発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明
    
2019年6月3日 No.1542
 H.A.L.'s One point impression & Hidden Story - Paradigm Persona 7F

「月日は百代の過客にして蘇りし楽曲に往きかふ年もまた旅人なり」

遠大な時の流れを詠む日本人の感性は、その真摯な眼差しに生きている。
遥かなる時空を超えて飛来する、許多の音楽とオーディオの古今東西。

オーディオのロマンを売らんとし、音のセールスクラークを生業と志す者は、
自らその感性の研鑽を日々の勉めと戒めたらんことを望む。

されば世界の未知なる音を、己の足で探訪する旅人でありたいと願う。
彼の国からやって来る南蛮渡来の道具を手に異国の人情に思いを馳せよ。

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上記は今年でダイナミックオーディオ勤続41年目という私が、今から27年前、
まだ私も若かった!?頃にHi-End Audio Laboratoryという命名で高級オーディオの
販売を専門フロアーとして仕切り直ししようと活動を開始した時期に、私自身の
学習と啓蒙活動の起点として書き始めた随筆「音の細道」の巻頭言の一節です

初心忘るべからずと言いましょうか、この当時の私はハイエンドオーディオに対する
経験値が低く、まだまだ修行をしなければと、より多くの情報を体験として取り込み
自身の感性に磨きをかけていかなければと奮起していた時代を懐かしく思い出します。

今思えば若かりしころの情熱を拙い言葉で言い表そうとしたものですが、今回は正に
この一節に込められた思いが素晴らしい発見をさせてくれたということなのです。

自分の経験則に自信はあれど謙虚な思いで基本に忠実な技術を駆使して、私の前に
現れた新ブランドをしっかりと受け止め耳と感性で判定した評価を世の中に広めて
行ければと願い、拙い文章ではありますが報告の一文を書いてみることにしました。

そのブランドとはこれ、Paradigmです。
https://www.paradigm.com/en/

"Premium Distribution Network"を由来とする会社名、株式会社PDNが2019年3月に
日本での取り扱いを開始するということが発表されました。
https://pdn.co.jp/

Paradigmの創業は1982年に遡りますが、高度な技術力を持ちながらも世界戦略は
大変慎重に検討され今までは主に北米だけでの販売をしてきたという。

2014年に新しいCEOを迎えグローバル化を促進し、2017年にマーケティングディレクターを
新規に採用したことからセールスエリアを拡大し、そして今年遂に日本上陸となった。
その沿革をまとめた日本語資料は下記にてご覧下さい。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190528174416.pdf

株式会社PDNは3月の公式発表を経て国内販売に関して慎重に開拓を進めている中で、
まったくの未知なる新ブランドを立ち上げるに当たりメディア関係へのリリースを
完了させた後に、実質的な販売チャンネルをどう構築していくのか。

その筆頭候補としてダイナミックオーディオ、そしてH.A.L.に白羽の矢が立った!

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2019年5月某日、先ずは同社の主力となるPersonaシリーズでアクティブウーファーを
搭載しないトップモデルとしてPersona 7Fが持ち込まれたのです。
https://pdn.co.jp/assets/persona_catalog.pdf

他のスピーカーと比較してのサイズ感は下記のような感じです。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190528171145.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190528171155.jpg

高級感ある仕上げからは意外な1台64キロという重量であり扱いやすい。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190528171202.jpg

私が行ったセッティングは左右トゥイーター間隔で約2.8メートル、フロントバッフル
からリスニングポイントまでは約3.8メートルというトライアングルでのセットアップ。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190528171211.jpg

■Hidden Story - Paradigm Technical point

実物を見ての第一印象としてはPersonaシリーズ上位機種でありながらコンパクトであり、
ハンドリングしやすい重量であるということ。しかし、このシリーズで共通する
このトゥイーターとミッドレンジのカバーがどうしても気になる。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190528171113.jpg

