Vol.43ケーブル比較試聴
今回は「ケーブル」に着目致しまして、5種類のメーカー、そしてその中からほぼ同価格帯で、当フロアのシステムにマッチングするグレードのケーブルをピックアップしてご紹介させて頂きます。 去る2月23日、ここH.A.L.3におきまして「ケーブル比較試聴会」を開催させて頂きました。内容としては、「安価なケーブルからグレードを上げるとどういう違いが出るか」、 「ラインケーブルとスピーカーケーブルどちらが変化率が大きいのか」、「メーカーの違いでどれだけ差が出るものか」、 の3本立てで行いましたが、お客様も興味があった分野のようで、一部・二部共にほぼ満席という、大盛況なイベントとなりました。 メーカーによる音の違いは後ほどお話させて頂くとして、ラインケーブルとスピーカーケーブルについて最初にお話をさせて頂きます。 ■ラインケーブルとスピーカーケーブル、どちらの変化率が大きいのか? 「ラインケーブルとスピーカーケーブルどちらを変更した方が良いか?」とのご質問を受けたとしても、正確な答えをバシッと出せる、というものではありません。 何故ならばメーカーによっても、その回答は異なってくるからです。 あるメーカーはスピーカーケーブル、あるメーカーはラインケーブル・・・これは求めるものの差と考えざるを得ないということになると思います。 後からご紹介致しますケーブルの中には、ラインケーブル、スピーカーケーブルとも同じ型番の商品が存在します。 単純に見て、殆どのメーカーはスピーカーケーブルの方が高価な場合が多いです。それであれば、スピーカーケーブルの方が変化率は大きいのではないかと思われるかもしれません。 しかしながら、それも一概にはそうと言い切れない所がございます。 これが正解という訳ではありませんが、私個人的にはラインケーブルには情報量などのきめ細かい部分の変化、スピーカーケーブルは力感(エネルギー感)や開放感(スケール感)の変化が大きいように感じます。 もちろんスピーカーケーブルで情報量アップ、ラインケーブルで力感アップという事も可能ですが、これから一箇所ずつケーブルを交換するということであれば、求める変化の方向性を、「情報量を増やしたいのか」、もしくは「エネルギー感を増したいのか」という 大きなポイントを決めてお選びになると比較的分かりやすくなるかもしれません。 あくまでも「総合評価」ということですので、これが正解という訳ではない、という事を頭の隅に少し置いておいて、ご参考にして頂ければと思います。 しかし、ケーブルとなると、もう一つ考えなければならない「電源ケーブル」も入って来ますので、本当に「ややこしや」ですね。 ■使用ケーブルのご紹介 それでは、イベントで使用致しましたケーブルをご紹介させて頂きます。 今回紹介致しますケーブルはH.A.L.3でメインで使用しておりますケーブルメーカーで、メーカー自身「ニュートラル」ということを謳っているメーカーです。 他にもケーブルメーカーは数多く存在しますが、まずはスタンダードなものという事でピックアップさせて頂きました。 |
ブランド名 | 【AUDIOQUEST】 | 【CARDAS】 | 【JORMA DESIGN】 |
型番 | Colorado / MontBlanc | GOLDEN PRESENCE | NO.3 |
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ラインケーブル価格 | 1.0m: \126,000 1.5m: \153,300 〜 | 1.0m: \112,350 1.5m: \145,950 〜 | 1.0m: \92,400 1.5m: \113,400 〜 |
スピーカーケーブル価格 | 2.0m: \183,750 3.0m: \262,500 〜 | 2.0m: \186,900 3.0m: \268,800 〜 | 2.0m: \183,750 3.0m: \225,750 〜 |
ブランド名 | 【NORDOST】 | 【WIREWORLD】 |
型番 | HEIMDALL | ECLIPS5-2 |
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ラインケーブル価格 | 1.0m: \105,000 1.5m: \136,500 〜 | 1.0m: \93,450 1.5m: \121,800 〜 |
スピーカーケーブル価格 | 2.0m: \210,000 3.0m: \294,000 〜 | 2.0m: \210,000 3.0m: \294,000 〜 |
● AUDIOQUEST アメリカのケーブルメーカーですが、その歴史は25年と長く、老舗メーカーの一つです。ケーブルが重要視されるようになった立役者的なブランドともいえます。 数年前より新たに開発された「Dielectric-Bias System / 誘電体バイアス・システム:DBS」でより一層注目度が増したように感じますが、 最近ヴォルテージを上げ、更にクオリティアップさせました。またモデルにより導体の素材が変わってきます。 音の特徴としては、抜けが良く、全体的にバランスが取れた、非常に真面目な音色のケーブルです。 良い意味でも悪い意味でもキャラクターは少なく、ジャンル問わず使用出来ます。敢えて特徴を述べるとすれば高域になりますが、 クリアで、定位感など音に関しては非常に素晴らしいものを感じます。スピーカーケーブルに関しては、繋ぎ替えの際、端子の部分に多少不便を感じる所はありましたが、 普通は一旦セットしてしまえば、後はあまり差し替えするものではありませんので、その辺りもあまり気にせずお使い頂けると思いますのでご安心下さい。 ● CARDAS ハイエンドケーブルの歴史を語る上で外せないアメリカの老舗ブランド。AYRE、JEFF ROWLANDなどからも絶大な信頼を受け、崇拝されているほどです。 黄金分割を意識したケーブル設計となっており、全モデル銅を使用しております。またケーブルだけには留まらず、プラグ、パーツなども非常に充実しております。 