発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明



小編『音の細道』特別寄稿 *第20弾* 「納得の上で成立する私のセールスとは!?」
*既に上記をハルズサークルに配信しておりますが、内容の性格上webでは非公開と
 させていただいております。ぜひハルズサークルにご入会下さい。

No.240 小編『音の細道』特別寄稿 *第21弾* 
「ESOTERIC “G-0s”によって刻まれたシャンティクリアの肖像」

1.プロローグ

昨年の11/30に配信したNo.0491で、時の話題を独占していた感のある
P-0s with VUK-P0と同社のP-70 & D-70を題材とした「ESOTERIC 論文コン
クール」の企画を発表したが、その超豪華賞品としてティアック・エソテリ
ックカンパニーより情報提示があったのが、現在のG-0の開発予定であった。

この「ESOTERIC 論文コンクール!!」の応募作品は下記のサイトに紹介され
ておりますので、よろしかったらご一読くださいませ。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/fan/hf_hear.html

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

これまでにも業界最速情報として、ハルズサークル・レビューではG-0の
誕生にいたる過程をスクープしてきたのだが、最新の生情報がこれ!!

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pdf/030709/essoteric_g-0_front.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pdf/030709/essoteric_g-0_rear.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pdf/030709/essoteric_g-0_con.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pdf/030709/esoteric_mcg030709.doc

そして、2003年7月11日ほぼ仕上がった量産サンプルが私の手元に持ち込
まれ、このH.A.L.の環境とシステムにて検証することになったのである。


1.知っていたはずのマスタークロックの貢献が!?

さて、今回の“G-0s”を検証するに当たってのポイントはなんだろうか?
私も過去に、そして現在でも他社の最優秀のMaster Clock Generatorを
リファレンスとして使用しているだけに、私が求めるハードルの高さは
ひとしおのレベルのものである。

簡単にMaster Clock Generatorと言っても、その真価はどのような局面で
存在感を認識できるものなのだろうか…、そしてそれを聴き取るための
システム構成は…、ということで持ち込まれる以前から私が描いていた
検証システムはこのようなものであった。

     -*-*-*-*-今回のリファレンスシステム-*-*-*-*-

Esoteric G-0s→Esoteric P-0s(AC/DC DOMINUS)→PAD DIGITAL DOMINUS
AES/EBU×2(176.4KHz伝送)→dcs Elgar plus 1394(AC DOMINUS)

*“G-0s”のWord syncはP-0sとElgar plus 1394の両方に供給

→PAD BALANCE DOMINUS →JEFF ROWLAND COHERENCE2(AC/DC DOMINUS & PAD T.I.P)→
Nautilus付属Channel Divider(AC DOMINUS & BALANCE DOMINUS 1m×4 SAP
RELAXA2PLUS×2)→JEFFROWLAND MODEL 304×2 (AC DOMINUS×2) →PAD RLS for
Nautilus Quad-Wire 3m →B&W Nautilus→murata ES103B With PAD ALTEUS 3m

そして、これらのフロントエンドを収納したのが、話題のハイエンド
ラックの新星Grand Prix Audio Monaco である。
http://www.teac.co.jp/av/import/gpa/gpa_main.html

セットアップした状態がこれ!!
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/op-pho/esoteric.jpg

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、今回の試聴は大変である。“G-0s”のクロック出力はA/B/Cの
三系統独立でWord syncの出力を44.1/88.2/176.4キロHzと設定でき、
かつ各系統に二つずつの出力端子が装備されている。

“G-0s”の各クロック出力を下記のように接続した。
・出力A系統   P-0s
・出力B系統   Elgar plus 1394
・出力C系統   ESOTERIC D-70+VUK-D70

そして、G-0sではXtal(クリスタル)、Rb(ルビジウム)、EXT(外部マスター
クロック入力)が選択可能のため、44.1/88.2/176.4キロHzの各周波数を
Xtal(クリスタル)、Rb(ルビジウム)とで切り替えて、合計六通りの
音質比較をしていくと言うことになる。

ちなみに、この場合の発振精度はXtal(高精度水晶)±0.1ppm(出荷時)
そして、Rb(ルビジウム)±0.05ppb(=±0.00005ppm)であることを追記
しておく。