B&W 800シリーズでも以前はトゥイーターの茶漉しのようなメッシュの保護カバーを
外すことで音場感の表現が良くなったという思いがあり、私がここで評価してきた
世界中の高級スピーカーでトゥイーターとミッドレンジにこのようなカバーを付けて
いるということがどうしても納得できなかった。輸入元担当者に思わず外せないかと
訊いてしまったが、出来ませんとあっさり一言で終わり。

超高域までのレスポンスをどのように確保し、ファイズプラグを使用したりして
短波長の高域周波数で位相制御も行うという高級スピーカーユニットメーカーの
テクノロジーとこだわりを散々見聞きしてきた私からすれば、音波の拡散を阻害
するだけではないかと勘ぐってしまったのです。

これはカバーというよりもディフューザーではないかと思うのですが、これは一種の
音響レンズだという。PPA(Perforated Phase-Aligning)という独創的なテクノロジーです。
それを分かりやすく解説しているファイルを下記にて紹介します。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190528174358.pdf

次に上記PPAテクノロジーが搭載されたトゥイーターとミッドレンジ・ドライバーを
エンクロージャーに格納した際のカットモデルの画像を異なるアングルから三種類で
ご覧頂ければと思います。(下記の画像はPersona 9Fのものです)
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529144101.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529144110.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529144123.jpg

前述の解説ファイルでドーム型振動板のカーブと出力波形に関しての説明が、
実際のスピーカーユニットでどのように構成されているかが観察できると思います。

後述しますが、このPPAというテクノロジーが実は大変素晴らしい効果をもたらしました!
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529143816.jpg

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

さて、ここでスピーカー全体のカットモデルの画像をPersona 9Fとして紹介します。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529144834.jpg

Persona 9Fは後ろ向きに取り付けられたインナーウーファーが内蔵パワーアンプに
よって駆動されるセミ・アクティブスピーカーです。そのために上記の断面画像では
内蔵ウーファーと駆動用パワーアンプが後部にありますが、Persona 7Fでは内蔵
ウーファーとパワーアンプはありません。

Persona 7Fではフロントの二個のウーファーに専用キャビティ―がありますが、
その底部にバスレフポートがあります。先ず下記の画像をご覧下さい。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529145340.jpg

上記のスピーカーベース部の隙間から覗いた画像を撮影したので是非ご覧下さい。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529145629.jpg

強力な低音を排出するバスレフポートはこのように特徴的な曲線で開口部を包み込み、
波長の長い低周波において風切り音が出ない形状となっています。このあたりは
他のメーカーでも同様な工夫をしているところですが、メーカーのカタログには
記載されていない部分なのでHidden Storyとして紹介しておきます。

さて、後程Persona 7Fの低域に関する特徴を述べますが、その原動力となっている
ウーファーに関して私が着目したポイントを述べたいと思います。

私も他のメーカーのウーファーを構造的に観察した事は何度もありますが、下記の
ようにデュアル・ボイスコイルというものは大変に珍しいものでしょう。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529150233.jpg

逆巻になったボイスコイルは信号電流によって発生する磁界を打ち消しあう方向で、
歪率を低減しリニアリティーを高めている。そのために磁気回路も下記画像のように
大変大きなものとなり、このテクノロジーがPersona 7Fの素晴らしい低域の基礎となっている。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529150448.jpg
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529150521.jpg

磁気回路もデュアルであるということは車で言えば4WDみたいなものでしょうか。
Paradigmはすべてのスピーカーユニットを自社で内製化しているので、独自設計に
よるこだわりのテクノロジーが随所に発揮されている。その一例として下記の画像。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529154612.jpg

私はPersona 7Fに対して大音量でのパワードライブを仕掛け、ウーファーの振動板が
肉眼でも10ミリ以上のストロークで振動しているのを観察して、この振幅でも正確な
ピストンモーションを可能にしている要素が気になりウーファーも撮影してみた。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190528171126.jpg

しかし、どうしても見たいところが見えないというジレンマを感じていたところ、
この独自テクノロジーであるActive Ridge Technologyエッジというロングストロークを
可能としたエッジ構造部を的確に見られる画像が下記のものです。
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190529155009.jpg