黄金分割に基づいた独自のセッティング理念も持っており、ハードメーカーへの影響力もあるようです。 ラインナップもいくつかありますが、エネルギー感、中域の厚みのある「QUADLINK」、「CROSS」、「GOLDEN CROSS」と、その中に暖かみ、自然さなど音楽的表現が加わった「Neutral Reference」、「Golden Presence」、「Golden Reference」に分けられます。こちらの選択はケース・バイ・ケースになって来ると思います。 このメーカーも全ラインナップで音色の方向性が定まっており、機器の良さを活かすといった面では使い易いケーブルとなっております。ケーブルのグレードが上がれば上がるほど量感が増え、自然な感じになります。 今回ご紹介させていただいた「Golden Presence」に関しては、一番新しいラインナップになりますが、響きを乗せ、多少明るさのある音色が印象的です。 中域に多少の癖を感じる部分がありますが、あくまでも他のケーブルと比べればといった程度でしょう。全体的には、やはり温かみのある音といっても良いかもしれません。 ● JORMA DESIGN 2002年にスウェーデンにて創立された新進ブランドですが、ここ最近話題となっており、非常に評判の良いケーブルです。 ステレオシステムにおいて、アナログケーブルは2本1組で使われるという事はごく一般的とされておりますが、その点において最も重要視すべき、そしてもっと厳密であるべき、という理念の元に設計されております。 ラインナップのトップエンドに当たる「NO.1」と「JORMA PRIME」では、クライオ処理を施した“バイビー・クァンタム・ピューリファイヤー(量子ノイズ吸収素子)”を装備しております。また材質に全て銅線を使っているというのも特徴のひとつです。 ラインナップは色々ありますが、非常に統一感のある音色です。一聴しただけでは物足りなく感じる部分がありますが、これが本当に素直な音なのではないかと思わせるほど、自然な感じに仕上がります。 エネルギー感といった面では他メーカーのケーブルより少なく感じる部分もありますが、全体的に非常に滑らかで、また開放感も申し分ないです。 自分は徹底的に脇役にまわる、というケーブル本来の持ち味を感じさせるメーカーなのではないでしょうか。何をどうして良いか解らないが、全体的に良くしたいということであればお勧めしたいケーブルの一つです。 ● NORDOST 1990年アメリカで創業された比較的新しいケーブルブランドですが、こちらも世界的にメジャーの仲間入りしたとも言えるブランドです。 スピーカーケーブルはフラットケーブルと称されるほど、平べったい構造で、またラインケーブルも他のメーカと比べても細く、非常に使い易いというメリットがあります。 このNORDOSTは特にデジタルケーブルに定評があり、有名なスタジオでも使用されております。 VALHALLAシリーズの評価は世界的にも高かったのですが、ここにきてリファレンスモデルODINを発売させ話題になっております。 音の特徴としては、反応の良さ、抜けの良さを感じます。一般的なケーブルに比べても情報量があり、スピード感溢れた明るい音色のケーブルです。 特にデジタルケーブル、ラインケーブルなどにはその反応の良さが顕著に現れます。低域のエネルギーは他のケーブルに比べると細い感じもしますが、全帯域に渡り、鮮明な感じに仕上がります。 「引き回しが楽」というのも、先程挙げた使い易さという点では大きなメリットです。 サウンド的にみれば現代的といっても良いかもしれません。 ● WIREWORLD 今や世界的なハイエンドケーブルメーカーになったアメリカのブランドです。 「電源ケーブルで音が変わる」ということは今では常識の様に捉えられておりますが、その走りを担ったケーブルメーカーの一つかもしれません。 このWIREWORLDですが、常に進化しているケーブルで、同じ型番で何度もシリーズを変えて発売しているのも特徴です。 今回使用したものも、ECLIPSの「シリーズ5・MK2」となります。以前はスピーカーケーブルが太く、引き回しも大変だったのですが、新しくなりフラットタイプのケーブルになり、使い易くなりました。 また、ラインケーブル、スピーカーケーブルに留まらず、最近ではHDMIケーブルなどでも高い評価を得ております。 ラインナップも多くありますが、上位モデルですと銀を使用したりと線材を変えてきております。 音の特徴を一番感じるところは「エネルギー感」といった所だと思います。 全体的に音に厚みがあり、また高域は美音というよりも、派手さを感じるイメージですが、それが逆に音楽をノリ良く聴かせることにも繋がるのでないかと思います。 特にロック、ジャズなどをきれいになり過ぎず、エネルギッシュに聴きたいお客様は好みかもしれません。上位機種になるともっと静寂感が増し、しっとりと聴かせる部分も出てきます。 しかしながら、やはりエネルギッシュなサウンドははWIREWORLDの特徴と言えるかもしれません。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 最後にスピーカーケーブルに関してですが、端子の形状やバイワイヤーなど機器により、選択は変わって来ます。 メーカーによっては、ご注文時に変更も可能ですので、ご相談下さい。 また今回お勧めしたケーブルは数多くある中の一部です。 例えば、他にも「トランスペアレント」、「STEALTH」、「SHUNYATA」、「MIT」、「AET」、「SILTECH」、「KIMBER」・・・など数え上げたらきりがありません。 またGOLDMUND、VIOLA、FM ACOUSTICS、ESOTERICの様にハードメーカーがケーブルも作っていると言うケースもあります。 どれが良くてどれが悪いということは、機器と一緒でございません。 ここで取り上げなかったケーブルに関しても、何度も試聴した事がありますが、素晴らしいケーブルはまだまだございます。 今回ご紹介させて頂いたケーブルにこだわらず、気になるものがあればご相談頂ければ幸いです。 |