また、今後は時間のゆとりがあればいいのだが、今回はWord syncを
受け入れるDACが製品としても少なく、特にElgar plus 1394での使用
クロックを内部と外部に切り替えるメニュー操作と同期が復帰しての
出力再開までタイムラグが長いので、Elgar plus 1394に対しては
当初から出力B系統にて88.2キロHzを固定して入力し、P-0s側への
クロック供給を上記の六通りで変化させて試聴することにした。

同様に、P-0sまたはP-70というWord syncの入力が出来るトランスポート
に対して“G-0s”の貢献度を検証することにより、Word syncに対応
していない他社のDACとの組み合わせでも、同様にトランスポートのみ
でのクロック精度の向上により音質への貢献を確認することが出来る
ものであるということを私は以前の体験からも感じているものである。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、今回の試聴ディスクであるが、今回のクロック精度の向上とは
何によって感じられるのかという典型的な要素を存分に聴かせてくれ
のものとして、これを使用した。

シャンティクリア:ア・カペラの王様〜シャンティクリアの肖像
録音:1987〜2002年◎2003年5月21日発売 FINLANDIA CD■WPCS-11590 
http://www.chanticleer.org/
シャンティクリアの詳細は彼らのweb siteをご覧いただきたいのだが、
1978年以来の活動が高く評価される「声のオーケストラ」と言われる
本格派の技巧集団である。

このなかで、今回は数十回もリピートしてデリケートな試聴に使用した
のは17曲目の「Wade in the water」と20曲目の「さくらさくら」である。

まずは、“G-0s”をまったく使用しないで、上記のシステムでこの二曲
をまず繰り返して聴き、チェックポイントを押さえていく。

「Wade in the water」は何と言ってもバスのソロが印象的であり、この
パートが後々色々な変化を見せてくれるものであった。テノールという
パートは多種多様なアーチストが広く知られているところだが、バスと
いうパートは中々主役をはるということはなかったようだ。

このバスはERIC ALATORREが担当しており、1990年にシャンティクリア
に加入している。メキシコの移民の孫であり、南カリフォルニアで育った
彼はカリフォルニア州立大学フラートン校とサンフランシスコ州立大学に
に進んだ。

シャンティクリアに入団する前はサンフランシスコ交響曲合唱とも共演
したことがあり、彼の巨大な口ひげがトレードマークになっているという。
シャンティクリアの歴史の半分を担っておりベテランのメンバーである。
時折、快楽主義者を標榜し、また日頃は大のワイン愛好家であるという。

ソプラノ三人、アルト三人、テナー三人、バリトン二人、そしてバスが
このAlatorre一人という構成のシャンティクリアはあらゆるジャンルの曲
を演奏するのだが、ゴスペルを主としたアルバム「黒い川-黒人霊歌集」
CD■WPCS-21150からチョイスされたのが、この曲である。

「さくらさくら」はアレンジが素晴らしく、前曲とは違ってソプラノの
再現性が印象的であり、最後のワンフレーズにAlatorreの「さくら〜」
という一声が左チャンネルから響きエンディングとなる。

さあ、これからだ!!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、いよいよP-0sに“G-0s”のクロックを注入する!!

最初は44.1KHzのXtal(クリスタル)だ。

「Wade in the water」の歌詞を繰り返すイントロのハーモニーが
始まった瞬間に相違点が瞬く間に判明する。

「え〜、嘘でしょ!!」

左チャンネルからソプラノの合唱でハミングが始まり、右チャンネルの
テノールが Wade in the water と繰り返す。このイントロにおいても
各々のパートの質感は洗浄され、今まで隠されていたホールエコーが
こんなにもあったのかと、思わず私の顎がひとりでに下がってしまった。

続いて、「さくらさくら」はソプラノのハーモニーがNautilusの周辺にオーラ
のようにエコーを残しながら、シンプルな日本語でホールの天井の高さが
私の目線を思わず45度ばかり上を見上げていという変化に気づく!!

なんと言うことだろうか!!

