発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明


No.259 小編『音の細道』特別寄稿 *第20弾*
     「近年まれに見る驚き!! 私のレベルで感動できる
       Gケーブルとは!? その.1」

1.アプローチ

2003年11月だったろうか、かねてより顔見知りであったある輸入商社の社長
から当社の役員を通じて私にアプローチがあった。

「新しく輸入販売を開始したいと考えている某社のケーブルを川又さんに
 試聴して頂き、取り扱って頂けるかどうかの判断をお願いしたいのだが…」

という内容であった。そして、ちょうどサンプルが入荷してきたのが私が
忌引きで休みを頂いていた最中であり、サンプルをここに送り込んでから
一度お会いして話しを聞いて欲しいということで年末も押し迫ってからの
12月最終週にミーティングをしたのであった。

今ここで、ズバリそのメーカー名をあげることは出来ないが、高級ケーブル
一筋に事業を展開する会社であり、設立以来21年という歴史と実績を持つ
メーカーのケーブルである。今後は仮称として“G社”ということで私と
このケーブルの出会いを述べいきたいと思う。

まだ、正式に国内での販売に乗り出すかどうかを決定したわけではないので、
皆様の連想がまったく働かないであろう頭文字で“Gケーブル”と呼ぶこと
にする。しかし…、私がこのような手間ひまをかけようとしていること自体
が既に多くを物語っているというものだが…(^^ゞ

年も明けて、営業的にも、また随筆を仕上げるという課題からも開放されて
やっと試聴室でじっくりと取り組めるようになったのが昨日あたりからだが、
このGケーブルは最初の一撃で私を虜にしてしまったようである。


2.強力な一撃

試聴システムとしては昨日Moebiusを検証し、開発ナンバー“10000952”を
選択するに至ったNautilusのシステムをそのまま流用し、そこに至るまで
の音質を記憶に留めながら試聴を始めることにした。X-01の電源ケーブル
は“10000952”を昨日同様に使用しているのは言うまでもない。

     -*-*-*-*-今回のリファレンスシステム-*-*-*-*-

ESOTERIC G-0s(AC DOMINUS) →ESOTERIC X-01(AC DOMINUS)→PAD BALANCE
DOMINUS 1.0m→Brumester Pre-Amp 808 MK5(AC DOMINUS)→(PAD BALANCE
DOMINUS 7.0m) →Nautilus付属Channel Divider(AC DOMINUS & BALANCE
DOMINUS 1m×4 SAP RELAXA2PLUS×2)→JEFFROWLAND MODEL 304×2
(AC DOMINUS×2) →B&W Nautilus→murata ES103B With PAD ALTEUS 3m

ケーブルの試聴というとまずはACケーブルからスタートしたいのだが、
まだサンプルが到着していない。それでは音質的に変化の大きいところ
からとスピーカーケーブルも考えたが、Nautilusでは使えない。インター
コネクトとデジタルケーブルからGケーブルを試していくことにしようと
考えたが、一体型プレーヤーのX-01ではデジタルケーブルは不要である。
そこで!!と考えたのがG-0sからX-01へワードシンクを送るBNCケーブル
である。上記のシステムではPAD DIGITAL COLOSSUS(\92,000.)であった。

ワードシンクのリンク用ケーブルは過去にはDOMINUSを使ってみたりして、
オーディオ信号は流れていないにも関わらず音質に影響力を持っている
ことは体験としては承知していた。しかし、最近のセールスの中でも
ESOTERIC G-0sとの同時販売でいきなりDOMINUSもなかろうと、多くは
ティアックが輸入するVan den Hul社製 VH-DICO-10BC(\25,000.)や、
  http://www.teac.co.jp/av/import/vdh/vdh_main.html
dcsのMSC-BNCケーブル(\99,800.)などをセット販売してきたものだ。
  http://www.timelord.co.jp/consumer-audio/apcable.html
コンポーネント導入の当初に当たっては、妥当な選択という感じだ。

さて、多くの人々があまり注目しないであろう、このワードシンク用
のケーブルが驚くべき第一印象をどのように叩き出したのか?

