発行元 株式会社ダイナミックオーディオ
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H.A.L.担当 川又利明

No.1141 2014年9月9日
 「H.A.L.'s One point impression-SonusFaber“Extrema”」


2014年3月29日 半年前はわずかな情報しかありませんでした。
No.1104「1991年にFrancoSerblinが作り上げたExtremaが再び!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1104.html

2014年8月10日 遂に正式なリリースとして全貌が明らかになりました。
No.1130「Sonus Faber 30th Anniversary Super Limited Edition“Extrema”」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1130.html

2014年8月24日 やはり色々な意味で世界中で話題になってきました。
No.1136「Sonus Faber “Extrema”のお値段にまつわる話し!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1136.html

そして、2014年9月某日は私にとって感動的な記念日となった!!
遂にSonus Faber“Extrema”をこの耳で聴くことが出来た!!

先ず最初に左右スピーカーの位置と角度をセンチ単位で何回も調整した。
次にトゥイーターの保護用メッシュを外し楽音の鮮明さが向上する事を確認。

また、リアのパッシブラジエーターのダンピング調整は0から3までの四段階
あるが、ベースを聴きながら1を選択した。

更に付属の金属板ジャンパーを外し、私が信頼する21万円という高級ジャンパー
ケーブルに交換することで楽音の鮮度が向上することを確認した。

極めて透明感の高い再生音のExtremaは聴きはじめたとたんに反応し、細かい
チューニングをせずには本格的に聴くことなかれと言わんばかりだ。

さあ、いいだろう…。Extremaに失礼のないように初見での調整に納得してから
いよいよセンターポジションに腰を下ろした。

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

今は亡きFranco Serblinが創業したSonusfaberの歴史は下記の随筆に詳しい。

「The Sonusfaber」前編 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto58.html

現在の経営陣と開発者たちとは下記のように懇意にさせて頂いている。

2012年3月2日「No.906 Sonusfaberとのお付き合いと近況報告!!」
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/906.html

私が初めてSonusfaberの製品に巡り合ったのは1988年のElecta Amatorからだが、
物作りを始めた頃の歴史を振り返り、現在の経営陣は同社の創業年を1984年とした。

Extremaが同社の30周年記念モデルであることは既に報じられているが、その
内部構造と材質を考えれば同社の歴史からしてもExtremaは異端児という存在
であろうと思われる。

しかし、ブランドを引き継いだ経営陣はFranco Serblinに対する敬意を忘れる
ことなく伝統的な手法と感性の在り方を存続させ、同時に近代的な製造設備と
木材以外の新素材を採用することでSonusfaberの存在価値を更に高めていった。

Extremaに対する革新的な設計方針と素材選択においては、継続生産では採算性と
ビジネス面での永続性が困難であろうと判断したのか、あるいは確固たる記念
モデルとしての希少価値を歴史に刻むためか、全世界に向けて30セット限定生産
としたことが、同社の製品の中でも異端児と言うべきExtremaの存在感を肯定
する事になったと思われる。

Extremaの優雅なカーブを描き美しい光沢を放つスプルース製サイドパネルは
同社の得意とする見事な仕上げである。音響的に適量のダンピングを施して
いると推測は出来るが実際のところでExtremaの骨格はカーボンモノコックであり、
フロントとリア両方のスピーカーユニットを取り付けているバッフルはアルミ
ニウムの削り出しである。今後の感想を述べる際に必要と思われるExtremaの
製造工程における構造と素材の見事なハーモニーを画像で紹介すると…。

■十分な乾燥期間を経て選択されるウッドブロックの見事な素材
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_24.jpg

■サイドパネルの微妙に厚みが異なるように成形される職人技
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_31.jpg

■絶妙なカーブを描き厚みが異なるサイドパネルの成形と刻印
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_32.jpg

■伝統の技に支えられた塗装技術の丁寧な仕事
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_34.jpg

■誇らしい焼印による「sf」のプライドがここに
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_19.jpg

■カーボンファイバーの光沢とウッドパネルの光沢が出会う瞬間
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_48.jpg

■6種類の素材によって織り込まれた美しいカーボンファイバー
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_15.jpg

■6種類の素材によって成形されるカーボンファイバーの加工
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-carbonio.jpg