VUK-P0のアップグレードによって、P-0s内部のクロック精度が向上して
いるというのは理屈ではわかっていても、この変化は大きすぎる。
ヴォーカルという多様性のある楽音と、それを取り巻く空間表現に
これほど大きくMaster Clock Generatorが作用するとは誰が想像した
ことだろう!!

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

次は44.1KHzのRb(ルビジウム)だ。

私は正直に言って、私はMaster Clock Generatorは、それが出力する
クロック周波数の高さが音質的に影響力が大きいものと考えてきた。
それも、このような経験によって自分なりに確認していたものだ。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/234.html

従って、この時のように同じ44.1KHzであれば、そこで起こる変化に
関しては、クロック出力が176.4KHzになったときのような顕著な違い
はなかろうと高をくくっていたのである。まだまだ、この先に今回の
試聴の山場があるだろうと思っていたのである。

“G-0s”の内部クロックをXtalとRbのいずれかに切り替える“Master”
のスイッチをポンと押してRbに設定を変える。P-0sは新たにクロックが
変化したことを察知して、再び最適同期を得るためにインジケーター
を点滅させてチューニングを始めた。よし!! 同期完了!!

このときには、さしたる期待もなく気軽にP-0sをスタートさせた!!

「おお〜!! これはどういうことだ!!」

「Wade in the water」のイントロが始まろうとしたそのとき、
シャンティクリアの面々が一斉にブレーシングをして、すぅ〜と息を
吸い込む気配があったと思ったら、左側から流れてきたハミングの余韻
が先ほどにも増して彼らのステージの奥行き感を一回り大きくしたように
Nautilusの後方に広がっていくではないか!!

Wade in the water〜♪ と左側からの合唱には、新たなマスタリングで
リヴァーヴを追加したように露骨とも言える残響の追加が感じられる。
いやいや、追加などというと誤解されるかもしれない。本来録音に含まれ
ながらも再現されなかったエコーが見事に蘇ったというべきだろう。

そして、AlatorreのバスがセンターでWade in the water〜♪と歌い
始めた時に、その喉元がのぞき見えるほどのリアルさで彼のバスの
バイブレーションがNautilusの鋭敏なダイヤフラムを揺さぶる!!

「ちょっと待ってよ!! この段階でこれほどにも違うの!?」

私の口は下あごに重りを付けられたように開いたままの数瞬が続き、
44.1KHzのRbとはこれほどのものだったのかと戸惑いと狂喜が頭の
中でシェア争いをしているのがわかる。まずい!!

「さくらさくら」の出だしでは、冒頭のハミングの最初からNautilus
が発生する空間表現が拡大されているのが直ちに判明する。そして、
ソプラノの合唱が始まったときには、私は思わず口元が緩んでしまい
こんなはずはなかったのに…、と二級酒から大吟醸へと口当たりが
変わってしまったファルセットの歌声にうっとりするだけである。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、今回の試聴は忙しい!! ポイントを押さえて六種類の比較をしな
ければならない。“Master”のスイッチを再度押してXtalに切り替え、
同時に“A”のスイッチを押すと44.1から88.2へと出力が変更される。

今度は88.2KHzのXtalだ。再びP-0sの同期にチューニングを始めた。

クロック周波数が倍になったのだから、当然この前の44.1KHzのRbより
も良くなっているはずだが…、という予想がまず内心を駆け巡っている。
このフロアーには現在二台のP-0sがあるのだが、以前から使用している
シリアルナンバー1001のP-0sでは既に高レベルなマスタークロックを
標準として接続しているので、私もこれまでの体験から88.2へのシフト
がどのような変化を見せるのか、半分は予測できていたつもりでいた。

さて、「Wade in the water」が始まった…、おや!?? これは…?

「まずいな〜、こんな展開になるとは!?」

この時に感じた私の印象はたった一言である!!

