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H.A.L.担当 川又利明


No.112 「皆様のP0が更に美しくなるRK-P0とは?」
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オリジナル脚部とRK-PO RK-PO装着後 RK-PO装着部拡大

6月16日の昼下がり、梅雨の中休みとはいえ真夏を思わせる陽気にエアコンの効いた店内に逃げ込むようにおみえになったのは、品川駅近くの高層ビルのオーナーであり、私のVIPであるM・S氏である。最近発売されたステレオサウンド誌のある広告ページを開かれて、「川又さん、これどうかな。ちょっと遊んでみようかと思うから取り寄せてくれないかな。」と熱心なご注文を頂戴した。私は自分で試さないと絶対にコメントしない性質なので、「わかりました。ちょっと手配してみましょう。」と広告に記載されている番号に電話をした。「始めまして、私ダイナミックオーディオの川又と申しますが…。」と名乗ると初めての電話なのに先方のほうから「あ、川又さんですか、お名前はよく存じ上げてますよ!!」と切り替えされてしまった。お相手とは広島のカイザーサウンド代表の貝崎静雄氏である。「これは、これは…。」と恐縮しているうちに話しはとんとん拍子で進み、早速ワンセット送ってくださるという。そして、偶然ながら居合わせた私のもう一人のVIPである江戸川区のH・M氏も当然P-0のオーナーであられる。このお二人とも興味津々のうちに入荷を待つこととなった。

翌週月曜日、先週のエピソードから本日到着するであろうP-0のオプションフットがRK-P0(\200.000.)である。私はいつものリファレンスシステムであるノーチラス、JEFF ROWLAND MODEL12、同じくCOHERENCE2、D/AコンバーターはMARKLEVINSONのNo.30.6L、そしてP-0、ケーブルはもちろんPADドミナスとRLSと最強の布陣でRK-P0の到着を待ちながらPADのシステムエンハンサーをかけて万全の準備をして待っていた。

そして、いよいよ到着したRK-P0を開封して、P-0のオリジナルフットと比較したのが写真《オリジナル脚部とRK-P0》である。P-0のオーナーでもわざわざ脚を取り外して眺めたり手に持ったりする方はあまりいないだろうと思うが、実際には写真のように直径約80ミリの円盤に太さが35ミリの円柱がつながる形であり、ずっしりとした手ごたえを感じさせるものである。
これは円盤と同じ直径80ミリの太い鋳鉄の棒から見たとおりの形に削り出したものであり、一個あたりの重量も約800gと信頼性抜群のフットとなっている。私はP-0の開発当時から、この脚部の構造と質感を知っているので何ら不安感も感じず、正直に言って雑誌広告を見たときには話半分と言う程度の受け取り方をしていたのである。さて、問題のRK-P0は手で持っただけで明らかにオリジナルフットよりも重たい。約1200gというところだろうか、鉛を三パーセントほど混入させた直径90ミリに及ぶ快削真鍮の塊から同様に削り出したものがRK-P0である。

さて、ケーブルの比較試聴のように簡単に取り外しして比べられないので、耳に焼き付いている選曲であるが、いつものヨーヨー・マ、大貫妙子、山本英次のピアノトリオ「スウィミング・アバウト・イン・ジャズ」を念のために聴き直してセッティングに取りかかった。脚を取り替えるとなるとP-0をひっくり返して大変だ、とお思いでしょうが、実はP-0本体はそのままで4コーナーの脚部の円盤を上から回して一つずつ交換していくのである。さて、交換が終わったのが写真《RK-P0装着後》である。何かとデザインに注文の多いP-0だが、実際に取り付けてしまうと本体のトレイやスイッチなどと同系統の色合いであり、かえって自己主張があっていいかと思ってしまう。そして、RK-P0の下の部分を見ていただきたいので写真《RK-P0装着部拡大》を用意した。ラックに接する面はスパイクを上に向けた受け皿であるポイントベースが重量を支えることになり、写真のようにピンポイントでP-0を支持することとなる。

このセッティングに何分かかっただろうか。事前に聴いた音質を忘れまいとして、慎重にボリュームを復元して「さあ、聴くぞ!」と思ったときに来店されたのが江戸川区のH・M氏である。「ああ来てるね。これが気になって来ちゃったんだよ」と屈託のない笑顔でとなりに着席された。「もう少し早く来てくれれば使用前使用後の比較が出来たのに残念でした。でも、私もこれから第一声を聴くところなんですよ。」と、先程とは逆の順番で再生を開始した。従って、最初は山本英次の「スウィミング・アバウト・イン・ジャズ」の一曲目「Cジャム・ブルース」で田野重松が軽快に演奏するウッドベースがイントロを飾るのだが、「ちょっと待って、このベースさっきと違うぞ。」と、私の聴覚が早速反応を示した。ベタっとしていない。空間に放出された感じ。なんと言ってよいのか、確かに質感が変わっているのに適切な言葉が出てこない。歯がゆい思いでいると吉田啓二のギターが入ってくる。「おいおい、これも違うよ。カットする瞬間にピックが刻むタッチはこんなんじゃなかったぞ。」そして、いよいよ山本英次のピアノが入ってくる。「これは…、これは参ったぞ。」今まで緊張感を伴いピーンと張り詰めたテンションとスリリングな演奏が魅力であった。
ハンマーが弦にヒットする瞬間のきらめきが魅力であったのだが、実はそれは凪いだ海面でもきらきらと陽光を反射するように、透明な水であってもまぶしさを見せつける現象であったことがわかってしまうのである。本当は、本当はこんなにも透明度の高いピアノであったのだ。刺激成分を取り除いてから再度検分しないと認識できないとは、ずはりこのことなのだろう。弾けるようであり、そのエコー感は瑞々しい、こんなP-0で聴くノーチラスの音は始めてである。