■成形完了のカーボンファイバー・サンドイッチ構造のメインフレーム
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-carbon.jpg
後日、この原型となる金型を破砕処分し完全なる限定生産を宣言している。

■フロントバッフルの加工工程
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_40.jpg

■形になってきたリアバッフルの加工工程
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_44.jpg

■アルミ削り出しのリアバッフルを取り付ける際のダンピング処理
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_59.jpg

フロントバッフルは銅プレートを介在してカーボンファイバーのメインフレーム
に取り付けられている。未だかつて、Sonus Faberのスピーカーでこんな素材
のバッフルにドライバーを取り付けたというものはない。

■フロントバッフルの中身はアルミだが、このような本革でのダンピングが
 音質的に大きな影響力を持つ。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_57.jpg
このミッド・ウーファーのフレームにシリアルナンバーが刻印されている。

■フロントバッフルの取り付け(プレートの裏貼りされた銅素材に注目)
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_53.jpg

■見事な仕上げでカップリングされたミッド・ウーファーの外観
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_25.jpg

当然のことながらバッフルを包む本革などで適切なダンピングを施しているで
あろうことは音を聴けば解かるのだが、パルシブな楽音の再現性がここまで
際立つSonus Faberが過去にあっただろうか!!

■完全なハンドメイドによるクロスオーバーネットワーク
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_62.jpg

■クロスオーバーネットワークのデバイスを収納するハウジングが木製である
 ことに注目したい。カーボンファイバーとアルミによるボディーに格納する
 からこそ木製ケースが音質的なチューニングによる選択と思われる。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_55.jpg

■斬新な内部構造と革新的新技術を優美に包み込んだExtremaの完成外観
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_1.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_2.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_6.jpg

http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_11.jpg

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■一台ずつ入念な測定とテストを経て60台、30ペアが毎月少数ずつ作られる
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_64.jpg

■このデザインスケッチから全てが始まったということが信じられるか!
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-sfondo_testi_neri.jpg

世界限定30セットというExtremaに対して、私は限定品であるがゆえに他の
スピーカーでは出せない音を求めていた。それがあってこそ孤高の存在であり、
同社の歴史中で異端児と言われる程の大胆な設計方針に賛辞が送られるというものだ。
他社比較ではなく同社比較としても、The SonusFaberでも出していない音が
Extremaにあらんことを私は探し求めた!

■DIANA KRALL「LOVE SCENES」11.My Love Is

全く対照的という音場感でヴォーカルとウッドベースで録音したこの曲。
私は本体重量がたったの? 18.6KgというExtremaがどのような低域再生を
聴かせてくれるのかに興味があり、的確に低域の質感を検証できる選曲とした。

いつもはオーケストラから試聴を始める。もちろん今回も最初にオーケストラ
を聴いてはいるが、そこで感じたことを述べるには前述の特殊な内部構造と
素材の選択も大きなかかわりを持っており、それらを語るにおいて、奇しくも
この選曲がExtremaの個性を見事に表現してくれたのである。

この曲はデュオの演奏なのだが、実際にはイントロから続くDIANA KRALLの
指を弾く音とヴォーカル、そしてChristian McBrideの重厚なウッドペースと
楽音としては三種類という実にシンプルな録音。

しかし、スタジオワークによってDIANA KRALLのヴォーカルと指を鳴らす音には
実に広大に広がりを見せる深いリヴァーヴが施されており、それとは全く対照的に
ウッドベースは大変ドライな録音で、ほぼリヴァーヴは感じられないソリッドな
質感という、同室で演奏したら絶対にあり得ない音場感のカップリングである。

先ず冒頭ではピアノで鍛えたDIANA KRALLの指を弾く音。もう何回聴いたか
解らないくらいに多数のスピーカーで聴き、その度に新しい発見をさせてくれる
私の仕事には欠かせない録音と言える。それが…、前例のない究極とも言える
スピード感でExtremaのジャストセンターの中空に弾けた!!