「44.1KHzのRbの方がいいじゃないか!!」

そうなのです、44.1KHzのRbに88.2KHzのXtalが負けてしまったのです。

楽音のコアになる質感は微妙なのだが、コーラスが空間に放出し続ける
口元を彗星に例えると、その白く尾を引く流れがエコー感だとしよう。
先ほどの44.1KHzのRbでは彗星自体の輪郭は大変に鮮明であり外形が
丸くくっきりと見えていた。そして、たなびく白い尾が後方に消えていく
過程もグラデーションが徐々に薄くなっていく様子が滑らかに光が薄く
なっていくような緻密さがあった。

しかし、この88.2KHzのXtalでは彗星本体と例えた口元の外周が、一眼
レフのファインダーをのぞきながらフォーカスを甘くしたように見えて
しまうのである。そして、彗星のエコー感に例えた白い尾は先ほどより
も短くなってしまい、消滅するまでの時間軸が短縮されてしまったようだ。

その証拠にAlatorreのバスが響き始めると、先ほどまでAlatorreの周辺
にオーラのように存在していた余韻感が乏しく、シャンティクリアが
歌っているステージの両側面の壁にカーテンを吊るしてしまったかの
ように余韻の滞空時間が短くなってしまったのである。これはまずい!!

「さくらさくら」のソプラノでは、絹ごし豆腐の舌触りが木綿豆腐に
すりかわってしまったのではと、思えるほどに粒立ちの細やかさに
変化がある。しかし、これはG-0の恩恵が消失したということではない。
あくまでも44.1KHzのRbとの対比なのである。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

それでは、やはり次は88.2KHzのRb(ルビジウム)だ。

再びP-0sは同期にチューニングを始めたが、一旦はP-0sからのデジタル
出力もストップするのでElgar plus 1394の入力も一旦ロックが解除され
てしまう。そのために同期が取れてから再度Elgarの入力もDUAL AESに
再度設定をし直すことになる。

私は、各段階で試聴するときには、事前の対象となる再生音を数回
リピートして記憶に焼き付けてから設定を変更して比較するので、
今日何回目のリピートだか数え切れないほどの回数を聴くことになる。

さて、「Wade in the water」が始まった…!!

「ほ〜っ、これだよこれ!! 戻ってきたね〜」

この時の印象は、まさにため息をつく心境であった。

これまでの44.1KHzと88.2KHzという二つのクロック周波数で、Xtalと
Rbという二つの発振素子の違いで四つ目の再生音は、そろそろ変化の
あり方を分類・分析できるくらいの現象を提示してくれるようになった。

クロック周波数の高低による対比では、余韻感と広がり方のイメージを
つかさどる解像度という見方が出来るかもしれない。

つまり、黒髪を梳く櫛の歯が単純に44本と88本の違いのように、髪を
梳かした後に見られる流れの細かさが断然違うのである。

そして、髪を梳かす際に手先に加える力は当然髪質によって変化があり、
抵抗感が強い時もありスムーズに流れるように櫛通りが良いときもある
だろう。Rbでは、このトリートメントが行き届いた黒髪に櫛を入れる
ようにすんなりと流れて、梳かした後の光沢感が見えるようなのだ。

88.2KHzのRbでは、先ほどまで失っていた余韻の光沢感が戻ってきたこと
が何よりも印象に残り、XtalとRbの違いが声の質感に潤いを与えている
という例えが自然に頭の中に浮かんできたものだった。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、いよいよファイナルの176.4KHzでのXtalだ。

“G-0s”は、FREQUENCY MODEによってロータリー状態でOFF、44.1kHz、
48kHz、PAL FILM基本周波数を44.1と48キロHzとに選択できる。
私は現行CDフォーマットだけしか使わないので、44.1KHzの倍数しか
表示させないが、DVD-AやDATフォーマットでは48キロ系にも簡単に
変更できるので多用な接続にも対応しているものだ。

さて、P-0sの同期がそろそろ終わったようだ。

今日何度目か忘れてしまったが、「Wade in the water」が始まった…!!

「お〜、これには安心できるぞ!!」

VUK-P0のアップグレードによって、民生器では初めてトランスポートで
176.4KHzのクロックを受け入れるようになったP-0sの面目躍如たる
可能性がここに表れてきたではないか!!

Wade in the water〜♪ とテノールが発する余韻感も広く十分に拡散し、
かつセンターでAlatorreのバスが朗々と響く。うん、これはいい!!

