VOL.79 Fundamental LA10 試聴レポート



今回はステレオサウンド誌2012 GRAND PRIX 2012年受賞製品の
Fundamental LA10をご紹介させていただきます。



Fundamental LA-10 プリアンプ

 希望小売価格1,050,000円(税抜1,000,000円)
  

実際私も勘違いしておりましたが、ブランド名がFundamental。
私はSOULNOTEがブランド名でモデル名がFundamentalだと思っておりました。

「Fundamental」は基礎、根本、重要ななどの意味をもつ言葉ですが、このブランド
名を付けた意味としては今後このブランド名で様々なことをやっていきたいという
代表鈴木氏の意気込みを感じることができます。

さて代表の鈴木氏はエンジニアとして多くのメーカーで腕を振るってきた職人であ
り、SOULNOTEの立ち上げの前は「marantz pro」でアンプなどの設計を行っておりま
した。

「SOULNOTE」は立ち上げ初期の段階から数少ない販売店の一つとしてダイナミック
オーディオで展開しておりました。その時から何度もお話しさせていただき、音楽
に対するポリシーとそのポリシーを裏切らないサウンドで非常に評価しておりまし
た。また代表の鈴木氏はギターの腕前もプロレベルであり、自分で音楽をやって
らっしゃるというところにも共感を持てました。
以前あるお客様宅に一緒に納品に伺ったのですが、録音などのことにも精通してお
り、本当に音楽人だなと思ったことを思い出してしまいます。


LA10を初めて試聴させていただいたのは、9月だったと思います。
その時には正直かなりチャレンジした製品を作ってきたなと思いました。
プリアンプなのに入力が1系統しかないこのLA10。
鈴木氏が自ら持って来てくれたのですが、その後に私も初対面だったのですが、試
聴室に入ってこられたのが、エンジニアの中村 辰也氏。
山下達郎さんのアルバム「Ray of Hope」を手掛けた レコーディングエンジニアで
あり、中村氏のモニタースピーカーはSOULNOTEのスピーカーを使用しております。
鈴木氏にとってはサウンドアドバイザー的な存在のお方です。

3人で1時間以上試聴しましたが、色々な話も聞くことができ非常に充実した試聴で
した。

試聴レポートはまだ後にさせていただき、先に商品の説明をさせていただきます。


●本体と電源部を分離

 





横幅320mmという他の機器からすると少し小さ目の筐体で、本体と電源部を分離して
それぞれ3点スパイクとなります。
出荷段階ではスパイクカバーが付いております。

本体と電源部は取り外し可能な専用ケーブルですが、その長さは70cmほどになりま
す。この長さにも鈴木氏のこだわりがあります。

入力に関してはXLR1系統、出力はXLR2系統となります。

リアパネルには鈴木氏自らのサインが書かれております。

●P&Gロータリーフェーダー

このLA10は電源部に電源スイッチ、本体にヴォリュームつまみのみとなりますが、
そのヴォリュームへのこだわりがこの製品の肝の一つです。
それを支えるのが「P&Gロータリーフェーダー」
試聴の結果、高価ともいえるこPenny&Giles(UK)を採用しております。

●1kVAの大容量トランス



電源部には1kVAの大容量のトロイダルトランスを使用しております。
トランスと整流ブロックを別筐体することでS/Nを大幅に向上。

●ストレスフリーシャーシ

あまり例をみないようなシャーシ構造。
面と面での接触を最小限に抑え、共振周波数を分散して、速やかな振動収束を促し
ます。

●取付ビスにも非磁性化

取付ビス、ステンレス製のスパイクなど細かいところにもこだわり、
非磁性化を図り、磁気歪みを排除。

<1台1台ハンドメイドで受注生産>

1台1台鈴木氏が組み立てを行うといった徹底ぶり。
基本的には受注生産となります。
鈴木氏の愛情が感じられる逸品です。


●SPEC
定格出力     :2.0V 
入力インピーダンス:10kΩ 
アンプ電圧ゲイン :0dB(ボリューム込み挿入損失0.6dB) 
周波数特性    :DC〜28MHz (+0、-1dB) 
全高調波歪率   :0.0015%(定格出力時 20Hz〜20kHz) 
残留ノイズ    :4μV(フィルターなし) 
S/N比       :125dB(IHF Aネットワーク) 
チャンネルセパレーション :105dB(1kHz) 
電源電圧】    :AC100V 50/60Hz 
消費電力(電気用品安全法)】:10W 
最大外形寸法 
   アンプ部 : 320(W)×108(H)×270.2(D)mm 
   パワーサプライ : 320(W)×152(H)×236.5(D)mm 
質量 
   アンプ部 :5.4kg 
   パワーサプライ : 13.8kg 
	  

メーカー ホームページはこちらをご覧ください。


それでは試聴レポートに入らせていただきます。


試聴システム

CD PLAYER ESOTERIC K-01 \1,470,000(税込)

PRE AMPLIFIER Fundamental LA-10 \1,050,000(税込)