このパルシブなアタック音の音像は極小のサイズで鮮明だ。弾けた瞬間の音に
肉厚な印象はなく、如何にスピーカーユニットの過渡特性が素晴らしいかを
物語っている。

これまで聴いた多数のスピーカーの中には、この指を鳴らす音が「ビン!ビン!」
と厚みを持って聴こえてしまうものもあったが、音波の発生と同時に消滅まで
の時間軸が録音信号にいかに忠実であり、余分な響きを伴わないということと
同時に広大な音場感として周辺の空間に広がっていく余韻感の素晴らしさが物凄い!!

これは重厚なアルミ削り出しのフロンバッフルと銅製プレートを挟みカーボン
モノコックに連結させるというダンピング効果、そして本革の表面仕上げを
伝搬していく音波がディフラクションを発生することなく、きれいな減衰特性
で消滅していくことの証となっている。

弦楽器はこうだ、ピアノはこう鳴って欲しいという期待感と先入観で位置付ける
楽音ではなく、冷静に比較対照する効果音的な指の音が強烈な第一印象をもたらす!!

フロンドパッフルのミッド・ウーファーとトゥイーターの連係が見事だ!!
2.35KHzのクロスオーバー周波数で2ウェイを構成するが、トゥイーターだけで
指を鳴らすアタック音は再現できない。高速反応するミッドレンジとの緊密な
連係によって初めて実現するハイスピードな再現性、これは只者ではない!!

そして、Christian McBrideのウッドベースだ。このペースはスピーカーによって
重厚感と音像サイズが本当に大きく違って聴こえてくるキーポイントなのだ!!

大型スピーカーでは重量感はあるものの音像は大きくなる。また、バスレフ型
スピーカーではポートから排出される低域がポート共振周波数以外の音圧も
含めて出力してしまうので、どうしても音像の輪郭は緩みがちになってしまう。

ところがどうだろうか!!Extremaが放つベースの音像が何とも小振りであり、
凝縮され濃密であり重厚な低域が左右Extremaのセンターにきっちりと固定
されて響き渡る。音像が膨らまず引き締まった輪郭は内部に重々しい響きを
包み込んで離さず、私も未体験の鮮やかなフォーカスでウッドベースが唸る!

バスレフポートの功罪は色々とあるが、もちろん入念な設計とセンスによって
魅力的な低域を再生するスピーカーが多数あるのは事実だろう。しかし、私は
限定生産であるが故の独自性とパフォーマンスの高さをExtremaに求めた。

ポートチューニングのメリットは共振周波数による低域のエクステンションと
ウーファーの背圧を放出させ振動板の過渡特性を良くするという基本項目がある。

しかし、逆に考えると共振周波数以外の音波もポートから放射される可能性がある。
2ウェイスピーカーのクロスオーバー周波数はウーファーの口径によって上下する。

10センチ程度のウーファーではトゥイーターとのクロスが4KHz以上としている
ものがあり、20センチ前後のウーファーでは2KHzから3KHzくらいにクロスを
設定する場合が多い。

仮にオクターブ/6dBのハイカットフィルターでウーファーを駆動すれば、
低くても2KHzのクロスだと4KHzで-6dBで1/2に減衰し、8KHzという周波数では
ヴォーカルの中心帯域だが、ここでも-12dBの減衰があるものの中・高域に
つらなる周波数帯域の再生音もウーファーは発してしまうのである。

バイワイヤー対応スピーカーでわざとミッド・ハイのスピーカー端子を接続
しないでウーファーだけ鳴らしてみると、もやもやとしたヴォーカルが聴こえて
くるという現象は決して珍しくない。つまり、バスレフポートからは本来ある
べきではない低域以外の帯域の音声も出力され、それがポートから外界へと
漏れ出てしまう傾向があるのだ。

次にウーファーの背圧が抜けてくれるという事は振動板の反応を良くするという
こともあるのだが、これも共振点ではダンピング効果をもたらすのだが、それ
以外の周波数ではウーファーの振動板に何らロードがかからないので、大きな
振幅の低域を再生する際にダンピング効果はないに等しいという事もある。

密閉型スピーカーでは内部の気圧変化によってウーファーのピストンモーション
に適度な制動をかけるという工夫が大分以前からある。低域の再生限界は低い
周波数に向かって延長されていくのだが、ウーファーの反応は鈍くなるという
傾向もはらんでいる。

強靭なカーボンファイバー・モノコック構造のフレームに金属製バッフルを
採用し、リアにパッシブラジエーターを装備したExtremaの低域再生が他社に
真似の出来ない高速反応と重量感の両立に大きく貢献している!!