以前にはdcsの992/2で体験したP-0sへの176.4KHzでのクロックの供給
だが、その時に44.1、88.2と順次上げていった周波数の変化に対して
着実にグラデーションの階調の細かさを提示して、楽音の色彩感にも
確実な色素数の拡大を見せてくれた素晴らしさがここにあった。

「いや〜、これが50万円だったら、使用前使用後を体験してしまったら
 P-0sには必須アイテムとして接続前の音は聴けなくなってしまうな〜」

システムの最上流に位置するP-0sの能力に関して、私は大きな自信を
持って推薦して来たものだが、それはこのような拡張性にも表れている
ものなのだ。SACDなどへの期待感もなくはないが、私達が過ごしていく
生涯の時間は取り戻しが出来ないものだ。

そして、これまでに蓄積してきたソフトのコレクション、そして日々
増えていく新たなディスクのタイトル数を考えると、それらすべての
CDの中には何と隠された情報と味わいがまたまだあったということか。

“G-0”というsが付かないXtalバージョンであっても、私が以前に
検証したように理屈ではなく実体験としての176.4KHzでのクロック
精度の実現が、P-0sという道具の価値観を数倍にしてくれるのである。

さて、それでは176.4KHzでのXtalの先には何が待っているのだろうか?

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

176.4KHzのRbが見せてくれた可能性とは!?
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/234.html
私はここでの体験を通じて、実はここのリファレンスP-0sを今では
常にクロノスによる176.4KHz・Rb状態で使用しているので、この品位
については疑問の余地はないのだが、それが“G-0s”の登場によって
手軽に? に導入できるようになったということは大変に喜ばしいこと
であると思う。しかし、私は敢えてdcs 992/2とクロノスによる同じ
条件での比較はしていないし、今後もすることはないだろう。

よく、この同様なクロック信号を生成する二社の比較がどうかと質問
されるものだが、クロノスは既にディスコンとなっているものであり、
双方のモノ作りの姿勢も違うものであり、国内で最もクロノスを販売
してきたという事実関係からも私はオーナーの価値観を保護する義務
があると考えているものだ。従って、私は今後“G-0s”のみを見つめ
て評価し推奨していくという姿勢を皆様にもご理解頂きたいものである。

さて、P-0sの同期が出来たようだ!!

いよいよ「Wade in the water」が始まった…

まずブレーシングの息遣いで、シャンティクリアの12人の存在感が
これまでにないレベルで提示される。この導入部からしても違う!!

次にハミングがNautilusの周辺を埋め尽くす!! この空間を余韻で
満たしながらWade in the water〜♪と繰り返すテノールの肉厚感は
これまでになかったものだ!!

まさにシャンティクリアが空気をつかんだ瞬間だろう。そして圧巻なのは
Alatorreのバスがキュートな音像にフォーカスされ、輪郭が鮮明になった
ことが彼自身の発声するバスの解像度を自然発生的に高めているのだ。
そして、右チャンネルではバリトンの一人が、ヴォイス・パーカッション
としてリズムを刻むのだが、それがぽっかりと空間に浮遊しているでは
ないか!! そのおかげで、周囲の声量があるテノールと明確にセパレート
してステージ上での各メンバーの頭部が独立して見えるのである。

「これ凄いです!! 」

今までのシャンティクリアはステージの手前に整列しているものの、
どうやら彼らの背後には緞帳が下りていたようなのである。
176.4KHz/Rbでの演奏が始まったのを合図に、舞台監督の号令一下、
さあ〜、と幕が引き開けられると、そこには深い奥行きのステージ
が表れたがごとくの空間がNautilusの後方に出現したではないか!!

オーバーサンプリングによるCDフォーマットの再生帯域の上限が拡大
されたことにより、murata ES103Bは真夏のスプリンクラーよろしく
Nautilusの周辺に余韻のシャワーをふりまき始めるのである。

「いや〜、こんな気持ちいいシャンティクリアは初めてだ!!」

これほどまでにNautilusの魅力を引き出してしまうと、次の「さくら
さくら」の展開が容易に想像できてしまう。さあ、スキップして…

「あら〜、こんなにソプラノが緻密、かつスムーズなんだ!!」

冒頭のハミングもさることながら、右チャンネルから響いてくる
ソプラノの さくら〜♪ の繰り返しは、左チャンネル後方まで
その余韻を拡散させていくではないか!!

