現になり一見聴きやすいのだが低音のリズム楽器の反応がテンションを失ってしまう。これをz.block 2に置き直してみると、ベースやドラムのテンションが高まりミッドハイレンジの解像度も一段と向上するのが実に鮮明に感じ取れる。次にジェフロウランドのモデル8Tiを堅牢なレンガステージに直接乗せてみた。すると、今度は演奏自体に緊張感が満ちてくるのはいいのだが、エコーに尾ヒレがつきまとってしまう。これをz.block 2に置き直してみると、付帯音が整理され音像の明瞭度が向上する。しかし、フロアーカーペットに直置きしたようなダルな低音になることもなくテンションは見事に維持されているではないか。こりゃいい!床の状態が如何なるものであろうと、zoethecus audioを使用すると間違いなくニュートラルな質感表現に変化するのである。同じパワーアンプがあっけに取られるような豹変ぶりを見せ、当フロアーの音質的リファレンスを根底からくつがえすセットアップシステムの登場に頭を抱えてしまった。だって、ここにあるすべてのパワーアンプにzoethecusを使用したら大変なことになってしまう。しかし、一度聴いてしまうともとに戻したくないのである。そして次はz.3/Rにz.slabを3枚使用した\333,000.のシステムラックをテストした。あまり癪に触るので比較するラックも高級品を用意した。ゴールドムンドのミメーシスラック(\480,000.)にj1プロジェクトのプレーンボード+コーンスタッドを追加したもの(合計価格\174,000.)を乗せたものを使用する。合わせて\654,000.という高額なラックにエソテリックのP0を乗せて、いつものテスト曲を繰り返し聴き込む。そして、アンプをミュートして配線をぶらさげたままP0をzoethecusのz.3/Rシステムに乗せ変えた。さあ、ミュートを解除して課題曲の冒頭を再生し始めたとき、「まいったな、完敗じゃないか。」と腹立たしいほどに音質差が目に見えてくる。今の今まで自信があった最高のラックに乗せたP0の音という認識があっというまに崩壊してしまったのである。完璧な剛性を誇るゴールドムンドのラックにj1のアイソレーションボードを組み合わせ、これこそP0にはベストのコンディションと思っていたものよりも更に低域が引き締まるのである。いや、低域だけではない。オーケストラのすべての楽器にかかっていた光を反射する薄いラップをサッとはぎとったように、解像度の向上はだれが見ても一目瞭然と言えるほどの差異を見せつけるではないか。今まで、ラックは体裁よく機能的にコンポーネントを収納できさえすればいい。そう思っていた私に、ラックとは音質向上のための一種のコンポーネントであるという認識に、たった数分間の試聴体験によって根本的に改めさせられてしまったのである。これには参った。ただでさえ実験と試聴によって商品の価値観をご理解頂き、その上で販売していくという私のセールスポリシーから考えれば今後は大がかりなラックにおける「使用前使用後」の比較試聴を実演しなければいけなくなる。そして、当フロアーの標準ラックをすべてzoethecusに入れ替えたりすれば、一体いくらかかることやら。そんな恐ろしい計算は後回しにして、早くも当フロアー用のzoethecusを注文しようとしている私に呆れてしまった。完全なオーダーメイドシステムの音質追求型システムラックzoethecusは、間違いなく使われる人を幸福(経済的には不幸な?)にしてくれることを請け合います。当フロアーでご体験ください。
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No.060 装いも新たにH.A.L.2がサウンドパーク・ダイナ5Fにオープン
サウンドパークの歴史をひもとけば、H.A.L.(ハイエンド・オーディオ・ラボラトリー)は1992年に私川又が当フロアー(7F)に着任したことから発祥したものであることが思い起こされる。Legend of H.A.L.や随筆『音の細道』でご紹介しているように数多くのハイエンド・オーディオを紹介し販売するという活動を繰り返しながら3年前に呼称をH.A.L.と変更して現在に至っている。さて、日本で唯一ここにしかないというハイエンドモデルのプロモーションを展開してきたH.A.L.であるが、扱わなければいけないモデルが次第に数を増して限界のあるスペースでは手狭になってきた状況があった。しかも、Cinema H.A.L.として6Fも新たな展開を開始している現在、ハイエンドオーディオの収容能力を維持するために当店で3フロアー目のH.A.L.2を5Fに拡大オープンさせることとなった。その担当者の人選に関しても長らく当社の新宿店でハイエンドを志向する営業を行なってきたベテランである東(あずま)を獲得したのである。音響条件の違うフロアーで東がいかに腕を振るうか。特別企画の試聴プラグラムを用意して、H.A.L.2の脈動はこれから力強さを増していくことだろう。今後はH.A.L.2の活動も当ホームページの「イベントインフォメーション」と「ヒアリングラインアップ」などで紹介していく。ぜひご期待頂きたい。
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No.059 マドリガル・オーディオ・ラボラトリー社々長マーク・グレイジャー来訪す。
98年10月12日午前11時、事前のアポイント通りマーク・グレイジャーがドアを開けて入ってくる。「おはようございます。ミスター・カワマラ。」と大分うまくなった日本語で挨拶してくれるのだが、相変わらず“t”の発音は省略されているのか“タ”が“ラ”に聞こえてしまう。私も日本語で挨拶をして握手で迎えた。とにかく、アメリカの大手オーディオメーカーの社長に名前を覚えてもらった日本人の一人として悪い気はしない。今回のミーティングの目的はズバリNo.32Lのプロモーションのためである。まだ発売時期も価格も決まっていないのだが、以前より強い希望を伝えていたリファレンス・ラインのプリアンプがいよいよ現実的な姿を現したのである。プロト・モデル(音は出さなかったが)を持参して、日本で唯一、一販売店の人間にマン・ツー・マンで説明をしてくれるというのだから聞く方も真剣に対応しなくてはと腰を下ろした。「ヘックスレンチはありますか。」というので手渡すと、なんとNo.32Lのパネルを外しはじめたのである。マークレビンソンのプリアンプは生産性を重視してか、あるいは内部のエケクトロニクスに重きを置くという方針なのか、他社製品に比較して華奢な構造であった。ジェフロウランドやゴールドムンドの例をあげて、アンプの要素としてはキャビネット構造は大切なんだと繰り返し述べていたのだが、今度の製品にはスキがない。前面にノブやスイッチがある黒くて薄型のデザインの方が電源部とコントロール部であり、中央部にシルバーが見られる背の高い方がシグナルパスを構成するサーキットボードが内蔵されているプリアンプ本体である。この電源/コントロール部はアルミブロックから削りだしたもので、大きく分けて3ブロックで構成されている。この一つ一つが削りだしの加工跡を残す重厚なつくりであり、まず合格である。各々のトップパネルも厚みは7ミリ以上あり内部はダンピング材が貼りつめられている。何と、この薄いボディーの中には電源トランスが大小4個も搭載されているではないか。ロジック・コントロール部へ供給するものが独立し、左右のオーディオサーキット用にL/R独立のトランス。そして興味深いのは、このL/R独立のトランスに供給する電源を別のレギュレーター・トランスの二次側をデュアル・ワインディングして、更に400Hzという特定周波数にステップアップしてから左右のトランスにつなげているのである。そして、400Hzを中心とする急峻なフィルター効果をL/R独立トランスに持たせることにより、二重のアイソレーションを施して最後に平滑化させてDCを生成するというのだ。とにかくクリーンな電源を供給することにボディーの大半の容積を使用するという思い切った発想が期待を高める。コントロール部は全体の五分の一程度の容積でシールドケースに納められている。プリアンプの概念を一掃する電源部の徹底には思わずうなってしまった。これを表情に出すとマークは「どうだ。」と言わんばかりに一段と解説に力が入ってきた。そして、プリアンプ本体もカバーを取り外して最初の一言。「サーキットボードを乗せているのはアルミダイキャスト製です。」なるほど、シグナルパスは一体成形の重厚なケースに納められているのか。