上記のようにバスレフポートという解放部によってウーファーの背圧が外界に
漏れ出ることはなく、四段階で調整できるダンピング機構のノブにBRAKEという
ネーミングを付けていることでも解るように、Extremaのパッシブラジエーターは
単純に励振して共振周波数40Hzの低音を出すだけでなく、積極的にフロントの
ウーファーにブレーキをかけて余分な低域の放射がないようにコントロール
しているという二種類の働きをしているのである。
http://www.dynamicaudio.jp/file/20140906-extrema_20.jpg

上記の画像で見られる高剛性かつ軽量のカーボンコンポジットとアルミによる
バッフルの高い剛性によって、コンパクトなボディサイズにして重厚かつ高速
反応する低域を可能にしたExtremaは確かに異端児でありながら他にはない
能力を有していると断言できるだろう。これは本当に素晴らしい低域だ!!

見事にシェープアップされた引き締まった低域と、素晴らしい余韻感を拡散
させる中・高域を両立させたExtrema。正に究極と言えるスピーカーと言える!

前述のようにブレーキがかけられた低域はスタジオ録音の鮮明な低音だけに
恩恵をもたらすわけではない。実は、オーケストラの再生音にこそ素晴らしい
貢献をしていたということが私には解ってしまった!!

             -*-*-*-*-*-*-*-*-*-

■H.A.L.'s Original Edition : GUSTAV MAHLER Symphony No.3 in D minor
マーラー:交響曲第3番ニ短調 : Direct Cut SACD (2DISC仕様/予価税込み¥35,000.)
http://www.dynamicaudio.jp/5555/7/GUSTAV_MAHLER.html

H.A.L.'s Original Direct Cut SACD限定発売の情報は下記にて
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/959.html
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/brn/1009.html

結局、34分10秒の第一楽章を最後まで聴き続けてしまった!!
冒頭の6本のホルンの斉奏で私は完全にノックアウトされてしまった!!

今まで数多くのスピーカーで聴いてきたものだが、スピーカーユニットという
音源の存在感がどこかしらに感じられていたものだ。

それが何ということだろうか!!
Extremaが発したホルンは完全に空間を支配している!!

スタンドと一体になっているExtremaは約1.1mという高さであるにも関わらず、
私が見上げてしまうようなホルンの響きの頂きは優に2メートル以上あるので
はないだろうか!!

スピーカーはそれ自身のエンクロージャーでドライバーが発した音波の一次
反射音を発生させ、それがスピーカーの持てる空間表現に限界をもたらす事がある。

微小な時間軸で遅延を伴い発生した一次反射音は、音量を上げるにつれて
スピーカーのボディーサイズに伴った楽音の濃淡を知らぬ間に発生させている
という現象が必ずある。

言い換えれば巨大なエンクロージャーのスピーカーは、それ自身のフロント
バッフルの面積が音像と音場感を描く透明なキャンパスとなってしまう傾向が
少なからずあるものだ。

そのキャンパスでは音源位置の音量感が最も大きく、次第に周辺に拡散していく
という暗黙の定理があり、それを殊更に発言する設計者はいない。その現象を
含めてスピーカーの魅力が発揮されるように設計するからだ。

しかし、私の厳密な聴き方では、空間に拡散していく音波に大変微妙な時間差
を発生させてしまい、音源位置と周辺でのグラデーションを感じてしまうのだ。

1000分の一秒で34センチという音速を考えると、スピーカーの内部構造と概観
の造形の良し悪しによって、発生した音波が一度反射してから消滅する時間と
スピーカーユニットからの直接音の減衰時間に微細なズレが発生しているのか。

しかし!!このExtremaで聴いた6本のホルンは瞬く間に、いや…ミリセカンドの
遅滞もなくスピーカーキャビネットから放射され、左右Extremaが存在する私の
前方4メートル付近の空間に均一な時間軸で立ち上がり、目に見えない音響的
スクリーンに映し出され、その描写は素晴らしく鮮明であり楽音の原型が
極めて忠実な再現性で歪感もストレスも皆無という音場感を展開する。

Extremaが存在する室内にホールの空気感を蘇らせたように、ステージの天井から
降り注いで来るようなホルンの響きが耳で感じる遠近法で迫って来る!!