私は出会いからの第一印象で外観で捉えられたポイントを述べたにすぎませんが、
同社のテクノロジーは下記のメーカーサイトで是非ご確認頂ければと思います。
https://www.paradigm.com/en/technology-design

また、ベリリウム振動板を採用しているということも大きな特徴であり、下記の
日本語サイトも参考にして頂ければと紹介致します。
https://pdn.co.jp/persona.html

このように商品情報として多項目に渡るポイントがありますが、これら全項目に
私の拙いコメントを追加しても仕方のないことです。しかし、試聴した結果として
私が何を感じ感激したかという驚きと発見あってこそ、上記の概略を述べたかった
ということでご理解頂ければと思います。

高い技術力があり、それを先に見せられたから音が良く聴こえるのか?
いいえ、違います!

この私の耳と感性で聴き感動したからこそ、その背景としてテクノロジーに興味を
持ったものなのです。聴いてダメだったら技術的な関心など持ちませんから…。

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■H.A.L.'s One point impression - Paradigm Persona 7F

今回は限られた時間での試聴ということ、技術解説はメーカーサイトなどで詳細が
公開されていることなどから、私の課題曲を聴いて印象に残ったことを語る上で
最小限度の注目点ということで前述してきましたが、それもこれも私の求めている
方向性の音であったことが最大要因。今までの課題曲で過去の経験と異なる音質が
Persona 7Fから飛び出してきた時の興奮と感動を書かなくてはと思ったのです!

■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章 小澤征爾/ボストン交響楽団

この曲でダメだっら先に進まないというほど定番のオーケストラです。
今回も最初に聴きましたが、その後にバーンインの進行を確認する意味で毎日の
ように繰り返し聴きました。

先ず冒頭からの弦楽五部による合奏において、Persona 7Fの魅力はたちどころに
私の胸中に浸透することになりました! 美しいです!

私が最も気にしていた弦楽器の質感について、今までのスピーカーで経験のない
個性的とも言える特徴を持っていました。その第一要因としてひらめいたのが
上記のPPA(Perforated Phase-Aligning)です。

ベリリウム・ダイヤフラムは他社でも採用されているものであり、私にとって特に
目新しいというものではありません。しかし、他社のスピーカーで聴く弦楽器とは
明らかに質感が違うのです!

それは良い意味で違うということであり、先ずは言葉で言うと滑らかさということでしょうか。
弦楽器群の内部に多彩な色彩があるという表現を私は何度もしてきましたが、それは
解像度が素晴らしいスピーカーにおいて、群像としての弦楽パートの内部に個々の
演奏者の存在感が微妙な音色の違いとして察知できるという意味でした。

そのような基本的解像度はもちろんあるのですが、上記のPPAを通じて放射される
中高域の楽音の何と滑らかで艶やかな表現であることか!これが真っ先に来ました!

次にトランペットなどの金管楽器の質感に気をひかれました。輝きがあるのに
眩しくないのです。透き通るような響きをホール一杯に拡散していくのですが、
その残響という情報量はかなりのものなのに、耳にツンと来るような刺激成分は皆無!

心地よく伸びやかにステージの下手に向けて余韻を振りまいていくトランペットは格別!
この先には次の課題曲と共通項になる印象があるので下記の感想にも続けて行きます。

■マーラー:交響曲第五番 嬰ハ短調
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
http://www.kinginternational.co.jp/classics/hmm-905285/
http://www.kinginternational.co.jp/classics/kkc-5842/
https://www.ongakunotomo.co.jp/m_square/readers_choice_total/index.html

この第一楽章の導入部でもトランペットは貴重な判断材料となるのですが、
上記の両者ともに右チャンネル後方の奥に定位するトランペットの響きは前例の
ないくらい透明感があり、それは刺激成分という濁りを感じないということと同義です!