H・M氏には申し訳ないが、使用前使用後の比較は私一人が独り占めして実感しながら次の選曲を急いだ。ヨーヨー・マのシンプリーバロックでは、ここでもう一つ大きな発見をすることになる。マの演奏するチェロの音像は皆様の自宅ではどのように展開しているでしょうか。私はこんな風に観察しました。マの演奏するバロックチェロが音階の低いパッセージの演奏に移行すると音像も拡大するのである。あたかも音階の高低に呼応して呼吸するかのように音像の投影面積が縮小拡大していたのだが、RK-P0を使用したとたんにマの演奏するチェロは一定の大きさを保ち始めたのである。これが聴いていて実に自然であり、ノーチラスシステムの真骨頂とも言うべき三次元的空間定位をいとも簡単に実現してしまったのである。そして、バックのアムステルダム・バロック・オーケストラの木管楽器の余韻感が軽やかに中空に舞い上がり、オリジナルヴァイオリンの流麗さは更に滑らかな流れで空気に溶け込んでいくではないか。「これいい、いいですよ。」と、きょとんとしておられるH・M氏に思わず語りかけてしまう。このチェロの演奏における観察が、どうやら先程のウッドベースの質感の変化を説明するのにふさわしい例えとなったことだろう。

さあ、いよいよ大貫妙子である。冒頭のウッドベースとギターのイントロは既に予感と期待で、事前に描写できるくらいの想像力が耳を支配している状態である。そして、P-0をスタートさせた。「ああ、やっぱりそうだ。ますますスピーカーの存在が消えて今までに最高の出来栄えじゃないか。」とイントロを聴きながらの感想は、やや冷静さを取り戻してやり過ごすことが出来た。そして、いよいよ彼女のヴォーカルが…。
「一体どうしたんだ。こんなに変わっちゃっていいの!」と戸惑いが先行する。今まで、このアルバムの五曲目「四季」は数百回聴いてきただろうが、より以上にエコー感を噴出させながらヴォーカルの質感がこんなにシルキーに再現されたのは初めてである。ステージ衣装をわずかな風にもなびく絹織物のドレスに着替えたように、発声の全てに滑らかさが感じられるではないか。カ行、サ行、タ行、の半爆裂音と称される発音の端緒で、その全てのフレーズの刺激成分が完璧に蒸留されているのである。正直に言って、このヴォーカルがもっとも衝撃的であった。つい先程まで、自信を持ってセッティングしていたP-0は一体なんだったのか。PADKの特注になるDCケーブルとACドミナスを使い、ゾウセカスというアイソレーション効果に優れたラックに載せ、これでもかと磨いてきたつもりのP-0は、まだまだ成長の過程にあったということをRK-P0が教えてくれたのである。えらいものを聴いてしまった。この瞬間からはRK-P0はもう私のチームのレギュラーである。早速、貝崎氏に電話をして、これを常設展示するという私の気持ちを伝えようとしたら、「川又さん、これ買ってくよ。」とH・M氏から早くも2セットめのご注文である。思い出したら私は一言もセールストークは口にしていなかった。でも、本当のハイエンドの製品とはこういうものだろうと、ありがたいやらうれしいやらの心境で実感されたのである。

私はここのノーチラスシステムでの変化のありさまを伝えたが、RK-P0はP-0を組み込んだ全てのシステムで変質を巻き起こすはずである。しかし、ご注意頂きたいのは白を黒に変えてしまうような露骨な変化ではなく、P-0の潜在能力の高さを引き出して更に魅力的なメイクアップを施してくれるということである。何を言いたいかというと、P-0の素晴らしさを理解されている皆様にこそ価値あるものだということだ。万一P-0に対して数パーセントでも不満の芽を持っておられる方に、不満を解消するための対応策という受け取り方はなさらないで欲しいと思うのである。

さあ、21世紀もP-0とつきあっていこうと思っている皆様。
P-0sにRK-P0を装備したら一体どんなことになるでしょうか。
想像しただけでも楽しくなってしまいます。
皆様のP-0が成長する有様を目と耳で体験されることは、必ずや皆様の満足感につながるものと私が保証いたします。

RK-P0は完全なハンドメイドです。
皆様からオーダーを頂戴したときに品物があればよいのですが…。

川又が差し延べるのは誘惑の魔の手ではありません。
皆様が進むべき方向を指し示す、手の形をした単なる道案内の矢印にしかすぎないのです。
どうぞ皆様、誤解なきように…。

それでは、また突然に配信します。
どうぞお楽しみに。


このページはダイナフォーファイブ(5555):川又が担当しています。
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