「各インプットは最初にT型スイッチング・サーキットに入り、120デシ以上のクロストーク排除能力を持たせています。」完全に左右独立したモノラル・コンストラクションの精巧なサーキット・レイアウトは見事と言うほかはない。「ボリュームコントロールは、この小さなサーキットが受け持っています。」なるほど、片チャンネルあたり32個のビシェイ社製のチップ抵抗が基板の周辺に埋め込まれ、それをマイクロプロセッサーが膨大な組み合わせのコンビネーションを指示してボリュームをコントロールするという。そのステップ数は六万五千通りに及び、あきれるほどの高精度で精密にボリュームを調整するというのだ。また、アナログファンには大変ありがたい、そして以前には考えもしなかった機能と能力を盛り込んだフォノイコライザーをオプションとして格納できるというのだ。プロト・モデルにも厳重にシールドされたケースが見られる。ゲインが二段階、インピーダンスは11ステップ、キャパシターは9ステップとカートリッジの入力パラメーターを聴きながら、しかもリモコンでコントロールできるというのだ。今までは小さなディップスイッチをペンの先で倒したりしながら、繰り返しレコードをリピートしながらフォノイコライザーの調整をしたものだが、リモコンで座ったままで調整できるなどと誰が考えたことだろう。更にラインアンプは完全にバランス伝送であり、ボリューム回路のTHD(トータル・ハーモニクス・ディストーション)とノイズレベルはマイナス140デシベルを下回るという高忠実度を手中にしたという。500万円というプライスを誇るボルダーのプリアンプもコントロール部とシグナルパスを分離独立させており、コントロール信号はLEDを使って光信号で伝送され一層のアイソレーション効果をものにした。果たしてNo.32Lは、どのような方法でプリアンプ本体にコントロール信号を送るのか。これを質問すると「電源部からプリアンプ本体にDCを供給するケーブルは全部で11ピンですが、このうち2ピンに一定のDCをバイアスのように流し続けています。コントロール部のロジックサーキットで作られたコントロール信号は微妙な偏差をもつDCに翻訳され、この2ピンを通じて電圧変化としてプリアンプ内部の高精度プロセッサーに反応を指示します。指示されたプリ本体のプロセッサーは求められた操作を実行するとスリープモードに入り、シグナルパスには一切の干渉を及ぼしません。」なるほど。パーフェクトですね。とにかく自信たっぷりに語るグレイジャーの口調は、私の質問をことごとく跳ね返してくる。しかし、私も最後に一矢を報いたい。「あなた方のフラッグシップであるパワーアンプNo.33Lにはアンバランス・インバート入力が装備されていますね。今回のNo.32LのプリアウトはRCAのアンバランスとXLRバランスが各々2系統もある。単純なパラアウトであればバイアンプくらいしか使用目的はないはずで、そんなユーザーはめったにいません。ならば、RCAアンバランスの出力の片方をインバートすれば、RCAケーブルを2本使ったバランス接続がNo.33Lとの間で可能になる。これからステレオアンプの新製品も予定しているというならば、それらにもインバート入力を設ければ同ブランドによるペアリングのメリットが大きくなる。私はXLR(キャノン)ケーブルによるバランス伝送を否定するわけではないが、ホット/コールドのシールドが完全に分離されたRCAピンケーブル2本によるバランス伝送には大きな可能性があると思う。No.32LのRCA出力を片方反転させるのにコストはかからないはずです。No.33Lに装備したインバート入力は一体何のためなのか。御社が設計したパワーアンプに更なる可能性を発見するためにも検討してみてはいかがですか。」と、一気にたたみかけた。この提案は的を外していないようだ。雄弁だったマーク・グレイジャーに数分間の沈黙が訪れる。そして、真剣な表情で一言「サンキュー、サンキュー・ベリーマッチ!」高価な製品が誕生する前に、こんなエピソードがあったことをご記憶頂きたい。果たして、私の提案が実現するかどうか。そして、そんなことを忘れさせてくれるだけのサウンド・パフォーマンスをNo.32Lが発揮してくれるかどうか。私の期待は大きい。No.32Lが手に入ったあかつきには、ジェフロウランドのコヒレンス2、チェロのパレット、ゴールドムンドのミメーシス22、そしてボルダーの2010と、世界最高と目されるプリアンプを一同に集めて比較試聴会を開催するつもりだ。こんな営業ベースを無視した試聴をやるのは、おそらくH.A.L.だけだろう。しかし、こんな試みにこそオーディオのロマンがあるというもの。99年のH.A.L.にご期待あれ。
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No.058 JEFF ROWLAND MODEL 8Ti Hi Crrent 国内初の試聴を行なう
98年9月14日先週たった1台だけサンプルとして輸入されたジェフロウランドの新製品モデル8Tiのハイカレントバージョン(290万円)がH.A.L.に持ちこまれ試聴を行なった。正直に言って私は通常のモデル8Tiだけでは音場感に物足りなさを感じていた。専用バッテリーのBPS8を併用して何とか望むべき音質に達したという判断から、これまでの販売事例では必ずと言ってよいほどBPS8をいっしょにお勧めしてきたものだ。何かとライバル視されるクレルの新製品350M(298万円)と同時比較を行なうと、音場感はモデル8Tiだけでは350Mに太刀打ちできない状態であり、モデル8Tiに105万円のBPS8を追加して335万円のシステムにして初めて350Mを上回るという観測をしていたものである。ところが、今回のハイカレントバージョンは単体でもモデル9Tiを彷彿とさせる十分な音場感を確保しており、クレルの350Mとほぼ互角か、ないしは低域のコントロールにおいては350Mをわずかに凌駕するのではないかという一面を見せつけるのである。これには驚いた。

また、同時に持ち込まれたカルダスの新製品である電源用テーブルタップPower Stripの貢献度には同社のテクノロジーを改めて評価せざるを得ない素晴らしさを感じさせた。アルミハウジングにホスピタルグレードのコンセント6個を装備するPower Stripには、フィルター、サーキット、ブレーカー、トランス、レジスター、キャパシター、ヴァリスター、チョーク、などの電子パーツは一切内蔵されていない。極めてシンプルなテーブルタップである。持ち込まれたサンプルは2.5メートルのヘックスリンク・ゴールデンパワー・ケーブルがタップに付け込みになっていたが、使いこなしの柔軟性を考えてインレット式のタップと個別の長さ指定をしたパワーケーブルとに分けた形で輸入を開始するという。今回の2.5メートルのケーブルで合わせた場合には予定価格として18万円を想定しているという。さて、最初は付属品のACケーブルで8Ti HCを試聴し前述のような高い評価を与えたのだが、次の段階としてACケーブルをヘックス・パワーケーブルに交換し、最後に当フロアー常設のテーブルタップからこのPower Stripに替えるという三段階の変化を試聴した。これには参った。はっきり言って脱帽のホップ・ステップ・ジャンプの明らかな音場感の成長が聴き取れるのである。この状態ではBPS8を併用した8Tiの影はすっかり薄くなってしまい、クレルの存在にも冷風が吹く思いの完璧なステージ感と楽音の濃密な温度感を提供してくれるではないか。 しかし、うまくできたものでカルダスのこれらオプションを追加すると約317万円となるので、クレル350Mよりも若干割高となるので渋々納得をしたものである。

さて、圧巻なのは8TiハイカレントにBPS8を接続した時の興奮の高まりであった。しっかりとした音場感のステージに土台を支えられて、そこに展開するオーケストラの楽器群に見られる音の密度感がキューッとコンプレッションされ色彩表現がはるかに鮮やかさを増すのである。この場に同席された大変ラッキーなお客様もあいた口が塞がらないというのが実感であり、外見が同じふたつのパワーアンプの音質差を強力な印象を持ったようで、「まるで別物だね!」という言葉をポツリともらされた。初物が聴ける ある日のH.A.L.の出来事である。聴きたい時にはどうぞアポイントを。

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No.057 私が聴いたノーチラス801を主題とする随筆をただ今執筆中!