そして、エネルギッシュな金管楽器につきものの、ちょっと音量を上げると耳に
突き刺さるような先端が鋭い響きという傾向もありません。これが素晴らしいのです!

私は以前にも弦楽器は面で感じ、管楽器は点として音像を感じるという表現をして
来ましたが、その分析法に対して上記のPPAは高域音波の位相の整合性を高めると
いうアプローチによって他者に例のない滑らかさ自然な響きと質感を実現したものと
私は直感的に判断しました。

26人のヴァイオリン奏者が見事な調和で弓を上下させ、その内部に微細な音色の
異なる個の音を織り交ぜながら、左右のPersona 7Fの中間に実に克明な描写力を
有するホログラムを展開するのです。これは素晴らしいです!

トランペットによる響きの連鎖と質感が素晴らしいと述べましたが、端正な響きと
短いパッセージを個々に受け持つ木管楽器の数フレーズの演奏にも必要な情報量が
間違いなくあるという余韻感の見事さと音像としての明確な立ち位置を表現する!

PPAという音響レンズは楽音の芯というか核心部分を拡散してしまい、不明瞭な
音像となってしまうのではないかという先入観を瞬く間に覆してしまいました!

10KHz以上では3センチ以下となってしまう音波の波長を考えれば、その空間伝送時の
位相特性というのは大変重要なものなのですが、スピーカーユニットを外注として
いるメーカーではクロスオーバーネットワークや機械的位置の調整などで位相制御を
行っているわけですが、PPAという方法がミッドレンジ以上のレンジでも非常に
広帯域にて効果を持っているという証明になっている感じられました!素晴らしいです!

主旋律を演奏する楽器群と、その周波数帯域でのPersona 7Fのパフォーマンスが
私を魅了し前例のないマーラーを聴き続けていると、更に発見があったのです!

コントラバスとチェロの低音階の質感がいい! いや、物凄い高速反応の低音なのです!

それは特にスタジオ録音によるドラムやベースなどの低音楽器を大音量で鳴らした
時のインパルス応答がどうだろうかという視点で感じるものではなく、オーケストラと
して全体の音量感の中で調和した力加減で演奏しているという音量で感じたことなのです!

特にフォルテでオーケストラ全体が炸裂するという見せ場での鳴りっぷりではなく、
どちらかというとヴァイオリンの音量感にふさわしいレベルでの、ごく当たり前の
合奏における低弦楽器の反応が速いのです!

低音なのに軽くというのは難しい喩えかもしれませんが、重量感を色の濃さとして
きちんと保持しながら、アルコの切り返しが実に軽快でありテンションが高く
切れ味のいい低音を出しつつ、べったりとせずにヴァイオリン同様の高さに定位し
空中に余韻感を残しながら響くのですから何とも気持ちいい低弦なのです!

小気味よく重量感ある低音を空間に響かせる要素は何か。あ〜、あのウーファー
だからこそ出来るのだろうと、前述した強力な磁気回路とデュアルボイスコイルの
威力を思い浮かべてしまったのです! そして次の曲で証明されました!

■FIFTY SHADES OF GREY ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK
  3.THE WEEKEND / EARNED IT(TRADUCIDA EN ESPANOL)
http://www.universal-music.co.jp/p/UICU-1262

低域の再生能力が楽音の質感と音場感の両方で同時に試される課題曲です。

録音レベルが大きいので慎重にボリューム調整をしてスタートさせて瞬間に、
これはただものではないと直感しました!

先ずは低域の情報量として響きが拡散していく空間領域の広いのなんのって!!

打楽器の最初の一打だけが強烈に描かれる大口径ウーファーの音は承知しています。
しかし、低域信号が最初のインパクトから時間軸の経過を経て次第に減衰し、
その余韻の最後まで続く微細な低音の保存性と再現性が物凄いのです!

従って空間表現が広大であり、立ち上がった低音の瞬発的なエネルギー感も
余すところなく表現し、更に続く余韻成分として減衰していく低域の情報を
最後の一滴まで正確にトレースして音場感として表現するのです!

