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H.A.L.担当 川又利明


No.165  「ユニクロじゃないよ?! ハルクロ(HALCRO)だぞ !!」
思い起こせば二日前の9/19、MarkLevinson JBL Revelなどのメジャーな ブランドを取り扱うハーマンインターナショナルの担当者から電話が入った。 いつもなら明るい調子の話し方なのだが、このときはなぜかちょっと暗い。 「川又さん、忙しいところ申し訳ないんですが、ちょっとお会いしてぜひ 直接お話ししたいことがあるんですが…」と意味深な物言い…。私は当然 「いいですよ!!」と返事をして数時間後に驚きの情報を耳にすることになる。

社名の通りハーマンインターナショナルはハーマングループ傘下のブランドを これまで扱ってきたわけだが、何と…、まったく系列とは関係のない、しかも まったく無名の、そしていきなりの超ハイエンドアンプを取り扱うというのだ。 それが、この新進気鋭のハイエンド・ブランド、ハルクロ(HALCRO)なのである。
 http://www.halcro.com/

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さて、HALCROとはいかなるメーカーなのか。10/1にはご本人がここを来訪 されるということなので詳細は今後判明してくるものと思われるが、音楽と オーディオに深い造詣をもつ天才的物理学者Bruce Halcro Candy氏が長年 抱いていた不満と疑問を自らの手で解決すべく設立したのが、現在オース トラリアに本拠地を置くこのHALCROである。その第二作目にして脚光と 賞賛を浴びたスーパー・フィディリティー・パワーアンプがこのdm68と いうことなのである。

まずデザインでもこれまでのパワーアンプとは一線を画するセンスを 持っている。柔らかな曲線のシルエットになる両サイドのタワーに パワーステージが格納されており、放熱や外部からの干渉を配慮した 合理的な構造が目を引く。そのタワー部の足元にはソリッドウッドを 削り出したスタンド部がハイテクの内部構造をやさしく包んでいる。 当然のように…このウッドスタンドにはスパイクを使うようなハード ポイントの接地方法はとられていない。表面には一切のネジ類は露出 しておらず、巧妙な組み立てで中央部の電源部と前段のメインボード を独立した筐体に収めている。

タワー部にはさまれた下の部分が電源部であり、この下側からACケー ブルを差し込む。これでメインの電源が入り動作状態にするには電源 部とその上のオーディオ部との隙間に上に向かって長いストロークの プッシュスイッチがあり、これを押し込んで動作状態となる。 ユニークなのはこのプッシュスイッチなのだが、どうやら空気圧を 使ってメインボード上のスイッチを切り替えるようになっているらしい。 シリンダーのピストンを押し込むように空気圧の抵抗感を指先に 感じて、パイロットランプが点灯する動作を見ていると従来のアンプ と色々な意味で感性が違っていることがうかがえる。

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さて、この電源部だが環境変化に一切変動を受けない安定性とオーディオ 部への干渉を徹底的に排除することを目的に、革新的なUPFCパワーサプ ライを採用している。これはUniversal Power Factor Correctedの略で あり、負荷状況や電源電圧の変動に一切左右されずに100KHzで 固定されたスイッチング電源を意味している。電源部の出力インピ ーダンスを最小化し、6層基板を採用し、更に電源部の主要な半導体を シャーシーからアイソレーションするなどいたるところに革新的な 技術が反映されている。電源電圧は85V〜270Vまで、電源周波数は 45Hz〜65Hzの電源事情に自動的に対応する。

そして、このdm68のオーディオ部はウルトラ・ローディストーション サーキットとして考案され、測定上の数値だけでなく敏感な人間の 耳で聴き取ることの出来る歪とノイズを徹底的に排除することを主眼 として設計された。広帯域であり低インピーダンス設計の差動入力段 にはシグナルパスと電源のそれぞれのアースをと電位を明確にする ために4層基板を使用。同様に出力段には6層基板を採用。

更に微小信号を扱う入力段と大きな電流を扱う出力段との電磁干渉を 排除し歪とノイズを低減させるエディーカレント・シールドスクリーン を各サーキット間に設置。シグナルパスの伝送にはソリッドカッパーの 同軸ラインを採用。出力段には応答特性が高速であり、奇数次高調波 歪の低減を図るためV-MOSを非コンプリメンタリー回路として採用した。

その結果、1KHzにおけるTHD(トータル・ハーモニクス・ディストー ション)全高調波歪のことですが、200ppb(10億分の200になりますね) 以下、20KHz以上においても2000ppb以下という驚異的な低歪特性を 獲得したのである。もはやこれはオーディオ用測定器では検知できない 領域であり、1KHzでは-134dB以下という超低歪特性となった。