POWER AMPLIFIER CLASSE CA-M600 \2,310,000(税込)

SPEAKER  TAD TAD-E1 \2,100,000(税込)

まずは山下達郎さんのOPUSより♪希望という名の光を試聴しました。
これはサウンドアドバイザー中村氏がレコーディングした曲ということで使用しま
したが、私も個人的に大好きな曲です。
あえて楽器の少ないBONUSトラック盤で行いましたが、最初はアコスティックギター
のコードストロークから始まり、その上に覆いかぶさるような芯のあるベース。そ
の2つの楽器の帯域にサンドウィッチされた中域に達郎さんのVOCALという絶妙なア
レンジが手に取るように解ります。
試聴レポートではなく、まずこのアレンジの良さにコメントをしてしまいましたが、
透明感とか、スピード感というコメントではなく、スタジオで何度も聞いたことの
あるストレスがない、素の音を感じます。またマスター音源を彷彿させる芯のある
ところも最近少ないサウンドに感じます。このサウンドはプリアンプとういよりも
情報量とS/Nの高いアッテネーター的な感じを得ます。

渡辺香津美さんの
Guitar Renaissance(SACD)では、ビルエヴァンスの名曲♪Waltz For Debby
のギターアレンジ。

弦の響きだけが誇張されるのではなく、しっかりギターの胴鳴りが伝わってくるの
が非常に好印象です。もう少しあくが強くでるかなとも思いましたが、音像が
前に出過ぎないせいかバランス良く、ギターの音色を楽しむことができます。
アコスティックギターの場合ブロンズ弦を使用した場合にオーディオシステムによ
っては、使用している弦よりも細くも聞こえますし、太くも聞こえるのが面白いと
ころですが、このLA10はきっとそのままアーティストの意図した狙いの音を伝えて
くれるのではないかと錯覚させてくれるサウンドです。

ジョー・サンプル feat.レイラ・ハザウェイのアルバム THE SONG LIVES ONより
♪When you life was lowは私のリファレンス曲の一つですが、最初のメロディアス
なピアノの出だしから、VOCALが入ってきますが、ふっと浮かび上がる音像は鳥肌が
立ちます。S/Nの良さからくるところも大きいかと思いますが、描写が非常に安定し
ているといった印象です。
色気という感じはさほど伝わってきませんが、音楽の世界に入っていくことができ
ます。

その後はクラシックを数曲試聴しました。

迫力のあるシンフォニーは前面に押し出し満腹感を得ることが出来ておりますが、
静寂感や色気、音の響きは誇張されませんので、少し平坦に感じるところはありま
す。

奥行きもしっかり感じることは出来ておりますが、音場表現はソフトに入っている
もの以上を出さないモニターアンプですので、物足りなさを感じるお客様もいらっ
しゃるとは思います。

今までいろいろなメーカーのサウンドを聞いてきましたが、良い意味でも悪い意味
でもそのメーカーの音色に支配され、そのとりこになってきたのかもしれません。
実際ミュージシャンやエンジニアが聞いたら、実際の音とは違うという印象のオー
ディオ機器も多いでしょう。オーディオの面白さは色々あっても良いと思いますが、
このLA10のサウンドは真実のサウンドを伝えることで、感動してもらいたい
という気持ちが前面に表れているように感じます。
前もコメントしたことがありますが、何故あのミュージシャンはフェンダーを使う
のか、GIBSONを使うのか。MARTINの中でもD45なのか、OOO28なのか。ドラムの世界
でもベースの世界でも、ピアノの世界でも同じだと思います。
エンジニアの世界だとニーブのコンソールが良い、ノイマンのマイクが良いという
ような話題にもなります。

オーディオの世界同様プロの世界でも音の追及というのはかなりのものです。

ミュージシャンも含めて、プロのエンジニアが意図した気持ちが、聞き手に伝わった
時にこそまた違う音楽の感動が現れるような感じがします。

そういうことをこのLA10が教えてくれました。

是非楽器好きのお客様、そしてロック好きのお客様には特に注目していただきたい
製品です。

使い方としては電源部と本体をスタックするのではなく、それぞれしっかり設置し
てもらいたいと思います。
スパイク受けによっても音質は変わってくることも検証できましたので、もし
必要でしたらSOULNOTEからSP-330(1枚\1,575)で発売されておりますので、
こちらをご使用いただければと思います。

私は実際このLA10で聞きたい音楽がたくさんありました!!

以前の海外外製品はそういう唯一無二の製品が多く、ブランド名と設計者の名前が
前面に押し出されたいたような気がしますが、最近の国産製品もそういった設計者
の名前が多く出てくるようになっております。
こういう職人堅気の製品は本当に良いものですね。


2013年1月6日 H.A.L.3 島

おまけ

こちらの製品は持ち込み試聴も可能となっております。
ご自宅の環境で是非ご試聴いただければと思います。

ご相談は私島もしくは天野までご相談ください。