これはウーファーの強力なモーターシステムとしてのエネルギー感という威力も
ありますが、バスレフポートによる共振周波数付近の音圧増加という特徴に
頼らないエンクロージャーデザインの成果であると思います。見事です!

そんな瞬発力から消滅までの響きの継承が見事であるということと相反する要素を
次の選曲で確認する。

■DIANA KRALL「LOVE SCENES」11.My Love Is
http://www.universal-music.co.jp/diana-krall/products/uccv-9378/

先ずはDIANA KRALLのパルシブなフィンガースナップが炸裂する印象的な導入部。
ここにも上記のPPAが生きています!

ピシッと鋭さはそのままに刺激成分がなく、ほ〜とため息が出るような透明感の
素晴らしいスナップが爽快に空間に残響を広げていくのだすから堪らない!

この曲でChristian McBrideのウッドペースが膨らんでしまい音像が不明解になる
スピーカーを私は認めません。

打楽器のように一瞬の炸裂だったら低音楽器の音像を観察しにくいものですが、
いやいや! Persona 7Fが有する強力無比なウーファーが弾き出すベースの何と
鮮明なことか! これはいいです!

そして、何と言ってもヴォーカルです! リバーブによって質感を整える録音は
多数ありますが、Persona 7Fで聴くDIANA KRALLのヴォーカルは見事の一言!

オーケストラで実感したしなやかさと滑らかさが、センターポジションに浮かぶ
彼女の唇の動きまでも捉えたかごとくの描写力で、今までにないヴォーカルの
魅力を新鮮な驚きと共に私の眼前で展開するのですから堪らない!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

私は出会いからの第一印象で外観で捉えられたポイントを述べたにすぎませんが、
同社のテクノロジーは下記のメーカーサイトで是非ご確認頂ければと思います。
https://www.paradigm.com/en/technology-design

また、ベリリウム振動板を採用しているということも大きな特徴であり、下記の
日本語サイトも参考にして頂ければと紹介致します。
https://pdn.co.jp/persona.html

上記のように述べていましたが、製品の内容を紹介する情報量は大変に多いものであり、
技術的側面での解説はメーカーサイトだけで十分でしょう。

その中でも、私としてはウーファーユニットの強靭さと巧みなエンクロージャー
デザインによる低域の素晴らしさに関しては大変納得するものであり、その技術的な
説明に関してはメーカーサイトをご覧頂くことで必要十分と思われます。

しかしながら、上記でも述べたように他社にはないPPA(Perforated Phase-Aligning)
という独創的なテクノロジーに関しては、録音内容の質感が極めて対照的と言える
次の課題曲を試聴した印象と共にもう少し述べておきたいと考えました。

■HELGE LIEN / SPIRAL CIRCLE   7. Take Five
http://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245411462

上記はドラムとパーカッションによる極めて立ち上がりの早い、高速応答性が
問われる打楽器の音像表現に着目しての選曲。このPPAを通じて再生される打楽器の
インパルス応答がいかに感じられるかというのが注目点。

そして、上記と全く対照的に連続する楽音の質感と音場感はどうかという、これまで
ほぼ全てのスピーカーに対して追求してきた次の二曲での音質傾向でPPAはどうなのか…
というポイントです。

■UNCOMPRESSED WORLD VOL.1 よりTRACK NO. 3 TWO TREES
http://accusticarts.de/audiophile/index_en.html
http://www.dynamicaudio.jp/file/100407/UncompressedWorldVol.1_booklet.pdf

■大貫妙子/ATTRACTION「四季」
http://www.universal-music.co.jp/onuki-taeko/products/upcy-7103/
http://onukitaeko.jp/info/top.html
https://www.universal-music.co.jp/onuki-taeko/

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試聴した順番ではなく説明しやすい順番として、先ずはUNCOMPRESSED WORLD の
TWO TREESでの印象から述べたいと思います。

サックスとピアノというシンプルな編成ながら広大な音場感を創出するこの曲。
冒頭のサックスが聴こえ始めた瞬間に、その質感の素晴らしさに先ず驚愕です!