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9/22から9/24までの連休、いわば他の輸入商社が休みで業界の人間が私の ところに来ないであろうという日程を選んで雨の降る寒い日の夕方、その ハルクロは何とジェラルミンのフライトケースに収められてやってきた。 外見を見たときの第一印象は「えっ、意外に小さいな…」というもので あった。事前に見せられた資料やweb siteでの概観ではそそり立つ大型の アンプというイメージであったが、このようにMarkLevinsonのNo.33Lと 上から見比べても高さは同じであるが奥行きが小さいこと、そしてデザ インや色彩感もライトな感じで圧迫感、威圧感がないのである。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pho/010924/big3.jpg

そして、右チャンネル側として、やはりKRELLの650McとNo.33Lに並べた 状況がこのようなサイドビューを見せてくれている。アメリカ製のいか にもヘビーデューティーな作りのアンプとは好対照なデザインではないか。 このHALCRO dm68 monoblock power amplifireのサイズは幅400ミリ、 高さ790ミリ、奥行き400ミリと最小限の床面積でセッティングが可能 であり、本体重量も57KgとNo.33Lの三分の一であり他社の製品と比べ れば大変にハンドリングしやすいものである。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pho/010924/halcro-33l.jpg

さて、試聴に当たってはパワーアンプの比較参考用としてNo.33Lを 使用した。そして、プリアンプの選択なのだが、web siteをご覧に なっておわかりのようにHALCROは2002年に開発予定があり、現在では まだペアのものがない。しかし、ここでMarkLevinsonのNo.32Lを 使用すれば、以下で述べているように自社同士のフィッティングが 抜群のためにHALCROには不公平となるだろうと考えた。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto48.html

そこで私が採用したのが今までに確固たる実績と様々なパワーアンプに 対してマッチングの妙を見せてきたJEFF ROWLAND Coherence 2である。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto19.html

フロントエンドはP-0sにdcs System900Pro、MarkLevinsonのNo.30.6Lを 使用し接続には当然PAD DOMINUSがフルに使われている。そして、 スピーカーにはNautilus801を使用しセッティングにはサウンドアンカー の専用スタンドを使い、更にQRD のプルーのBass Trapp とグレーの フロアーフォイル(生産終了)を床に配置して万全をきっして行った。
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/pho/010924/801setup.jpg

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さて、初日の第一印象は…、「おっ、今日聴いてきたSignature800に ちょっぴりN801が近づいたぞ!!」という好印象であった。しかし、 その当日から、そして翌日もご来店になるお客様が後を絶たず、私が やっとじっくり試聴できたのは24日の朝になってからであった。 この三日間ずっと電源は入れっぱなしで十分なバーンインができた。 しかし、左側のタワー部が恐らく40〜50度前後だろうと思われるが 過激な温度上昇はなく、それに対して右側のタワーは不思議なことに ほとんどと言っていいくらい発熱はない。十分なウォームアップを 行った三日目の朝、HALCRO dm68はますますその潜在能力を開花さ せ始めたのである。

最近私がよくテストに使用するようになった一枚、「image 2(deux)」
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Classical/Special/smeimage/deux.html
SRCR-2591 の二曲目 郭英男「NS2000」をまず聴き始めた。javascript:w0319()
アミ族のお爺さんお婆さんによるコーラスワークに近代的とも言える リズムセクションがバックに展開し、その中にきらめくような音階の高い パーカッションがちりばめられ素晴らしいスタジオワークの証として広い 空間表現がスピーカーの周辺に展開する。このコーラスとメインヴォー カルの遠近感がきっちりと表現されるので、強烈なドラムとのセパレー ションも容易に感じ取ることが出来、気分爽快な演奏が展開される。 この「気分爽快」という言葉の意味に超低歪再生の醍醐味があるのだ。 ミッドハイレンジに関するローディストーションの威力が感じられる。 「ああーーー、いい!! コレ!! 透き通るような奥深さは快感だ」

次はワレリー・ゲルギエフのヴェルディのレイクエムを聴く。UCCP-1026/7
http://www.universal-music.co.jp/classics/special/bocelli/index.htm
1トラック目は約9分間の「キリエ」の荘厳なコーラスが響きわたり、その 次のディエス・レイ(怒りの日)では混声七部合唱とともに強烈なグランカ ッサが連打される。ゲルギエフの作品ではこのグランカッサの録音手法に 共通なところがあるのか、ストラヴィンスキー《春の祭典》UCCP-1035 に おけるグランカッサの強烈なヒットも、とにかくホールエコーの含み方を 多少薄めにアレンジし、かつサブマイクを使ったのかと思わせるような 鮮明な打撃音に驚きを覚える。そして、このディエス・レイでは間違いなく グランカッサはステージの左手奥のある地点という距離感を正確に表現し コントロールされてN801のウーファーを叩くのである。 まぁ、その連打の何とすっきりとした後味のよい余韻の消え去り方で あることか…。そして、その立ち上がりの鋭いことか…!! このような低域の再現性も応答性がよくなければ当然歪のひとつと して認識されるわけだが、HALCROのスーパーチャージャーはたちどこ ろににN801のウーファーを最高速まで加速させ、かつ完璧とも言える ブレーキングで低域のコーナリングにステアリングをあてるのである。