『サウンドパーク・ダイナ−ノーチラス宣言』

当店はB&Wの全ノーチラスシリーズをすべて展示致します。この宣言は10月より入荷次第に実行に移されます。このオリジナル・ノーチラスやノーチラス801もすべてが試聴出来ます。ぜひご期待ください。−店長 川又利明より

また、全国に先駆けて10月には新製品ノーチラス801の試聴会を開催します。イベントインフォメーションと同様の要領でご応募ください。

有力雑誌2誌に合計30ページという超特大の特集で報道されたノーチラス・シリーズのトップモデル801は想像を絶するパフォーマンスで私と少数の顧客に大きな衝撃を与えた。 300万円のスピーカーを手放して200万円のノーチラス801に入れ替えるという日本初の正式受注を受けるに至り、このノーチラス801の影響力の大きさに私も驚嘆している。 私の要望に応える形で輸入元から1週間お借りしたわけだが、次は事前に予告して国内初の試聴会を企画する。今度は皆さんを招待する番がきました。本当に驚かれることを私が請け合います。ぜひご応募ください。

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No.056 ソナースよりガルネリ・オマージュに続く新製品登場
1994年2月、国内発売より先行すること半年前というタイミングで、当時はまったく日本人の知るところではなかったガルネリ・オマージュを随筆『音の細道』第11話でスクープし、さらに第16話では日本に入った1号機を聴いたレポートを文章化した。その頃、粗末なモノクロ写真を何とか刷り込んだこの随筆は、ごく少数印刷されて限られたユーザーに郵送されていたわけだが、それでも反響は大きく私の文章を読んで頂いただけで予約が入るという状況であった。そして、あれから4年たった今、ソナースの動向に関する一大スクープのチャンスが再び私に訪れたのである。しかも、印刷物ではなく文明の力であるインターネットにカラー写真を掲載できるというサービス度満点のホットニュースである。私も世界各国のオーディオメーカーのホームページをのぞくのだが、そういえばソナースのホームページは見たことがない。もしかすると、この私の情報が世界初公開となるかもしれない。しかし、恐らくはガルネリ・オマージュを日本で最高台数(ということは世界一かも)販売したという実績に免じてお許し頂けるかも知れない。実は、このプロジェクトの構想とプロトモデルの情報は昨年から私の耳には入っており試作機の写真も見ていたのだが、早まってはいけないと情報の流出を差し控えていたものである。そして、機も熟したであろうと思われる98年夏、仕上がった新製品の写真を入手するにあたり、H.A.L.の川又より正式に情報発信を開始するものである。

Amati homage』これがガルネリ・オマージュのシリーズ化第2弾の名称である。アマーティとはクラシック音楽に造詣の深い皆様ならすぐに思い当たるであろうヴァイオリンの名器であり、ガルネリと同様に世界的に評価されている文化的遺産でもある。これらの解説は多分に重複するところがあるので、ぜひ前述の二話の随筆をご一読頂きたい。 そして、写真と同様にアマーティ・オマージュのサイズも同様にご覧頂けるようにしてあるのでクリックして頂きたい。 さて、このアマーティ・オマージュの概要を解説する。ウーファーは21センチ口径でカーボン混入のリジット・ペーパーコーンに多層コーティングを施したダイヤフムラを採用している。これが二個パラレル駆動されているが単純なタンデム駆動ではなく、恐らくはバスレフのポートチューニングで機械的に共振周波数を分離しているのではないかと推測している。後方のポートが二つあるので、たぶん私の推測が的中しているのではないだろうか。ミッドレンジは18センチ口径でウーファーと同様な素材でダイヤフラムは作られているが、センターキャップにはチタンがコーティングされているようである。トゥイーターはガルネリ・オマージュと同様な28ミリ口径のシルク・コア・ソフトドームタイプであるが磁性流体は使用していないらしい。従って、電気的には3ウェイとなるが、ウーファーを2分割することによって実質的な4ウェイではなかろうかと推測している。そして、クロスオーバー周波数は200Hz、2.5キロHzである。 能率は92dB、インピーダンスは4Ω、クリッピングせずに300Wまでのパワーを受け入れることが出来るという。エンクロージャーの製法に関してはガルネリ・オマージュを踏襲しているもので、あの優美な仕上げがボディー全面に施されている。

ガルネリ・オマージュというスピーカーはオーナーの情熱を見事なまでに引き出してしまう作品であった。ガルネリ・オマージュをとことん鳴らそうとしたあるオーナーはアンプに500万円の資金を投入された。しかも、そのオーナーには一片の後悔もさせることなく、長年にわたり最高級の音楽を楽しませてくれたのである。ただ、ガルネリに求めてはいけなかったのが低域の重厚さであろうか。これはオーナーが理解していればかえってチャームポイントになるのであろうが、フランコ・セルブリンは将来の長期計画のなかですで低域再生の具現化をイメージしていたようだ。スペック上では24Hzまでレスポンスをもつアマーティ・オマージュは果たしてどれほど甘美な音の世界を聴かせてくれるのであろうか。

98年の秋には日本に登場する予定だ。そして、間違いなく言えることは、どこよりも早くH.A.L.にアマーティ・オマージュが導入されるだろうということである。 予定される価格は300万円前後であるという。ガルネリ・オマージュを手放してアマーティ・オマージュへ、そして数年後にはストラディヴァリ・オマージュへと夢は果てしない。

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No.055 遂に登場フル・エピローグシステム
98年8月29日ゴールドムンド社長のミッシェル・レバション氏がH.A.L.に来訪された。遂に完成なったフル・エピローグをプロモートするために来日されたのだが、多忙なスケジュールの合間を縫って訪ねて下さったのである。これまでに私が疑問として感じていたことを質問し納得できる回答を引き出すという、いつもの私のパターンでインタビューを行い、同時に今まで知らなかったゴールドムンドのテクノロジーを色々と知ることが出来たのである。さて、サブ・ウーファーとなるエピローグ3の完成を待って、このフル・エピローグがシステムアップ出来たわけだが、エピローグ3はミメーシス29.4相当のモノ・パワーアンプ内臓のアクティブ・システムであるということは事前に知らされていた。しかし、エピローグ2と2台のエピローグ1をバイアンプ駆動を前提として設計していたというのは初耳であった。
レバションが今回指定してきたのはミメーシス29.4を2セット使用してのデモンストレーション用システムであった。550万円のモノ・パワーアンプが2セットで1,100万円。
プリアンプは当然同社のトップモデルであるミメーシス22(380万円)を、D/Aコンバーターもミメーシス20(380万円)を使用する。フル・エピローグの価格が1,800万円に決定したので、ここまでのシステム合計は3,660万円ということになる。トランスポートは私のわがままでエソテリックP−0を使用するので総合計は3,780万円となる。
「買えるから聴いてみる。」「買えもしないものは聴いても仕方がない。」あるいは立場を変えれば「買える人には聴かせるが、買えない人には聴かせない。」こんな考えは私の頭の中には一切ない。人類が作り出した最高のシステムで音楽を聴く。そして、いわば山の頂点がどこにあるかを見極めていただき、皆様が可能としているレベルで何合目まで登れるのかを検討していただく。結論として私はオーディオシステムで聴く音楽がどれほど素晴らしいものかをわかって頂きたいのである。これまで開催してきたH.A.L.のイベントでは、このフロアーが絶えず満席になるのが恒例である。主催者としてはありがたいことなのだが、悪く言えば「すし詰め状態」で一人のためにベストな演奏をお聴かせすることは難しい状態でありエンターテイメントの要素が色濃いものであった。従って、今回は限定された展示期間の営業時間中をすべてフル・エピローグの試聴会として私が調整したベストな状態で限定されたポジションで最高レベルの演奏を心行くまで堪能して頂こうと考えた。詳しくはこちら
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No.051 Today's Super-Rich Just Don't Seem Interested in $300.000 Stereos