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私は継続する楽音と瞬間的に立ち上がるインパクトのある楽音とで、
デジタル伝送における個性を見分けることを常々行ってきた。そのため
の選曲として選んだのは、随筆52話でも使用しているこの曲だった。
(詳細は随筆本文を参考にしてください)

大貫妙子の“attraction”から5トラック目ご存知の「四季」である。
http://www.toshiba-emi.co.jp/onuki/disco/index_j.htm
まずは最初にDIGITAL COLOSSUSのままで数回リピートさせて演奏の各
パートを記憶に刷り込んだ。そして…!?

ケーブルの本格的な試聴というのは実に手間ひまかかるものだ、同じ
端子間を忠実に再現するために差し替え差し替えの繰り返しである。
さて、GケーブルのBNCデジタルケーブルに差し替えて再スタートだ。

「えっ!? ホントに? なぜ? 」

と、瞬間的に私の体温は1度上昇した!!
まずギターとベースのデュオのイントロで決定的な違いが直ちに感じら
れる。私の経験上で直ちに言えることはノイズフロアーが下がっている
ということだ。ギターの周辺に付帯していた残響なのかな〜? と思って
いた淡い霧のような背景がすっと消えている。ベースのピッチカートの
後にも何かしら空気中に残していったごく薄いベールのような空間にお
ける漂流物が同じくすっと消えているのである。さあ、いよいよ大貫妙
子のヴォーカルが入ってきた!!

「どうしたということだ!? 音像がなんでこんなに…? 」

オーディオ信号が通っている各経路でのケーブルに関しては、皆様も
ご存知の通り万全の体制をしいておりスキはないだろうと自負してい
たが、G-0sとX-01における連係作業にこんな盲点が、いや可能性が隠さ
れていたとはなんということだろう。

庭一面に散乱した落ち葉を丁寧に掃き集めて、枯葉の山を作ったところが
音像が定位する地点であるように、フォーカスのあり方が山として地面か
ら盛り上がったようにエネルギーを集約して鮮明になるのである。きれい
に掃き上げられた地面にはほうきの跡が残ってでもいるように、Nautilus
の周辺の空気が澄んできたようである。

そして、不思議なことに掃き集めた落ち葉の色は一様ではなく、色とりど
りの枯葉が集合したがごとくに音像の色彩感を濃厚な方向へとGケーブルが
いざなっていくのである。

あまり詳細を述べることは出来ないが、一連のGケーブル各種はケーブルの
両端に特殊なケーシングを装備しており、それが外部から進入する電磁波、
高周波などの干渉からアイソレーションしているのである。更に、この
ケーシングはずっしりとした重量を持っており、その質量で空気中を伝播
するオーディオ帯域の音波による低周波振動の影響も制動しているという。

その結果として、見事に低減されたノイズフロアーの効用として、しかも
オーディオ信号を伝送していないリンク用ケーブルだけで、何とも驚くべ
きパフォーマンスを発揮しているではないか!!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

更に演奏が進むにつれて、先ほど記憶に刻み込んだ音質との相違点を私の
耳と感覚が“間違い探し”の要領でチェックし始める。

「おいおい…、まだまだあったのか!!」

ヴォーカルのエコーは間違いなく増量している!! それも、うちわの一煽ぎ
で涼風が顔に当たるように、先ほどにも増してエコー感の反復が気持ちよく
Nautilusから吹き付けてくるではないか!! こんな情報が入っていたのか!!

中盤からストリングスが大貫妙子の背景にすっと入ってくるのだが、その
距離感が先ほどよりも明確に捉えられ、ヴァイオリンのアルコの一筋一筋
の質感に潤いがあるのが不思議でならない。なぜだ!?

サビに近づくと鈴とクラベスがNautilusのセンターと右手から繰り返される
のだが、あ〜、クラベスの余韻が腕時計の秒針でもカウントできるほど長く
尾を引いている。

不思議だ…、音声信号などまったく関係ないクロックリンク用ケーブルで
このような違いがあるとは、いったい私はこれまで何を聴いてきたのか?
しょっぱなから思い知らされたGケーブルには更にどんな可能性が秘めら
れているのか!?


3.興奮しながらも見えてきたGケーブルの性格とは?