スピーカーの存在感が霧散し空間に視認できない音楽のキャンパスを掲げる!!

直ちに私の頭の中の引き出しをひっくり返し、スピーカーに関する膨大な記憶
のファイルの照合しても、このExtremaが上げた第一声に比類するものはない!

34分もある第一楽章では様々な楽音が展開するが、管楽器のソロパートでの
リアルさに思わず背筋に電撃が走ったような衝撃と感動がある!!

バストロンボーンのソロでは発せられた楽音にステージの床と天井からの反射
を思わせる低い音階の残響の折り返しが感じられる。こんなこと初めてだ!!

ステージのあちこちから木管楽器が連係してソロパートをつなげていくが、
Extremaは自身の一次反射が極めて少ないせいか音像は見事にフォーカスを
結び、しかも音像サイズは極めて小さい。

そして、空間に浮かぶというよりは明確な定位感を示してくっきりと描かれる
演奏者にピンスポットが当てられたような解像度の素晴らしさが感じられ、
隣り合う木管楽器の各々の残響が消えていく過程の最中に次の楽音が発せられ
ても響きの空間は整然としている。

音量に勝る金管楽器の壮大な響きと、短いフレーズで巧妙に引き継ぎを行う
木管楽器の短時間の演奏はExtremaによって見事に統制された空間に同居する。

冒頭の管楽器の素晴らしさに圧倒され、普段であれば弦楽器の質感を最初に
言及する私には珍しい展開となった。この録音ではコントラバスは左側に位置
しており、数小節のソロパートをアルコで演奏する。そこが凄い!!

カーボンコンポジットとアルミという骨格にパッシブラジエーターを背負い、
ハイスピードなキャビネットの性格に一致する低域とは何かをいとも簡単に
見せつけるコントラバスの響きに圧倒され、そして納得する。

過日のこと、当フロアーを訪れたSonus Faber R&D ManagerであるPaolo Tezzonに
私は質問した。ExtremaのパッシブラジエーターのQ(共振周波数)は何Hzなのかと。
すかさず40Hzと答えた。

パッシブラジエーターの質量によって共振周波数を決定するものだが、Extremaは
カーボンファイバーという大変軽量であり高剛性のパッシブラジエーターを
搭載し、先ずは高速反応を狙いダンピング効果の選択をユーザーに託した。

これは前述のようにブレーキ効果を調整出来ると同時に音圧をもコントロール
出来るようにという一石二鳥のアイデアであり、故Franco Serblinが残した
旧Extremaにおける技術遺産でるある。オーケストラでの低域のふるまいは
更に私に感動的な新発見をもたらす!!

■マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章  小澤征爾/ボストン交響楽団

定番中の定番という程のリファレンスにしている曲。今までに聴いた回数は
何百回か、あるいは数千回と数え切れない程の回数を、数え切れないほどの
スピーカーとシステム構成で聴いてきた。

しかし、このExtremaで聴くマーラーはこれまでのどのスピーカーとも違う!!
それは同社で言えば、あのThe SonusFaberで聴いたマーラーとも違うのである。

「The Sonusfaber」前編 
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto58.html

一台300Kgという巨体と、壮大かつ緻密な再現性を誇るThe SonusFaberを私が
セットアップして聴いて頂いた時の設計者Paolo TezonやCEO Mauro Grangeらの
感動は下記のように本物であったわけだ。

2012年3月2日「No.906 Sonusfaberとのお付き合いと近況報告!!」より
http://www.dynamicaudio.jp/file/110221/letter_to_Mr.Kawamata.pdf
こちらはMauro Grangeの直筆。
http://www.dynamicaudio.jp/file/110221/letter_to_Mr.Kawamata.eng.pdf

世界限定30セットというExtremaに対して、私は限定品であるがゆえに他の
スピーカーでは出せない音を求めていた。他社比較ではなく同社比較としても
The SonusFaberでも出していない音がExtremaにあることを発見した!!