98年7月9日付けニューヨークタイムズに掲載された見出しである。ニューヨークはマンハッタンに店を構える老舗のリリック・ハイファイのオーナーであるマイケル・ケイ氏が取材に応じたもので、ベリーハイエンドと同氏が推奨しているシステムが36万5千ドルというものなのである。私も仕事がら邦貨にして5000万円近いシステムを扱った経験があり、アメリカの販売店が30万ドルのステレオをニューヨークタイムズという一般紙に自慢げに取材させているものを見ても別に驚くことはない。しかし、その内容にはディスコンになっている商品もあったりして、同氏のセールス内容を誇示するような臭いもしている。さて、このなかでマークレビンソ・リファレンス・プリアンプリファイアーとして1万6千ドルと記載されていることに疑問を覚え、輸入元のハーマンインターナショナルに同紙のコピーをFAXで送り、現地での真偽を問い合わせしたのである。日本の販売店でも先走りする店があるようだが、どうやらマイケル・ケイ氏も同様なフライングを犯したようで、マドリガル社が開発中のリファレンス・プリNo.32Lは発売もされていなければ価格も決まっていないという。私はNo.32Lの概要資料を持っているが、10月に開催される予定のインターナショナルオーディオショーではモックアップが間に合う程度ときいており、まだまだ開発中という領域で最終的な音が出るまでには数か月以上かかる見込みであるという。日本でも同様に「朝日」「読売」あたりが取材に来たならば、私はどのようなシステムを紹介するだろうかと考えてしまった。でも、こんな記事が新聞にのるのだからアメリカはやはり景気がよいのだろうか。ミスター・オブチが今後活躍されることを祈るのみである。
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No.050 ジェフロウランド15周年記念モデル発表。その名は“マニトゥ”
このブリーフニュースのNo.14でジェフロウランドのシナジーに関するバージョンアップの情報を掲載している。そして、98年5月21日からの同社価格改定にともなって、シナジーがアウトプット・トランス/デュアルアウトプット仕様に統一され115万円と実質的な値下げが行われている。そのシナジーに50セット限定という15周年記念モデルが登場することになった。本体の仕様はそのままに、コヒレンスと同等なバッテリー電源が標準装備されたものである。価格は170万円と割安であり、よりハイクォリティーな音質を実現している。もっかのところ予約受付け中であり、近々のうちに予定台数の生産に着手する予定である。ちなみに、マニトゥとはコロラドにあるジェフロウランドの住まいの近くの湖の名前であるとか。なんともロマンチックなネーミングである。
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No.049 CD12の仕上がりを確認。私から音質的保証書を発行します。
このブリーフニュースのNo.36で試作段階のLINN CD12の印象を述べているわけだが、「英国的感性のウェルバランス」という簡単な表現で音質の細部には言及していなかったものである。理由は簡単、私が納得しなかったからである。そして、あれから半年かかって完成されたCD12が遂に私の手元に届き、許される限りのヒアリングを行なってから7月24日の発表イベントを行なったのである。当日参加された方は、他店では体験できない高レベルの比較試聴を経験したことになった。 そのイベントの冒頭、私は来場者に意地悪でもあり大変意義のあるブラインドテストを行なったのである。同じCDを2枚用意し、CD12と私が選択したもう一つのシステムの両方で同じ曲を使用器機を知らせずに演奏したのである。もう一つのシステムとはエソテリックP−0とマークレビンソンのNo.30.5Lの組み合わせで、プリアンプからスピーカーまではまったく同一のシステムである。280万円の小型1ボディーCDプレーヤーと、現代で考えうる最高峰といえる合計418万円のセパレートCDシステムの聴き比べである。ただし、どちらを演奏しているかは内緒であった。同じ曲を使った比較試聴が終わってから、私は30名の来場者に質問した。「ただいまの2回の演奏で皆様はどちらがお好みでしょうか。」製品名を明かさずに行なった比較試聴の結果、私の質問に対して自信を持って挙手された人数は果たしてどちらが多かったか…。 結果は参加された方々と同席されたリンジャパンの担当者は知っているわけですが、全国の人々がご覧になるこの場では公表は控えさせていただきます。しかし、半年前に私が不満としていたことが見事に解消されており、トップレベルのセパレートCDシステムとほぼ互角の能力を持っているということは事実です。大変せん越ながら私から“御墨付き”の認証をCD12に与えることに何ら疑問を感じていないというのが実感である。まだまだバックオーダーの納品に追われているということなので、8月の中旬以降にH.A.L.にてランニング試聴が実現できるスケジュールを決定した。自分の耳で確認しないと気がすまない皆様へも、ちゃんとH.A.L.は実物を提供致します。 これは期待してください。
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No.048 ジム・ティール来日H.A.L.にてイベント開催
98年6月26日正午前、ティールの新製品CS7.2の第1号機が輸入元であるアクシス株式会社に入荷したという。すると、何とそのまま私のフロアーに持ち込んで下さるというではないか。日本で最初にCS7.2を聴けるというチャンスを私も見逃すことはない。待つこと数時間、午後3時ころであったろうか馴染の顔ぶれでCS7.2が運び込まれてきた。正直に申し上げてネットをかぶせた状態ではCS7と同じ外観なので新製品という実感はあまりない。しかし、随筆の第21話で述べているCS7の開発ストーリーを念頭に置いたとしても、第一声を聴いて進歩の跡がありありとうかがえるクォリティーを感じ取ることができた。よりよいフォーカスがヴォーカルの輪郭を鮮明に描きだし、引き締まった低域がティールのアイデンティティーを見事に提示している。しばし新作の音質を吟味しながら、来たるべきジム・ティールとの再会に何を質問しようかとチェックポイントを探し始めていたのである。そして、7月8日閉店後に開催されるイベントに向けて一足先にミーティングを行なうべくジム・ティール氏とキャシー・ゴーニック嬢が来訪された。午後4年ぶりの再会である。さて、前作CS7とどこが変わったのだろうか。それを解説しようと思ったのだが、私が質問した要点とジムの回答を指折り数えていくと、いつもの随筆と同等な文書量がないと書ききれないと思われ始めた。従って、7月8日に開催されたH.A.L.でのイベントに参加された方は、私とジムのやり取りを生で聞けたという大変ラッキーな皆様である。このブリーフニュースで詳細を述べることは諦めて、CS7.2に興味関心のある方に直接解説するため、そのポイントを頭の中で整理し皆様の問い合わせを待つことにした。
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No.047 ジェフロウランド・コヒレンスのバージョンアップについて
輸入元からのアナウンスはあれど実際のパーツの入荷が遅れて実現できていなかったコヒレンス2へのバージョンアップ・サービスがやっと開始されることになりました。 内容としてはリアーパネルの内側に取り付けられているコントロール基板とL.R.独立のアッテネーター・アンプボードの計3枚の基板を交換いたします。この新しい基板はサーフェスマウント(表面実装)基板となっており、従来のデュアルインライン構成のICチップを更に小型高性能化させたものを基板内面に格納し、シグナルパスの短縮と更なるハイスピード化を実現したものです。合わせて本体の7系統の入力全てにわたり入出力周波数特性、S/N比、ピンクノイズ・ジェネレーターテストを行ないます。 さらに電源部に関してもバッテリー消耗度測定、充電回路の基準電圧/電流測定を行い 本体には新たに1年間の正規保証が付加され、オーバーホール同等の性能試験も行ないます。この作業時間は1週間程度であり、料金は送料と税別で¥460,000.となります。なお、入荷パーツ数と作業人員に限りがあるため完全な予約制で受け付けを致します。しかし、私に川又に電話を一本頂ければ全ての手続きを私が行ないますのでお手数はおかけしません。日本ひろしと言えども新旧2台のコヒレンスを並べて比較試聴したのは私しかいないようです。これからも末長くご愛用頂きたいコヒレンスですから、我が子が成長する過程を観察する心境でバージョンアップなさることをお勧め致します。
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No.046 ホットニュースを土産にジェフロウランド氏一年ぶりのH.A.L.来訪!