デリケートな高域成分を放射するトゥイーターなのですから、その振動板の前に
「穴あき金属製カバー」としか思えないPPAが存在しているのですから、前回述べた
ように弦楽器や管楽器の質感が滑らかになる、言い換えれば音波の拡散経路に
このようなディフューザー的効果を持たせれば、多少の曖昧さが加味されて楽音の
角を丸めたような質感になるのではないかと推測したわけです。ところが…

このサックスの質感は他社のPPAなしで直接的に高域成分を空間に放射するトゥイーターよりも、
楽音としての微細な情報量をより多く再現しているのではないかと感じられるのです!

サックスのリードのバイブレーションが今までは吹込管(ネック)部の響きとして
感じられていたのですが、朝顔管(ベル)に至る管全体の響きとして奏者の息遣いを
波動音として感じられるような情報量の拡大が眼前にリアルに展開するのに驚きました!

サックスのリードのバイブレーションが小刻みに空気をゆするような微小な音、
そして空間を満たしていく広大な音場感を構成する余韻の美しさは何とした事か!

このサックスの質感の違いは私とて経験のないものであり、ミッドレンジにも
同様なPPAを施すことでParadigmが求めているものが完成するという楽音の連続性と
いうか中高域の質感の統一には必要なものだったのだろうと実感させられた!

また、ピアノにも同様な傾向が表れていて同じ音階であるはずの一弦ずつの打音に
対して骨太な響きというか、張り詰めたミュージックワイヤーと呼ばれる特殊な鋼線の
弦が振動する際に、その質量が重厚な響きとなったような重みのある質感に変化した!

これは音域が広いピアノであるがゆえに高速応答性が素晴らしいウーファーとの
連携によるものであろうと思われ、それはウーファーが出している倍音成分と
ミッドハイレンジの再生音の位相が緊密に連携しているという証拠だろう。

連続する楽音でありセンスの良いリバーブが広大なサウンドステージを作り出し、
その余韻感も含めてPPAという技法が楽音そのものだけでなく、余韻の響きにまでも
素晴らしい効果をもたらしていることが確認された。これはいいです!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

次はまったく逆な視点からHELGE LIENトリオのTake Fiveを聴いてみる。
冒頭のキックドラムの質感は実にいい。誇張感なく膨らむことなく切れ味抜群!

磁気回路を強化した小口径ウーファーの面目躍如たる活躍がキックドラムでも、
その素晴らしい高速応答性として立ち上がり、そして無駄な響きを排除して
重量感ある低域にぐっとブレーキをかけて消滅させる連続技に思わず見とれる!

そして、高い音階の金属製パーカッションが左右スピーカーの中間にストロボ
ライトの瞬間的な煌めきのごとく、まばたきと同じ速度と思えるほどの高速反応で
空間に出現し、その打音が高い次元の純度を保っていることに驚かされる!

「パシ!」「カキーーーン!」と多数の打音は微小な音像として空間に弾け、その
ポイントに視線を送る頃には消え去っているという演奏が爽快に私の耳を打つ!

気持ちいい! もうその一言で片付けたくなってしまう聴きやすい鋭さの打音が続く!

PPAのような音波の放射経路に「穴あき金属製カバー」を置いたら、その打音の
瞬発性に待ったをかける音響的緩衝材として、鋭い打音を丸めてしまうのでは
ないかと想像した私の愚考を笑われても何も文句は言えないだろう。

なにゆえに数百ミリセカンドという短時間に放射される音波、それも一波長は
1センチと少しという高域信号の打音が撹拌されるのではなく、一瞬のエネルギーを
集約したようにインパクトの瞬間の忠実度を高めるのだろうか!?