この第二楽章の冒頭での弦楽五部の質感。これが実に素晴らしい!!
しかも、このExtremaで聴くオーケストラの弦楽器は他のスピーカーと一線を
画する重要な要素があり、それはExtremaでしか実現出来ないものだ!!

主旋律を奏でる第一ヴァイオリン、相互に連携する第二ヴァイオリンは極めて
透明度の高い描写力を持ち、それはエンクロージャーの構造やバッフルデザイン
から発祥する演出的な個性の高まりを否定して極めてニュートラルな質感なのだ。

ここまでだったら他のスピーカーでも追いつけるかもしれない…。しかし!

Extremaの高速反応し重量感を湛えながらも膨らまない音像を実現した低域と
前述しているが、実はこのミッド・ウーファーとパッシブラジエーターの効果が
大編成の弦楽器再生に画期的な解像度をもたらしているのである。

中・高音の弦楽器に関しては色々な好みが人によってある事は承知の上で、
そこにスピーカー選択の個人差が出てくるものだが、主旋律を扱う帯域の
弦楽器に関しては頻繁に議論されるものの、ビオラからチェロ、そして
コントラバスと低音階につながる弦楽器の質感に関してはスピーカーの個性と
いう演出に埋もれてしまっている現状があるのではないだろうか。

古い設計のボックス型スピーカーの低域は小音量では豊かな低音というセールス
ポイントになりえるだろうが、左側から聴こえる弦楽器の質感にこだわりつつも
右側から聴こえてくる低音の質感がスピーカーによってこれほど違うとういう
ことに気がつかなくてはならないだろう。

つまり、音階が下がっていく程に弦楽器の再生音がゆったりとして、茫洋とした
音質になっていても、それを弦楽五部の各パートでの質感の違いとして議論
されることは中々ないのではないだろうか。左手は細くて繊細だが右手は
量感こそあれど、ふっくらとした弦楽器の音質を違和感なく聴いてしまっている
ということはないだろうか?

ところが、Extremaは違う! 弦楽五部の各パートに均等な緊張感とテンションを
もたらし、特にビオラの存在感を克明にしチェロのパートの切れ味をもたらし、
コントラバスのアルコでは震えるような脈動感をコンパクトなボディーから
いとも簡単に軽々と再現してしまうのである!! これは物凄い事だ!!

マーラー交響曲第一番「巨人」第二楽章の合奏では主題の提示を行う中・高音
を受け持つヴァイオリンの質感は絶品としたまま、コントラバスの弦が摩擦感
を間違いなくステージに発散しているのだという実感が意識せずとも伝わって
くるのだから、量感重視の大型スピーカーでは出せない低弦の魅力はここだ!
と前例のない感動が私を襲ってくるのである!! これはExtremaだけだ!!

言い換えれば低域の反応の素晴らしさであろう。それは微弱な信号にも反応し
オーケストラではステージ後方に位置するグランカッサの打音が実に鮮明に、
しかも左右スピーカーの中間を埋め尽くすような音像ではなく、きっちりと
存在感を示している事で分かる。膨らまない低音ということが打楽器の表現を
ステージ上でデフォルメすることなく、極めて弱音の演奏でも忠実に再現する。

小口径ウーファーの弱点を見事にカバーし、その反応の素晴らしさを楽音に示し、
私の課題曲の全てにおいて新次元の音を聴かせてくれるExtremaを出来れば
より多くの人々に聴いて頂ければ…、というのが唯一残念なところだろう。

しかし、Extremaで養った新技術を搭載した新製品、Liliumに期待したい!!
http://www.noahcorporation.com/sonusfaber/201408lilium_release.pdf

広大な空間に広がっていくべき楽音と、音像の肥大化があってはいけない楽音
の両者を素晴らしい次元で実現したExtrema。私は聴く事が出来て幸運だった。

間違いなく進化するスピーカー職人集団、SonusFaberに敬意を表し、Extrema
それはオーディオ界にとっての至高の芸術作品であると申し上げたい。


担当:川又利明
TEL 03-3253-5555 FAX 03-3253-5556
kawamata@dynamicaudio.jp

お店の場所はココです。お気軽に遊びに来てください!!


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