ひとつの発見が次なる好奇心を生み出し、好奇心は更なる連鎖を持って
次の発見を探せと私に命令する。たった一本のケーブルの試聴に何時間
かかるのだろうか…、差し替え差し替えの作業は繰り返し、次なる課題は
オーケストラだ。ご存知、サンクトペテルブルク・キーロフ管弦楽団・合唱団
による「くるみ割り人形」に早速ディスクを入れ替える。

http://www.universal-music.co.jp/classics/gergiev/valery_gergiev.htm

やはり最初にはDIGITAL COLOSSUSに戻して、1.15.16トラックの三箇所を
集中してリピートする。X-01のポテンシャルは随筆で詳細を述べているが、
現行のCDにして同価格帯でも貴重な解像度を有しており、メカニズムの
完成度が否応なく大編成での演奏に微細な違いを引き出してくれる能力
があり、今回の試聴でもリンクケーブルという存在感を色濃く出している。
もちろん、私は後日の課題としてGケーブルの他のラインアップでの検証
においてはP-0s+G-0sとdcs 974+Elgar plus 1394でSPDIF-2によるDSD伝送
でのデジタルケーブルも予定しているので、今回は本当にクロックリンク
用ケーブルという序曲に過ぎないものだ。しかし、予想だにしなかった
このリンクケーブルとしてGケーブルの第一印象が強烈になったものだ。

さて、私の脳裏に比較基準がちゃんと刷り込まれたようだ。それでは再度
GケーブルBNCに差し替えだ。それでは1トラック目から順を追って…。

「むむ、これはどうしたことだ…? 」

最初の一音が発する前のホール内の暗騒音なのか…、オーケストラの楽員
が既にステージに並んでいるホールに一歩踏み込んだ時の言葉ではない
ざわめきというのか、先ほどの大貫妙子のスタジオ録音で感じられた
ノイズフロアーの低下という現象が、今回はホールの中の無言の人間達が
発する音響的生体反応がより強く感じられるではないか!! murata ES103B
が拾い上げた漂うような数十人の呼吸音が聴こえるような情報量の拡大が
演奏開始前に私を驚かせた。そして…。

「何と広がっているではないか!!」

1トラックの序曲では弦楽器群のアルコが占めるステージ上での広さという
か、ヴァイオリンの余韻感の広がり方がなだらかに広がっているのである。
そして、先ほどは弦楽群の上に位置するNautilusの上方の空間に、あたかも
湯気のように立ち上っていたように感じられるエコー成分が整理されて
すっきりしている。聴き進むうちになるほど〜、感心するのは弦楽群の
楽員が着席する椅子の感覚を倍にしたように、多数のヴァイオリンの本数
が各々に若干の質感の相違を見せながら数えられるような解像度の向上が
認識された。

ライブとは違ってレコーディングというプロセスを介してソフトを商品化
する過程で、大編成の中でも埋もれることなく鮮明に収録されるのがトラ
イアングルである。オーケストレーションにおいては左手奥に位置するパ
ーカッション群のなかで、生演奏で叩かれるトライアングルのボリューム
感は遠方に見える奏者との距離感そのものであろう。しかし、レコーデッド
ミュージックにおいてはトライアングルに専用マイクを使用したのではと
思えるほど眼前に鮮明に捉えられているものだ。それが…!?

「チイィ〜ン!!」から「チイィィィィィ〜ン!!」と、奏者がつかんでいる
吊りひもが三倍くらいに長くなって、叩かれたエネルギーが三角形の金棒
をゆらゆらと揺らしながら指で触れるのもご法度という感じで余韻を残す
のである。そして、トライアングルだけにピンスポットを当てたのではと
思えるくらいに質感に輝きが乗っているのではないか!!

そして、木管楽器のパートが自分のポジションを更に明確にしたかと思うと、
発したエコーの拡散する空間は拡大されており、その証拠に…。

15トラック目の「中国の踊り」ではファゴットのタンギングが自身の余韻
を強調するかのように右側からホール全体に広がり、左側からはピッコロ
が対照的に自己主張するのだが、木管楽器の音像の引き締まりと余韻感の
ふくらみがきれいに調和している。そして、ここで聴ける左右両側からの
弦楽器のピッチカートも同様に鮮明さを増しているのはなぜだろう!?