前述の彗星と例えを借りれば、右側から視界に入ってきた彗星が
たなびく光の尾を引きながら左後方まで飛翔していく余韻の航跡が
眼にも鮮やかに彗星群の流れを彷彿とさせるのである。見事!!

しかも、この彗星群の個々の光点を明確な位置表示として提示する
くらいにフォーカスがピシッと定まっているので、シャンティクリア
の各メンバーを指折り数えてしまいそうである。

そして、最後に表れたバスのAlatorreが左側から さくら〜♪ と
一声上げるのだが、それだけ別チャンネルで録音してエコーを追加
したように静けさの中に溶け込んでいくまでの時間を頭の中でカウ
ントできてしまうのである。

「あ〜、もう“G-0s”なきP-0sなんて考えられないぞ〜!!」

マスタークロックの充実によって得られるのは、何か!?
埋もれていた情報をありのままに引き出すこと。そして、その情報と
は何かということを考えると、現行フォーマットのCDに記録されてい
る信号の総量をこれでもか! という克明さで提示してくれるという
ことになろうか。今回の選曲は一つの事例であるが、それはすべての
楽曲にも当てはまるものだろう。マスタークロックの可能性は大きい。


3.DACにおける176.4KHz/Rb

さあ、これで終わりかと思ったら、まだ続きがあった。
これまでのシステムは“G-0s”の出力B系統にElgar plus 1394を
接続してのものだが、Elgarは88.2KHzまでのクロック周波数しか
受け付けてくれない。それでも、未知の体験を十分に堪能させて
くれるのだが、DACというトランスポートの必須パートナーにも
176.4KHz/Rbを入力できないものだろうか!!

それを実現してくれたのがESOTERIC D-70+VUK-D70というアップ
グレードである。ここでも“G-0s”の出力C系統にD-70+VUK-D70
をつないでおり、最後にこれを検証することにした。

今度は、逆にP-0sには176.4KHz/Rbを固定して入力しておき、D-70
に44.1KHzと176.4KHzを同じRbとして切り替えて試聴してみること
したのである。

まずDACの個性は私は事前に承知しているので、44.1KHzから176.4KHz
へとスイッチしたときの印象を述べておきたい。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

44.1KHz/Rbを受け入れたD-70自体が、これまでなじんできたD-70との
相違をいとも簡単に表現してくれる。不思議だが、ノイズフロアーが
更に一回り低くなっているのである。

Elgar plus 1394の表現に温度感の高さと肉厚感、充実感を当てはめた
としたら、それに対してD-70+VUK-D70は色彩を乗せていくキャンバスの
生地を織り方をより緻密にしたように白く平面性が優れていると例えら
れるだろう。

繊維が細やかなキャンバスにナイフで絵の具をのばしたときに、ナイフ
でこする距離が長引いても、絵の具の濃淡は一定の正確さで次第に薄く
伸ばされていくイメージを想像して頂きたい。

D-70+VUK-D70は楽音の余韻を通常のD-70よりも緻密にとらえている
もので、ナイフによって伸ばされた絵の具が最後にはなくなって
まったくの白地になるまで正確にナイフをトレースするようである。
つまり、まったくの静けさと間違いなく存在している余韻との区別を
聴く人に提示しているのである。

そんなアップグレードを受けて、楽音の質感に一層の進化を見せた
D-70+VUK-D70は静寂さの中で微小な楽音の残滓をしっかりと聴かせる。

さくら〜♪ と繰り返されるシャンティクリアのハーモニーに国産
という偏見を吹き飛ばしてしまう描写力が垣間見えるのである。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、そのD-70+VUK-D70にも176.4KHz/Rbを注入するときが来た!!