Phase-Aligningという独自技術が瞬間的な打楽器の質感を前例のない聴きやすい
鋭さという濁りなき打音の再生に素晴らしい貢献度を発揮した驚きに唸ってしまう!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

大貫妙子の「四季」はイントロでギターとベース、高音のパーカッションにピアノ、
その背景にストリングスが展開し、サビのフレーズでは鈴の質感に注目し、木製
パーカッションのクラベスが遠くに余韻を運び、その中央にヴォーカルが浮かび
スタジオ録音ながら美しいリバーブが素晴らしい音場感を展開する課題曲。

アコースティック楽器の各々がもたらす余韻感がポイントであり、その中で展開する
楽音には前述の連続楽音と叩き弾ける瞬発的な楽音の両者が含まれている。

前の二曲で感じ取った相反する性質の楽音が、ヴォーカルを含めて絶妙な融合をなして
空間表現と音像表現の両方のチェックポイントがあるので三曲目として述べたかった。

先ずはセンター左寄りでスピーカーという音源がない中間定位としてのギターの質感。
これが大変に素晴らしい! 弦の一本ずつを爪弾く瞬間のテンションがしっかりと描かれ、
ハーモニーとしてサウンドホールから湧き起る調和した響きの美しさに舌を巻く!

ウッドベースはギターと肩を並べる高さでセンター右寄りの空間に表れるが、
何度も述べた高速反応の低音はピン止めされたように空間に定位し、ピッチカートの
直後に響く低音が床に向かって垂れ下がるように音像を崩すことはない! いいです!

その直後にぴったりセンターの極めて小さいストライクゾーンで「カキーン」と
プラチナトーンの鋭くも美しいトライアングルの打音に驚かされました!

何という透明感、何という美しさ、何という余韻感、それが針の先程の極小の音像として、
スピーカーが存在しないセンターの一点から出現し消えていくのですから驚きです!

言い換えれば「穴あき金属製カバー」がないスピーカーよりも鮮明かもしれない!

その後に続くヴォーカルは同様にセンターの空間に位置する極小の一点から湧き起り、
克明な音像がくっきりと定位すると、巧みに施されたリバーブに促されて左右両翼の
空間に向けて素晴らしい響きの拡散にうっとりさせられてしまうほどなのです!

しかし、以前にも述べたように、バックにストリングスが入ってくる時点で、
このリバーブはさっと消え去り、余韻を控えめにした色濃い歌声へと変化します。

そのヴォーカルの演出が実に正確に再現され、弦楽器との空間の調和を保ちながら、
オーケストラの時と同様に歌声に滑らかさと艶やかさが溢れていることに驚きます!

さあ、サビを迎えてのセンター定位の鈴の音。これがほぐれた鳴りっぷりで実に自然。
右奥へと余韻をたなびかせるクラベスの打音は木の香りが感じられる質感で見事!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

比較対照する楽音の傾向で相反するものを選択した三曲で私はPPAの貢献度が
これほどの物かと実感しました。

今までの常識であれば「穴あき金属製カバー」のようなものをスピーカー振動板の
前に配置したりしたら、放射する音波の指向性を狭めるだけではないかと思って
しまうのが普通の発想だと思います。

しかし、その様な心配は無用であり素人の思い付きだと言われそうですが、Paradigmが
測定したPersona 7Fのポーラパターンのグラフを入手したので初公開致します。

■Paradigm Persona 7F Directivity plot
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190528174425.pdf

これは各帯域の音圧レベルの違いをスピーカー正面から全方位に向けて測定した
ものであり、スピーカーを上から見た場合の各方位への音圧変化とお考え下さい。

125Hzという低音では回析効果もありほぼ全方位での音圧は均等であり無指向性と言えます。
これが周波数が高くなるにつれて前方への指向性が強くなり、角度が大きくなると
周波数特性として音圧が減衰し次第に正面だけしかレスポンスがなくなってきます。