これまでのテストでスタジオ録音での性格を知ることが出来たが、ホール
での録音でも情報量の増大は間違いがない。そして、16トラック目の
「トレパーク」に進んでいくと…。

「そうそう、ストレスのないフォルテッシモは気分爽快だ!!」

解像度という言葉では硬い印象に受け取られがちだが、実は個々の楽音が
きれいに分離してくれるということであり、簡単に言えば合奏時の混濁
がないので大変すっきりと聴き取れるのである。迫力イコール音量と刺激
成分の混じった音、という初歩的な解釈は私の試聴室ではないものだが
日常的に純度の高いものを味わっている人間が更に感動するレベルという
と並大抵のものではない。

うねるような左右の弦楽器群によるアルコの応酬は逆に爽快感を感じさせ
ながら、タンバリンとティパニの連打という打撃音に更にテンションが
高まっていることを感じさせてくれる。これはどうしたことか!


4.ワードシンクの重要性

さて、数時間を使っての試聴だが、どうやら私の場合には感動のレベルの
高さはどうしても文章量に比例してしまうようである。しかも、Gケーブル
の最初の一アイテムだけで、この有様だ…(^^ゞ
これからデジタル、インターコネクト、スピーカーケーブルと多数の試聴
課題を抱えているのに、いったい何日かかることだろう…^_^;

さて、スタジオ録音の小編成のヴォーカル、そしてオーケストラとスケール
の両極端なもので検証してきたが、最後はこれ!! ギターソロである。

デジタルケーブルの検証では、鋭く立ち上がる楽音と、その余韻の消滅まで
を観察すること。そして、そのエコー感がどのように広がり、その中に何色
の色彩感が踊っているかを私はチェックしているものだ。そこで選曲は!?

押尾コータロー『STARTING POINT』の一曲目「Fantasy!」に決めた。
http://www.toshiba-emi.co.jp/oshio/

余談であるが、大晦日の紅白歌合戦で押尾コータローが伴奏者として登場
したのには驚いた。すると元旦にもバラエティー番組に出演しており、彼
のギターの奏法を初めて画面で見たのだが…、たいしたものだと感心して
しまった。でも、あのように弦やボディーを叩いたり、ブリッジを握りな
がら弾くような奏法は20数年前にブルーノートの新人黒人奏者が同様な
テクニックで当時話題になっていたことを思い出した。多分我が家のLPの
中にもまだしまい込んでいるはずだが…。

さて、私が着目したのは爪をコーティングしてガチガチに固めていると
いう押尾がシングルトーンで長い余韻を含んで弾く冒頭の部分である。
これをDIGITAL COLOSSUSに戻して5回ほどリピートして記憶した。

さあ、GケーブルBNCに差し替えて…、この作業は何回目だろうか…^_^;

「ピイィ〜ン!!」から「ピイィィィィィ〜ン!!」と先ほどの引用をコピー
しての表現で恐縮だが、正に言葉ではこう変化するのである。

しかし、シングルトーンであるはずなのだが、この「イィィィィィ〜ン!!」
という余韻の中に今まで聴こえなかった成分が多分に含まれているから
たまらない!!

まるでkaleidoscopeのように時間軸の進行に伴って響きあう弦が他の弦
にわずかに共鳴しあうように、余韻が極彩色の小片となってNautilusの
周辺に撒き散らされるのである。私は断言できる。ここで試聴される
人々に10人中10人ともが、この違いを明確に認識することであろう!!

こんな理不尽とも言える情報量の変化はX-01をはじめとしてNautilus
に終焉するシステムの総合力であるとも言えるのだが、クロックリンク
というオーディオ信号とは無縁の伝送経路で起こったということが
Gケーブルの可能性を未知の領域として思い知ることになったものだ。
そして、ワードシンクの領域で起こりえる変化の大きさに改めて認識を
深めるものであり、今後の試聴のリファレンスとしてはリンクケーブル
はすべてGケーブルに統一して進めていかなければと思うものであった。

さて、次はインターコネクトだ!!

しかし、今日は時間がなくなってしまった…^_^;

Gケーブルの検証はそれほど短時間ではすみそうもない。
それほど奥深く可能性を秘めているものだ。リンク用ケーブルでこれ
ほどなのだから、実際にオーディオ信号を伝送するケーブルにしたな
ら何が起こるのか?

この興味津々の課題は次回ということで、ぜひハルズサークルにご入会ください。


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
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