これは巨大なボディーでスペックの大きなパワーを持っているからと 言って実現できることではない。dm68の定格出力は8Ωで225W、4Ωでは 400Wと表記され、低インピーダンス駆動特性としては150W/8Ωから 1.200W/1Ωまではっきりと理論値どうりの動特性を発表している。 低歪を実現するためのスピーカーの動特性に対する対応がいかに 重要であるか、この時のウーファーの制動感を体験して思わずうなって しまった。スパイクを標準装備とするいかにも剛性が高いと思われる アンプはハードな質感の低音をいかにも出しそうだが、優雅なウッド スタンドを装備したHALCROがこれほどの硬質な表現(録音の通りと 理解して)をピシッとこともなげに決めてしまうのには驚きを隠せ なかった。これは従来の常識とは違うのである。凄い…!! 低域におけるローディストーションの威力が感じられる一幕である。

最後にラッセル・ワトソンの『The Voice』(UCCD-1029 )から12 トラックにある「フニクリ・フニクラ」をかけてみる。
http://www.universal-music.co.jp/classics/watson/index.htm
先ほどのヴェルディのレイクエムでの正統派混声合唱の録音手法 とはちょっと違って「クロスオーバー・クラシック」とも言われる ポップス調のスタジオワークによって心地よいエコーが加えられ たお馴染みの曲である。しかし、バックに数十人の混声合唱が 展開する中で、ワトソンのヴォーカルを浮き上がらせるように 抽出するHALCROの解像度は並大抵のものではない。 しかし、それをこのような曲で感じるときにローディストー ションの貢献を何で感じるのか…?! ずばり、それは“聴きやすさ”に他ならない。

幾重にも重なるオーケストラとコーラスがスピーカーの周辺空間 を埋め尽くすがごとくの展開を見せるなかで、個々の楽音がちゃ んと分離し正確にフォーカスが得られ、そしてストレスを感じる ことなく耳に心地よく大編成の迫力を伝えてくれる。前述のよう に「気分爽快」な演奏の中に細やかなエコーの残滓が発見できて こその楽しみがローディストーションの醍醐味ではなかろうか。

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HALCRO ……この突然の登場はハイエンド・パワーアンプへの これまでの常識を覆すものであり、重厚長大なコンポーネントの 重工業製品のごとくの高級アンプ作りの設計思想に真正面から 挑戦状を叩きつけるマニュファクチャラーの出現と言える。 スパイクをはいて数十キロあるいは百数十キロというヘビー級の アンプがハードな音を作り出すのか? ゴム足を付けた楽にハンド リングできるアンプは何でもソフトに聴かせるのか?

こんな既成概念を見事に打ち破ったHALCROは、これからプリアン プやCDプレーヤーを開発していくという。何と意気軒昂にして 開発力をたぎらせたマニュファクチャラーであることか!!

このような先進のテクノロジーをハイエンドオーディオのために 駆使しようとするメーカーが登場したことに、まず最大限の賛辞 と大きな拍手を贈るものである。そして、その先鞭とも言える モノブロツク・パワーアンプを国内で最初に体験できたことに 無上の幸せを感じるとともにディストリビューターのご好意に 改めて御礼を申し上げる。

三年先のHALCROは第二のMarkLevinsonと成りえる可能性を十分に 秘めているというプロフェッショナルとしての評価を公言し、 ハーマンインターナショナルの経営戦略に関して同社の高い先見 性と英断に敬意を表して今回のレポートを締めくくることにする。

HALCRO それは皆様にとって新しい選択肢の登場であり、その本質 と魅力を僭越ながら私H.A.L.の川又が保証いたします。

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さて、今回はめいっぱい“よそ行き”の言葉遣いでのレポートと なってしまいましたね(笑)  ちよっと堅い表現が多かったですが、輸入元の皆さんにまず読んで もらうという前提と、やがてはwebに上げて新ブランドの発表を 輸入元より先行して行う可能性もあり、いつもとちょっと違った 緊張感を演出しました。

さて、そのHALCROは今後どこに行けば試聴できるのか…、そして その実力通りの試聴環境と設備を有しているのはどこなのか…? こんなところに私の使命感を感じつつ、後日皆様にも再度のご案内 を差し上げられるよう努力したいと思っております。 ぜひハルズサークルへの入会をお勧めいたします。

これまで、決定的なアンプを捜し求めていた皆様、やっと答えが 出そうですよ!! どうぞご期待ください。


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
担当川又 TEL:(03)3253−5555 FAX:(03)3253−5556
E−mail:kawamata@dynamicaudio.co.jp
お店の場所はココの(5)です。お気軽に遊びに来てください!!

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