98年7月15日、ジェフロウランド氏が多忙な来日スケジュールの合間を縫って私を訪ねてくださった。今年3月にディスコンとなってしまった同社のパワーアンプ、モデル2とモデル6の後継にあたる新製品のコンセプトをモックアップと写真をもって輸入元とのミーティングをかねて説明に来られたものである。詳しいスペックはもちろん、デザインもこれから変更される予定であり、価格や発売時期もまったくの未定である新製品は、ただただジェフロウランド氏の頭脳の中で開発の途上にあるという。従って、私(川又)は具体的な内容が決定してから公表しようと発表を控えることにしたのであった。ところが、このような状況であるのにもかかわらず国内の一部販売店がインターネットを通じて、さもこの秋に発売されるがごとくの情報を流し始めたことに大きな懸念を抱いた私は、完璧症で妥協を許さないジェフロウランド氏の姿勢と熱心なジェフロウランドの愛用者の皆様にとっても、今後の動向に対して誤解を招かないためにも私が直接インタビューした内容を公開することに踏み切ったものである。 まず、写真(1)をご覧頂きたい。フロントパネルの黒い部分には「イルミネ」とレタリングされているが、(このネーミングは採用されない予定である)仮称モデル66とされるモノ・パワーアンプの外観である。この後に紹介する写真も、すべてフロントパネルの中央部分がブラックになっているが、おそらくは本体と同じアルミのシルバー仕上げに変更される予定である。サイズとしては上から見るとモデル8やモデル9シリーズのフロントパネルと同じサイズであり、正面から見た大きさはコヒレンスの本体もしくは電源部と同じであり、従来のモデル2や6よりも薄型でスマートな外観となる。写真をよく見ると、水平方向に3分割されていることに気付かれるだろう。トップパネルは前述のモデル8やモデル9と同じ美しいフライス盤の研磨処理が光輝く仕上げであり、ボトムパネルの仕上げに関しては確定していない。そして、両サイドに楕円形のくりぬき部があるが、これがヒートシンクのデザインとなっている。これに上下から挟まれフロントパネルの黒い部分の両側に位置している厚みのあるアルミの中段部分はアルミの無垢材となっている。この左右のヒートシンクとなるアルミブロックの内側にパワーデバイスが取り付けられることになり、三層構造の真ん中で一番厚みのある部分、フロントの黒い部分の背面が空洞となり回路基板が格納されるスペースになる。これが今後の同シリーズ共通の構造となるものであり、剛性面から見ても非の打ち所のない基本設計である。 さて、このような外観がモデル2やモデル6の後継シリーズの基本構造になるわけだが、製品化の順序としてはモデル6の後継にあたる前述の仮称モデル66から開始される模様である。そして、従来のモデル6は150W/ch(8Ω)というパワーであったが、ジェフロウランドいわく単体でのパワー競争よりはクォリティーを重視する設計方針を貫いていくという方針で、恐らくは100W/ch(8Ω)程度の出力でまとめていくのではないかと思われる。しかし、これだけで話は終わらない。写真をよく見て頂くとトップパネルの周囲に12個のビス穴が開けられているのに気付かれるだろう。そして、ヒートシンクの両脇に左右2個ずつのビス穴が配置されているが、この穴にスタッキング・ピンを差し込んで同形状のオプションを簡単に積み重ねすることができるという。このアイデアが凄い。同形状の筐体に納められるオプションは2種類用意される。一つは電源だ。ジェフロウランド独自の開発による“ブースター・パワーサプライ”と仮称する強化電源をモデル66に接続することにより、低インピーダンスのスピーカーに対するドライブ能力を飛躍的に向上させるというものなのである。この段階で写真のボディーが四つになるわけだ。 次なるオプションは同様な外観の“ブリッジング・ユニット”である。これはモデル66専用とされるオプションであり2チャンネルステレオでは2台1セットを必要とする。そして、この“ブリッジング・ユニット”を片チャンネルに1台使用することによって、何とチャンネルあたり400W(8Ω)のパワーを発生することが可能になる。前述の単体でのパワーの大きさにこだわらずクォリティー本意に設計していくのだが、ハイパワーを求めるユーザーの期待に応える手段を発展的に実現可能としたのが今回の新製品におけるコンセプトの目玉と言えるであろう。片チャンネルでカウントすると、モデル66が2台、“ブースター・パワーサプライ”が2台、そして“ブリッジング・ユニット”が1台の合計5台のスタッキングとなるのである。 さて、ここで写真(2)をご覧頂きたい。ジェフロウランドは写真 で紹介しているボディーを使用してのインテグレーテッド・アンプも計画しているのだ。外観は前述のようにフロントパネルのブラックがシルバーに変更されるだろうが、ここに「ELAN」とレタリングされているのが恐らく名称になるのだろうか?、これはまだ未定のようである。価格的には現行のコンセントラの弟分(コンセントラは今後も生産が継続される)ということで、お求めやすい価格を想定しているとのことだ。しかし、インテグレーテッド・アンプの話もこれで終わりではない。写真(3)を見て頂きたい。ちょうど の上にスタッキングした形となっているが、実はインテグレーテッド・アンプの出力を仮称モデル22のステレオ・パワーアンプに接続し複数の使用方法を駆使できる発展性を持っているという。まず、インテグレーテッド・アンプのプリ出力をモデル22(あるいはモデル66)に与えて、実質上のセパレートアンプとして強化された出力でスピーカーを駆動する。次に、バイワイヤー方式の入力端子を装備するスピーカーにはインテグレーテッド・アンプの出力1系統を高域に、前述の接続をしたモデル22からも1系統を低域へとバイアンプ駆動の楽しみを容易に提供してくれるのである。そして、写真 の状態を後ろから見たものが写真(4)である。この状態で撮影されたモックアップはあくまでも試作段階のものであり、下側にあるのは入出力の系統数から見てステレオアンプのようである。この上下のアンプの両端に丸く金色に輝く目新しい部品が付いているが目にとまった。ジェフロウランドに尋ねてみると、何とアメリカのカルダス社が開発したバナナ・プラグに代わるヨーロッパ規格のターミナルであるという。ヨーロッパ製のコンポーネントに長年使用されてきたバナナ・プラグは、ある感電事故がもとになって廃止されてしまったが、この新開発のターミナルは接点の露出がない安全性を重視したデザインで、パワーアンプの出力側とスピーカーの入力側に今後広く採用されていくものと考えられているという。そして、これらのアンプにはジェフロウランドが開発してきたサーフェスマウント(表面実装)技術がふんだんに取り入れられたハイスピード指向の回路設計が施されて製品化を待つということなのである。 まとめとして、これまでにモデル6を中心とする相当数のジェフロウランド製品を販売してきた私としては、数多くの顧客に納入したモデル6などの価値観をもうしばらくは継続していきたいと考えており、以上のコンセプトが形となり試聴できる時期になってから発表しようと考えていたのである。しかし、前述のように一部販売店や雑誌での露出の可能性も考慮に入れ、ジェフロウランド氏本人から聞き出したもっとも正確な情報として公開に踏み切ったものである。価格は未定、スペックも未定、デザインの変更は予定されており、発売時期も未定であることをもう一度繰り返しておきたい。加えて、モデル8Ti、モデル9Tiなどの現行ラインアップは継続して生産されるということで、ジェフロウランドのパワーアンプが全て新製品に入れ替わるわけではない。そして、同社のパワーアンプはバッテリー電源を追加できるのが大きな魅力であったが、新シリーズではバッテリー電源の使用は想定されていないことも変化の一つと言えよう。 そして最後に、目の前で真剣に説明してくださったジェフロウランド氏の感性と人柄を信頼し尊重し、今回の新製品が素晴らしい音楽再生を実現されることを期待しつつ見守っていきたいと思うのである。
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No.044 H.A.L.の姉妹フロアー誕生!ホームシアターもハイエンドを追求!