耳にタコというよりも、数日間は頭の中で残響がリピートされるほど
繰り返し聴いて来た「Wade in the water」が始まった…。

「おお!! この余韻は半透明だったのか!?」

ハミングが始まった瞬間に、先ほどまでと違う空間表現が提示された。
ノイズフロアーが低下するという副作用が、余韻がNautilusの周辺に
滞在している瞬間でさえ、その霞のようなエコー感の純度がこれまで
にない透過性をイメージさせてくれるのである。

先ほどまでは白いキャンバスであったかもしれないが、176.4KHz/Rb
を受け入れたD-70+VUK-D70はNautilusの周囲にガラスのシートを中空
に多数吊るして、そこに楽音をエアーブラシで絵の具を吹き付けた
ように、余韻の微粒子がない…という状況も端的に描くのである。

これは凄い!!

ルビジウムの恩恵がDACに作用すると、必要のない成分はアナログ信号
には変換しないという摂理をDACに与えたように、D-70+VUK-D70での
聴感上でのノイズフロアーをすーっと低減させてくれるのである。

D-70+VUK-D70が受け入れる176.4KHzのオーディオデジタル信号と176.4
KHz/RbというWord syncの恩恵は、そのオーナーの鑑賞力と分析力を
数段階高めてくれることだろう。

そして、この数段階というのは、私が思うにもはやSACDとDVD-Aの領域に
踏み込んだ再生音を実現してくれると言い換え出来るものである。
そして、それは家電メーカーが作り出したレベルのプレーヤーとは
次元を異にするものであるということを最後に述べておきたい。

D-70+VUK-D70+“G-0s”これには明らかな投資効果を保証します!!


4.マスタークロックの必要性

CDシステムを再生するセパレート方式のトランスポートとD/Aコン
バーターには各社各様の設計方針があるものだ。

かのマークレビンソンはFIFO(ファスト・インプット・ファスト・アウト
プット)というデジタル信号の高速バンキングシステムでジッターの
発生を抑えようとした。

以前のWadiaはTBC(タイムベースコレクタ)をDAC側に搭載して、自らが
時間軸管理を行うことでジッターを回避し、DENONもGENロックで
トランスポートとDACのクロックを共有化し、クレルも一時期は同様な
リンクを行うことで自社のアイデンティティーを確立していた。

互換性のない自社完結の独自企画、それも良いのだが皆一過性の商品化
ということで現在に行き続けることはなかった。

Word syncは業務用の規格であり、それはSACDやDVD-Aという次世代の
フォーマットが開発される過程でも、そして現在でも、それ自身の
規格を拡張しながら運用されているフォーマットなのである。

業務用機器でのWord syncはレコーディングの技術が進歩すればする
ほど、より高い精度を求められ同時に音質的な貢献を確認されながら
現在に至ったのがWord syncであろう。

これらの背景からも、Word syncはこれからも生き続け、かつ信頼性
と発展性も考慮され、何よりも増して“投資効果”を経費面でも確認
しつつ採用されていくプロフェッショナルの規格であるということが
重要な要素なのである。

           -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

思えば五年前のP-0の発表当時、その時には何の使い道もなかった
Word syncの入力端子が今になって何と素晴らしい恩恵をオーナーに
もたらしたことか!!

当時の設計者の先見性に感謝の気持ちと敬意を表すものだが、それ
を受け継いだコンポーネントが更にマスタークロックによって成長
していくということは趣味としても工業製品としても素晴らしい事
ではないだろうか。過去の投資を保護し、付加価値を高めるバージ
ョンアップと特定のニーズながらも商品化したESOTERICに対して
今夜は心から拍手を送りたいものである。

昨年の11月では構想だけだったものが、今はこうして現実のものと
して、その驚くべきパフォーマンスを私の試聴室で発揮してくれた。

2003年の夏、次は全国のオーディオファイルの自室において“G-0s”
のパフォーマンスが証明されていくことだろう。

私は業界初、世界初のタイミングで“G-0s”を聴くことが出来た。
ブロードキャスティングの世界ではハイビジョン化とデジタル化が
進む中で、オーディオに関してのハイ・ディフィニションは“G-0s”
の登場によって大きく前進するだろう。

その前衛としてH.A.L.の使命はこれからも続く…。そして、日本の
オーディオファイルの世界的レベルを同様に向上させていきたい。

小さくも重要な決意と、確固たる推薦の根拠を胸に宿して今回の
ショートエッセイの締めくくりとさせていただく。

     ご精読ありがとうございました。



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