横軸をセミログ、片対数グラフにて表現される周波数特性の中心は1KHzですが、
このグラフで黄色いラインの1000と示された指向性パターンに注目して下さい。

クロスオーバー周波数は2.4kHz/450Hzなので、この帯域はミッドレンジドライバーが
受け持っているわけですが、2000という周波数とほぼ同一の指向性を確保し、
ミッドレンジとトゥイーターの両者で出力する帯域で4000までも含めて大変に
広範囲な指向特性だということが解ります。

そして、完全にトゥイーターのみの出力となる8000と16000ですが、他社スピーカーと
比較して大変広い広角な放射パターンであると言えます。

私は今までにも多数のポーラパターンを見てきましたが、トランプのクローバーを
左右から圧縮して細くしたような形のようになってしまうものが一般的なのです。

この指向性パターンにおいて、同じスピーカーユニットにおいてPPAを取り去ったら
どうなるのか、という最新データも入手したので下記にて初公開致します!

■Paradigm Persona 7F no PPAs Directivity plot
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190611153806.pdf

上記にてトランプのクローバーという喩えをしましたが、それが8000と16000Hzと
いうグラフの形状になっていることがお分かり頂けると思います。

高域周波数の指向性においてPPAがない場合だとポーラパターンも変化して指向性が
前方に対してのみ鋭くなっていく変化をご確認頂けると思います。

そして、重要なことなのですがポーラパターンとは通常はスピーカーを俯瞰した場合、
つまりは真上から見た場合の指向性の広さを測定するものなのですが、このPPAの
原理から水平方向だけでなく垂直方向に関しても同様な広い指向性が得られると
いうことが重要なポイントとなります! そのために更に下記のグラフをご覧下さい!

■Paradigm Persona 7F 角度変位による伝送周波数特性
https://www.dynamicaudio.jp/s/20190611153757.pdf

このグラフの題名は英文ではピンとこないので私が日本語で命名しました。
またpdfの拡大機能で大きくしてみて頂ければと思います。

右の6個のパラメーターでグリーンの669とレッドの704がオンアクシス、つまり
スピーカーの真正面での周波数特性となります。

667と703が15度、667と702が30度の角度にて測定した周波数特性となりますが、
702から704がPPAなしという特性で5KHz以上になると1KHzに対して最大値で+4dBから
-8dBというレスポンスの変動があり、PPAありの669に比べると大きく周波数特性が
乱れているのがお分かり頂けると思います。

この周波数特性の変位角度をもっと大きくして円グラフにプロットしたものが
ポーラパターンなのですが、そこで各帯域のグラフのカーブの形が円形に近いほど
角度によっての音質差が小さくなるということになります。

ただ、上記の角度変位による伝送周波数特性のグラフにおいて測定角度が60度とか
90度ということになると、中高域での減衰量が甚だしく大きくなりイメージダウンに
なってしまうかもしれません。

いずれにしても、PPAの有無によって指向特性と周波数特性がこれほど大きく改善
されているという事実がParadigm Personaシリーズ全製品にて共通しているという
ことを結論として述べておきたいと思います!!

            -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

H.A.L.'s Special Installation - HIRO Acoustic Laboratory MODEL-C4CS 5月20日改訂
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1540.html

私は上記にて次の一節を述べていました。

「測定データが良いから音がいい、という考え方で以下の文章を書いたわけではありません。
 私が聴いて判定した音質が素晴らしいということを測定データが証明してくれたと
 いうことでご理解頂ければ何よりです。」

Paradigm Persona 7Fの評価は何よりも私の耳と感性で行いました。

それを裏付けるものとしてメーカーサイトで公開されていない測定データを示しただけです。
皆様の耳と感性でParadigm Persona 7Fを評価して頂ければと思います!

そして、私は結論を出しました。このParadigmというメーカーが作り出したスピーカーは、
以前日本で販売されてきたどのスピーカーとも違う魅力と個性を持っています。

それは、Persona 7Fという一機種を聴いただけでも十分に実感されたものでした。

さて、このNew comerをどうしたものか!?

この新製品に関するハルズサークル限定企画を実施中! この機会に是非ご入会下さい!

川又利明
担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

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