詳細はこちら
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No.040 鸚鵡貝の誘惑 再び。
 B&Wのノーチラスが再度H.A.L.に登場する。しかし、今回はこれまでと違う。 4ウェイ・マルチのノーチラスを鳴らすにはステレオアンプで4台、モノアンプでは 8台を必要とするのだが、今回は、何とパワーアンプは2台だけで鳴らそうとするもの。 ジェフロウランドの最新パワーアンプ、本邦初公開のモデルMC6を2台使用する。 このモデルMC6は6チャンネルの独立した入出力系統を装備しているのだ。私がノ ーチラスを鳴らしたいという希望が輸入元の大場商事を経由してジェフロウランド氏 の耳に届いたところ、モデルMC6の4チャンネルをブリッジ接続としてパワーアップ させ、ノーチラスのウーファーとミッドローに使い、そのままの2チャンネルでトゥイ ーターとミッドハイを鳴らせということなのである。チャンネルあたり定格でも150 Wを保証するというモデルMC6でノーチラスが再び新たな一面を見せてくれることで あろう。しかも、2シャーシーのアンプですんでしまうのだから、コスト/スペース・ セービングには打って付けである。さて、今回のこの企画はいつまで続けるのか。98 年5月いっぱいは継続しようと思っているが、このデモの期間終了をいつにするかは私 にもわからないのである。それは、このためにわざわざ導入するノーチラスは、これま でに例をみない破格な条件でそのまま販売してしまう予定なのである。従って、買い手 が見つかるまではジェフロウランド&ノーチラスの音をお聴かせすることが出来るのだ が、これほどの音を聴いたマニアの皆様がどのようなリアクションを引き起こすのかは 私にも想像が出来ないのです。これは、やはり一度出かけてみるしかありません。私が お待ちしています。
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No.039 無名でありながら既存メーカーをおびやかす秘密兵器登場!
 まず写真をご覧頂きたい。このデザインを見て一体何をするものかわかる人は少ない はずだ。社員数たったひとりの新進メーカー、イルンゴ・オーディオの第一作目となっ たD/Aコンバーター、モデル705(定価128万円)である。98年4月某日のこ と、私は自分の顧客リストから厳選したユーザー30名様に限り、このモデル705に 関する特別推薦状を発送した。そこまで私の感性を刺激し、既存のCDフォーマットの 可能性を高めたものは、エソテリックP0とこのイルンゴ・オーディオのコンビネーシ ョンであった。しかし、これを作れる人物な設計者であり同社の代表である楠本氏一人 だけなのである。「私は会社を大きくしようとは思っていません。ただ、品(音)質を 落とさないように自分自身が1台1台作っていきたいだけです。」と語られるように、 この製品を作れるのはご本人一人だけという正真正銘のハンドメイドなのである。これ までD/Aコンバーターの新製品は、DACチップの前後にハイテクを駆使した独自な 回路やDSPを追加することで目新しさを発揮してきた。しかし、それら追加のテクニ ックが果たして進歩と言えたのだろうか。このイルンゴを聴けば答えが出る。日本国内 で唯一、この実物を聴けるところ、しかも世界最高レベルのコンポーネンを駆使して。 国内のハイエンド・オーディオでも、良いものは良いという単純でありながら最も大切 な“私の耳”での評価で採用したモデル705が皆様に与えるインプレッションは大い に予想できるものです。“スムース&ナチュラル”これを聴かなければ次世代スーパー CDは語れません。ぜひ、ぜひ、ご来店を!
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No.037 H.A.L.次世代スーパーCDの筆頭候補DSDを聴いた
 1998年3月11日、品川駅港南口にあるソニーテクノロジーセンターの試聴室 にて、ソニー・フィリップスが提唱するDSDフォーマットによる再生音を聴く機会 を得た。当日はハードディスクにメモリーされたDSDの音、同マスターから生成し た96キロHz24ビットの音、そしてSBM処理によって現行フォーマットに変換さ れた音、そして44キロHz16ビットであるまったくの現行方式の音と、合計4種類 の再生音を比較試聴することが出来た。世界中のハイエンド・オーディオを聴き込ん できた私は、複数のチェックポイントを採点した結果DSDの音質を最高レベルで評 価した。近々のうちに海外ハイエンドメーカーの首脳人も来日してDSDフォーマッ トのテクニカル・プロポーサルを受けられるという。私の音質的な評価と海外メーカ ーの動向からしても、いよいよDSDが次世代スーパーCDとしての認知を広めてい きそうである。このDSDに関しては私の随筆でレポートする予定であり、続報にご 期待頂きたい。
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No.036 1ボディータイプのCDプレーヤーに“小型”超弩級の新製品登場!
 1998年2月1日、英国のLINN社々長であるアイバー(Ivor Tiefenbrun)氏が H.A.L.を訪れた。実は、私の自宅では20年前に購入したリンのLP12があり、 特殊なピックアップカートリッジを装着したままで不動の位置を占めている。この頃は LP12の日本語取扱説明書も満足にないような時代で、LP12のここをこういじる と音はこう変わるという試行錯誤を繰り返していた古き良き時代でもあった。その頃か ら私は親しみを込めてアイバーと呼んでいたので、すっかり立派になられた今でも失礼 ながら同じような呼び方をしてしまう。そのアイバーとは、リンの国内販売体制が変更 になってから十数年以上会っていなかったのだが、最近輸入元と急接近する事態となり 私の活動に注目をされたらしい。この日やってきて開口一番「この作品の音を日本で最 初に聴かれるのはミスターカワマタです。」と言いながら、縦横30センチもないよう な非常にコンパクトなCDプレーヤーを取り出したのである。SONDEK CD12という型式 なので、アナログプレーヤーのネーミングと同一であることがすぐにわかった。しかし、 コンパクトなボディーを持たされてみるとズシッと思い。おそらく10キロ以上はある だろう。こんなに小さいのに価格的には280万円するというのだ。アイバーいわく、 「アナログのソンデックLP12のような、個性的でトップレベルのCDプレーヤーを 作って欲しいという要望が数多く寄せられ、これまでの25年間でバージョンアップを 繰り返してきたソンデックLP12のような将来性をもったハイエンドCDプレーヤー を作る決心をしたのです。」という。今までLINNというブランドでシステム販売を 推奨してきたリンが遂に単品でのプロモーションを開始するというのである。ちなみに リンの商品も私は販売しているので、その点もご記憶頂きたい。そして、試聴だ。 第一印象は「ウェル・バランス」である。この私の評価を文章化すると随筆のように長 くなってしまうので、ここでは詳細は述べないが直接問い合わせを頂ければお話し致し ます。あえて、一言だけ述べるとすれば“英国的感性”が感じられる。とにかく、超コ ンパクトでここまでの再現性があれば申し分は無い。あと2〜3か月最終段階のツメを 行ってから製品化するという。期待出来るコンパクトCDプレーヤーの登場である。続 報にご期待頂きたい。
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No.033 ティールの次世代フラッグシップモデルCS7.2を日本初公開
 随筆の第21話で紹介しているティールのCS7が大きくモデルチェンジされる。と 言っても外観と大きさはほとんど変わらない。これもH.A.L.が日本初公開の場と なることが決定した。しかも、前記のアヴァロンとまとめて3月27日に同時公開しよ うというのだから贅沢な企画である。そして、何とティールの社長であるジム・ティー ル氏もタイミングを合わせて来日するというのだ。しかし、さすがにアヴァロンの社長 と同席させるのもはばかられ、来日スケジュールも未定のためティール単独でのセミナ ーを開催することにしたのである。従って、これも日程が決定次第に郵送にて案内状を 発送するので同様にメールで郵送先をお知らせ頂きたい。
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No.032 アヴァロン新製品に関する続報
 No.030の通り“エイドロン(EIDOLON)”の日本初公開をここH.A.L.で行うことが 決定。随筆の第43話で紹介しているアヴァロンの社長であるニール・パテル氏も時期 を同じくして来日の予定があるという。そこで、昨年のオザイラス同様にH.A.L. においてセミナーを開催する予定である。H.A.L.のイベントインフォメーション に3月27日に開催する“エイドロン”試聴会のご案内を掲載する予定であるが、この 日程にニール・パテル氏のスケジュールが一致するかどうかは未定である。従って、日 程が決定次第に郵送にて案内状を発送するので、今後のH.A.L.の活動に興味をお 持ちの方はメールで郵送先をお知らせ頂きたい。

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No.030 アヴァロンがアセント2の後継モデルを遂に発表!
 惜しまれつつ現役を去ったアヴァロンのアセント2の後継モデルを現在開発中である と、同社々長のニール・パテル氏からコメントをもらったのが昨年の夏であった。そし て、オザイラスの下位モデルとなる“エイドロン(EIDOLON)”(予価セット380万円) として1月にラスヴェガスで開催されたウィンターCESで発表されたのである。11 インチ口径のノーメックス・ケブラーコーン型ウーファーを搭載し、3.5インチ・セ ラミック・ドームミッドレンジ、1インチ・セラミック・ドームトゥイーターを採用し、 従来のユニット構成を大きく変えている。また、デザインも従来のアヴァロンのイメー ジよりも、どちらかと言えばオザイラスで見せたプロポーションを基調としている造形 である。以前のアセントはネットワークを別のエンクロージャーとしていたが、今回の エイドロンは本体と一体とし重量も約70キロとハンドリングしやすいまとめ方になっ ている。98年の4月くらいまでには日本にも登場する予定であり、当然H.A.L. ではいの一番に試聴スケジュールを組むつもりである。ご期待頂きたい。
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No.029 日本が生んだ世界企業SONYはハイエンドを諦めていなかった
 ステレオサウンド誌の最新号No.124にアメリカはサンフランシスコで開催されたH iFi’97のリポートが掲載されている。この295ページで様々なスピーカーを紹 介しているが(6)にご注目頂きたい。アメリカにおけるソニーのスピーカーデザインチー ムが設計したプロトタイプの写真である。3ウェイ・マルチアンプ駆動だが、アナログ のチャンネルディバイダーは使わない。さすがにソニーである。独自に96キロHzサン プリング24ビット入力のDSPチップを開発し、3ウェイの帯域分割や位相整合/時 間軸整合などをデジタル処理しているという。このデジタルプリ/チャンネルディバイ ダーに対して、HiFi’97ではナグラDでチェスキーレコードから提供された96 キロHzサンプリング24ビットのDATソースを直接入力し、96キロHz入力に対応し ているdcsのエルガー3台でD/A変換し、更にパスラボのパワーアンプ3セットで このスピーカーを駆動したという。スピーカー本体は約350kgという超弩級の一大プ ロジェクトを、今後ソニーは商品化するかどうかの検討を行うという。商品化されれば エポックメーキングな存在になるであろうが、このプロジェクトに多大な関心を寄せて いるH.A.L.担当者は、このDSPスピーカーに急速接近する可能性をほのめかし ている。続報にご期待下さい。
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No.028 オーディオプリズム社々長Victor M Tiscareno氏H.A.L.に来訪す
 このブリーフニュースNo.10で紹介している同社の新製品“Mana”の発表を終え て、久々にVictor 氏が立ち寄って下さった。同社の製品を輸入するハイファイジャパ ンの首脳人は、昨年H.A.L.でデモしたノーチラスを大変に評価しており、オーデ ィオプリズムのパワーアンプ4セットでノーチラスにチャレンジしたいと抱負を述べら れた。果たして真空管アンプでノーチラスがうまく鳴るかどうか、またしても楽しみな 課題が出来てしまった。これが実現した場合にはH.A.L.の会員には試聴会の案内 を郵送でお送りする予定だ。見逃せない情報を入手するためにはH.A.L.担当者に 連絡先を知らせておく必要がある。
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No.027 WADIA社の首脳人H.A.L.に来訪す
 世界43ヶ国に輸出し好調なビジネスを展開している米国のワディアから、同社々長 のステファン.P.ジェフリー氏とセールスマネージャーのジェームス.G.シャノン 氏のお二人が9月10日に来訪された。近々発表予定の新製品としてはWADIA 27のペア となるトランスポートであるWADIA 270があるという。価格と発売時期は未定だが、1 1月ころにはサンプル出荷が行われるという期待がある。そして、同社の執念とも言う べき次世代デジタルシステム、「PowerDAC」の完成が間近いという。約2時間 に及ぶミーティングで担当者はワディアに対する印象を大きく変えたようである。
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No.026 ジェフローランド氏H.A.L.に来訪す
 去る8月上旬ジェフローランドが久々に訪れ、担当者は新製品の情報を聞き出すこと に成功した。予定されるモデルナンバーは「モデル8MC」3チャンネルの入出力を装 備したステレオパワーアンプで外観はモデル8Tiと同様であるという。しかし、モデ ル8Tiのパワーを単純に3分割したのではなく、200W程度と予定される出力が3 チャンネルすべてから取り出せるという。ノーチラスやオーディオアーティストリーの ベートーベンのようなマルチ仕様のスピーカーには格好のペアリングとなるであろう。 11月くらいには入荷の見通しなのでどうぞご期待下さい。
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No.025 米国アヴァロンのホームページにH.A.L.担当者が登場している
 随筆でも紹介しているアヴァロンのオザイラスに関して、「オザイラス/東京デビュ ー。ダイナミックオーディオ ミスターカワマタ」と写真を交えて同社のホームページ に紹介されている。ちなみにアヴァロンのURLは  http://www.avalonacoustics.com/
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No.023 アメリカのオーディオ専門誌を更にもう一誌輸入販売します
 H.A.L.ではアメリカのオーディオ専門誌「Stereophile」を全国で唯一好評の うちに店頭販売している。過去2年分のバックナンバーもストックされており、最新の 情報を求めるユーザーに数多くお求め頂いている。そして、優秀なライターが集まって きたことで近来発行部数を伸ばしている「Fi The Magazine of Music&Sound」も店頭発 売することになった。両者共に価格は税別\1,500.円で提供している。米国内では6ド ル前後で販売されているものだが、ごく少量の輸入販売に関してやむを得ない価格設定 となってしまった。もとより担当者は雑誌を売ってもうけようとは考えておらず、あく までもユーザーサービスの一環として理解して頂きたいということでした。部数をある 程度まとめて頂ければ地方発送も致します。音だけでなく情報も提供するH.A.L. にぜひご期待下さい。
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No.020 今年もノーチラスの歌声を再び
 昨年豪華なラインアップでプロモーションを敢行したB&Wのノーチラスは各方面へ 大きな波紋を投げかけた。今年は趣も新たに精悍なブラックのノーチラスを日本で初め て導入する。そして、これから続々と発表されるであろう各社の最新最高のモノラルパ ワーアンプを勢揃いさせ、更に米国の某ハイエンド・メーカーが開発したノーチラス専 用チャンネル・ディバイダーのオリジナル・モデルを用意する。各国の製造元でも、世 界各地の他の販売店でも、そして専門誌の企画においても実現することのない、世界的 に見ても前例のない豪華なノーチラス・サウンドをお聴かせする構想が出来上がってい る。既にノーチラスを所有している人も、そして一度もノーチラスを聴いたことのない 人も、97年のラストは鸚鵡貝の歌声におおいに酔いしれて頂きたい。11月から12 月までロングランの公演を予定している。これにかける期待は大きい。
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No.013 マドリガル社の首脳人H.A.L.に来訪す
 1997年3月5日の夕刻、私がH.A.L.のフロアーに戻ると「ハイ!カワマタサ ン」と聞き覚えのある声が迎える。マドリガル・オーディオ・ラボラトリー社々長のマ ーク・グレイジャー氏である。今回の来日では四日前に一度みえられ、同行してきた同 社のチーフ・エンジニアを連れてこられたのだが今回は?と思っていると、長髪で口ヒ ゲをたくわえ眼鏡をかけた人物を紹介された。名刺を頂くとフィル・ムジオ (Phil Muzio/Chief Executive Officer)なんとマドリガル社の会長ではないか。世界 中をとび回っているマーシ・グレイジャー氏とは違って、この人が日本に来ることは滅 多にない。その人が訪ねてきたのである。ここH.A.L.には有名メーカーのトップが 数多くやって来るのだが、本場アメリカの店頭にもないコンポーネントを鵜の目鷹の目 で観察していくのが常である。今回彼らの注目を集めたのはボルダーの2010と20 20であった。アメリカでも3万ドル以上という価格であり、グレイジャー氏も知りえ る限り最高価格のエレクトロニクスだ。と言っている。彼らの観察は執拗に続いた。「 ミスター・カワマタはジェフローランドのコヒレンスとボルダーのどちらがベストだと 思うのか。」とアメリカ人が好む“ベスト”な質問をしてくる。私は、「両方ともベタ ーであって、ベストはユーザーが決めることです。」と言うと、大きくうなずいて納得 したようである。四人のアメリカ人に椅子を勧めて私からも質問を始める。「もう2年 間も言い続けているが、リファレンスレベルのプリアンプはどうなったのですか。」と 昨年のような爆弾発言を期待して尋ねると、笑みを浮か べてグレイジャー氏は「今年い っぱい待って下さい。今までの常識では考えられなかった素晴らしい作品をお届けしま すから。」と自信の回答が返ってきた。この後、「電源は?コンストラクションは?デ ザインは?・・・」と矢継ぎ早に質問を繰り返し、フィル・ムジオ氏自身も意気に感じて 盛んな回答を返してきたのであった。白熱したやり取りを網羅するにはスペースが足り ないが、マークレビンソンの旗艦ともなるプリアンプの登場がいよいよカウントダウン に入ったらしい。これは大きなニュースであるとして、私が97年3月に既に発信して いたことを将来は思い出して頂きたいものだ。
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No.010 スクープ!新進気鋭の管球式アンプ・オーディオプリズムの新製品!
 1997年2月7日アメリカのオーディオプリズム社々長であるVictor M Tiscareno 氏がH.A.L.を訪れた。当フロアーにも展示をしている同社のアンプが表彰され受 賞式に参列のため来日されたのである。さて、今年1月にラスベガスで開催されたウ ィンターCESにも同社は出展しており、日本での発表は今夏以降になる見込の新製 品をH.A.L.にプロモートしに来訪されたのである。この写真 でラックの上段にあるのが、MANTISSA Silver Signatureである。既に発売している MANTISSAの内容を高精度パーツを惜しみなく投入してグレードアップを図ったものであ る。外見は通常のMANTISSAとほぼ同じであるが、価格的には90万円から110万円 程度を予定している。また、その下にマウントされているのはMANTISSA RIAA PHONO PREAMPRIFIERで文字通りのフォノイコライザーである。この価格もMANTISSA Silver Signatureとほぼ同レベルを予定している。さて、この写真が驚 きの新製品である。モデル名は“Mana”と命名されたモノブロック・パワーアンプで ある。この“Mana”の名前の由来をVictor氏に尋ねたところ、「神様が託された食べ 物」という意味であるという。インプットステージにはフェーズスプリッターとして WE417/5842(Single Triode)を、ゲインステージとドライバーステージ には6SN7(Dual Triode)を各々2本で計4本、そしてパワーステージには58 81/6L6(Beam Power Tube)を8本使用している。パワーステージの結合方式は 選択が可能で、ウルトラリニアー結合で100W、トライオード結合で50Wのパ ワーを発生させるという。バイアス方式はクラスAB1固定方式で、ゲインは26. 5デシベルに設定されている。Victor氏は私の目の前でブロックダイヤグラムを書き 始め、いかにシンプルで従来のフィードバック理論と違う設計を行ったかを力説して くれたのである。この“Mana”は今年夏までには私の手元に届けてくれるということ で、価格的には250万円から300万円程度の値付けが予想されている。今まで当 フロアーのスピーカーに対してドライブ能力を発揮しえなかった管球式アンプたちに 代わって、“Mana”は管球式アンプを代表して名誉挽回を果たしたいとVictor氏は抱 負を述べていた。
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No.006 400万円のマイクロホンで録音された音楽とは
 まるで船のランプのような大きさの(直径8cm×高さ27cm×重さ2.2Kg) のマイクロホンは、スウェーデン・ストックホルムに住むデットリック・デ・ギア氏が 数年の歳月をかけ、高度な技術と高価な資材を惜しみなく費やして製作されたものだ。 ダイヤフラムにはAKGのC12VR(最新のものはC12:a)を採用し、ドライブ アンプとしては双三極管ECC82の片側を使用している。ダイヤフラムからのケーブ ルの引き回しを最短距離とするため、ダイヤフラム直下に真空管を逆さまに取付け、そ の周辺に最小限度の高品位パーツを立体配線によって組むという離れ業を実現している 。更にダイヤフラムにはテフロン加工を施し、ソフトラバーによって機械的な振動対策 を満足させている。ゲインファクターは17とした真空管、1インチ・ダイヤフラムか らの高電圧出力、巨大なアフトプット・トランス、これらの妥協ないコラボレーション が最大のゲインと周波数特性(8Hz〜200kHzで−3dB)、広大なダイナミッ クレンジ、出力インピーダンスは67Ωと極めて低く最小のノイズ・レシオを実現した のである。デットリック・デ・ギア氏が、このマイク1本を製作するのに1年間を要す る 。 日本での価格は1本200万円、世界中では18本が存在しており、その中の13と1 4を所有したのがマイスター・ミュージックである。 H.A.L.では早速マイスター・ミュージック代表取締役平井義也氏とコンタクトし た。同社がギア氏のマイクロホンで製作した11月25日発売の最新アルバム「アルモ ・サクソフォン・クァルテット/革命児」(MM‐1026)を入手し、現状のノーチラスで試 聴を開始し同時にH.A.L.では本アルバムを含むマイスター・ミュージックの作品 を積極的に販売していくこととなった。再生装置のハイエンドを追究しながら録音にお けるハイエンドにも大いなる関心を寄せていくものであると、H.A.L.の担当者は 明言した。
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このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
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